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沖縄のサトウキビと緑肥(2)

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

今月の視点
[2003年4月]
 前号で紹介したように、マメ科緑肥を鋤込むと根粒菌によって固定された窒素が畑に供給され、肥料効果が得られます。さらに緑肥には、雑草抑制や連作障害の回避、景観向上等、多面的な効果があります。堆肥に比べて散布の手間もなく、種子代も高価でないため、手軽に取り組めることも緑肥の魅力です。今回は沖縄県で栽培されている緑肥の中で、一番よく栽培されているクロタラリア、琉球王朝時代から利用されている下大豆(ゲダイズ、沖縄在来の大豆)、つる性で土壌被覆効果の高い富貴豆(フウキマメ)、耐湿性の強いセスバニア、酸性土壌でも生育良好なピジョンピー、農村景観を向上させるヒマワリの6種類の緑肥について、栽培の歴史やその特徴を紹介していきたいと思います。

沖縄県農業試験場 土壌保全研究室 研究員
宮丸 直子


緑肥の変遷
クロタラリア   下大豆   富貴豆   セスバニア   ピジョンピー   ヒマワリ


緑肥の変遷

 サトウキビの品種が、読谷山種、POJ系品種、NCo系品種から現在の農林8号、農林9号に移り変わってきたように、緑肥も時代と共に移り変わってきました。緑肥に関しては文献が少なく、正確な年代はわからないものが多いのですが、大きな流れは以下のようです。
 琉球王朝時代から栽培されているのは、大豆、下大豆、緑豆、ササゲ、そら豆等、食用のマメ類です。主目的は食用として種子を収穫することですが、収穫後に茎葉を緑肥として利用します。現在では、このような古くから栽培されているマメ類の栽培面積は非常に少なくなっており、栽培地域も一部地域に限られています。
 セスバニアの一種である田菁(デンセイ)や富貴豆は、台湾から導入された緑肥で、共に明治43年に県内で栽培されていた記録があります。田菁は昭和初期までは栽培されていたようですが、現在は緑肥としては残っておらず雑草化したものが時々見られるだけです。草丈が約2mになるため、機械化があまり進んでいない当時は鋤込みが困難であったからではないかと考えられます。つる性の富貴豆も、大正中期から昭和にかけて栽培が奨励されましたが、つるが絡むため鋤込みが困難であり、次第に栽培面積が減っていったようです。現在は、宮古地域以外ではほとんど栽培されていません。
 クロタラリアは昭和初期に台湾から導入されていますが、今のように県内で広く栽培されるようになったのは本土復帰後のようです。その後現在に至るまで、クロタラリアはサトウキビ栽培において一番多く利用されている緑肥です。
 そして近年は、酸性土壌に強いピジョンピーや、花が美しいヒマワリが緑肥として利用されつつあります。クロタラリアとは違った特徴があるため、環境条件や地域の要望にあわせて、今後、栽培面積が増えていくかもしれません。
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クロタラリア

クロタラリア・ジュンシア
クロタラリア・ジュンシア
 クロタラリア属の緑肥は、国内で数種類販売されていますが、沖縄で 「クロタラリア」 と呼ばれているのはクロタラリア・ジュンシアという種類です。直立性で一年生のマメ科植物であり、クロタラリアに適した土壌では開花時に2mくらいまで成長します。英名はSunnhemp、台湾では太陽麻と呼ばれていることからもわかるように、原産地といわれるインドでは古くから繊維作物として栽培されてきました。沖縄で緑肥として使われている品種も繊維が丈夫で、ロータリーで鋤込むと茎が絡んでしまいます。その他、台風時の落葉折損や酸性土壌での生育不良等欠点もありますが、発芽性・初期生育がよく、収量も多いことが沖縄で広く栽培されている理由です。沖縄の土壌は砕土性が悪く、播種後に雨が十分でない場合には発芽不良になってしまう緑肥もあります。また、亜熱帯性気候で雑草が繁茂しやすいため、初期生育が遅い緑肥は雑草に負けてしまいます。その点、クロタラリアは播種後速やかに発芽し、約1ヶ月後には50cm以上に生育して雑草の生育を抑制します。その後の生育も速く、2〜3ヶ月で10aあたり2〜3tの生草収量が得られます。クロタラリアは、沖縄に適した緑肥として今後も栽培されていくでしょう。
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下大豆

 下大豆は、沖縄で古くから栽培されているマメ科作物で、18世紀に書かれた 「寒水川金城農書」 や 「八重山嶋農務帳」 にも記載されています。種子は大豆よりひと回り小さいですが、以前は大豆と同じように豆腐を作ったり食用として利用され、茎葉は緑肥としてばかりでなく飼料としても利用されてきました。十月豆とも呼ばれますが、それは旧暦の十月頃に種子が実るからです。草型は生育初期は直立していますが、草丈が40〜50cmになるとつるを出して匍匐型になります。在来種であるため沖縄の栽培環境に適していることから農家の希望も多いのですが、残念ながら現在は種子が販売されていません。そのため、自家採種によってのみわずかに栽培されている状況なので、失われつつある各地の在来種同様、遺伝資源としても保護していく必要があると思います。
下大豆
下大豆
下大豆の種子
下大豆の種子
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富貴豆

