[2003年7月]
沖縄県においてさとうきびは県経済のみならず、離島経済において重要な基幹作物です。しかし近年、農業就業者の高齢化等により、収穫面積や生産量の減少が続いています。
こうした中、沖縄県ではさとうきび生産振興のために様々な取り組みが行われています。
平成15年における取り組みを紹介していただきます。
沖縄県農林水産部
1 沖縄県におけるさとうきびの現状
さとうきび栽培農家戸数は、近年減少傾向にあり、特に沖縄本島地域での減少傾向が大きい。また、栽培農家の経営規模は、本島地域で9割以上、離島地域で6割以上、県平均で約8割が1ha以下となっている。
経営規模別農家戸数 |
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年期別 |
さとうきび 作農家戸数 (戸) |
さとうきび作経営規模別農家戸数(戸) |
1戸当り 収穫面積 ( a ) |
1ha未満 |
1〜2ha |
2〜3ha |
3〜4ha |
4〜5ha |
5〜10ha |
10ha以上 |
本島 地域 |
H7/8 |
13,860 |
13,156 |
631 |
58 |
11 |
2 |
1 |
1 |
37 |
H10/11 |
11,288 |
10,758 |
450 |
54 |
19 |
5 |
1 |
1 |
38 |
H13/14 |
10,198 |
9,566 |
536 |
64 |
16 |
6 |
8 |
2 |
40 |
(同上%) |
( 100.0 ) |
( 93.8 ) |
( 5.3 ) |
( 0.6 ) |
( 0.2 ) |
( 0.1 ) |
( 0.1 ) |
( 0.0 ) |
|
離島 地域 |
H7/8 |
9,445 |
5,455 |
2,532 |
829 |
310 |
105 |
169 |
45 |
101 |
H10/11 |
9,059 |
5,689 |
2,337 |
562 |
195 |
102 |
142 |
32 |
102 |
H13/14 |
8,708 |
5,537 |
2,306 |
460 |
147 |
78 |
143 |
37 |
107 |
(同上%) |
( 100.0 ) |
( 63.6 ) |
( 26.5 ) |
( 5.3 ) |
( 1.7 ) |
( 0.9 ) |
( 1.6 ) |
( 0.4 ) |
|
県計 |
H7/8 |
23,305 |
18,611 |
3,163 |
887 |
321 |
107 |
170 |
46 |
63 |
H10/11 |
20,347 |
16,447 |
2,787 |
616 |
214 |
107 |
143 |
33 |
67 |
H13/14 |
18,906 |
15,103 |
2,842 |
524 |
163 |
84 |
151 |
39 |
71 |
(同上%) |
( 100.0 ) |
( 79.9 ) |
( 15.0 ) |
( 2.8 ) |
( 0.9 ) |
( 0.4 ) |
( 0.8 ) |
( 0.2 ) |
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資料:「さとうきび及び甘しゃ糖生産実績」 |
さとうきび収穫面積は、農家の高齢化、担い手の減少、耕作放棄地の増加等により減少傾向にあったが、春植・株出体系の推進、さとうきび・糖業再活性化事業による遊休農地解消等の効果もあり、近年は減少傾向に歯止めがかかったものと考えられる。
収穫面積の推移
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単収は、もともと高単収の地域である沖縄本島における収穫面積の減少、及び単収低下などにより、県平均は近年やや低下傾向にある。
平均単収の推移(7年間の中庸の5年平均)
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さとうきび収穫の機械化とともに、さとうきび生産コストは、その大部分を占めている労働費の低減とともに徐々に低減してきたが、さとうきび収穫の機械化率の停滞とともに生産コストの低減は低迷している状況にある。
費用合計、労働費と機械収穫率(面積%)の推移
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2 さとうきび生産振興方針
(1) 沖縄県農林水産業振興計画
平成14年度から平成23年度までの10ヵ年計画である沖縄振興計画が、平成14年7月に国により策定された。沖縄県では同計画を踏まえつつ、農林水産業・農山漁村分野について、地域特性を生かした振興を図るためのアクションプランとして沖縄県農林水産業振興計画を策定した。
沖縄県農林水産業振興計画は、平成14年度から平成16年度の3カ年計画であり、さとうきびについては、担い手への農地集積による経営規模の拡大、農業生産法人や受託組織の育成、機械化一貫作業体系の導入などにより、生産コストの低減を図るとともに、生産の維持増大を図ることとしている。
沖縄県農林水産業振興計画では収穫面積の拡大、単収の向上により、目標の16年度に95万トンを達成する計画であり、平成18年度に100万トンを目標としている。
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栽培面積 (ha) |
収穫面積 (ha) |
単収 (kg/10a) |
生産量 (千トン) |
現状(平成12年産) |
20,970 |
13,542 |
5,942 |
805 |
目標(平成16年度) |
20,717 |
14,156 |
6,700 |
950 |
(平成18年度) |
20,637 |
14,564 |
6,900 |
1,000 |
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注:栽培面積は次年度夏植収穫面積及び推定採苗面積、収穫放棄面積を含む。 |
