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お砂糖豆知識[2000年2月]

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最終更新日:2010年3月6日

ALIC砂糖類情報
お砂糖豆知識

[2000年2月]
●てん菜のあれこれ
●砂糖のあれこれ



てん菜のあれこれ

ビートの栽培(1)

(社)北海道てん菜協会 前専務理事 秦 光廣

〔雪の残る春先から霙(みぞれ)の晩秋まで〕
 雪融け前の春先、雪を除(よ)けて建てたハウスの中で、細長い紙筒(ペーパーポット)に土を詰めて種を蒔きます。芽が出ると苗床に渡した板に乗り、地面に伏すようにして紙筒内の小さな芽をピンセットで間引きます。
 緑の広がりは雪の下で冬を越した秋蒔小麦だけの早春の畑で、春作業のトップを切って紙筒の苗を一本いっぽん定植します。
 寒風吹き荒ぶ晩秋、全作物取り込み後にビートの収穫は始まります。時には雪もちらつく中で鼻水を啜(すす)りながら、根を引き抜き鉈(なた)のようなタッピングナイフで冠部茎葉を切り離して、根だけを畑の隅に積み上げていきます。
 ピンセットの間引き、紙筒苗の定植、タッピングナイフによる冠部切り離し、すべての作業がヘクタール6〜7万回で、残雪の早春から霙の晩秋までと、寒空のもとでの労働の質は極めて厳しいものでした。冷え込む季節の作業にいそしむカアチャンにと、赤いネルの腰巻生地を手土産に製糖工場の担当者が農家訪問したなどの話もあります。
 ちなみに、このような質的に過酷な作業がまだ名残りを止めていた1970(昭和45)年の10アール当たり労働時間は、農林水産省生産費調査によると、小麦27時間、澱粉原料じゃがいも25時間、小豆19時間などに対し、ビートは倍の50時間と量的にも極めて過重でした。
 しかし、品種改良や機械開発の進展に加えて、機械導入に国・道の重厚な助成策が施されるなど、ビートを取り巻く栽培環境は、その後急速に変容を遂げてきました。

〔省力化は進むが依然多労作物〕
 多胚種子(種球1個から数本の芽が出る)の時代から、新しく開発された単胚種子(遺伝的に種球内の胚を単数にしたもので出芽(しゅつが)は1つ)に変わると、普及当初こそ万一発芽しない種があると折角の紙筒が無駄になると、多胚に固執したり、単胚の1.5〜2粒蒔き(紙筒1本に複数粒播種)で間引きをする例もありましたが、その後、薬品などをコーティングした丸薬状のペレット種子の出現もあって間引き作業は改善しています。
 苗の定植はトラクター付属作業機が開発され、最初の頃は運転者の他に、移植作業機に乗ってベルトに苗を選別しながら供給する1畦ごと1人の作業者、移植ミスを補うため機械の後をついて歩く補植人夫など、人手の掛かる機械体系でした。定植の畝幅を狭めようにも1畦1人なので搭乗者の尻幅より狭くならないなどの話もあったほどです。しかし、機械の改良は日進月歩で、最近では苗の供給も選別も機械が行い、中学生でもできる苗補給係とオペレーターの実質1.5人で4畦を定植する全自動移植機も普及しつつあります。
 収穫機械はタッパ・デガー(茎葉冠部切断・掘取り)方式のツーステージタイプ、或いはワンステージで両作業を行うビートハーベスターが、それぞれの土地柄や労働条件で選定されてきました。最近は大型のハーベスターでも枕地処理(機械作業を容易にするためほ場の縁部分をあらかじめ人力で収穫する)が少なくてすみ、隅々まで掘り取ることができる小回り性能を持つ機種も増えてきています。ただ、欧米の主流が6畦など多畦処理なのに比べ、わが国ではほとんどが1畦収穫で効率は劣ります。
 これらの結果、1998(平成10)年の農林水産省生産費調査では10a当たり稼働時間は18時間と短縮されており、小麦3時間、原料いも9時間、小豆11時間に比べるとまだまだ多いものの、労働の質の面では大きく変わってきております。
 また、コスト低減と家族労働での対応を目指した直じか蒔まきが最近見直されてきており、戸数は少ないのですが、道が省力栽培のモデルとして1996(平成8)年まで3年間データをとった直播栽培(ちょくはんさいばい)農家の平均労働時間は10時間を下回っていますし、中には小麦を僅かに上回る5時間を切った例も見られ、期待を集めております。

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砂糖のあれこれ

砂糖の規格について

精糖工業会

 皆さんが普段使っているお砂糖。このお砂糖の規格、つまり、「どういうものをお砂糖と呼ぶか、呼べるか」という質問をいただくことがあります。今回はこのことについて少しご説明しましょう。

