ホーム > 砂糖 > 機構から > 第8回さとうきび・甘蔗糖関係検討会の概要について
最終更新日:2010年3月6日
1.はじめに
第8回さとうきび・甘蔗糖関係検討会が当機構那覇事務所の主催により、平成20年10月29、30日の両日、沖縄県宮古島市において開催された。
同検討会は、当機構における情報収集・提供業務の一環として、鹿児島県および沖縄県のさとうきびの生産および甘しゃ糖の製造に関わる者が幅広く情報交換を行い、担い手育成など両県の抱える課題解決を目的として、各地域の生産者の代表、行政、研究機関、甘しゃ糖メーカーなどの関係者が一堂に会し、共通のテーマについてそれぞれの立場から討議する会議で、沖縄・鹿児島両県で毎年交互に開催されている。
今回の検討会は、沖縄県では初の本島以外の生産地における開催となった。なお、宮古地域は沖縄県のさとうきび生産量の約4割を占める主産地である。
今回の検討会では、担い手育成と、増産に向けた株出しの推進に焦点を当てた報告を中心に討議が行われた。
図1 検討会の様子 |
図2 生産者代表の方々との質疑応答の様子 |
2.検討会の概要
(1) 担い手育成について
平成19年度から始まった品目別経営安定対策において設けられている生産者に対する3年間の特例措置が廃止される平成22年度に向け、特例対象農家を本則要件区分に引き上げるための担い手育成の取り組み事例などが報告された。
ア)平成19年度対象甘味資源作物生産者要件審査結果など
当機構の肥後鹿児島事務所長から、平成19年産対象甘味資源作物生産者要件審査結果および平成20年産の要件審査申請状況についての報告が行われた。
イ)沖縄県および鹿児島県における取り組み状況について
沖縄県農林水産部糖業農産課の竹ノ内さとうきび班長および、鹿児島県農政部の宮内農産園芸課課長から、沖縄県および鹿児島県におけるさとうきび生産の現状(機械化、担い手育成の状況など)、これまでの主な取り組み状況および今後の方向性と課題などについての報告が行われた(図3)。
資料:沖縄県糖業農産課 |
図3 沖縄県の担い手育成の取り組み |
ウ)各地域における担い手育成の取り組み状況
沖縄県宮古支庁宮古農政・農業改良普及センターの渡慶次主任から、宮古地域での取り組みとして、現在の要件区分がA―5(図4)の生産者であっても、実際は収穫作業を手刈りグループに委託していたり、耕起整地などの基幹作業を受託組織などに委託しており、書類整備などの条件が整えば、本則要件を満たす生産者が増加する可能性があることなどについての報告が行われた。
また、鹿児島県熊毛郡の南種子町農林水産課、羽生農業政策係長からは、種子島南種子町における担い手育成の取り組みとして、ハーベスタ利用組合の代表者などを対象とした研修の開催や、平成18年10月に発足した種子島農業支援センター(TASC)による実務者間での意見交換や情報の共有化への取り組みなどが報告された。
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図4 甘味資源作物交付金の対象要件 |
(2) 増産に向けた株出しの推進
「増産に向けた株出しの推進について」をテーマに、6名のパネリストによるパネルディスカッションが行われた(図5)。
図5 パネルディスカッションの様子 |
ア)島尻地域における増産に向けた取り組み
農事組合法人豊農産(宮古島市)の辺土名代表理事から、株出し栽培を中心とした増産への取り組みが報告された。
また、増産のためには①適期肥培管理・早期除草の徹底②新植発芽茎数の増加③株出し面積の拡大―に留意すべきであり、株出し栽培においては①収穫後の早めの管理、②株出し管理専門のオペレーターの配置―に取り組んでいると報告された。
イ)さとうきび農業後継者としての取り組み
種子島農業青年クラブの小脇会長から、さとうきび農業後継者で組織する「TOPS」の活動内容(さとうきび栽培技術の習得、農業経営管理の向上など)や、南種子町における栽培管理体系として、①株出し管理機の導入②ハーベスタで収穫した後、専属オペレーターが株出し管理作業を実施する③霜が降りる種子島の環境条件から、その後、各農家がマルチ被覆を行う④さとうきびと畜産との複合経営または耕畜連携によりさとうきびの梢頭部を畜産に、畜産からのたい肥を畑に還元⑤新植・株出し前にたい肥散布を行う―などが報告された。
ウ)株出し栽培の現状と単収向上技術について
鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場の白澤作物研究室長から、株出し栽培の現状と単収向上技術について報告され、品種による株揃え深度の試験結果や、株出し栽培における単収向上のためには、①株出し萌芽性の良い品種を植える、②収穫直後に株出し管理作業を行う③株揃え深さは蔗苗位置より13センチメートル程度の深さで行う―などのポイントについて説明が行われた。
エ)さらなる増産のための夏植え型秋収穫・株出し栽培について
沖縄県農業研究センター宮古島支所の宮城作物園芸班長から、宮古地域における増産に向けた夏植え型秋収穫・株出し栽培技術の必要性と、早期高糖性品種(農林24号、26号)の試験研究について報告が行われた。
同栽培型のメリットとして、夏植えと同様に比較的気象災害に強く、高単収であることに加え、1年1作が可能となるため土地利用効率が高いとし、夏植えが約9割を占める宮古地域において増産を図るための有効な栽培型であることが説明された。
