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砂糖の価格安定等に関する法律及び農畜産業振興事業団法の一部を改正する法律案について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報


今月の視点
[2000年5月]
農林水産省食品流通局砂糖類課


I. 背景及び趣旨
II. 改正法案の概要
 1.砂糖の価格安定等に関する法律の改正
   (1)国内糖価の引下げによる砂糖需要の維持・増大
   (2)甘味資源作物・国内産糖の助成方式の改善
   (3)安定上下限価格制度の廃止  (4)その他
 2.農畜産業振興事業団法の改正
   (1)目的規定の改正  (2)業務の範囲の変更  (3)業務の特例
 3.施行期日等


I.背景及び趣旨

(1) 近年、国際糖価が低位安定している中で、消費者・ユーザーからの内外価格差の縮小に対する要請の強まり、砂糖需要の減少に伴う国内産糖の価格支持財源を負担する輸入粗糖の減少等により、現行の糖価安定制度の円滑な運用が困難となっている。
(2) こうした状況に対応して、
a.砂糖の卸売価格の引下げ(当面△20円/kg程度。中長期的には△30円/kg程度を目指す)による砂糖需要の維持・増大を目指して、必要な措置を講ずる。
b.消費者・ユーザーに対して、合理的な価格で安定的に砂糖を供給する。
c.輸入糖と国内産糖の適切な価格調整を行うとともに、市場原理の円滑な活用を図りつつ、甘味資源作物生産者の経営安定及び砂糖製造事業の健全な発展を図る
ことが必要である。
(3) このため、昨年9月に策定した「新たな砂糖・甘味資源作物政策大綱」に即して、以下のような制度改正を行うものである。 

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II.改正法案の概要

1. 砂糖の価格安定等に関する法律の改正

(1) 国内糖価の引下げによる砂糖需要の維持・増大
 砂糖については、消費者の低甘味嗜好や砂糖に対する誤解、加糖調製品や菓子等の製品の輸入等に伴って、その需要は減少している。
 このため、糖価安定資金を引き継ぐ砂糖生産振興資金を財源として、輸入糖調整金の 時限的引下げを行うとともに、精製糖企業・国産糖企業の再編・合理化対策、甘味資源作物生産のコスト低減対策等を講ずることにより、国内糖価を引き下げ、砂糖需要の維持・増大を図る。
 特に、砂糖の価格について、
a.粗糖関税の撤廃(△7円/kg程度の効果、本年4月より関税定率法の改正により措置)
b.輸入糖調整金の時限的引下げ(平成12年10月から平成15年9月までの3年間、調整金単価を10円/kg引き下げるとともに、国内産糖交付金の交付の業務に必要な経費のうち、この減額に伴い必要となる経費に充てる場合に砂糖生産振興資金を使用できることとする)
等により、当面20円/kg程度の引下げを実施することとしている。

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(2) 甘味資源作物・国内産糖の助成方式の改善
ア 甘味資源作物
 甘味資源作物の生産者価格については、これまでどおり、国産糖企業が甘味資源作物を買い入れるに当たって最低生産者価格制度(すなわち、最低生産者価格を下らない価格で買い入れられた甘味資源作物を原料として製造された国内産糖について助成措置を講ずる仕組み)を維持することとしている。
 最低生産者価格の算定については、これまでは、農業パリティ指数(農家が農業経営及び家計に関して購入する物財及びサービスの価格指数であり、農家をめぐる諸物価の推移を総合的に示すもの)に基づき算出される価格を基準とし、物価その他の経済事情を参酌し、甘味資源作物の再生産を確保することを旨として定めるものとされてきたところである。
 しかしながら、このように家計費も含め物価の動向を総合的に反映させる算定方式では、てん菜糖、甘しゃ糖を取り巻く需給状況やてん菜・さとうきびの生産動向を的確に生産者に伝達することが困難であるとの問題がある。
 このため、今般、最低生産者価格については、農業パリティ指数を基準とした算定方式を改め、甘味資源作物の生産費その他の生産条件、砂糖の需給事情及び物価その他の経済事情を参酌し、甘味資源作物の再生産を図ることを旨として算定することとする。
 なお、制度の運用に当たっては、
    (国産糖価格の変動率×0.5+
     生産コスト等の変動率×0.5)
とするが、 生産者の所得と再生産を確保するため、
a.前年産価格は、基準糖度帯における最低生産者価格と農家に直接交付されている対策費相当を加えた額とし、現行の農家手取額とする
b.国内産糖価格の変動率と生産コスト等の変動率の算定に当たっては、移動3年平均を用いることにより変動を緩和するとともに、為替や輸入糖価格の変動といった外的な変動要因を除いて算定する
c.さとうきびについては、家族労働費が生産費の大きな部分を占めているという実を考慮して算定する
d.算定の状況によっては、激変緩和措置を講じることができる
こととしている。
 また、最低生産者価格の告示期日については、毎年秋に当年産の価格を定めて告示してきたところであるが、農業者の合理的な経営判断や営農計画の策定が可能となるよう、告示期限を1年前倒しし、毎年秋に翌年産の価格を決定するように改めることとする(これに伴い、平成12年においては、2カ年分(平成12年産及び13年産)の甘味資源作物の最低生産者価格を決定することとなる)。
 
