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年頭に当たって:年頭所感[2003年]

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

今月の視点
[2003年1月]

年 頭 所 感

農畜産業振興事業団
理事長 山 本 徹

 平成15年を迎え、謹んで新春のお慶びを申し上げます。
 最近の砂糖をめぐる国際情勢について見ますと、2002年のニューヨーク粗糖現物相場は、一時6セント台に下落したものの、ファンド筋の影響を受け9月以降の値動きは、ブラジル、EU等主要生産国の増産見込みにより供給過剰傾向が強まっているにもかかわらず、粗糖現物のタイト感もあり上昇傾向で推移し、この結果、現物相場は、11月には9.43セントまで上昇し、その後8〜9セント台で推移しております。しかし、 F.O.リヒト社が11月に発表した国際需給見通しでは、02/03年度の在庫率(49.6%)は過去10年で最高としていることから見れば、現在の価格水準がこのまま推移するとは考え難い状況にあると思います。
 現在、国際貿易機関(WTO)農業交渉においては、3月末をめざして、交渉の基礎となる大枠決定に向けた作業が行われております。関税、アクセス数量、国内支持などを巡って、輸入国と輸出国、先進国と途上国の間で主張が対立しておりますが、わが国は、従来から提案している 「多様な農業の共存」 を基本に、「農業の多面的機能への配慮」、「食料安全保障の確保」 等非貿易関心事項を十分に反映させるべく交渉に臨み、国内支持については現行の規律の基本的枠組みの維持を強く主張しています。
 わが国の砂糖制度については、国内糖業の健全な発展と国民への砂糖の安定供給のために価格調整制度が実施されており、今後とも、政府が強力な姿勢で交渉に臨まれることを期待しております。
 昨年一年を振り返って見ますと、まず、「食」 と 「農」 に関する様々な課題が顕在化する中で、農林水産省は 「食と農の再生プラン」 を4月に策定し、消費者に軸足を移した取り組みが開始された年でした。これらは、砂糖関係業界に関しても例外ではなく、消費者の食の安全・安心に対する関心の高まる中、原材料の安全性を始めとし、これまでの砂糖に対する誤解の払拭や効用等について、消費者を意識した取り組みがこれまでに増して重要になった年でもありました。
 平成12年10月に実施に移された新たな砂糖制度も、昨年で2年目が経過し、「食料・農業・農村基本法」 及び 「食料・農業・農村基本計画」 に基づき、砂糖の自給率の引き上げ、生産コストの低減、生産量の維持増大等の施策の方向に沿った取り組みが実施されています。
 この中で、精製糖関係においては、企業の合併や精糖工場の共同生産化等、生産コスト低減に向けた系列を超えた積極的な取り組みがなされました。
 また、国内産糖関係においては、砂糖の生産コストのうち大きなウエイトを占めるてん菜・さとうきびの原料生産のための土層改良や優良品種の育成、適時・適切な肥培管理の徹底等による品質・単収向上、機械化一貫体系の導入や担い手農家の育成による規模拡大等の促進や集荷製造経費削減のための人員の合理化等による低コスト化に向けた取り組みが実施されました。
 てん菜の生産については、天候にも恵まれましたが、一昨年開催された 「てん菜低糖分解析検討会」 の成果の普及もあいまって、平成13年産は単収57.62t/ha、歩留り17.49%、また、平成14年産(見込み)は、それぞれ61.40t/ha、17.60%と平成12年産の53.15t/ha、15.50%を大きく上回り、2年連続して収量、歩留りとも好成績を残すことができる見込みです。また、さとうきびの生産については、台風の影響もあり、地域によっては成績不良のところもありましたが、行政や生産者団体などによる収穫面積拡大のためのきめ細かな現地指導の取り組みにより、収穫面積は対前年104%の伸びを見せました。
 こうした各分野における努力と砂糖生産振興資金を活用した輸入糖調整金単価の引き下げ等により、卸売価格は平成12年で127円/kgでしたが、一昨年、昨年と121円/kg で推移しています。
 事業団といたしましても、輸入糖等の売買業務、国内産糖交付金の交付業務等を着実に実施することはもとより、甘味資源作物の生産量の維持・増大、生産性向上を通じたコスト低減対策、国産糖企業・精製糖企業の再編合理化対策、消費者に対する砂糖についての正しい情報の普及啓発を図るための対策等を昨年に引き続き精力的に推進してまいります。
 砂糖は肉体と精神に活力と安らぎをもたらし、国民の健康な体づくりに貢献する重要な食品です。
 砂糖の摂取は、肥満や糖尿病の原因となると言った誤解が依然として根強く残っていますが、砂糖は炭水化物の一種であり、1グラム当たりのカロリーも米麦とほぼ同じ4キロカロリーです。
 このような様々な砂糖に関する知識、情報を科学的根拠と正確なデータで、できるだけ解りやすく消費者に提供していくことが事業団の重要な使命と認識しております。
 さらに、消費者との交流を図り、砂糖と食文化講座の開催、地域情報モニターによる消費者意識の的確な収集等を実施してまいります。
 農林水産省は、今年から毎年1月を 「食を考える月間」 と定め、「食」 に関する様々なイベントの開催等を行うとともに、皆様方にも1月には 「食」 を考えるための行事があれば、これを 「食を考える月間」 の参加行事として実施して頂くことを要請しております。事業団としましても積極的に協賛していく考えであります。
 また、生産振興のために、てん菜については、砂糖生産振興資金を活用した 「新ビート産業将来ビジョン実現推進事業」、「てん菜直播栽培普及推進事業」 等の生産性コスト削減、生産性の向上に向けた取り組みを支援してまいりたいと考えております。
 さとうきびについては、「さとうきび・甘蔗糖関係検討会」 を引き続き開催するとともに、「さとうきび栽培実態診断調査」 を今年早期に実施し、昨年の調査結果と合わせ、地域ごと、島ごとの条件にあわせた生産振興に結び付けていけるよう取りまとめ、その普及を図ってまいりたいと考えております。
 当事業団は本年10月1日をもって野菜供給安定基金と統合し、独立行政法人農畜産業振興機構に改組することとなります。独立行政法人化いたしますと、これまで以上に業務運営に対する責任が明確化されるとともに、効率化、適正化、透明性が問われることとなります。
 このような情勢を踏まえ、昨年10月以降 「業務執行改善検討委員会」 を開催し、12月にその報告書が取りまとめられましたが、この報告書内容を真摯に受け止め、行動憲章の策定、消費者代表との意見交換会の開催、消費者等苦情受付窓口を開設するなど、事業団の業務運営の一層の効率化、適正化、透明性の確保に努めてまいる所存です。
 本年が糖業界のさらなる発展の年となるよう、役職員一同努力してまいる所存でありますので、皆様方のご支援とご指導を賜りますようお願い申し上げます。



「今月の視点」 
2003年1月 
年頭所感 農畜産業振興事業団 理事長 山本 徹

八重山地域におけるさとうきび生産の現状と課題 (1) ―西表島―
 国際農業研究センター 沖縄支所 国際共同研究科長 勝田 義満


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