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身体と食物においしい砂糖〜スポーツ選手の栄養管理を例に挙げて〜

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報


今月の視点
[2000年1月]
 平成11年11月10日(水)福岡市天神ソラリアステージビル「西鉄ホール」において、当事業団が開催いたしました〈砂糖と食文化セミナー'99〉における早渕先生の講演内容をご紹介するものです。砂糖は性・年齢・人種を問わず愛される安全性の高い天然食品であり、即効性のある脳・神経系の唯一のエネルギーである。また、砂糖の甘みは人に幸福感や満足感を与えてくれるなど興味深い内容でした。

福岡女子大学人間環境学部助教授
福岡ダイエーホークス栄養アドバイザー
医学博士 早渕仁美


福岡ダイエーホークスにおける栄養管理
食物の役割 ─ 車に例えると ─(1) 望ましいエネルギーバランス (2)
日本人の平均摂取エネルギーバランス(3) 糖質≠砂糖(4)
糖質・砂糖の構造(5) 野球選手の消費エネルギー(6)
競技別トレーニング期間中の消費エネルギー(7) プロ球団寮の食事(8)
平均摂取エネルギーバランス(9) 飲料からの摂取栄養(10)
水分補給の効果(11) 糖質飲料補給の効果(12)
試合当日の食べ方(13) 事故の発生を防止する糖(14)
身体においしい砂糖(15) 食物においしい砂糖(16)
生活に潤いを与える砂糖 エネルギーバランスの要因(17)
活き活きと生きるには(18) 食事はタイムリーにバランス良く(19)
体重(体脂肪)を目安に健康管理 栄養・休養・トレーニング


 このセミナーのテーマは「砂糖と食文化」ということで、早速冒頭から「不思議な魅力〜砂糖〜」というビデオをご覧になられましたので、砂糖がどのようにして作られているのか、砂糖と健康との関わりや砂糖の働きについて、かなりご理解いただけたのではないかと思います。そこで、私はちょっと切り口を変えまして、皆様の砂糖に対する理解を深めて頂けるようなお話ができたらと思います。
 ところで、今週の日曜日には福岡ダイエーホークスの優勝パレードがありましたが、ご覧になられましたか?
 10月28日に名古屋で早々と優勝を決めてしまいましたので、私は出張先の郡山のホテルでそのことを知ってビックリ、もちろんとてもうれしかったのですが、福岡での胴上げでなかったのは少々残念でしたね。また、リーグ優勝を決めた9月25日は、東京の出張帰りの機内でラジオを聞いていたのですが、優勝が決まった瞬間に、機内でも拍手が起こったことを思い出します。あの時はさすがにジーンときました。
 ホークスとの関わりは、球団が福岡へ来ることが決まった平成元年の秋にさかのぼります。その当時の球団としては本当に珍しかったと思いますが、「選手の健康を第一に」ということで栄養指導の依頼がありました。私は野球のことはほとんど分かりませんでしたが、球団の方から「選手が健康で良いプレーを1日でも長く続けることができるような、そして野球を辞めた後も健康でいてもらえるような栄養管理を」というお考えを伺い、お手伝いすることにしました。プロ・スポーツの場合は一般に勝敗が最優先で、選手の健康管理などは個人の問題で済ませられがちなのですが、選手の健康を第一に考えようという当初からの考え方が、12年後に実を結んだのではないかと本当にうれしく思っています。
 そこで、まず福岡ダイエーホークスにおける栄養管理の一端をご紹介したいと思います。

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福岡ダイエーホークスにおける栄養管理

(1)骨密度の測定
 シーズン中は、現場の管理栄養士が球場や寮の食事、あるいは個々の選手の栄養状態をチェックしていますので、必要に応じて相談を受けたり、アドバイスをしたりしています。シーズンオフに入りますと、早速、選手のメディカルチェックが行われます。通常の血液や尿、胸部X線、心電図などの健診はもちろん、目、耳、歯、そして整形外科での健診も行われ、骨密度測定や体力測定も行われます。

(2)栄養指導
 選手から日頃の食生活について聞き取り、栄養に関する知識や意識の程度を知ると同時に、食生活に大きな偏りがないかどうかをチェックした上で、シーズンオフの基礎体力づくり、あるいはシーズン中のコンディショニングについて指導をしたり、選手の相談に応じたりしています。最近は、特に入団した時と、1年目のシーズンが終わった時、寮を出て一人暮らしを始める時、そして結婚した時の指導に力を入れています。

