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第9回さとうきび・甘蔗糖関係検討会の概要について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ

[2009年12月]

【機構から】
 
鹿児島事務所

 

1.はじめに

 当事務所は、平成21年10月22、23日の両日、鹿児島市において、第9回さとうきび・甘蔗糖関係検討会を開催した。

 同検討会は、当機構における情報収集・提供業務の一環として、鹿児島県および沖縄県のさとうきびの生産および甘しゃ糖の製造に関わる者が幅広く情報交換を行い、担い手育成対策など両県の抱える課題解決に資することを目的として、各地域の生産者の代表、行政、研究機関、甘しゃ糖メーカーなどの関係者が一堂に会し、共通のテーマについてそれぞれの立場から討議を行っている。

 今回の検討会では、1日目は主に担い手育成対策および増産対策に向けた株出し推進について、2日目はさとうきびに関する試験研究について、それぞれ討議が行われた。

図1 鹿児島県農政部弓指部長による来賓代表挨拶
図2 検討会の様子

2.担い手育成対策について

 平成19年度から始まった品目別経営安定対策において、生産者に対する3年間の特例適用期間が平成21年度で終了となることから、特例措置対象農家の本則要件区分への移行を促進するための担い手育成の取り組み事例などが報告された。

(1) 鹿児島県および沖縄県における取り組み状況について

 鹿児島県農政部農産園芸課の福田糖業指導監および、沖縄県農林水産部糖業農産課の竹ノ内さとうきび班長から、鹿児島県および沖縄県におけるさとうきび生産の機械化、担い手育成の状況など、これまでの主な取り組み状況並びに今後の方向性と課題などについての報告が行われた。

(2) 平成21年度対象甘味資源作物生産者要件審査申請状況などについて

 当機構の薄井那覇事務所長から、平成20年産対象甘味資源作物生産者要件審査結果および平成21年産の要件審査申請状況についての報告が行われた。

(3) 各地域における担い手育成対策の取り組み状況について

 鹿児島県大島支庁沖永良部事務所農業普及課の松田技術主査から、認定農業者の育成、集落単位での認定農業者への作業委託の誘導への取り組みなどの説明があり、事例として和泊町の喜美留生産組合を取り上げ、事例の報告が行われた。

 また、沖縄県農業協同組合宮古地区対策室の平良室長から、収穫作業を刈倒しまたは搬出の委託でも認められることとなったことから、手刈りによる収穫が大部分を占める宮古地区において、500戸の生産者全員をA4へ誘導することが可能となった事例の報告が行われた。

(4) さとうきび協業組織化の可能性

 鹿児島大学農学部生物生産学科の坂井准教授からは、種子島の西之町さとうきび生産組合および南九州市川辺町のどんどんファーム古殿の事例を挙げ、この中で、複合経営におけるさとうきび部門のみの協業化や農地の集団化が行われれば、畑作における協業化を進めることは可能であるとし、経営安定対策におけるさとうきび作の協業組織化の可能性についての報告が行われた。

図3 松田技術主査による発表の様子

3.増産対策に向けた株出推進について

 鹿児島、沖縄それぞれの生産者代表から、増産に向けた株出しの推進について、優良事例の報告が行われた。

(1) 沖永良部島和泊地区における増産に向けた取り組み

 JAあまみ和泊地区さとうきび部会の瀬川会長から、「株出で金を取るために!」と題して、株出し栽培を中心とした増産への取り組みが報告された。

 この報告の中では、株出しによる増産のためには①廃耕ほ場を一番最後に刈り取るなどの収穫の順番を替える②きびの根元を高く刈り取って稚けつ(新芽)を大事にすることにより、茎数を増やし単収を向上させる③収穫後は早い時期にハカマを取り除き、株揃えを徹底することの重要性が述べられた。

(2) 恩納村における増産に向けた取り組み

 恩納村さとうきび生産組合の比嘉組合長から、「共同作業によるさとうきび生産〜面白く楽しい農業を目指して〜」と題して、恩納村における増産に向けた取り組みについてが報告された。作付面積の拡大が限られている同地域では、生産性を上げるためには単収向上を目指すことが不可欠であるとし、補植などの共同作業によって楽しく効率的なさとうきび生産を行うことが大切であるとの報告が行われた。

4.さとうきびの試験研究について

 さとうきび増産を目指すためには、株出し栽培の妨げとなっている病害虫の防除、生産性を高めるための新品種育成、コスト低減のための肥料節減などの試験研究は重要な課題であり、今回の検討会においてもさまざまな取り組み事例が報告された。

