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砂糖に関するアンケート調査結果から

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最終更新日:2010年3月6日

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今月の視点
[2001年4月]

 今回、当事業団が栄養学系の短期大学生や全国の消費生活センターを訪れた一般消費者を対象に行った砂糖に関するアンケート調査結果をみると、4人に3人は甘いものが好きと答えており、若い世代になるほどその傾向は強いようです。また、砂糖と肥満、砂糖と虫歯等との健康に関することに関心が高く、ことに、肥満は摂取するカロリーと消費するカロリーのバランスの問題と承知していながら4人に1人が「砂糖は太る」という誤ったイメージを持っているようです。

群馬大学教育学部 教授 高橋 久仁子


1.はじめに   2.多くの人に好まれる「甘いもの」
3.砂糖摂取の「気になり度」と「減らすための工夫」 4.砂糖への関心は健康がらみ
5.砂糖に関する誤情報への見解 6. 「砂糖は太る」というイメージ
7.使用している砂糖の種類 8. 終わりに



 広く愛され、食生活上なくてはならない食品である砂糖が、いわれのない非難中傷にさらされている。これはいったい何なのだ、という疑問を感じて以来、約10年が経過した。この理由を知るために1992年から数度にわたって砂糖に関するウワサを人々がどのように信じているかについて調査してきたが、農畜産業振興事業団が昨年末に取りまとめた学生を含む一般消費者を対象とした砂糖に関する調査結果を読みながら、改めて砂糖が人々にどのように受け止められているかについて考えた。
 この調査の回答者は食物・栄養系の短期大学生および全国各地の消費生活センターを訪れた人であることから、食生活への関心は一般消費者よりもやや高いのではないかと思われる。また、回答者936人のうち、男性は一割弱の90人だけであるので、女性が大多数を占める調査であることをお含みいただきたい。




 和菓子やケーキなど、いわゆる「甘いもの」が多くの人々に好まれることは一般的に認められているが、本調査においてもそのことは確認された。「甘いものが好きですか」と尋ねたところ、「好き」と答えた人は74% (女性76%、男性58%) にのぼり、「嫌い」と断言した人はわずか2% (19人:女性1.5%、男性6.7%)にすぎなかった (図1)。男性の半数以上も「好き」と答えている。「甘いものを好むのは女・子ども」という今なお残る社会通念のようなものに縛られ、甘いものが好きであることを表明できない男性もいるが、性別に関わらず好まれる味であることを再確認したい。

図1 あなたは甘いものが好きですか
全体グラフ 男女別グラフ

 年代別に見ると、「好き」と答えた割合は10歳代及び20歳代では80%以上であるのに対し、30歳代・40歳代では70%台、50歳代以上では60%台であった (図2)。若年世代の方が甘いものが好きであると答える割合が高い。
 では、甘いものが好きな人は甘いものをよく食べるのであろうか。「あなたは甘いものをよく食べる方だと思いますか」という問いに対して「思う」人は全体の66%であったが、「甘いものが好き」と答えた人の85%が「思う」としている (図3)。「嫌い」と答えた19人は全員が「思わない」であり、「好きでも嫌いでもない」と答えた人の12%は「思う」と回答した。甘いものが好きな人は「甘いものをよく食べる方である」と自らを認識しているようである。

図2 あなたは甘いものが好きですか
(年代別)
図3 あなたは甘いものをよく食べる方だと思いますか
年代別グラフ グラフ

 好き・嫌いと食べる頻度は必ずしも一致しないが、甘いものに関しては、好きな人はよく食べる方である、と自認していることがうかがわれる結果であった。
 また、洋菓子類 (ケーキ、チョコレートなど) を食べる頻度は「ほとんど毎日食べる」という人が7%、週に4・5回の人が11%、週に2・3回の人が26%であった。週に1回くらいという人が30%であることを考えると、週に1回以上洋菓子類を食べる人は全体の74%にのぼる。和菓子類 (まんじゅう、ようかんなど) は洋菓子類より摂取頻度が少ないようである。甘いものに対する好き嫌いと摂取頻度の関係を見ていないのが残念である。




 甘いものといえばたいていの場合、砂糖が使われているが、砂糖の摂取量を気にしているか否かについて尋ねたところ、71%の人が「気にしている」と答えた。年代別の差はほとんど見られなかった。
 甘いものが「好き」と答えた人では73%が、「嫌い」な人でも68.4%が、また「好きでも嫌いでもない」人では65%が「気にしている」とした (図4-1)。甘いものが「嫌い」とした19人は全員が「甘いものをよく食べる方である」とは思っていないにも関わらず砂糖の摂取を気にするのは不思議な気もする。
 甘いものをよく食べる方であると「思う」人の74%、「思わない」人の65%が「気にしている」と答えているが、両者にさほど大きな差はない (図4-2)。よく食べる人もそうでない人も砂糖のことを気にはしながら甘いものを食べているということであろう。
図4-1 好き、嫌い別に見る砂糖の摂取量 図4-2 よく食べると思う、思わない別に見る砂糖の摂取量
砂糖の摂取量グラフ 砂糖の摂取量グラフ