(3)奥様向け講習
 結婚している選手の食事や健康の管理は、やはり奥様が一番ですので、シーズン中とシーズンオフに奥様向け栄養料理講習会をしています。また、一昨年のシーズンオフからは、特に結婚あるいは婚約されたカップルのカウンセリングに力を入れていますので、選手の活躍は奥様あるいはご家族に支えられているところも大きいのではないかと、奥様方にも拍手を送っています。

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食物の役割 ─ 車に例えると ─(スライド1)

スライド1
スライド1
 さて、そろそろ本題に入りますが、スライド1は人を車に例えて食べ物の役割を分かりやすく示したものです。
 実は、今年(平成11年)の2月、福岡ダイエーホークスの高知での合宿中に全選手と監督、コーチ約100名の皆さんに「スポーツと栄養」の話をした時にも使ったスライドです。
 スポーツマン、特にパワー・スピード・スタミナがあると言われる選手を車に例えると、壊れ難くがっしりした車体、そして大きなエンジンを備えたスーパーカーのようなものです。しかし、そのボディもエンジンも手入れを怠っていますと、見かけは変わらなくてもいつの間にか車体はひ弱になり、不必要な荷物を積み込み、エンジンの能力は低下してしまうのです。身体の構成成分は常に少しずつ壊れ、新しく作り替えられていますので、そのために必要なたんぱく質やミネラルはきちんと補わなければなりません。
 休みの1日を寝て過ごしたとしても、車で言えばエンジンをふかしたままのアイドリング状態のようなものですから、ガソリンすなわちエネルギーはきっちり消費しています。生きているということは、身体の構成成分を失い、エネルギーを消費し続けることなのです。しかも、車のエンジンが大きいほどガソリン消費量も増えるように、パワー・スピード・スタミナのあるスポーツ選手のエネルギー消費量はじっとしていても多いのです。ガソリンがなければ、どんなに性能の良い車も全く役には立ちません。
 この、ガソリンの大切な供給源が糖質と脂質なのです。

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望ましいエネルギーバランス(スライド2)

スライド2
スライド2
 先ほどのビデオの中に「バランスのとれた食生活」のお話がありましたが、覚えておられますか?望ましいエネルギーバランスについて、スライド2のような数値が示されました。
 3大栄養素のたんぱく質、脂肪、炭水化物から、どのような割合でエネルギーを摂ったら良いかということについて、日本人の1日当たり平均的な摂取量が2,200kcalである場合、たんぱく質と脂肪から800kcal、炭水化物からは1,400kcal摂るのが望ましいというお話でしたね。これは、たんぱく質と脂肪と炭水化物のエネルギーがほぼ1:2:5の割合になるようにということです。したがって、総摂取エネルギーの約65%は炭水化物から摂ることが望ましいということを意味しています。

日本人の平均摂取エネルギーバランス(スライド3)

スライド3
スライド3
 しかし、現在の日本人の平均摂取量を、毎年行われる国民栄養調査の結果から見てみますと、スライド3のように平均摂取エネルギーは、ここ数年ほぼ2,000kcal程度に落ち着いているのですが、たんぱく質と脂質の摂取量が増えたために、糖質からのエネルギー摂取量が60%を割っています。ここで、スライド2と比較しますと、脂肪が脂質に、炭水化物が糖質に変わっていますが、お気づきになられましたか?
 エネルギーの3大栄養素と言う場合は、このようにたんぱく質、脂質、糖質というような表現が一般には用いられています。先ほどの望ましい割合1:2:5が、現在はほぼ1:2:4になっていて、糖質の摂取割合が少なくなっていることが分かりますね。
 ただ、このようなエネルギーバランスの話をしておりますと「糖質をそんなにたくさん摂っても良いのですか?」という質問をされることがあります。糖質といえば甘い物と思い込んでおられる方もあるようですので、まず言葉の定義をハッキリさせておきたいと思います。

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糖質≠砂糖(スライド4)

スライド4
スライド4
 炭水化物はスライド4のように大切なエネルギー源である糖質と、ほとんどエネルギー源にはならない繊維に大別されます。糖質は単糖類、少糖類、多糖類に分けられます。
 果物や蜂蜜に含まれるブドウ糖、果糖、ガラクトースなどの単糖類、そして砂糖の主成分ショ糖、牛乳の乳糖、水の麦芽糖などの2糖類、ショ糖に果糖が1〜3分子結合してできた3糖類あるいは4糖類のオリゴ糖などの少糖類には甘みが有ります。
 しかし、多糖類は多数のブドウ糖が結合してできた糖質で、穀物のでん粉や筋肉や肝臓に含まれるグリコーゲンですから、そのままでは消化されませんし、甘みもありません。
 したがって、糖質というのは、エネルギー源になる炭水化物のことで、甘さとは関係がありません。