(2) 平成15年さとうきび生産振興計画
ここ数年は、天候不良及び台風の影響を強く受け、過去10年の単収の平均は6.4トンと低い状況にあり、生産量は低迷している。このため平成15年は、目標を93万トンに設定し、その達成に向け各種振興策を積極的に推進する。
作型別生産計画(H15年) |
地域別 |
夏 植 |
春 植 |
株 出 |
合 計 |
収穫面積 (ha) |
単 収 (t/ha) |
収穫面積 (ha) |
単 収 (t/ha) |
収穫面積 (ha) |
単 収 (t/ha) |
収穫面積 (ha) |
単 収 (t/ha) |
生産量 (t) |
北部 |
418 |
70 |
347 |
46 |
1,202 |
57 |
1,967 |
58 |
113,400 |
中部 |
206 |
81 |
114 |
54 |
751 |
65 |
1,071 |
66 |
71,200 |
南部 |
683 |
81 |
701 |
52 |
3,281 |
63 |
4,665 |
64 |
298,500 |
宮古 |
3,777 |
77 |
365 |
53 |
220 |
53 |
4,362 |
73 |
320,000 |
八重山 |
1,190 |
76 |
289 |
59 |
362 |
53 |
1,841 |
69 |
126,900 |
合計 (割合%) |
6,273 ( 45 ) |
77 |
1,817 ( 13 ) |
52 |
5,816 ( 42 ) |
61 |
13,906 ( 100 ) |
67 |
930,000 |
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1) 生産振興の基本方針
さとうきびの生産振興を図るため、かんがい施設等の生産基盤の整備をはじめ、機械化の促進、土づくり、病害虫防除対策等の諸施策を総合的に推進するとともに、優良品種の開発・普及等により生産性及び品質の向上を図る。
また、経営規模の拡大及び耕作放棄地の解消へ向けた農地流動化対策を強化するとともに、作業受託組織の育成及びさとうきび生産法人等担い手の育成を促進する。
さらに、生産コストの低減、品質向上及び製糖工場の操業率向上を図るため、市町村、農協、製糖工場等の関係者が一体となって、新さとうきび・糖業再活性化事業の効果的な実施に努める。
2) 重点施策
ア 農業生産基盤の整備
ほ場整備を推進するとともに、干ばつの影響を受けやすい地域において、ため池、地下ダムを水源とするかんがい施設の導入を推進する。
イ 農地の利用集積と経営規模拡大
農地保有合理化法人等による農地の流動化により、担い手農家への利用集積を図るとともに、農作業受委託を促進する。さらに、新さとうきび・糖業再活性化事業により、糖業振興協会及び地区振興会等が主体となって、市町村、農協、製糖工場等関係者の連携の下に、遊休農地の解消等、収穫面積の拡大を図る。
ウ 機械化一貫作業体系の推進
収穫機の導入及び集中脱葉施設等の整備を図りつつ、収穫作業の省力化を推進するとともに、植付機の導入による植付作業の省力化を推進する。併せて、農業機械利用技能者の養成を図り、機械化一貫作業体系の実現・普及を促進する。
特に、国庫補助事業を活用し、ハーベスター12台、植付機3台を導入する計画であり、また、農業大学校を中心に農業機械士の育成を図るとともに、さとうきび収穫機オペレーター養成研修を実施する。
エ 優良種苗の開発、増殖及び普及
早期高糖多収性品種の開発・育成を行うとともに、種苗管理センターとの連携の下に、原苗ほ及び採苗ほを設置し、無病健全な優良種苗を計画的に増殖し、普及に努める。
特に今年度は、新たに久米島向け及び本島北部向けの2品種を奨励品種に決定する予定であり、また、平成14年度から実施している農林15号緊急増殖事業により、側枝苗を緊急増殖(150万本)し、農家への早期普及を図る。
オ 土づくりの推進等
製糖企業及び畜産農家との連携のもとに、トラッシュ、バガス、ケーキ、畜産排泄物等を原料とした有機質肥料の畑地への還元及び緑肥作物栽培による地力の増進を促進する。
特に、国庫補助事業を活用し、堆肥製造施設を2カ所設置する計画であり、また、堆肥投入、深耕・心土破砕の展示ほを設置し、さとうきび栽培農家への普及促進を図る。
カ 病害虫防除対策
適期防除の推進と市町村における防除組織の育成により共同防除を促進する。土壌害虫の防除については、薬剤による幼虫防除と併せて、性フェロモン及び誘殺灯による成虫誘殺防除、交信攪乱による防除、及び耕種的防除を組み合わせた総合的な防除技術の確立を図る。
特に、南大東島における性フェロモンを活用したオキナワカンシャクシコメツキの交信攪乱による防除は顕著な効果が上がっており、今年度も引き続きさとうきび栽培技術高度化事業を活用し、根絶防除を目指した取り組みを実施するとともに、宮古・八重山地域で被害を与えているサキシマカンシャクシコメツキの不妊虫放飼による防除技術の開発に取り組む。
また、近年多発傾向にある黒穂病については、罹病株の抜き取り焼却の周知徹底を図るとともに、抵抗性品種への切り替えによる防除対策を実施する。
キ 営農改善の推進
葉たばこ及び野菜等との輪作や、畜産等との複合化を促進する。また、集落営農等、効率的な営農体型の確立・普及に努める。
ク 経営感覚に優れた担い手の育成
認定農業者や借地型大規模経営体である生産法人等、多様なさとうきび作担い手の育成・確保を図る。
今年度は、新たに3〜4カ所でさとうきび生産法人を立ち上げる予定である。
ケ 新さとうきび・糖業再活性化事業の推進
さとうきびの生産拡大、生産コストの低減、品質向上及び製糖工場の操業率向上等を図るため、生産者、市町村、農協、製糖工場等関係者が一体となって、各地域における効率的な生産振興対策事業を実施し、生産振興の目標達成に努める。
コ 農業共済の加入促進
生産農家の経営安定を図るため、市町村及び関係機関・団体との連携の下で、農業共済制度の普及・啓発を図り、農業共済への加入を促進する。
今年度は、特に各種事業説明会等を活用し、農業共済への加入促進を図る。