 砂糖摂取に関して「気にしている」と答えた665人の「気になる理由」の最大の事柄は「肥満するのではないか」であり78%であった (図5)。次いで「糖尿病になるのではないか」に48%、「虫歯になるのではないか」に33%、「高脂血症になるのではないか」に19%の人が気になる理由として挙げており、具体的理由はないまま「何となく」という漠然とした不安も22%の人に見られた。
図5 「気にしている」方にお尋ねします。気になる理由は何ですか。
気になる理由グラフ

 砂糖摂取を特に「気にしていない」とした267人の「気にしない」最大の理由は「食べ過ぎなければ問題はない」であり、全体の57%であった (図6)。当然とも言える理由であるが、「あまり食べないから」をあげた人が13%いた。食べ過ぎなければ問題はないのであり、また、あまり食べなければ特に気にする必要もないわけである。砂糖摂取が気になる人はついつい食べすぎてしまうから、といえるのかもしれない。
図6 「気にしていない」方にお尋ねします。気にしない理由は何ですか。
気にしない理由グラフ

 砂糖の摂取量を減らすための工夫をしている人は全体の46% (427人) であった。「コーヒー、紅茶などの飲物に入れる量を少なくする、入れない」とする人が28% (427人中119人)、「素材の味を生かし、料理を薄味にする」とした人が25% (108人) であり、「菓子などの甘いものを控える」は14% (61人) であった。




 砂糖についてどのようなことに関心があるのかを複数回答で尋ねたところ、1人平均3.5件を選択した。年代の高い方が選択個数が多く、10歳代では3.0個、20歳代・30歳代では3.1個、40歳代では3.5個、50歳代3.9個、60歳代4.4個、70歳代4.9個であった。
 先述した「砂糖摂取を気にする理由」とも重複するが、健康に関連する項目への関心が非常に高いことが印象的であった (図7)。50%以上の人が関心を示したのは4項目あり、1位「肥満との関係」(73%)、2位「疲労回復効果」(55%)、3位「虫歯との関係」(54%)、4位「糖尿病との関係」(51%)であった。
 5位は一挙に低くなり、30%以下となるが「食品中の砂糖の含有量」(29%)であり、これも直接的ではないが健康との関連でのことと考えられる。砂糖は甘味をつけること以外にもいくつもの重要な調理特性を持つが、調理科学的な関心はあまり高くなく、6位の「砂糖の種類と料理との関係」(24%)、7位「照り、艶だし効果」(17%)、8位「食品防腐効果」(14%)。9位「砂糖の原料」(11%)と続いた。
図7 あなたは砂糖のどのようなことに関心がありますか。
関心グラフ

 図表としては示さなかったが年代別の関心を見ると、若年世代では「太るのではないか、糖尿病になるのではないか、虫歯になるのではないか」というようにどちらかといえば表層的な健康との関連に目を奪われている感がある。一方、年代が高い層では健康関連だけでなく、砂糖の調理特性などのような点にも関心を向けている。




 砂糖に関する12の誤った情報を「これらはいずれも科学的に誤っていますが、比較的多くの人に信じられています」と断った上で「今までどう思っていたか」について、「正しいと思っていた」「誤りと思っていた」「聞いたことがない」のいずれかを選んでもらった。続いて「今はどう思うか」を、「正しいと思う」「誤りと思う」の2選択肢で回答を求めた。図8は各情報について上段に「今までどう思っていたか」、下段に「今はどう思うか」を、「今まで正しいと思っていた」割合が高い順に並べたものである。
図8
グラフ

 これらの情報は「誤りである」と明記した上での質問であるため、「正しいと思っていた」割合が高い場合も、「今は正しいと思う」と答える割合は激減するのではないかと思っていたが、予想は大きくはずれた。「正しいと思っていた」割合よりも「正しいと思う」割合が減少したのは図8の上位4項目だけであり、以下はほとんど変わらないかまたは増加している。「誤っている」と情報提供されてもなお「正しいと思う」割合があまり減らないことに驚かされるが、一方で「誤りと思っていた」割合よりも「誤りと思う」割合は全項目において大きく増加している。「今までどう思っていたか」に対して「聞いたことがない」を選んだ人々の多くが、「今は誤りと思う」を、少数が「正しいと思う」を選んだのではないかと思われる。もともと「正しいと思っていた」人々は、突然「これらは科学的に誤っている」といわれてもそう簡単には納得できなかった、ということではないかと思われる。現時点における判断を保留したことになる無回答者が18〜26%いるが、これらの人々がこれらの誤情報を「誤っている」と確信するにはどのような情報提供が必要なのかを推察することも必要であろう。
 砂糖に関する誤情報を信じ込んでいる人々の考えを修正することは容易ではないが、「聞いたことがない」としている人々に向けて「このようなことが言われていますが、これは誤りです」と、根拠を示して説明することは重要ではないかと考えられる。
列挙した12の誤情報の中で、今までも、そして現時点でも肯定する割合が最大であったのは「(1) 白砂糖は体に悪いが黒砂糖は体に良い」である。45%の人々がそう思っていたということであり、「聞いたことがない」割合も最低であった。黒砂糖は精製度が低いために白砂糖よりもカリウムやカルシウムをはじめとするミネラル類が多い。このことをさして「黒砂糖は体に良い」となり、「精製度が高いのものは体に良くない」と断じる論が「白砂糖は体に悪い」ことにさせてしまっている。砂糖類には多くの種類があり、それぞれが特有の風味や味わい、調理特性を持つ。蔗糖の純度が高い砂糖でなければ作り出せない味わいがあり、黒砂糖を用いることによって生み出される風味がある。ミネラル含有量の多さだけに注目した「黒砂糖ヘルシー論」は「体に良い」食品探しに夢中になっている現代の風潮の一端を象徴していると言えよう。




