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少収、低糖度はどこから来るか?

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

今月の視点
[2003年9月]

 平成14年度において行われた 「さとうきび栽培実態診断調査」 の概要を紹介します。今年1月に沖縄県本島北部、伊是名島、石垣島、多良間島、喜界島において、さとうきび栽培ほ場の実測・計量、地元さとうきび生産者、試験研究関係者、普及・行政関係者、糖業関係者等による現地検討会を行いました。現地の問題点の解消を図るとともに、低単収、低品質ほ場を改善するための改善策等を地域ごとに紹介します。 今月号は、石垣島、多良間島を紹介します。
九州沖縄農業研究センター さとうきび育種研究室長
杉本 明


琉球弧・南北大東地域におけるさとうきびの高糖多収生産の条件
I. 問題圃場の現地診断
  1.現地診断の目的   2.現地診断の方法   3.現地診断の報告
II. 各地域における診断の結果と多収高糖を実現するための栽培改善の方法
  1.石垣島   2.多良間島    
  3.石垣島、多良間島における多収・高糖の実現に向けた栽培改善に必要な重要事項



琉球弧・南北大東地域におけるさとうきびの高糖多収生産の条件

 さとうきびは、畜産利用を通した梢頭部・枯葉・搾汁残さ(バガス、汁中沈殿物)の地域への還元や、製糖活動を通した付加価値創造性の高さによって琉球弧・南北大東島地域における農業の基幹的作物に位置づけられているが、最近ではさとうきび生産、製糖工場の操業の縮小が著しい。さとうきび・製糖産業の持続的な発展の最重要事項はなんといっても安定した多収高品質生産であるが、現状は、台風や干ばつ、植え付け時の圃場の悪条件等の影響で収量・品質が不安定で低い。
 少収や低糖に関する原因やその対策は、普通、さとうきびの目を通さず、いきなり肥培管理の善し悪しで語られることが多い。勿論、多収や高糖の実現は最終的には自然環境の好悪と人為・肥培管理によって左右される。しかし、さとうきびの目を通過したその先の肥培管理と、さとうきびの目を通過しない直接の人為では、さとうきびとの関係の馴染み、それから来る条件の変化への対応等に大きな差異が出る気がしてならない。そこで、本稿では、まず、少収や低糖を、いかなる事象がそこに介在したとしても、まずはさとうきびにとっては必要なインプットの不足と考えることにした。以下に記す幾つかの要素の内、どの要素が不足するのか、それはどのインプットの不足から来るのかをまず考えた。インプットの充足には、通常の肥培管理の充実の外、圃場環境や作物の特性改良等、幾つかの道があるはずである。そのうちで地域・担い手にとって最も実行し易い方法、それが栽培改善の処方箋になるに違いない。
 さとうきびの多収の要素は多い茎数と重い1茎重である。多い茎数の要素は多い株数(出芽・萌芽は健全な種苗と適切な温度・水分・空気の存在によって促進され、高い生存率は病害虫・雑草の制御と栄養の潤沢な補給によって保証される)と多い株当たり原料茎数(多い分げつは良好な栄養・光環境と生長点へのストレス刺激の存在によって促進され、高い生存率は病害虫・雑草の制御と十分な栄養の供給によって保証される)である。重い1茎重は、光・ガス(二酸化炭素・酸素等)・養水分の十分な継続的吸収と利用によって保証される。養水分の吸収は根系の大きさと活性、及び良好な土壌環境に基盤を置き、光とガスの吸収は多い生葉と受光態勢の良否に左右される。同一品種の場合、茎収量が類似の水準なら、生葉が多く光を多く受けることができたときに高糖度になる。そのために必要な外部の環境が多い日照、適度な降雨と肥沃な土壌、立毛自身が具えるべき特性が受光態勢の維持{生葉の維持(病害虫・強風被害の回避と十分な体内養分)と高い草高}である。
 生産改善は、新しい技術の開発の外、既存技術の適切な適用によっても可能であるため、上述した高糖多収の要点に基づく既存技術の活用を念頭に置いて平成13年度に低生産力圃場の診断事業を開始した。平成13年度は奄美大島、沖永良部島、与論島、伊平屋島、久米島、南大東島、北大東島、与那国島を、14年度には、石垣島、多良間島、伊是名島、沖縄本島北部地域、喜界島を対象に実施した。本号では、琉球弧・南北大東島地域の南部、石垣島及び多良間島について報告する。琉球弧の中心部にあたる沖縄本島北部、伊是名島、喜界島については次号で報告する予定である。
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I. 問題圃場の現地診断

