ホーム > 砂糖 > 生産現場の優良事例など てん菜生産関係 > てん菜の種子生産(採種栽培)の現状(1)
最終更新日:2010年3月6日
生産地から |
(財)甘味資源振興会 札幌事務所長 | 永田 伸彦 |
モノヒカリの親子関係 |
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研究用種々の系統別母根 | |
系統別に仕分けられた母根 |
冬期貯蔵後の母根 |
畦ごとに系統別に区分して母根を配置する | |
定植作業 | 周囲を踏み固める作業 |
出芽後の状況 |
種子親単胚雄性不稔系統 | 花粉親多胚系統 |
葯が退化して花粉を作らないという遺伝子を組み入れた系統を雄性不稔系統と呼ばれる。花粉親としては、てん菜本来の形質である花粉を出す多胚系統を用いる。この花は一か所の葉腋に多くの花をつけ、結実すると花托が結合して一つの種子(種球)となる。これは1粒播くと数個の芽がでるので間引き作業が必要であり、品種にするには間引きの要らない単胚系統にすることが条件で、普及用種子として種子親雄性不稔の花から採種すると、花粉親との交配種子ハイブリッド単胚種子が得られることになる。
単胚雄性不稔種子親系統×多胚花粉親系統
↓
単胚ハイブリッド品種(種子親のみから採種して単胚種子を得る)
収穫前の原種採種圃場の状況
左の畦は花粉親。
てん菜の花茎は主茎のはっきりした直立型や側枝が多い複枝型がある。生育後期には程度の差はあるが倒伏しやすいので、研究用系統採種や原原種などは枝が絡まないように、また蒸れないように手間をかけて支柱を立てる。
<刈取り後の隔離圃場における日干し乾燥>
ニオ積み隔離圃場
収穫適期は子実別にみると中心が飴色になった時といわれる。しかし株全体で見ると、てん菜は無限花序のためすべてが同時に完熟するのでなく、茎の下から順次開花・結実する。また完熟すると脱粒しやすくなるので通常は3分の2が熟した時期を適期(開花期から40〜50日)とする。
収穫が早いと未熟種子が多く発芽率が低いし、貯蔵による発芽率低下が早い。逆に遅いと脱粒が激しく収量が少ないが、熟度の進んだ種子が多く得られ、発芽率は良好で、温湿度を調整した種子貯蔵庫では長期保存が効く。ただし常温下では種子寿命は短い。
表2 収穫時期と種子発芽率(てん菜試験成績:北農試1991)
収穫は系統ごとに混合しないように刈り取ってニオ積みにして日干し乾燥を行う。条件が良ければ水分11%くらいまで乾燥できる。その後脱穀前に隔離圃場から各系統を網袋に入れて搬入し、乾燥棚でさらに日干し乾燥を継続する。
乾燥棚での乾燥風景 | 乾燥した種子茎 |
簡易乾燥機 | 通風乾燥機 |
乾燥状態が脱穀に不十分な場合は脱穀前に人工乾燥する。また脱穀精選した粗選種子も種子が吸湿していると不具合が生じるので、研磨処理など精選作業には通風乾燥機を用いてさらに乾燥する。
<脱穀、精選作業(唐箕精選、研磨後再唐箕選、比重選など)>
一般に精選には下記のように多くの作業工程がある。
種子茎乾燥→脱穀→篩による夾雑物除去→空胚、風選による未熟胚の除去→粗種子・乾燥→研磨→風選、比重選→発芽試験→比重選など再精選
脱穀作業 | 唐箕による風選 | 研磨種子 |
単胚種子(種子親系統) | 多胚種子(花粉親系統) |
置床 | 発芽調査 | 発芽試験器 |
多胚種子の発芽 | 単胚種子の発芽 |
種子の品質評価の中では特に発芽率、単胚率が重要である。発芽率は採種条件の影響が大きく、一般に開花期から収穫期まで雨量が少ないと発芽率は高い。発芽率の低下度合いをみると、比較的乾燥条件で経過する北海道の室温貯蔵(比較的低湿場所で温湿度は成行)でも3〜5年間は初期の発芽率を保つが以後急激に落ちる。早期収穫の種子の劣化は高く、適期収穫の種子の劣化はこれに比べて低い。温度2℃、湿度40%以下の貯蔵では30年以上経っても発芽率は落ちない。
単胚系統といっても、完全な単胚種子のみを生産するとは限らない。枝の先端部分に2胚種子が比較的多く見られるし、遺伝的に2胚種子の多い系統もある。
採種栽培法
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