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砂糖への疑惑の払拭

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報


今月の視点
[2000年8月]
 平成12年2月9日(水)に千葉市文化センターにおいて、当事業団が開催しました「砂糖と食文化セミナー2000」における砂糖を科学する会常任理事でもいらっしゃる橋本仁農学博士の講演内容を紹介するものです。
 砂糖(甘いもの)に対しては、砂糖を食べると太るのではないか、糖尿病になるのではないか、砂糖はカルシウムを奪う等々、様々な誤解が根強く残っています。こうした誤解を払拭するため、栄養学の立場から実験結果や公的機関の発表など交え講演していただきました。

株式会社横浜国際バイオ研究所
代表取締役社長 橋本 仁


はじめに  食べ物信仰
砂糖に関する説・その1(砂糖を摂りすぎるとキレるか?)
砂糖に関する説・その2(砂糖を摂ると骨のカルシウムが溶けるか?)
砂糖に関する説・その3(砂糖を摂りすぎると太るか?)
糖尿病と糖質  砂糖の消費動向
あなたの脳に砂糖は足りていますか?  米国連邦食品医薬局(FDA)
国連食糧農業機関/世界保健機関(FAO/WHO)


はじめに

 本日は、「砂糖への疑惑の払拭」というお話をさせていただきたいと思っております。
 現在は飽食の時代と言われ、食べ物が豊富な時代となりました。それとともに情報量も非常に豊かになってまいりました。健康と食生活とのつながりが、現在の関心事になっているものと思われます。しかし、その橋渡しをする人が少ないことから、皆様は様々な迷いが生じているのではないでしょうか。本日は、砂糖に対する科学的な見方をご紹介したいと思います。

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食べ物信仰

 砂糖が糖尿病の原因だとか、砂糖が行動多動の原因とか、カルシウムを破壊するとか、様々な俗説が巷に広まっています。どうしてこのように砂糖は悪者になったのでしょうか。
 世の中には、ある食べ物や食品成分をあたかも万能薬のように語りたがる風潮がある反面、別の食べ物をあたかも何の価値もないもの、摂取すべきでないものと考えたがる風潮があります。
「それを食べれば健康が保証される」とか「それを食べると健康を損なう」という思い込みは、食べ物本来の機能や役割を越えた期待や危惧であり「食べ物信仰」とでもいうような状況が現在作られています。
 しかし、食べ物そのものに問題があるのではなく、食べ方に問題がある場合が多いのです。
 もう1つの要因は皆様が健康志向を持っており、食と健康の関わりに非常に関心があるということです。現代人は漠然とした健康への不安があります。それと食品の選択を含めて食べ方への迷いがその根底にあります。食べ物と健康の関わりに関心を寄せる人々の中には、特定の食品や食品成分を害悪視したり、逆にある種の食品や栄養素の有効性を信じて大量摂取したりする傾向がみられます。
 砂糖についても、あれは悪い食品だ、砂糖は悪い、甘いものは悪いという説がまかり通っているのではないかと思います。それでは、砂糖に関する「説」を具体的に紹介してみましょう。

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砂糖に関する説・その1(砂糖を摂りすぎるとキレるか?)

 1998年1月28日栃木県黒磯市で、中学校の女性教諭が男子生徒にナイフで刺殺された事件がありました。
 事件の解説記事の見出しは、「キレる、いじめ−食生活に原因」、「食に関する教育の周知徹底を」、「砂糖の摂りすぎが心を不安定に」となっており、本文中に、某教授のコメントがあって「『栃木県の女性教師刺殺事件が起こった時、生徒がキレた状況は砂糖を大量に摂ったときの症状と似ているなと思った』 砂糖を大量に摂ると、体内でインシュリンが大量に分泌され、血糖値が下がりすぎ、いらいらしたり暴力行為を起こしたりする。子供たちの心が不安定な原因の1つは砂糖の摂りすぎにあると某教授は考えている。」と書かれていました。
 砂糖の摂りすぎによって低血糖が起きるということは、世界的にも科学的に否定されていることです。しかし、そうした記事が出ましたので、改めて「砂糖を科学する会」のメンバーである山梨医科大学の佐藤章夫教授にヒトを使った検証をお願いしました。学生に1回75gの砂糖を1日4回食べさせ、血糖値を計測するというものです。これは1日当たり300g、日本人の平均摂取量の6倍という高い水準ですが、それでも低血糖にはならないことが証明されています。
 さらに、浜松医科大学の高田明和教授は子供の脳には糖分が不可欠であり、脳内のドーパミンやセロトニンが増えることによって精神は安定し楽しくなる。そして、こうした脳内物質を増やすためには、砂糖や肉が重要な役割を果たしているとおっしゃっています。

砂糖に関する説・その2(砂糖を摂ると骨のカルシウムが溶けるか?)