図4 鹿児島県の生産者代表の方々との質疑応答の様子

(1) 株出し栽培に向けた新しい防除技術

 沖縄県農業研究センター病虫管理技術開発班の新垣主任研究員から、さとうきびの植え付け時におけるベイト剤の植溝土壌混和処理がハリガネムシの防除に効果が高く、株出し不萌芽の回避に有効であることが説明されたほか、可動式誘殺灯によるアオドウガネ防除、交信かく乱法によるケブカアカチャコガネの防除などについても解説が行われた。

図5 沖縄県の生産者代表の方々との質疑応答の様子

(2) さとうきびの試験研究をめぐる情勢

 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センターバイオマス・資源作物開発チームの寺内上席研究員からは、鹿児島・沖縄県におけるさとうきびの品種育成を中心に、沖縄での新しい普及品種や奨励品種、飼料用さとうきび、伊江島におけるバイオマスプラントなどの報告が行われた。

(3) 土壌の特性と管理・肥料節減に向けた研究開発の取り組み

 鹿児島県農業開発総合センター生産環境部土壌環境研究室の古江室長から、鹿児島県内のさとうきび栽培地に分布する土壌の特性と管理について、鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場作物研究室の上野室長から、種子島における肥料節減に向けた技術開発の取り組みについて、沖縄県農業研究センター土壌環境班の久場班長から、沖縄県における肥料節減に向けた研究開発の取り組みと問題点について、それぞれ報告が行われた。

5.情報提供および意見交換

(1) 情報提供

①さとうきび・甘しゃ糖をめぐる事情について

 農林水産省生産局生産流通振興課の松下課長補佐から、さとうきび・甘しゃ糖をめぐる事情のほか、平成21年度農林水産関係補正予算の執行の見直しについて、平成22年度農林水産予算概算要求の概要など、最近の動きなどについて解説が行われた。

②海外現地調査・砂糖の国際需給について

 当機構調査情報部の宇敷情報課長から、米国における砂糖の需給動向や消費の現状、砂糖政策に関連した新農業法の特徴など、米国における砂糖をめぐる状況について報告が行われた。

 また、同部調査課の前田係長から、砂糖の国際需給とEUの砂糖制度改革による同地域の砂糖需給に及ぼす影響などについての報告が行われた。

③さとうきび原原種を取り巻く状況

 独立行政法人種苗管理センターの末松鹿児島農場長から、さとうきびの原原種を取り巻く状況などについて解説が行われた。

(2) 生産者代表らによる意見交換

 検討会当日は、事例発表者のほかに、鹿児島県と沖縄県の各地域のさとうきび生産者代表の方々も参加し、さとうきび増産や担い手育成に関して、以下のとおりさまざまな意見交換が行われた。

 品目別経営安定対策への転換時にもさとうきびの制度には大きな影響があったが、今回の政権交代による影響がどうなるか気になるところである。新政権が掲げている戸別所得補償制度ではさとうきびは対象となるのかなど、先が見えない不透明な状況で心配である。

 さとうきび生産農家の経営は厳しく、自身の努力のみでは何とも出来ない状況である。生産費の上昇を考慮すると、現在の交付金単価水準は低いのではないかと思われるが、単価の見直しは可能なのか。

 年間の降雨量が減っている中で、さとうきび栽培に必要な水は全て島に貯めないといけない。農業用水・ため池の十分な確保が必要だ。

 ハーベスターによる収穫率向上の事例報告に関して、ハーベスター導入が進んでいない地域の生産者代表から、ハーベスターによる収穫率の向上について何か秘策はあるのかという質疑があった。これに対して発表者からは、補助事業等によりハーベスターの導入が進んだことが要因であるという回答があった。

 要件の改善によって収穫作業の委託において、搬出のみの場合でも対象となると認められたことについて、手刈り収穫が多数(約7割)を占める宮古島においてはありがたく、感謝している。

6.おわりに

 今回、検討会では、生産者、研究者を始めとしてさとうきびの増産に向けて活発な意見交換が行われ、関係者の意識の高さが感じられた。今回の検討会で報告された事例紹介や研究および調査報告など、各地域での取り組みの参考として活用していただくとともに、関係者が一体となって取り組まれる一助となれば幸いである。

 開催に当たり、皆様の多大なご協力をいただいたことに深く感謝いたします。


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