イ 国内産糖
 これまで、国内産糖に対する助成は、事業団による売買を通じて行われてきたが、この方式の下では、国が一律的に事業団買入価格及び売戻価格を定めることから、
a.国産糖企業の主体的なコスト削減に向けてのインセンティブが働き難い状況にある
b.行政価格としての売戻価格を基準として国内産糖の価格水準が一律的に形成され、需 給状況が反映されない状況にあるといった問題が生じている。
 このため、現行の事業団買入れ・売戻しの仕組みを改め、砂糖年度ごとに一定の交付金単価を決定し、これに製造量を乗じた額を事業団から国産糖企業に交付する方式に移行することとする。
 この場合、制度の運用に当たっては、現行の事業団買入価格を基に、原料買入価格の変動率や国産糖集荷製造経費の変動率を乗じ、前砂糖年度の国内産糖の価格を控除して、交付金単価を算定することとする。
 なお、輸入糖価格や国内の砂糖価格の著しい変動等があった場合には、交付金単価を改定すること等により国産糖企業の経営安定に配慮することとしている。

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(3) 安定上下限価格制度の廃止
 現行制度においては、国際糖価が著しく高騰低落を繰り返すことを前提としており、輸入に係る砂糖の価格を適正な水準に安定させるための指標として、安定上下限価格(平均輸入価格が安定下限価格を下回った場合に糖価安定資金として積み立てて、安定上限価格を上回った場合に取り崩す指標)を定めている。
 しかしながら、近年においては、砂糖の貿易量の増加、品種改良、栽培技術、インフラの発展による生産の安定化・増大、期末在庫量の増加(在庫率5割弱)等により、国際糖価が著しい高騰低落を繰り返すという事態は想定し難くなっている。
 加えて、国際糖価が低位安定している状況の下では、安定下限価格は国内糖価の引下げの支障となっている(平均輸入価格は安定下限価格を割り込みやすくなっているが、平均輸入価格が安定下限価格を下回った場合においても、国内糖価は安定下限価格見合の価格より下がらない仕組みとなっている)。
 このため、砂糖をめぐる情勢の変化を踏まえ、安定上下限価格制度によって砂糖の価格の安定を図ることは廃止することとする。
 なお、輸入糖と国内産糖の価格調整については、内外価格差の状況にかんがみ、国内産糖製造事業及び甘味資源作物生産の維持・育成を図るため、今後とも継続することとしている。
 また、輸入糖価が著しく高騰した場合には、事業団の業務の一環として、砂糖生産振興資金を財源とした価格引下げ対策を講じられるようにしている。

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(4) その他
ア 国内産ぶどう糖の価格支持の廃止
 法制定時のぶどう糖は、
a.国内産いもでん粉の主要な用途先となっていたこと
b.その用途において砂糖と強い競合関係にあったこと
から、国内産ぶどう糖及び国内産いもでん粉の需要の確保を通じ、でん粉原料用甘しょ・馬鈴しょ生産農家の農業所得の確保を図ることを目的として、必要に応じて国内産ぶどう糖の価格支持を行うこととしていた。
 しかしながら、現在、ぶどう糖については、
a.国内産いもでん粉は、輸入とうもろこしとの抱き合わせ制度により、いも作農家の所得確保が図られていること
b.したがって、価格支持の対象となる国内産ぶどう糖(国内産いもでん粉のみを原料としたぶどう糖)の製造は皆無となっていること
c.その用途は、医薬品用(点滴等)、ガム用等の特殊用途へ移行し、砂糖との競合関係は希薄なものとなっていること
等の状況にあることから、今回、国内産ぶどう糖の価格支持制度を廃止するものである。