1.現地診断の目的
 さとうきび圃場の具体的な問題点を把握して影響力の大きな要因を探索し、その克服に必要な条件(解)を探索して、多様な解の中から生産者が実行しうる行為を抽出し対策として提案する。したがって、現地診断においては抽象的な地域を対象にするのではなく、具体的な圃場を対象とする。そして、当該圃場の問題克服に有効な対策を提案する。その有効性を糧に他の事例への普遍化を図る。緊急の改善を第1の目的とするため、既存技術の中から対策となるものを選定する。調査ではその対策の選定に必要な、各地域の生産実態を明らかにする。

2.現地診断の方法
1) 調査の内容
 (1) 生産状況の概要
1) 地区毎の収量と甘蔗糖度の概要: 県資料による。
2) 生育の概況: 茎伸長、茎径、1茎重、茎数、倒伏程度、障害(病害虫等)や生葉の状況等。
3) 栽培環境の概要: 土壌の種類、耕土深、台風・干ばつの襲来状況、灌水施設・防風林等の施設状況等;県資料、及び現地調査による。
 (2) 投入している技術の概要
1) 栽培品種の特定と生育の概要: 長所及び短所、要改善点等;現地調査による。
2) 肥培管理の実態: 畦幅、植え溝の深さ、培土高等、種苗の種類、植え付け時期、施肥培土時期、施肥量及び種類、種苗の調達法等;現地調査による。
 (3) 生産農家の現状
1) 経営規模と労働力構成: 現地調査による
2) (投入している、投入しうる、投入不可能な)有用技術の概要: 現地調査による。
2) 調査の方法: 鹿児島・沖縄両県資料、現地における観察、調査団による聞き取り及び立毛の測定。多良間島の調査団を写真1、喜界島の調査団を写真13(次号掲載予定)に示す。
3) 調査の規模: 多収・高糖度圃場を対照とし、多収・低糖度圃場、少収・高糖度圃場、少収・低糖度圃場を問題圃場として、各2圃場を調査する。調査圃場は地元機関が事前に選定する。本文及び表中の圃場の分類、多収・高糖度、多収・低糖度、少収・高糖度、少収・低糖度は、このように事前の評価によるものであり、立毛調査の結果とは必ずしも一致してはいない。

3.現地診断の報告
調査成績の解析終了後に、調査地域の生産の概況、調査圃場の低生産性の要因、低生産性克服のための技術開発の方向について取り纏め、農畜産業振興事業団発行の「砂糖類情報」に掲載して公表する。また、各地域の詳細について、学会で公表後、報告会での公表や各種雑誌への投稿によって公表する。
第1表 琉球弧の主要地域におけるさとうきびの生産状況(2001/2002年期)
第1表
第2表 石垣島の調査圃場におけるさとうきびの生育状況
第2表
注)類型;事前の情報で現地で設定した類型であり、調査の結果の推定収量や圃場ブリックスとは異なることがある。
第3表 多良間島の調査圃場におけるさとうきびの生育状況
第3表
注)類型;事前の情報で現地で設定した類型であり、調査の結果の推定収量や圃場ブリックスとは異なることがある。
写真1
写真1:多良間島;現地調査にあたった方々
(雨が上がり調査がほぼ終了して安心しているところ)
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II. 各地域における診断の結果と多収高糖を実現するための栽培改善の方法