糖質・砂糖の構造(スライド5)

スライド5
スライド5
 スライド5は、糖質の構造を示したものですが、多糖類はこのように亀の甲のようにみえる、このブドウ糖が多数つながってできたものです。
 日本人の場合は主食の位置付けがハッキリしていますので、糖質の多くはこの多糖類であるでん粉を主成分とする、ご飯・パン・麺等の穀類や芋類から摂っています。なお、でん粉には直鎖状のアミロースと枝分かれのあるアミロペクチンの2種類がありまして、消化酵素のアミラーゼによって、ブドウ糖にまで分解されて消化吸収されます。しかし、生でん粉の状態では消化液が滲入できませんので、穀物には水分と熱を加えて、芋類には水分がありますので加熱をして、糊化してから食べなければ、非常に消化吸収が悪いわけです。
 一方、砂糖の主成分であるショ糖はこのようにブドウ糖と果糖が結合した2糖類ですので、そのまま食べても、また乳幼児から老人まで年齢に関係なく、そのほとんどが非常に効率良く吸収されます。小腸から吸収され、ブドウ糖と果糖に加水分解された後、血中を流れて生体エネルギーとして利用され、一部は肝臓でグリコーゲンとして合成され、蓄えられます。
 もちろん、糖質も必要以上に食べすぎれば、皮下脂肪になってしまいますので要注意なのですが、スポーツ選手や成長期の子供のようにエンジンが大きければ、むしろ十分量の糖質補給が必要になってきます。

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野球選手の消費エネルギー(スライド6)

スライド6
スライド6
 スライド6は野球選手の場合ですが、1日の生活行動からエネルギー消費量を推計しました。ナイターの場合で、投手はほぼ4,100kcal、野手は3,400kcalです。もちろん試合に出ない場合はこれより少なくなりますし、トレーニング量が多くなれば、エネルギー消費はもっと多くなります。

競技別トレーニング期間中の消費エネルギー(スライド7)

スライド7
スライド7
 スライド7は野球だけでなく、競輪やトライアスロン、あるいは女子マラソンについて、競技期間外のトレーニング期間中の生活行動と消費エネルギーを示しています。オリンピックレベルの競輪の選手などは、基礎体力づくりに大変熱心で、トレーニングと食事、睡眠が非常にタイムリーに組み立てられています。トレーニング後には十分な栄養補給をしてから睡眠をとる、ということを昼・夜行っていますので、睡眠時間を8時間はとっていても、消費エネルギーは4,500kcal以上になります。実業団の陸上選手の場合は女性で、基礎代謝量が男性に比べて低いことと昼間は普通の仕事をしているなどの理由で平均すると3,150kcal程度でした。

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プロ球団寮の食事(スライド8)

スライド8
スライド8
 スライド8は、ダイエーホークス球団寮の食事の一例です。試合やトレーニングの間、あるいは直前直後には食事ができませんので、1日4,000kcalを摂取するために朝食は必須で、ご飯かパンと、卵料理に肉か魚、野菜サラダに具だくさんのみそ汁、果物あるいは天然果汁100%のジュースに、牛乳またはヨーグルトで1,000kcal程度になります。
 昼は練習や試合の間に慌ただしく食べなければなりませんが、脳の大切なエネルギー源を作るため血糖値を上げ、グリコーゲンを補充しなければ、頭も身体も正常に機能しなくなります。そこで、消化の良いエネルギー源である糖質中心の、食べやすいメニューが用意されています。麺類やおにぎり、菓子パン、それに果物やジュース、お茶類などです。
 試合や練習の後の夕食では、疲労回復と身体づくりのために、たんぱく質やミネラルを十分に含んだ栄養価の高い料理をおいしく摂ってもらわなければなりません。主食はご飯ですが、肉や魚介類を使った料理が2〜3皿、野菜料理も数皿並びますし、選択メニューが数種用意されることもあります。それに汁物と漬け物や果物。お茶や牛乳、ヨーグルトは自由に飲むことができます。
 さらに、夜間練習などでお腹が空くような選手には、別途おにぎりなどが用意される等、色々な配慮がなされています。
 ただ、それらを上手に組み合わせて適量食べるかどうかは、選手次第で、自己管理能力の問題ということになります。