イ 題名及び目的規定の改正
 今回の改正により、安定上下限価格制度を廃止し、一定の範囲内に砂糖の価格を安定させることがなくなったことから、法律の題名及び目的規定から「砂糖の価格安定」という語を削る必要がある。他方、改正後においても、法律の基本的な枠組みとして、輸入糖に対する調整金の徴収とそれを財源とする国内産糖への交付金の交付による輸入糖と国内産糖との価格調整を行うこととしている。
 このことから、改正後の題名については、制度の内容及び機能を端的に表すものとして、「砂糖の価格調整に関する法律」とするものである。
 また、今回の糖価安定法の改正においては、
a.糖価の引下げの制約となっている安定上下限価格制度を廃止すること。
b.国内産ぶどう糖の価格支持を廃止すること。
c.国内産糖について農畜産業振興事業団の買入れ及び売戻しの方式を交付金を交付する方式に改めること
等を行うこととしている。
 これに応じて、事業団法の目的規定について、「砂糖の価格の安定」、「砂糖の価格の異常な変動を防止するための措置」及び国内産ぶどう糖の価格支持を除外し、また、国内産糖の価格支持を「交付金の交付」に改めるものである。
 なお、国内産糖に対する事業団売買を廃止し、国内産糖交付金を交付する方式に改めるが、輸入糖と国内産糖との価格調整を行うこととしており、この砂糖の価格調整は、砂糖の大幅な内外価格差を緩和し、国内産糖に係る関連産業の中でも、特に国内産糖の製造事業の経営の安定を図ることを目的としていることから、その旨が明らかになるよう目的規定を改正する。

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2. 農畜産業振興事業団法の改正

 上記の砂糖の価格安定等に関する法律(以下「糖価安定法」という。)の改正に併せて、農畜産業振興事業団法(以下「事業団法」という。)についても、次のような改正を行う。
 
(1) 目的規定の改正
 現行の事業団法においては、目的規定において、「主要な畜産物及び砂糖について、その生産条件、需給事情等からみて適正な水準における価格の安定に必要な業務を行う」と規定し、現行糖価安定法の規定に基づき「砂糖の価格の安定」のために行われる業務が、事業団の中核的業務であることを明確にしている。
 事業団については、糖価安定法の改正により、「砂糖の価格の安定」のための業務は行われなくなり、「砂糖の価格調整」に関する業務を主として行うこととなることから、改正後の事業団法の目的規定をそれに応じて改正するものである。

(2) 業務の範囲の変更
 現行の事業団法においては、糖価安定法の規定により、
a.輸入に係る指定糖の買入れ及び売戻し
b.異性化糖等の買入れ及び売戻し
c.国内産糖及び国内産ぶどう糖の買入れ及び売戻し
の業務を行うことが規定されている。
 新たな「砂糖の価格調整に関する法律」においては、
a.国内産糖については、事業団の買入れ及び売戻しの方式を廃止し、事業団が交付金を交付する方式に改めることとしており、
b.また、 国内産ぶどう糖の買入れ及び売戻しを廃止することとしている。
 これに応じて、事業団の業務規定のうち、「国内産糖及び国内産ぶどう糖の買入れ及び売戻しを行うこと」を「国内産糖についての交付金の交付を行うこと」に改めるものである。

(3) 業務の特例
 事業団は、改正後の事業団法本則において、
a.輸入糖及び異性化糖等の売買業務
b.国内産糖交付金の交付業務
c.砂糖及びその原料作物の生産及び流通に関する情報の収集・整理・提供業務 を行うこととされているところである。
 今回の法改正が国内糖価の引下げによる砂糖需要の維持・増大を通じた国内糖価の引下げを目的とするものであることから、事業団の業務についても、本則に掲げる業務のほか、砂糖及びその原料作物の生産の振興を図るための事業に対する補助、出資等の業務を行うことができるようにして、もって国内糖価の引下げを図ろうとするものである。
 具体的には、事業団は、砂糖又はてん菜若しくはさとうきびの生産又は流通の合理化を図るための事業その他砂糖及びその原料作物の生産の振興に資するための事業で農林水産省令で定めるものについてその経費を補助し又は当該事業に出資する業務及びこれに附帯する業務を行うことができるものとする。(砂糖消費拡大事業、輸入糖価高騰時の価格引下げ対策等に係る業務も当該業務に含まれる。)
 また、事業団の業務に関連して、砂糖生産振興資金については、
a.上記の補助、出資等の事業に充てる場合
b.前事業年度の砂糖生産振興資金の運用益の範囲内における、砂糖及びその原料作物の生産及び流通に関する情報の収集・整理・提供の業務に充てる場合
c.平成12年10月からの3年間において、国内産糖交付金の交付の業務に必要な経費のうち、輸入糖調整金を減額することに伴い必要となる経費に充てる場合
に使用できることとしている。

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施行期日等

 本改正法の施行期日については、改正法全般は、新たな砂糖年度の開始時期である平成12年10月1日から施行するものである。
 なお、輸入糖の価格調整等に係る諸指標の告示等の諸手続については、改正法施行前に行う。

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2000年5月 
砂糖の価格安定等に関する法律及び農畜産業
振興事業団法の一部を改正する法律案について

  農林水産省食品流通局砂糖類課
日本人の食と健康
  山梨医科大学第一保健学教室教授 佐藤章夫
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  全日本漬物協同組合顧問 農学博士 小川敏男

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