1.石垣島
 第1表に、琉球弧・南北大東島地域における平成13/14年期の生産状況を示す。石垣島は、収穫面積がおよそ1,237ha、生産量は87,645t、夏植が71.5%と多く、春植が12.3%、株出は16.2%と少ない。伊平屋島、宮古島、多良間島、与那国島等と同様、株出が少ないのが特徴である。主導品種はNi9で58%、NiF8も比較的多く26%、かっての主導品種F161は8%に減少している。夏植の収量は7,609kg/10aで沖縄本島南部、種子島、喜界島、徳之島、宮古島、奄美大島、与論島に次ぐが、沖縄県内では多い方である。甘蔗糖度は14.7%で全地域でも高い方に属する。春植は5,846kg/10aで種子島、徳之島、沖縄本島南部に次ぎ、種子島以外の地域の中では多い。株出は5,696kg/10aである。収量、糖度の安定と株出栽培の拡大が重要な地域である。

1)調査圃場の概況
 調査した圃場のさとうきびの特性を第2表、特徴的な圃場の立毛の様子を、写真2、3、4に示す。豊作年のため昨年の夏植平均収量7,609kg/10aを下回った圃場は川平の1圃場のみであった。圃場ブリックスは総じて低く、多収年に低糖度となる欠点が克服できていないことが示されていた。少収だった圃場は茎が短く細く、茎数も少なかった。比較的少収であった圃場は茎の伸長は中程度であったが、茎数が5,800本/10a或いは6,550本/10aと少なかった。高ブリックスであった圃場は二つともNiF8であり、Ni9はいずれも低ブリックスであった。
1) 多収・高糖圃場: 夏植のNi9。新川地区の平地で、周辺に12t/10a以上の圃場が多い多収地域である。ブルトラで作畦した側枝苗栽培の圃場である。畦幅は130cm。培土は高く株中への土の投入は良好である。雑草はほとんど無い。欠株が少なく、分げつはやや多く、茎数は901本/aと茎が長い割に多い。仮茎長372cmと伸長が極良好なため倒伏は多いが、培土が充実しているため畦間方向への倒伏であり大きな問題はない。側枝苗栽培なので浅植であると思われるが高い培土でそれを補っているものと考えられる。茎は21mmで細い。推定収量は1,299kg/aと多い。生葉は多く、障害茎は少ないが、圃場ブリックスは17.6%と低い。株出はせず次は葉タバコを栽培する予定というが、株出の実施が期待できる圃場である。ブリックスの向上が必要であるが、このような肥培管理の行き届いた多収圃場であるならばNiF8を利用するのが早道であろう。
2) 多収・高糖圃場: 夏植のNiF8。伊野田地区、北側に山のある東南向きの斜面で、水供給も良く季節風も弱い好適環境である。畦幅は125cm。培土は高いが頂部が狭く株中への土の投入は中程度である。欠株は少ないが、分げつがやや少なく、茎数は680本/aでやや少ない程度である。雑草はない。仮茎長365cmと伸長良好で茎径(24mm)は中程度である。推定収量は1,277kg/aと多収である。葉色はやや黄味がかっているが生葉は多く良好で梢頭部も太く健全である。倒伏は多いが畦間方向の倒伏で問題はない。障害茎も少ない。品種の特性によると思われるが圃場ブリックスも19.9%と比較的高く、新植での問題は見あたらない。出穂は中程度である。全茎無脱葉収穫を実施するとのことである。萌芽の良否、株上がりによる生育不良の危惧等、株出栽培への移行に際しての問題に留意したい。