 他にも砂糖有害説があります。
 砂糖を科学する会のメンバ−で、群馬大学の高橋久仁子教授の調査によると、「砂糖の摂りすぎはカルシウムを奪い、骨を弱くする」という説が語られ、「砂糖をたくさん食べると、血液が酸性になる」、「牛乳に砂糖を入れると牛乳中のカルシウムが無駄(ダメ)になる」などが本当である、と思い込んでいる人が結構いるということです。
 この情報のネタ元を高橋教授は探してみました。栄養学の専門書には、どこにもこのような記載はありませんので御苦労なさったそうですが、ある大学教授が繰り返し一般向けの本のなかに書いている「砂糖はビタミンB1を含まないので、たくさん食べるとB1が不足し、ピルビン酸が増え、血液が酸性になる。これを中和しようとして骨のなかのカルシウムが血中に溶け出し、尿中に排出されてしまう。」というのが出所であると高橋教授は突き止められました。
 これは昭和10年代から、ある学者によって唱えられていた「酸性食品である砂糖を食べると、体の酸性化を防ぐために、カルシウムが中和の目的で消耗する。」という説を継承したものだそうです。それが「砂糖の脱カルシウム作用」として昭和50年代半ば、マスメディアにより大きく紹介され、全国的に広まったようです。
現在の栄養学では、人間の身体には本来血液を中性に保つ働きがあり、ある食品を食べたことによって酸性やアルカリ性になることはないとされています。また、砂糖は酸性食品ではありません。この2つのことからも、この説が科学的には誤ったものであることは明らかです。
 砂糖はブドウ糖と果糖が1つずつつながっている二糖類と言われる炭水化物です。一方、米やパンの成分であるでん粉はブドウ糖が数珠のようにつながった多糖類と言われる炭水化物です。砂糖は、小腸でシュクラーゼという酵素によってブドウ糖と果糖に分解され吸収されます。そして、果糖の大部分は体内(肝臓)でブドウ糖に変えられるのです。つまり、砂糖は体に入れば結局ブドウ糖になるのです。
 では、お米を食べて腸内に入ったでん粉はどうなるのでしょうか。これは小腸内のマルターゼ等の消化酵素でブドウ糖になるのです。これは腸から吸収されて体の中ではブドウ糖として存在するのですから、砂糖を食べても、お米を食べても、結局体の中ではブドウ糖になり、そのブドウ糖がもとは砂糖にあったのか、でん粉からきたのかの区別はできないのです。
 砂糖はカルシウムを溶かすという説について言えば、砂糖はブドウ糖になるわけですから、砂糖を食べても体の骨のカルシウムなどと一切反応はしません。

図1 でん粉の消化されていく過程
図1 でん粉の消化されていく過程

図2 砂糖の消化されていく過程
図2 砂糖の消化されていく過程

図3 糖質の摂取と肥満との相反する関係
(「British medical journal」誌 '95年より)
図3 糖質の摂取と肥満との相反する関係

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砂糖に関する説・その3(砂糖を摂りすぎると太るか?)

 皆様の中には砂糖を食べると太ると勘違いされている方がいらっしゃると思います。肥満は、エネルギ−の摂りすぎによって生じるものです。すなわち、運動で消費されるカロリーよりも、食べるカロリ−が多ければその分だけ太ります。それなのに、砂糖はカロリーの高い食品であるような錯覚をもっている人が大勢いらっしゃいますし、砂糖は肥満原因となる重要な役割を担っているという説が広まっているようです。
 しかしながら、砂糖のエネルギーは、他の糖質と同様に1g当たり4Kcalで特別に肥満になる要因はありません。
 疫学的研究でみれば、砂糖摂取と肥満は逆の相関を示しています。さらに、一国の食糧供給量における砂糖供給量の割合と肥満発生率とは何の関係もありません。北アメリカにおける肥満の最も大きな食事要因は、食事中の脂肪含量であり、その結果もたらされる高エネルギー食です。
 糖質と肥満に関する最近の研究では、砂糖を含めて糖質に富む食事よりも脂肪の豊富な食事の方が太りやすいというデ−タの方が優勢です。
 摂取された脂肪のエネルギーは1g当たり9Kcalで、糖質の4Kcalの2倍以上です。高脂肪、エネルギ−濃厚食品はエネルギ−の過剰摂取を促進します。
 これらの見解は、様々な国々における疫学的観察、すなわち糖質の消費と肥満との間に強い逆相関の関係があるという結果と一致しています。

