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平成18年産てん菜の生産実績について
最終更新日:2010年3月6日
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生産地から
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[2007年3月]
北海道立北見農業試験場 作物研究部 畑作園芸科 |
山田 誠司 |
平成18年産のてん菜の受け入れは10月9日から始まり、12月26日をもって全ての製糖所で終了した。全道平均の単収は58.23t/haであり、平成9年からの10カ年中6番目の平年並み、また、根中糖分は16.4%であり、同期間中、平成12年に次いで2番目に低い糖分であった(図1)。
平成18年の生育経過(表1)を気象の推移(図2)と共に振り返ってみると、育苗期間中はほぼ順調であったものの、融雪の遅れから全道的に移植作業が遅延し、各支庁調査の移植日は主産地である道東の十勝、網走支庁では5日程度、上川支庁では3日、道央・道南地域は胆振支庁を除いて4日程度遅れた。5月の気温は平年並からやや高く、日照時間も多く推移したため、活着は良好だったものの、6月は一転して低温、寡照となり、初期生育に不利な条件となった。特に、十勝支庁、道央・道南地域では5月下旬から降水量が多く推移したため、生育がさらに抑制された。各支庁調査の7月1日の生育状況では、上川、網走支庁は平年をやや下回り、十勝支庁、道央・道南地域は平年を大きく下回った(表1)。7月以降は高温、少雨傾向となり、生育は十勝支庁を除いて回復に向かったが、一部では干ばつ被害を受けたほ場も観察された。高温が続く中、8月中旬には発達した低気圧の影響で全道的に短期間の豪雨に見舞われ、その後、褐斑病の発病が急速に拡大した。病害虫防除所発表の8月6半旬における巡回調査結果によると、発病には地域間差があり、十勝、網走支庁では発生が多く、上川支庁、道央・道南地域では発生が少ない状況であった(表1)。9月も上旬までは気温が高かったため、褐斑病被害がさらに拡大したほ場も観察された。10月上旬には十勝、網走支庁で100mm以上の降水量を記録し、高温と共に根中糖分の蓄積を妨げた。
表1 てん菜生育経過と褐斑病発生状況 |
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図2 平成18年の気象経過(全道) |
以上を整理すると、平成18年産てん菜の生育に影響を与えた要因としては、(1)移植の遅れ、(2)6月の低温・寡照による初期生育の停滞、(3)7月以降の高温、(4)短期間の集中豪雨、(5)褐斑病の多発を挙げることができる。このうち、気象要因に注目すると、根重は春先の気温に(図3)、根中糖分は夏期から秋期にかけての気温(特に夜温)(図4)にそれぞれ大きく左右される点が従来から指摘されており、平成18年の生産実績もその点をほぼ裏付ける結果となった。
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図3 春先の気温と根重との関係
注)気象値は各糖区を代表するアメダスデータを作付
け面積に基づき加重平均した。 |
図4 夏期から秋期にかけての気温と根中糖分との関係
注)気象値は各糖区を代表するアメダスデータを作付
け面積に基づき加重平均した。 |
しかし、生産実績を地域別で見ると(表2)、主産地の十勝支庁は低収・やや低糖分、もう一方の主産地である網走支庁は多収・低糖分、上川支庁は多収・平年並の糖分、道央・道南地域はほぼ平年並みの根重・糖分であり、地域ごとにかなり傾向が異なる結果となった。これらの原因としては、各地域の気象条件の違いだけではなく、土壌条件や前述のような褐斑病の発生状況の地域間差異も大きく影響していると思われる。また、全体的に褐斑病の発生が多かった地域でも、平成12年の大発生の時と同様に、発生状況にはほ場間差が大きく、適切な防除の可否が明暗を分けたことが推測される。ここ数年は、褐斑病の発生は比較的少なかったため、被害に対する認識が薄れている可能性がある。褐斑病は発病時期にもよるが、根中糖分のみならず根重にも少なからぬ影響を及ぼし、大きな減収につながりかねない点を、もう一度留意し直す必要がある。
表2 地域別生産実績 |
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さらに、適切な防除を行うためには、(1)ほ場の排水性を良くして防除適期を逃さない、(2)病気の発生状況と作付け品種の抵抗性を考慮して、散布薬剤の効果持続期間を見定めることが必要である。
平成19年産以降、てん菜は品目横断的経営安定対策に移行され、今後とも安定的に生産していくためにはコストの低減を図ることが求められる。そのためにも、ほ場の特徴に合致した品種の選定や気象条件に左右されにくいほ場環境の整備と栽培管理を行うことが重要である。