3) 多収・低糖圃場: 夏植のNi9。名蔵平地原、3方を山に囲まれた水田跡地で川砂の多い土壌である。畦幅は135cm。培土は高く株中への土の投入も十分である。欠株は極僅かで分げつは中程度、茎数は704本/aで中〜やや少ない程度である。仮茎長357cmと伸長は極良好だが茎径は21mmと細い。推定収量は995kg/aである。倒伏は甚、やや乱倒伏で生葉が6.1枚/茎と少ない上に葉焼け病が多く、受光態勢が悪いためか、出穂は少なく、圃場ブリックスは16.4%と低い。Ni15のような早期型高糖性品種を用いた深溝栽培の実施、あるいは、RK91-1004やKF93T-509のような短茎型の多収品種への転換が有効であろう。
4) 多収・低糖圃場: 夏植のNi9。中央台地、ナカタバル、かっての水田跡で国頭マージの湿地である。畦幅は145cmで広い。ブルトラ作畦でプランター植。培土は高く株中への土の投入も多いが、やや浅溝である。欠株は少なく分げつは中程度、茎数は798本/aと中程度である。伸長良好(仮茎長378cm)、茎径(23mm)はやや細い程度で、推定収量は1,212kg/aと多収である。倒伏多、梢頭部はやや細く生葉も6.8枚/茎と少ない。出穂も少ない。管理はしっかりしているが倒伏のせいか圃場ブリックスは16.7%と低い。Ni15のような早期型高糖性品種を用いた深溝栽培の実施、あるいはRK91-1004、KF93T-509のような短茎型の多収品種への切り替えで受光態勢を向上することが必要であろう。
5) 少収・高糖: 夏植のNi9。磯辺地区、南東が海の低地、島尻マージでやや砂質の低肥沃度土壌。畦幅は125cm。培土はやや低いが株中への土の投入は良好である。欠株は少ないが分げつも少なく茎数は655本/aと少ない。仮茎長は306cmである。やや細茎(22mm)で推定収量が786kg/aとやや少収である。生葉は6.7枚/茎と少なく立毛に勢いがない。出穂は少ない。雑草も少ない。生葉が少ないが倒伏が少ないため、圃場ブリックスは18.0%と中庸である。節間が短いことから、生育は全期を通して不良であったと推察される。堆肥や土壌改良剤の投入、深耕等の実施による地力改善、植え付けの早期化や適期肥培管理が有効である。KF93T-509の様な茎数型多収品種の利用も有効であろう。
6) 少収・高糖圃場: 夏植のNiF8。平得田原、空港隣、島尻マージでサンゴ石灰のれきが多く、土層の浅い圃場である。畦幅は150cmで広い。培土の高さは中程度だが株中には土が良く入り良好である。大きな欠株が多く、分げつもやや少ない。推定茎数は805本/aと算出されたが所々に大きな欠株があるため実際はそれより少ないと思われる。仮茎長は264cmで夏植としては伸長不良だが茎径は24mmとやや太く、個体群としては適切な大きさである。推定収量は961kg/aであるが実際はそれより少ないと思われる。茎が直立し、生葉も多く良好で受光態勢が優れるため、圃場ブリックスは20.7%と高い。出穂も多い。茎数が少ないことが最大の問題であるため、畦幅を縮め、苗の投入量を増やして欠株を最小化し茎数を増やすことが最大の対策であろう。株出を実施しないという前提であれば、品種はNiF8で良いと思われる。株出の実施には土層が浅い圃場条件を考慮し、KF93T-509のような茎数型多収品種の導入が有効であろう。