オ)プリンスベイト剤処理がサトウキビ収量および株出し萌芽に与える影響
沖縄県農業研究センター病虫管理技術開発班の新垣指定試験主任から、プリンスベイト剤がハリガネムシの防除に効果が高いことに加えて、ハリガネムシ防除に用いられるプリンスベイト剤処理がさとうきびの初期生育を促進し、収量を増加させ、株出し萌芽率も向上するため、株出し栽培が難しいとされている宮古島における株出し栽培の可能性が示唆された。
カ)年内早期製糖について
翔南製糖(株)農務部の大庭課長から、製糖工場の取り組みとして、「年内早期製糖への取り組みについて」が報告された。
具体的には、従来の年明け操業における製糖終了の遅れが、株出し管理を遅延させ次年度の減収を招いているとの状況に鑑み、年内早期製糖へ向け、早期高糖品種の増殖・普及、更新畑の早期収穫、2月植えの推進、葉タバコとの輪作の取り組みを行った結果、春植え時期の早期化、株出しの早期肥培管理、農地の有効利用が行われ、それに伴って翌期において増収するといった成果が得られたことが紹介された。
(3) 情報提供など
①海外現地調査について
当機構調査情報部の大泉情報課長から、2008年8月に米国で開催された第25回国際甘味料シンポジウムの概要などが報告された。また、同部調査課の菊池係長から、同年7月に実施したブラジルのさとうきびおよび砂糖・エタノール生産状況に関する現地調査結果についての報告が行われた。
②さとうきび・甘しゃ糖をめぐる事情について
農林水産省生産局生産流通振興課の阿部課長補佐から、さとうきび・甘しゃ糖をめぐる事情およびWTO農業交渉をめぐる最近の動きなどについて解説が行われた。
③さとうきびの生産安定に向けて実施中の技術・システムの読み方(解題)
独立行政法人国際農林水産業研究センターの杉本熱帯育種素材管理担当から、さとうきび業界の将来のために、他の産業活動との共栄を図ることの必要性が提言された。
④わい化病対応への提言
独立行政法人種苗管理センターの徳永沖縄農場長から、さとうきびわい化病の実態や種苗流通の現状などについて解説が行われた。
⑤優良農家の紹介
沖縄製糖、宮古製糖の両社から優良農家(仲里康男氏、川満長英氏)の経営概況が紹介された。
⑥宮古島の地下ダムについて
宮古島土地改良区の石嶺事務局長から、宮古島の地下ダムに関する概要が紹介された。
(4) 現地視察
以下の関係施設に対する視察が実施された。
①優良農家ほ場など
②沖縄県農業研究センター宮古島支所の現地選抜ほ場
③宮古島地下ダム資料館
3.おわりに
今後、砂糖類情報および当機構のホームページで、今回の検討会で報告された事例紹介や研究および調査報告などを順次紹介していく予定であるので、各地域での取り組みの参考として活用していただくとともに、さとうきびの増産に向けて関係者が一体となり、取り組まれる一助となれば幸いである。
開催に当たり開催地である宮古島の関係者をはじめ、皆様の多大なご協力をいただいたことに深く感謝する次第である。
図6 優良農家ほ場視察(春植え栽培) 〜仲里康男氏ほ場〜 |
図7 優良農家ほ場視察(夏植え栽培) 〜川満長英氏ほ場〜 |
図8 ベイト剤試験ほ場 〜川満長英氏ほ場〜 |
図9 沖縄県農業研究センター宮古島支所 ほ場視察 |
(参考)参集範囲
具志川地区さとうきび生産組合、南部地区さとうきび生産振興対策協議会、南大東村さとうきび生産組合、北大東村さとうきび生産組合、久米島町さとうきび生産組合、石垣市さとうきび生産組合、伊良部地区さとうきび生産組合、喜界町認定・担い手農業者連絡協議会さとうきび部会、JAあまみ大島事業本部奄美市さとうきび生産部会、JAあまみ和泊地区さとうきび部会、JAあまみよろんさとうきび部会、農事組合法人豊農産、種子島農業青年クラブ、中部地区さとうきび協議会 専門委員、農業機械士協議会 中部支部、中部地区さとうきび生産法人連絡協議会、伊良部地区さとうきび生産組合、石垣市さとうきび生産組合、熊毛支庁農林水産部、鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場、西之表市農林水産課、南種子町農林水産課、安久保さとうきび生産組合、平野さとうきび生産組合、小平山さとうきび生産組合、宮古島さとうきび生産者、琉球大学、沖縄県農業協同組合中央会、鹿児島県農業協同組合中央会、沖縄県農業協同組合、日本分蜜糖工業会、日本甘蔗糖工業会、翔南製糖株式会社、沖縄県農林水産部、沖縄県中部農業改良普及センター、沖縄県宮古支庁、宮古農政・農業改良普及センター、宮古島市、石垣市、喜界町、宮古土地改良区、南種子町農林水産課、鹿児島県農政部、鹿児島県大島支庁、沖縄県農業研究センター、沖縄県農業研究センター宮古島支所、鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場、社団法人沖縄県糖業振興協会、独立行政法人種苗管理センター、独立行政法人国際農林水産業研究センター、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構、九州沖縄農業研究センター、農林水産省生産局、農林水産省九州農政局、内閣府沖縄総合事務局
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