平均摂取エネルギーバランス(スライド9)

スライド9
スライド9
 スライド9は、試合があった時と無かった時の、選手の実際の生活行動と食事内容を調査し、エネルギー消費量と摂取量を比較したものです。試合が無かった時のエネルギー消費量と摂取量は3,000kcal前後で、摂取量が若干少ない程度ですが、試合があった時の消費量は約4,100kcalであるのに対して、2,500kcal程度しか摂取されていません。
 これでは、当然スタミナ不足になりますし、体重も減るはずですが、健診結果はそうではありません。しかも、ガソリンがなくては車は走らないわけで、当然身体を動かすためには何らかの手段でエネルギー補充をしているはずです。食事調査の盲点でもあり、本人も自覚せずに飲んだり食べたりしている物があります。それは、ほとんどが糖質中心の飲み物やお菓子などで、結構帳尻を合わせている、合わせることができていると言えそうです。

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飲料からの摂取栄養(スライド10)

スライド10
スライド10
 スライド10は、1997年度と1998年度のプロ野球選手の飲料調査結果ですが、飲料は1日当たり平均3.8リットル飲まれており、エネルギーも平均760kcal摂られていることが分かりました。またホークスの場合は、単に甘いだけの飲み物ではなく、栄養補給を目的にした飲料などを必要に応じて選手に提供していますので、たんぱく質やカルシウム、ビタミン類もかなり飲料から補給されています。
 ただ、屋内よりも屋外の方が、また若手はベテランよりも飲料摂取の量が多いという傾向がありますし、個々の選手についてみてみますと、飲料の種類や飲み方は様々です。2リットル弱しか飲んでいない選手もいれば、7リットル近く飲んでいる選手もいますし、水やお茶が中心の選手、栄養補給を心がけている選手、糖質系飲料の多い選手、試合後のアルコール飲料摂取が多い選手等々です。

水分補給の効果(スライド11)

スライド11
スライド11
 運動をしますとエネルギー代謝が活発になり体温が上昇しますので、体表面から熱を放散させて体温が上がりすぎないようにしなければなりません。特に高温多湿の日本の梅雨や夏の運動では、冷却水としての水分の補給が非常に重要です。
 長時間水分を補給せずに運動を続けますと、スライド11のように次第に体温が上昇していきます。体温の上昇は、持久力、パーフォーマンスを低下させ、精神的ストレス、疲労感を強めて競技力を低下させます。一方、水分の補給は体温の上昇を抑制して持久力を高め、特に糖分を含んだ水分を摂取した場合はその効果が大きいことが報告されています。

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糖質飲料補給の効果(スライド12)

 運動に使われるエネルギー源は主に糖質と脂質で、脂質は皮下脂肪として体にたくさん蓄えられているのですが、脂質は脳や神経のエネルギー源にはなりませんし、脂質を燃やしてエネルギーにするためには糖質が必要です。したがって、血糖値が下がり、グリコーゲンが枯渇してしまった状態は、ガソリンタンクが空になったことを意味し、運動の持続が不可能になります。
スライド12
スライド12
 運動時に糖分を含んだ水分を補給しますと、スライド12のように血糖値が一定に保たれますので、集中力や注意力、状況判断力の低下を防ぐことができます。また、運動に必要なエネルギー源が常に確保できる状況になりますので、パーフォーマンスが向上し、疲労し難くなるのではないかと考えられます。
 さらに、試合や練習が終わった後は、その日の試合や練習で消耗したエネルギー源を補給して、翌日に備えなければなりません。
 運動直後はこのように筋肉グリコーゲンが非常に少なくなっていますので、グリコーゲンを回復させておかなければならないわけですが、糖質投与のタイミングによってグリコーゲンの回復に違いがあることが報告されています。運動直後30分以内の投与が、明らかに回復効果が大きいですから、運動直後に消化吸収の良い糖質、すなわち砂糖のような糖質を摂取するのが、グリコーゲン回復に有効だということになります。

試合当日の食べ方(スライド13)

スライド13
スライド13
 試合の前にはスライド13のようにエネルギー源、特にグリコーゲンをしっかり蓄積させておくこと、そして競技中は水分と糖質の補給を欠かさないこと、試合の直後には必ず糖質を補給するというように、スポーツマンのコンディショニングにとって、消化吸収の良い炭水化物である糖質、砂糖や果糖、ブドウ糖は非常に大切な食品だということがお分かり頂けたのではないでしょうか。
 このことは、代謝の活発な成長期の子供についても同様に言えることで、特に遊んだり運動をしたり、長く食事ができないような時の糖質は、とても大切なエネルギー源なのです。ですから、「甘い物はダメよ」などと言わないで下さい。