7) 少収・低糖圃場: 夏植のNi9。川平マージ原、岩盤の上の耕土深の浅い圃場で干ばつ常発圃場である。季節風が強い。畦幅は125cm。圃場の周辺部は伸長不良で少収、内部は伸長良好で中収程度である。培土は高く、株中への土の投入はやや不足しているが概して良好である。欠株は中程度だが大きな欠株もある。雑草の状態は圃場内の場所によって異なり多いところとほとんど無いところがある。分げつはやや多いが欠株が多いため、茎数は少ない(551本/a)。茎の伸びも圃場内の場所によって異なり、調査した茎の平均では仮茎長262cmと短かかったが、やや良好な場所も見られた。茎径は22mmでやや細い程度で推定収量は569kg/aで少収である。倒伏は長さの割に少なく立毛はしっかりしている。障害茎も少ない。生葉は5.8枚/茎で少なく、出穂は少ない。圃場ブリックスは17.5%で低い。圃場内の土壌条件に差異が大きいのが特徴である。有機物や土壌改良資材の投入による地力改善、植え付けの早期化、健全種苗の多量投入等が有効であろう。茎数の多い株出多収性新品種候補系統KF93T-509の導入も有効であろう。
8) 少収・低糖圃場: 夏植のNi9。川原・底原の中間にある山手圃場、国頭マージの切り土で土層は浅い。農協への委託による植え付けである。畦幅は135cmでやや広い。培土はやや高いが株中への土の投入が少ない。欠株がやや多く雑草もやや多い。分げつは中程度だが、欠株が多いため茎数は580本/aと少ない。仮茎長332cmと伸長は良好。茎径22mmで茎は細い。推定収量は783kg/aでやや少ない。倒伏が激しく茎の先も細く、先枯れ等の障害茎が中程度認められる。出穂は少なく、生葉の量は中程度である。圃場ブリックスは16.2%と調査した圃場では最低であった。健全種苗の多量投入と基肥の実施、培土の早期化による株中への土の投入による受光態勢の改善、Ni15の様な早期型高糖性品種、KF93T-509の様な短茎型多収品種への転換が有効であろう。
写真2
写真2
石垣島;高糖多収のNiF8の圃場(右生葉の多い
圃場はNi9)。受光態勢が比較的良く出穂も多い。
写真3
写真3
石垣島;側枝苗植栽培によるNi9の多収圃場。
伸長が良く倒伏が激しい
2)栽培改善の要点と対策
写真4
写真4 石垣島;夏植後の圃場。
欠株が多く、多収は望みがたい。
 1圃場を除き少収圃場は欠株が多かった。欠株の少なかった少収圃場は砂地で伸長が不良であった。欠株の多発に分げつ不足と伸長不良が加わると極少収になる。欠株の発生は主として出芽・株立の不良によると思われるので、適期植え、健全種苗の多投入と基肥の実施が有効であろう。移植苗栽培の実施による株立ちの確保も有効であろう。磯部圃場の少収は地力不足であると思われるので、有機物投入を中心に適期植え、多収性品種への転換が有効である。低糖圃場はいずれも倒伏が多く生葉が少ない。培土は比較的高いことから、植溝が浅いことと品種特性が主因であると思われる。Ni15のような早期型高糖性品種を用いた深溝栽培(リッジャーによる深溝の作畦)、KF93T-509の様な茎数の多い短茎型多収品種への転換が必要であろう。
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2.多良間島
 多良間島は、収穫面積がおよそ265ha、生産量は13,574tで、含蜜糖原料を生産している。夏植が86.7%と圧倒的に多く、春植は1.9%と極端に少ない。株出も11.3%と少ない。ほぼ全面積をNi9が占めている(97%)。夏植が多いにもかかわらず平均10a当たり収量は5,122kg/10aと低い。夏植の10a当たり平均収量は5,610kg/10aで、表中の島では伊平屋島、与那国島、北大東島に次いで少ない。春植や株出の収量は極端に低い。甘蔗糖度は14.1%で徳之島以外の鹿児島県の島より高いが、沖縄県内の島ではやや低い程度である。まずは夏植の収量および品質の向上、ついで良好な萌芽の確保による株出の充実が課題となる地域である。