 クロタラリアやピジョンピー等、多くの緑肥は直立性ですが、富貴豆はつる性の緑肥です。晩秋から冬にかけて紫色で藤のようなきれいな花が咲きますが、緑肥としては夏に鋤込んでしまうので見たことのある人は少ないかもしれません。分類はマメ科のムクナ属に属しています。名前は同一ですが、山形県の名産品 「富貴豆(青えんどうで作る豆菓子)」 とは関係ないようです。台湾から導入されてかなりの年月が経っていますが、沖縄県内での栽培面積はそれほど多くありません。ムクナは沖縄や台湾ばかりでなく、ブラジルでも緑肥として利用されており、混植するとトウモロコシやサトウキビの収量を高めると報告されています。また、ムクナからは雑草を抑制するアレロパシー物質も分離されています。つる性なので台風時の強風にも強く、現在ではストローチョッパーという機械を使用すれば鋤込みも容易なので、今後、栽培面積の増加が望まれます。
富貴豆
富貴豆
富貴豆の花
富貴豆の花
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セスバニア

 セスバニア属の田菁は、台湾から導入され以前は沖縄で栽培されていましたが、今は雑草化した田菁によってその名残が見られるだけです。現在は、セスバニア・カンナビーナという種類とセスバニア・ロストラータという種類が国内で販売されていますが、沖縄県内ではほとんど栽培されていません。両者とも直立性のマメ科植物で、生育盛期には草丈は約2mになり葉の形はギンネム(沖縄のあちこちで見られるマメ科の木)に似ています。マメ科植物は根に根粒を形成しますが、ロストラータは根ばかりでなく茎にも「茎粒」を形成する珍しい植物です。耐湿性が強いため、県外では水田向けの緑肥として推奨され、近年は転作水田等への導入が増えているようです。沖縄県でも保水性が高く、逆に言えば排水性が悪い土壌(ジャーガル)に適した緑肥として、推奨していきたいと考えています。
セスバニア・カンナビーナ
セスバニア・カンナビーナ
セスバニア・ロストラータの茎粒
セスバニア・ロストラータの茎粒
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ピジョンピー

ピジョンビー
ピジョンビー
 クロタラリアや富貴豆等、一年生の緑肥が多いのですが、ピジョンピーは多年生の緑肥で、播種後1年経過した頃には木のようになるため和名をキマメといいます。原産地であるといわれているインド等熱帯地域で栽培が多い食用豆で、未熟の豆は野菜として食べ、熟した豆はもやしやダル(種皮を剥いて2つに割ったもの、カレーやスープに入れる)として利用されています。クロタラリアは酸性土壌で生育不良になることがありますが、ピジョンピーは酸性土壌でも生育良好なため、宮古・八重山地域で栽培が増えています。虫害も他の緑肥に比べて少ないようです。ただし、発芽性がやや悪く初期生育が遅いため、十分な収量を得るためにはクロタラリアより長い栽培期間が必要です。また、適期に鋤込まないと次第に木化してしまいます。このようにピジョンピーはクロタラリアと異なる特徴を持っているので、土壌環境や栽培期間にあわせて利用していくことが重要です。
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ヒマワリ

 前回、マメ科植物と根粒菌の共生による窒素固定を紹介しましたが、リン酸に関しても植物と共生している菌根菌という糸状菌がいます。菌根菌は、アブラナ科など一部の植物を除いてほとんどすべての植物の根に共生しており、根から菌糸を伸ばし土壌中のリン酸を吸収して植物に供給し、植物からは光合成産物を受け取ります。ヒマワリは、マメ科植物ではないので窒素固定はしませんが、菌根菌との共生程度が高い植物です。北海道ではヒマワリの栽培によって土壌中の菌密度が高まり、後作のトウモロコシ等のリン酸吸収量が増えることが明らかにされています。沖縄県内でも、宮古農林高校の生徒達がヒマワリ栽培が後作のサトウキビに及ぼす影響について研究中であり、その成果が期待されています。また、宮古農林高校ではヒマワリの普及や農業への関心を高めるために、試験圃場を利用してヒマワリ迷路を作って公開したところ、地域の子供達に大好評でした。

 以上のように、緑肥にはそれぞれ異なった特徴があるので、目的や栽培環境にあわせて緑肥を選択し、効果的に利用していくことが重要です。次回は、緑肥利用の推進に向けた県や市町村の取り組みについて紹介していきたいと思います。
宮古農林高校の取り組み
宮古農林高校の取り組み
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「今月の視点」 
2003年4月 
沖縄のサトウキビと緑肥 (2)
 沖縄県農業試験場 土壌保全研究室 研究員 宮丸 直子

「サトウキビ改革ビジョン」の取り組み
 鹿児島県徳之島農業改良普及センター

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