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糖尿病と糖質

 糖尿病は、脳・心・腎血管傷害の基礎疾患として人間の健康に重大な関わりをもつ病態です。最近の日本における糖尿病患者は670万人とも言われ、さらに増加の傾向にあるようです。
 糖尿病の多い豊かな社会では、おしなべて穀物(糖質)の摂取量が少ないようです。また元来、糖質の摂取量の少ない欧米では、糖質の重要性に関する認識が極めて乏しいようです。総カロリ−の80%を糖質が占める高糖質食が糖尿病患者の血糖管理に有効であるという報告(英国の医者グル−プが1971年に発表したもの)が行われて久しいのですが、このような食事は欧米人の趣向に合わないという理由で相手にされませんでした。
 しかし、最近では、欧米でも糖質の重要性に関する認識に変化が認められるようになってきました。1992年になってやっと米国糖尿病協会は、糖尿病患者の治療食として高糖質食(ただし糖質は55〜60%)を勧告しています。しかし依然として、高糖質食の有用性に反対する意見も根強くあります。
 糖尿病の原因は、遺伝的な因子や運動不足、食べすぎなどから肥満になり、糖を体内に取り入れるために必要なインスリンの分泌障害を起こし、大変複雑なメカニズムで発病するわけですが、これらの肉体的要因のほかにストレスなどの精神的要素も大いに影響しているとのことです。興奮している時、不安があるとき、即ちストレスがある時には、肝臓から血中に糖を放出して血糖値が上がっているそうです。
つまり、砂糖などの糖質の摂取量が減る傾向にある日本において、糖尿病が増加している事実を考え合わせれば、脂質などの摂取量の増加や運動量の低下に加え、ストレスが大きな要因であると考えられます。
「糖尿病」、この言葉がよくないと思います。糖と言うと砂糖が原因物質のような印象を受けます。英語では diabetes mellitus 即ち、体の中のものが溶け出すという意味だそうです。
 漢字を使う中国では“消渇”と言われているそうで、2000年前の中医の本「黄帝内経」にすでにのっているそうです。

図4 日本人の栄養摂取量の年次推移
図4 日本人の栄養摂取量の年次推

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砂糖の消費動向

 日本では砂糖の消費量が年々減ってきています。昭和48年、49年、50年では、日本人は1人当たり年間約26kgの砂糖を食べていました。現在では18kgとなっております。政治的に安定していて、経済的にも裕福な国で砂糖消費量が年々減少しているのはまれな例です。旧ソビエト連邦に属していた国々でも砂糖の消費量が減ってきています。それらの国々では砂糖が欲しくてもお金がないから輸入できないのです。日本の場合と事情がちょっと違います。日本で砂糖の消費が減ってきた原因の1つは、消費者の甘味離れ、食べ物から甘みを遠ざけようという志向があります。
 個人でもできるだけコ−ヒ−にはお砂糖を使わないようにしよう、ケーキはちょっと遠慮しておこうというような考え方がありますし、企業というか食品メーカーでも、ノンシュガー(無糖)・ローシュガー(低糖)食品を作って、業績を伸ばしている会社もあります。
 その背景には、砂糖が肥満の原因である、糖尿病等の原因である、砂糖が子供の行動に悪い影響を与える、といった砂糖の効用・機能等に対する誤解、誤った認識による面もかなりあるものと思われます。

図5 日本人の栄養摂取量の年次推移
図5 日本人の栄養摂取量の年次推移

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あなたの脳に砂糖は足りていますか?