1)調査圃場の概況
 調査した圃場のさとうきびの特性を第3表、特徴的な圃場の立毛の様子を、写真5、6に示した。豊作年のため2圃場を除いて生育は旺盛、推定収量も多く、昨年の夏植平均収量を下回った圃場は認められなかった。茎数は概して少ない。仮茎長は比較的収量の少なかった2圃場を除き300cm以上に達し、1茎重は全圃場で1kg以上であった。しかし圃場ブリックスは少収・高糖圃場とされた1圃場を除き低かった。
1) 多収・高糖圃場: 夏植のNi9。島尻マージの赤土で基盤整備地区の平地である。畦幅123cm。培土は高く株中への土の投入も充実している。除草剤は使われていないが除草が行き届き雑草は少ない。欠株はほとんど見られず分げつも中程度で、原料茎数は664本/aと少ない。仮茎長361cmと伸長は良好、茎径は25mmとやや太い。推定収量は1,123kg/aと多い。倒伏がやや多いが株元はしっかりしている。先枯れや風折が少し見られる。出穂はない。さび病がやや多い。圃場ブリックスは15.9%で低糖である。高糖性で黒糖品質の高い品種を用いた深溝栽培を検討することが必要であり、茎数型で高糖性のNi15の導入が第一の対策となろう。黒穂病に抵抗性の株出多収系統KF93T-509の利用も検討に値しよう。黒穂病防除の徹底が伴えばRK91-1004も有効である。
2) 多収・高糖圃場: 夏植のNi9 。灌水により茎伸長を促進している圃場である。畦幅は150cmで広い。培土は低い。欠株はほとんど見られないが、畦幅が広く、分げつも中程度あるため、茎数は689本/aとやや少ない。仮茎長は393cmで伸長は極良好、茎径は24mmで中程度である。培土が低いため、倒伏が激しく、さとうきびが圃場を覆っているが、株中への土の投入が十分であり、かつNi9の根系が強いこともあって株元はしっかりしている。障害茎はあまり見られない。推定収量は1,261kg/aと多い。出穂は極僅かである。圃場ブリックスは16.6%と低いが、他の圃場と比べ伸びが良い割には高い。雑草はやや少ない。栽培改善対策の方向は 1) と同様である。
3) 多収・低糖圃場: 夏植のNi9。海辺の砂質土壌であるが干ばつ被害は見られず、伸長良好な圃場である。防風林に囲まれている。畦幅は128cm。培土は低いが株中への土の投入は良好である。欠株が少なく分げつも中程度のため、742本/aと原料茎数はやや少ない。仮茎長348cmと茎は長く、茎径は24mmであるが徒長気味で細い茎も多い。推定収量は1,136kg/aで多い。生葉は多く良好だが、倒伏が激しいため受光態勢が悪い。出穂はない。黒穂病、白星病、さび病等が中程度発生している。圃場ブリックスは15.6%で低い。早期高培土の実施、黒糖品質の優れた、早期型高糖性品種、短茎型多収品種の導入による受光態勢の改善が必要である。導入が有効であると推察される品種は 1) 圃場の場合と同様である。
4) 多収・低糖圃場: 夏植のNi9。海岸沿いの砂地、防風林脇の圃場である。畦幅は125cm。培土はやや高く、頂部も広く、株中への土の投入も良好である。欠株が少なく分げつが中程度であるため茎数は880本/aと他の圃場と比べやや多い。仮茎長は342cmで伸長は良好、茎径は22mmでやや細い。推定収量は1,157kg/aと多収である。倒伏は多いが、株元がしっかりしており膨らんでいるため茎が長い割には良好な状態である。先枯れ、野鼠害茎等の障害茎が中程度認められる。生葉の色は濃いが、さび病が多い。ワタアブラムシも多い。出穂はない。圃場ブリックスは14.8%と調査圃場の中では最も低かった。黒糖品質の優れた短茎型高糖性品種の導入が有効であろう。黒穂病抵抗性で早期高糖性のNi15、黒穂病抵抗性で茎数型の株出多収系統KF93T-509の導入、黒穂病防除の徹底が前提であるがRK91-1004等の導入も有効であろう。
5) 少収・高品質圃場: 夏植のNi9。島尻マージで、風の当たる圃場。畦幅は140cmで広い。プラウで植溝を掘り耕耘機で中耕・培土を行っている。平均培土のみである。欠株が中程度で分げつが少なく畦幅も広いため、原料茎数は571本/aと少ない。雑草はやや少ない程度である。仮茎長は342cmと長く、24mmで茎の太さは中程度である。推定収量は922kg/aである。倒伏は「半倒伏」程度で障害茎は少ない。茎及び梢頭部の太さは中程度である。季節風で生葉は少ないが、受光態勢は良好である。出穂は少ない。圃場ブリックスは20.0%と高い。健全種苗の多投入による欠株の最小化、茎数型で根系の優れた株出多収品種の導入による円滑な株出栽培への移行が課題である。