 図8の(4)「摂取するカロリーが不足していても砂糖を食べると太る」という説を、30%の人が「正しいと思っていた」とし、誤っているといわれてもなお26%が依然「正しいと思う」と答えていた。摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ってはじめて「太る」のであることは誰もが承知していると思うが、こと砂糖に関してはそう思えない人々が4分の1存在するということである。
 このことは「マヨネーズソースは10gで約70キロカロリーです。砂糖10gと比較するとどちらがエネルギーが高いでしょうか」という質問に対する正解が76% (図9) であったこととも関連すると思われる。砂糖は消化可能な炭水化物であり、炭水化物1gは約4キロカロリーを体内で発生することを承知していれば、砂糖10gがおよそ40キロカロリーであろうということは想像がつくはずである。マヨネーズソースに油が多いことをあまり自覚していない消費者もいるが、同じ量で比較したとき、砂糖の方が高いと思う人が10%、どちらも同じと思う人が4%、無回答者が11%という結果は食生活教育に携わる立場としては重大に受け止めざるを得ない。「同じ量のマヨネーズソースより砂糖の方がカロリーが低い」と答えられない人が約4分の1いるということは、砂糖はとにかく「カロリーが高く、太るもとである」というイメージの強さを物語っていると言えよう。
図9 マヨネーズソースは10g(小さじ2杯)で約70キロカロリーです。
砂糖10gと比較するとどちらがエネルギーが高いでしょうか。
グラフ

 個々の食品にまとわりついているイメージを払拭することは容易ではないが、1日に必要な総摂取エネルギーの範囲で食べていれば、砂糖を食べることが「太るもと」になるわけではないことの理解を深める必要があろう。




 使用している砂糖の種類は上白糖、グラニュー糖、三温糖、氷砂糖、角砂糖など多岐にわたる。上白糖使用者は87.5%にのぼり、グラニュー糖使用者 (65.2%) がそれに続き、三温糖は3番目に多い48%であった (図10)。使用量が一番多い砂糖も、1位は上白糖 (66%) であったが、2番目は三温糖で21%、そしてグラニュー糖が3番目の5%であった。溶けやすく扱いやすい上白糖が1番よく使われていることは当然であろうが、21%の人が使用量1番に三温糖を挙げたことに若干のとまどいを感じる。上白糖とはやや異なる風味があり、甘みに「コク」があるとされる三温糖であるが、仮に消費者の中に「三温糖は上白糖よりも自然に近い砂糖で、体に良い」という誤解があり、誤解に基づく「ヘルシー志向」で三温糖が使われているのだとしたら残念である。使用量1番に黒砂糖をあげた人が23人 (2.5%) いたことも、前述した「黒砂糖は体に良い」が理由となっているのであれば、黒砂糖の良さとは別の精製糖の良さを伝えたい。
図10 使用している砂糖と使用量の一番多い砂糖
グラフ
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 本調査を通して、甘いものは多くの人々に好まれながらも、健康上へのある種の懸念を感じつつ、でも食べられているという実態をかいま見た気がする。
 3度の食事をほぼきちんと摂り、エネルギーの過剰摂取にならない範囲で甘いものを適度に楽しむことは食生活のゆとりとして認められこそすれ、非難される理由はない。ましてや、甘い菓子やケーキを罪悪感を引きずりながら食べるというのは残念なことである。
 しかしながら、世の中にはそういうレベルとはかけ離れた大量の砂糖含有食品を摂取する人たちがいるそうである。まともな食事はしないまま、空腹を甘い菓子類や清涼飲料でごまかしてしまう人、水代わりに炭酸飲料を飲む家庭など、「常識」外の摂り方をする人たちが少なくないという。砂糖有害論はそういう「まともでない食生活」をしている人々に対する警鐘として発せられているようであるが、あまりにも非科学的な、あるいは一面的な有害論は問題である。
 「甘いもの」といわれる嗜好的食品は節度ある摂り方が難しい。このことに配慮しつつ、砂糖がもたらしてくれる数々の豊かさや恩恵を尊重し、享受していきたい。



「今月の視点」 
2001年4月 
砂糖に関するアンケート調査結果から
  群馬大学教育学部 教授 高橋久仁子

21世紀甘蔗糖生産のコストダウン
  日本甘蔗糖工業会 会長 太田正孝

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