 しかし、砂糖は人間の身体にとって重要な役割を果たしています。ヒトの脳の重量は体重のわずか2%にすぎませんが、脳が消費するエネルギーは18%〜20%(約500Kcal)にもなります。しかも、脳はエネルギーとしてブドウ糖しか使用できません。脳はエネルギ−を蓄えることはできません。ですから常に、脳にブドウ糖を供給してやらねばならないのです。
 脳は24時間働いています。したがって、ヒトが生存するためには、脳が機能するためには、少なくとも1日120g程度のブドウ糖を摂らなければなりません。ブドウ糖を摂取しないと、貯めこんであった肝臓のグリコーゲンは12時間ほどで、底をついてしまいます。
 7時に夕食を摂り、朝目覚めた頃にはそろそろ脳に送るエネルギーであるブドウ糖が血中から不足する頃です。「朝食に砂糖を一杯」たいへん即効性のある脳へのエネルギー源となるわけです。血糖値が下がることは非常にこわいことです。ですから、一定の糖を血中に保っておく必要があります。
 唯一の脳のエネルギー源はブドウ糖ですが、「脳に砂糖が足りていますか」というコピー文章に対して、「何故砂糖なのだろう」と思われるかと思います。
 砂糖はどこにでも売っていますし、身近にあるものです。ブドウ糖は、近頃そう簡単に手に入りません。もっとも輸液としては手に入りますが、まさか点滴にたよるわけにはいきません。砂糖はどこでも手に入る脳へのエネルギー源なのです。

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米国連邦食品医薬局(FDA)

 さて、公的機関は砂糖についてどう見ているのでしょうか。
 FDA の砂糖特別調査班が1986年10月に「砂糖と健康」に関する報告書*1*2を発表しました。報告書では過去10年間の世界中の砂糖に関する科学的研究成果を調査・検証し、砂糖と低血糖症、並びに行動への悪影響(ハイパーアクティビティ)は科学的根拠のないものとして否定されており、虫歯の発生に関わる以外、砂糖と肥満・糖尿病・高血圧・心臓病を結びつける証拠はないと断言しています。

FDA(米国連邦食品医薬局)
「糖質系甘味料に含まれる糖質の健康面の評価」
1986年10月発表
「砂糖と健康」に関する過去10年間の
世界中の研究成果を調査、検証

<結果>
砂糖と肥満、糖尿病、高血圧、ハイパーアクティビティーや
心臓病に結びつける明確な証拠はない。

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国連食糧農業機関/世界保健機関(FAO/WHO)

 1986年に FDA が砂糖有害論を否定したにもかかわらず、世界の各地で相変わらず砂糖を悪者にした俗説がささやかれていたので、その後、各機関で次々に砂糖に関する検証が行われ、結果が報告されています。
 英国では1989年に上記 FDA と同様な結論の報告書*3が発表されました。
 国際生命科学協会(ILSI International Life Science Institute)も1994年にその時点での最新の砂糖に関する医学・栄養学面の科学的評価を行い、学会誌*4に発表しました。その中でも低血糖による子供の行動への悪影響を否定しています。
 1997年、FAO/WHO は精製された砂糖の摂取が、子供の行動や動作になんらかの重大な影響を与えるという主張に科学的な根拠はない、という報告書をまとめました。そして、逆に砂糖には記憶や睡眠を助け、食欲の調節に役立つなど、よい影響が認められると報告*5しました。
 日本では、すでに前述しました「砂糖を科学する会」が発足し、砂糖を正しく伝えるための活動が続けられています。


FAO(国連食糧農業機関)
WHO(世界保健機関)

1997年4月
「糖類(精製糖、その他の糖類)の消費が
糖尿病、肥満といった成人病(生活習慣病)に
直接結びつくことはない」と発表!

<参考文献>
*1 Evaluation of Health Aspects of Sugar Contained in Carbohydrate Sweeteners(1986年、米国における FDA Sugar Task Force の報告)
*2 季刊糖業資報(昭和61年度 第4号)訳:精糖工業会 鈴木幸枝
*3 Department of Health and Social Subjects 37. Dietary sugars and human disease.
*4 Effect of sugar on behavior and mental performance:J Wade White and Mark Wolraich:,American journal of clinical Nutrition 1995;62(supplement):242 s - 9s -
*5 Press Release 98/26FAO/WHO;April 5 1997

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「今月の視点」 
2000年8月 
砂糖への疑惑の払拭
  株式会社横浜国際バイオ研究所 代表取締役社長 橋本 仁
北海道におけるてん菜直播栽培について
  北海道立十勝農業試験場作物研究部 てん菜畑作園芸科研究職員 梶山 努

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