日本に特別の規格はない
 現在、日本に砂糖について決められた統一的な規格はありません(医薬品用については、日本薬局方に基づいた規格が定められています)。これは、
(1)砂糖が昔から使われている馴染み深い商品であること
(2)原料がほぼ限られていること(さとうきび、ビート)
(3)製品自体に大きな差がなく、品質は極めて均一で安定していること
(4)製造メーカーによる成分の違いがほとんどないこと
が主な理由です。また、国内精製糖の90%以上を製造する精糖工業会加盟の各メーカーは、品質向上のために常に努力を続けていますし、最近は加工業者からの品質上の要求も厳しくなっています。これに対応すべく、工場全体も厳重に品質管理されていますから、日本の精製糖の品質は世界最高水準との評価を受けています。

砂糖の国際的な規格
 国際的な食品の統一規格として、FAO(国連食糧農業機関)/WHO(世界保健機関)が共同で策定した「国際食品規格」があります。これは、食糧需給における国際協力がますます重視されている状況下、各国の国内事情に応じた様々な食品規制の違いが円滑な食品貿易を妨げる要因になっているとの指摘の中、公正な貿易取引の促進を図るという観点から定められたものです。砂糖も、ブドウ糖や水あめ、乳糖、ハチミツなどの糖類と並んで、国際規格の対象商品になっています。
 砂糖類の規格(抜粋・表1)と現在の国内砂糖製品の平均的な成分表(表2)は以下の通りです。
 日本の砂糖で言えば、グラニュー糖、白ざら糖は「ホワイトシュガーA」に、上白糖は「ソフトシュガーB」に、三温糖も「ソフトシュガーB」の区分範疇に入ります。
 日本はFAO/WHOの加盟国ですから、JAS規格を設けている食品については国際規格に従った食品規格を定めています。しかし、一般的には国際規格を上回る水準にあると言って良いでしょう。砂糖についてはJAS規格はありませんが、上記の表を見てもらえれば分かる通り、日本の砂糖は国際規格基準を上回る品質ですから、国際的な問題は全くありません。

表1
区 分 必須組成・品質要件
糖  度 転 化 糖 灰  分 水  分 色(ICUMSA)
ホワイトシュガーA
ホワイトシュガーB
99.7%以上
99.5%以上
0.04%以下
0.1%以下
0.04%以下
0.1%以下
0.1%以下
0.1%以下
60以下
150以下
ソフトシュガーA
ソフトシュガーB
88.0%以上(注1)
97.0%以上(注1)
0.3〜12.0%
0.3〜12.0%
3.5%以下
0.2%以下
4.5%以下
3.0%以下
白〜褐色
60以下
粉    糖 99.7%以上 0.04%以下 0.04%以下 0.1%以下 60以下
注1:ショ糖と転化糖の合計値

表2 砂糖の成分%(平均)
   ショ糖   転化糖   灰 分   水 分    色  
白ざら糖 99.95 0.01 0.01 0.01 白 色
中ざら糖 99.70 0.05 0.03 0.03 黄褐色
グラニュー糖 99.95 0.01 0.01 0.02 白 色
上 白 糖 97.80 1.30 0.02 0.80 白 色
三 温 糖 95.40 2.10 0.22 1.20 黄褐色
角 砂 糖 99.80 0.01 0.01 0.15 白 色
氷 砂 糖 99.80 0.06 0.01 0.06 白 色
粉 砂 糖 99.80 0.02 0.01 0.02 白 色
顆粒状糖 99.80 0.01 0.02 0.02 白 色
原 料 糖 97.70 0.70 0.45 0.50 黄褐色
黒 砂 糖 75〜86 2.0〜7.0 1.3〜1.6 5.0〜8.0 黒褐色
注:本成分表は、平均的な値で、製品によって多少の差異があります。

JAS規格と砂糖
 ところで、皆さんが食品の規格として頭に浮かべられるものに「JASマーク」があると思います。これは「JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)」がその根拠となる法律です。
 もともとは、酒類、医薬品を除くすべての飲食料品及び油脂・農産物・林産物・畜産物並びにこれらを原料に製造・加工された物資を対象に、品質・表示基準による格付けに合格した製品に「JASマーク」の添付を認めるものです。しかし、これは製造業者の自主性を基調としていたため、徹底を欠くきらいがあったため、昭和45年の法改正により、品質表示制度が導入され、(1)一般消費者が購入に際してその品質を識別することが特に必要と認められ、(2)その経済的利益を保護するために品質表示の適正化が特に必要と認められるものを「指定」し、規格及び品質表示基準を守るように義務付けたのです。
 現在、JAS規格が制定されている(指定されている)飲食料品は、麺類、しょうゆ、植物油、ジャム、炭酸飲料など354種(平成10年7月現在)です。糖類では異性化糖、ブドウ糖が指定されていますが、砂糖はこの中には入っていません。ですから、砂糖にJAS規格はありませんし、「JASマーク」の添付もありません。また、品質表示基準が指定されているものは64種です。
 ところで、今回、このJAS法が今年の4月1日付で改正されることになっており、品質表示基準については、現在の64種だけでなく、一般消費者向けの全ての飲食料品が対象となることとなります。ですから、今後、砂糖もJAS法の品質表示基準の対象となるわけです。しかし、規格については「5年ごとの見直しを行い、不要になったものは削除することとする」というもので現行の指定が変わるものではなく、改正後も砂糖にJAS規格が設けられることは今のところありません。

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