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事故の発生を防止する糖(スライド14)

スライド14
スライド14
 また、糖質は脳や神経の唯一のエネルギー源ですから、ブドウ糖を食べると、脳が活性化されると言われています。
 スライド14は、自動車のスピードの出しすぎによる事故の発生率が、ブドウ糖を摂取することでどの程度防げるか、というkeu1等の模擬実験の結果です。ブドウ糖の摂取が事故の発生を有効に防止することが一目瞭然で、ブドウ糖の摂取が注意力や集中力を増しているということの裏付けになっています。また、脳波の変化を調べた実験からも、ブドウ糖の摂取が脳の覚醒状態と注意力を高めることが確かめられています。

身体においしい砂糖(スライド15)

スライド15
スライド15
 そこで、私たちの身体にとって、砂糖が何故おいしくて大切な食品であるのかをまとめてみたいと思います〈スライド15〉。
 まず、嗜好性に関しては、数%の甘みから100%の甘みまで、広く好まれる安定した甘みで、飲食物をおいしくしてくれますので、性・年齢・人種を問わず多くの人に、喜んで摂取されている食品です。
 次に食物の前提条件である安全性に関しては、砂糖がどのようにして作られているかをご覧になってお分かりいただけたことと思います。砂糖は天然のものであり不純物が無く、腐敗や酸化の心配もなく安定した品質の食品です。
 栄養性に関しては、今までスポーツ選手を例に挙げてお話してまいりましたように、消化吸収が非常に良い、即効性のエネルギー源であり、脳・神経系の唯一のエネルギー源で、体脂肪の燃焼を促すという意味でも、栄養的意義の大きい食品です。
 さらに、機能性に関して、ある種の病気に対する予防というわけではありませんが、砂糖の甘みは幸福感や満足感を感じさせ、人に安らぎを与えてくれますので、ストレス解消に有効な食品です。

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食物においしい砂糖(スライド16)

スライド16
スライド16
 次に、食物にとって、砂糖が何故おいしくて大切な食品であるのかをまとめてみたいと思います〈スライド16〉。
 まず、全ての人に好まれる甘みを持っていることです。ほんのわずかに隠し味として使っても、塩味や酸味、苦みを丸くしてくれますし、適量の使用が嗜好性を高めてくれます。
 もう1つの大きな特徴は、ビデオでも紹介されましたように、水に非常によく溶けることです。その結果、ジャムや砂糖菓子のように、食品の水分活性が低下して微生物が繁殖できなくなりますので、微生物による腐敗や変敗を防ぐことができます。また、酸素も入りにくいために、酸化が抑えられて、ビスケットやクッキーなどの脂肪酸の酸化が防止されます。さらに、食品中の水分を適度に保持してくれますので、乾燥を防ぎ、でん粉の老化が抑えられて、パンやカステラはいつまでもフワッとしていますし、餅菓子や羊羹は硬くなりません。また、きんとんや寿司めしのように、食品の表面に皮膜を作って、艶やしっとり感を保ってくれます。
 また、砂糖をたんぱく質やアミノ酸と一緒に焼きます褐変反応が起こり、綺麗な焼き色や香ばしい香りがつきます。ジャムやマーマレードのように、果物や野菜のペクチンに砂糖が加わることによってゲルが形成されます。また、パン酵母の発酵を促進させてフワッとした口当たりの良いパンにしたり、シャンパン酵母の発酵を促進させたりします。さらに、砂糖溶液を加熱して煮詰めていくと、沸点が次第に上昇していき、砂糖溶液の性質も変化していきます。105℃くらいまでは透明のシロップで冷めても結晶が出ませんが、120℃くらいまで煮詰めて冷ましてからかき混ぜますと、白く綺麗な結晶ができ、フォンダンや砂糖衣になります。さらに煮詰めて150℃くらいになりますと砂糖溶液が少し色付き始め、糸を引くようになってになり、さらに煮詰めると褐色の香ばしいカラメルになるわけです。また、一方で砂糖の添加により凍結温度が下がり、アイスクリームやシャーベットの氷の結晶をきめ細かいクリーム状にすることができます。
 このように、砂糖は単に甘いだけではなく、他の食品にはない独特の調理性がありますので、お菓子や加工食品などには欠かせない食品なのです。

