〔省力移植機械の開発改良〕
紙筒移植が取り入れられた初期の頃は、苗を本圃に定植するため、素手やハンド移植器を使っていました。しかし、現在は試験栽培や欠株捕植の場合など特異な例を除き、トラクター付属作業機のビート移植機械が使用されています。
移植機の開発当初は、紙筒の分離と機械への苗補給にそれぞれ1名、2畦用移植機で運転者のほかに4人が搭乗しなければなりませんでしたし、そのほかにトラクターの後ろを歩き機械移植ミスを補う捕植人夫、苗運搬者など、10人程の組作業が必要でした。しかし改良を重ねるにつれ、オペレーター以外に2人搭乗での2畦用、4人での4畦用の機械が開発され、それから久しく時が経過しています。
最近は苗選別や苗送りにセンサーなど自動装置の付いた機種も出回り、移植機構の作業効率は日進月歩で向上してきています。
ただ、機能の向上が機械の自重を増し、その上に重量のある多量の苗や肥料を積むと機体バランスを崩しかねないとして、4畦用の自動移植機には施肥装置が搭載されないなど、さらなる省力化に向けての課題も残されています。
〔収穫は凍しばれと雪がくる前に〕
圃場に定植した後のビートの栽培管理は、他の畑作物と余り大きく変わりませんので、一足飛びに収穫に入ります。
一般的にビートの収量や含糖分は、10月の中・下旬には停滞傾向に入ります。この時期から降雪や凍結が心配される11月上旬までが収穫の適期と言えます。この時期を外すと年により多雪地帯では雪の下になる恐れがありますし、少雪地帯だと凍結して変質の恐れがあります。
収穫は、茎葉冠部(クラウンともいい、根の頭の部分)を根から切断(タッピング)することから始まります。まず、タッパという切断専門の機械でタッピング処理をし、後から掘取専門のディガで根を掘り取る2工程処理の方式と、1台の機械がタッピング処理を先行しながら、同時に一方で掘り取り作業を行う1工程処理のビートハーベスターによる場合があります。
いずれの場合も、切断装置の基本は同じで、ビートが大きくても小さくても自動的に切断位置を調整する機能が付いています。切断位置は農業団体と糖業間の取引協定で決められ、この位置より深く切りすぎると農家の収量減に結び付きますし、切り不足だと原料の受け渡し時に糖業が減量査定します。
余談ですが、いずれの切断位置が合理的かは別として、協定ではEU諸国等で一般的に採用されている切断位置より1cm高く決めています。日本の収量水準はEU並みと言う方もいますが、厳密には基準の違いを考慮に入れなければならないでしょう。
掘り取り機は、根を掘り起こすとともに、根に付着した土などを払い落とす装置、根を積み込む装置からなっています。
〔収穫作業はワンステージ方式が主流〕
収穫の機械化が進められた当初は、機構が簡潔でトラブルが少なく能率が上がるとして、切断・掘り取りを別にしたタッパ・ディガ方式が好評でしたが、その後、機械精度が増したことや稼動時間や労力との関係もあって、近年は多くがワンステージのビートハーベスターを利用しています。
わが国では特殊な例は別として、掘り取りと同時に1列先の畦をタッピング処理するタイプのハーベスターが多く、収穫したビートを積載するタンクを装備した1畦用収穫機が主流になっています。これらのタンカタイプの欠点は、収穫畦の途中でビートがオーバーフローしないよう、所定の堆積場所での排出が度々必要なことで、タンク容量が積載後の総重量などでおのずと決まるので、移動が多い分作業効率は落ちます。
欧州ではフロントで茎葉を切断し、機械の後部で掘り取りをする3〜6畦などの多畦処理の機種が主流を占めています。処理畦数が多いため大型とはいえタンクがすぐ満杯になるので、堆積場と往復するトレーラーワゴンに収穫途中で積み替えたり、あるいは、同時に並行して走るトレーラーやトラックに直接積み込むアンローディングタイプのハーベスターが活躍しています。
わが国の機械作業は、トラクター本機の後ろでの作業が一般的ですが、トラクターが大型化してきた現状を踏まえ、欧州のように必要に応じては、フロントとリアあるいはサイドで同時に複数の作業をする機械体系も検討が必要です。タッピングのフロント処理で非効率な枕地作業の排除や多畦処理導入、あるいは、フロント施肥装置で移植機のバランスを取るなど、試験機関の将来に向けた研究に期待するところ大です。