6) 少収・高糖圃場: 夏植のNi9。生産者が体調を崩し、初期管理ができなかった圃場である。畦幅は127cm。平均培土のみで株中への土の投入は不良である。大きな欠株が多く、雑草が極めて多い。分げつも少ないため、茎数は512本/aと少ない。仮茎長283cmと他の圃場と比べ伸長不良で、茎径は23mmと比較的細く、推定収量は629kg/aと少ない。生葉は黄味を帯び枚数も少ない。短茎のため倒伏は少ないが、圃場ブリックスは15.2%と低い。健全種苗の多投入による欠株の最小化と初期管理の確実な実施で収量は向上すると思われる。茎数型で黒穂病に抵抗性の株出多収性系統KF93T-509の導入が検討に値しよう。
7) 少収・低糖圃場: 夏植のNi9。海近くの島尻マージ圃場で潮風害が発生しやすい地域である。畦幅は122cm。平均培土程度だが株中には土が投入されている。欠株が中程度あるが分げつは中程度で茎数は915本/aと比較的多い。仮茎長は307cmで伸長は中程度、茎径は22mmでやや細いが、推定収量は1,079kg/aとやや多い。倒伏は多く、先枯れ、先折れが少〜中程度認められる。生葉は少ない。白星病やさび病が認められる。出穂はなく、圃場ブリックスは16.4%で低い。健全種苗の多投入による欠株の最小化が第一、そして深溝・高培土の実施による根系の強化・受光態勢の改良が有効である。早期高糖性で黒穂病に比較的強いNi15の導入、そして耐倒伏性で高糖性の株出多収性品種の利用が有効である。
8) 少収・低糖圃場: 島尻マージの赤土。夏植のNi9。畦幅は129cm。頂部の広いやや低い培土で、株中への土の投入は比較的良好である。欠株は中、分げつはやや少なく、茎数は711本/aとやや少ない。仮茎長は299cmで伸長は中程度、茎径が23mmでやや細い程度である。推定収量は790kg/aとやや少ない。倒伏は多で転び倒伏に近い。圃場ブリックスは15.9%と低い。欠株が少収の原因であり、健全種苗の多投入による欠株の最小化が第一の課題である。培土を高くすることによる受光態勢改善は高糖度の実現に効果的であろう。茎数型高糖性品種Ni15への切り替え、さらに、株出改善に向けたKF93T-509等の茎数型多収系統の導入が有効であろう。
写真5
写真5 多良間島;Ni9の多収圃場。
倒伏が激しく糖度は低い。
写真6
写真6 多良間島;Ni9の少収圃場。
生葉も少なく低糖度である。
2)改善の要点と対策
 少収の原因は欠株の多発である。分げつが不足すると少収に拍車がかかる。伸長は概して良好であるため極端な少収圃場は認められない。基肥の実施に基づく健全種苗の多投入が有効であろう。干ばつ被害の少ない圃場では移植苗栽培の実施も検討に値する。低糖の原因は徒長・倒伏甚・生葉の病害による受光態勢の悪化である。改善の第一は茎数型で高糖性のNi15の導入、そして株出の推進に向け黒穂病に抵抗性、茎数型で株出多収のKF93T-509の段階的な導入が有効であろう。黒穂病対策の徹底があればRK91-1004の夏植・株出体系への利用も有効であろう。
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3.石垣島、多良間島における多収・高糖の実現に向けた栽培改善に必要な重要事項
 石垣島、多良間島では、少収圃場の大部分は欠株が多いことが特徴であった。欠株は、発芽不良、出芽後の枯死による株立ち不良、倒伏等による株の枯死、収穫時の株の引き抜き、萌芽不良によって発生する。夏植の多い石垣島や多良間島では出芽・株立ちの不良によることが多い。これらの圃場における対策の第一は健全種苗の適期植や多量投入、発芽・初期生育の旺盛な品種の導入である。畦幅が広い圃場では畦幅を縮めて株数を増加することも重要な検討事項である。低糖圃場は、倒伏が激しい、或いは生葉が極少ない圃場であった。受光態勢の改良に向け、早期型高糖性品種の深溝栽培の実施や、耐倒伏性の高糖多収品種の導入が有効である。茎数型で早期高糖性のNi15、耐倒伏性で高糖性のRK91-1004、黒穂病に抵抗性のKF93T-509等の導入が有効であろう。品種・系統の利用に際しては、品種特性、特に耐病性には注意し、重要病害に感受性の品種・系統の導入に際しては、十分な防除措置が前提であることに注意が必要である。
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「今月の視点」 
2003年9月 
少収、低糖度はどこから来るか?
さとうきび栽培改善のための現地診断 −石垣島、多良間島−

 九州沖縄農業研究センター さとうきび育種研究室長 杉本 明
【さとうきび生産地から】平成15年さとうきび生産振興方針 〜 鹿児島県 〜
 鹿児島県農政部農産課


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