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生活に潤いを与える砂糖

 ということで、砂糖の好ましい甘みと、色々な調理性を利用した様々な飲み物や食べ物を、私達は楽しみに、おいしく頂いています。
 こうして見ているだけでも、欲しくなりますし、幸せな気分になって参ります。限られた人生、やはりおいしい物を食べて楽しい人生をすごしたいですね。

エネルギーバランスの要因(スライド17)

スライド17
スライド17
 しかし、砂糖はおいしくて口当たりが良いために、ついつい食べすぎてしまうことが最大の問題です。砂糖は肥満の大敵のように言われるのもそのためですが、体重が増えるかどうかは、摂取される量と消費される量のバランスで決まるわけで、砂糖だけが原因ではありません。むしろ、砂糖1gは4kcalで、それだけであれば、脂肪の半分のエネルギーなのです。
 エネルギーバランスの要因をスライド17に示しますが、摂取量を減らすよりも、基礎代謝量、先ほどのスライド1の車の図で説明しましたエンジンに当たりますが、これをできるだけ大きくし、運動量も多くして消費量を増やして、食べたい物を我慢せずに食べられるようにすれば良いわけです。食べたい物を食べるために動く、動いたら食べる、食べすぎたら動けば良いことです。なお、この基礎代謝量は中年以降、加齢に伴って低下しますので、それをできるだけ抑えるためにも、ダンベルなどで身体を鍛えて筋肉量が減らないように、またウオーキングなどをして筋肉の活性が低下しないようにすることも大切なことです。

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活き活きと生きるには(スライド18)

スライド18
スライド18
 健康づくりの3本柱は、スライド18のように「運動」「栄養」「休養」と言われますが、人生80年あるいは100年を活き活きと生きるためには、「よりよく動き」その分だけ「よりよく食べ」「よりよく休み」、この3角形をできるだけ大きくして豊かな人生を送りたいものです。

食事はタイムリーにバランス良く(スライド19)

スライド19
スライド19
 そして、スライド19のように何より生体リズムと生活リズムを考えて、上手に食べることが大切です。砂糖を食べると太るとか、虫歯になると言われますが、何でも食べすぎれば太りますし、だらだら食べ続ければ虫歯になるわけで、砂糖が悪いのではなく食べ方が問題なのです。
 朝起きた時には体温も血糖値も下がっていますので、頭と身体のウオームアップには朝食が欠かせません。その朝食がきちんと摂れない場合は、甘いお菓子例えばチョコレートケーキなどを食べれば、血糖値も体温も上がって、大切なエネルギー源になってくれます。しかし、チョコレートケーキを夕食、特に夜遅い時間に食べると、やはり大きな肥満源になってしまいます。体成分の合成は夜寝ている間が最も活発ですので、寝る前の糖質と脂質の摂りすぎはそのまま皮下脂肪の蓄積になってしまいます。同じ甘い物でも摂るタイミングによって、良くも悪くもなってしまうことを知って賢く摂りたいものです。

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体重(体脂肪)を目安に健康管理

 量の過不足は、最終的に体重の変動に表れます。ただし、測る時間によって体重は変動しますので(例えば食後に測れば食べた分だけ体重が重くなるように)、体重が最も安定している「起床排尿直後」の体重がほとんど変わらないようであれば、適量食べていると考えることができます。ただ、運動量も食べる量も少なくてバランスがとれている場合には、筋肉が減って体脂肪が増える可能性がありますので、体重と同時に体脂肪率を測定することによって、消費量と摂取量の適、不適を判断していただきたいと思います。

栄養・休養・トレーニング

 ダイエーホークスの選手は、トレーニングと栄養、休養をタイミング良くバランス良く組み合わせて基礎体力づくりをし、優れたスポーツセンスと素質を活かして実力が発揮できた結果、「優勝」があったのだと思います。
 私たちも栄養・休養・運動を上手にとることで、これからの超高齢化社会を生き抜き、人生における「優勝」を勝ちとりたいと思います。皆さん頑張りましょう。

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「今月の視点」 
2000年1月 
身体と食物においしい砂糖
  福岡女子大学人間環境学部助教授
  福岡ダイエーホークス栄養アドバイザー 医学博士 早渕仁美

料理と砂糖
  (社)日本料理研究会師範 築地「紫水」料理長 長島 博
てん菜生産の優良事例 その2
  北海道てん菜協会 技術部長 菅原寿一

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