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お砂糖豆知識[2000年4月]

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最終更新日:2010年3月6日

ALIC砂糖類情報
お砂糖豆知識

[2000年4月]
●てん菜のあれこれ ●砂糖のあれこれ


てん菜のあれこれ

ビートの栽培(3)

(社)北海道てん菜協会 前専務理事 秦 光廣

〔省力移植機械の開発改良〕
 紙筒移植が取り入れられた初期の頃は、苗を本圃に定植するため、素手やハンド移植器を使っていました。しかし、現在は試験栽培や欠株捕植の場合など特異な例を除き、トラクター付属作業機のビート移植機械が使用されています。
 移植機の開発当初は、紙筒の分離と機械への苗補給にそれぞれ1名、2畦用移植機で運転者のほかに4人が搭乗しなければなりませんでしたし、そのほかにトラクターの後ろを歩き機械移植ミスを補う捕植人夫、苗運搬者など、10人程の組作業が必要でした。しかし改良を重ねるにつれ、オペレーター以外に2人搭乗での2畦用、4人での4畦用の機械が開発され、それから久しく時が経過しています。
 最近は苗選別や苗送りにセンサーなど自動装置の付いた機種も出回り、移植機構の作業効率は日進月歩で向上してきています。
 ただ、機能の向上が機械の自重を増し、その上に重量のある多量の苗や肥料を積むと機体バランスを崩しかねないとして、4畦用の自動移植機には施肥装置が搭載されないなど、さらなる省力化に向けての課題も残されています。

〔収穫は凍しばれと雪がくる前に〕
 圃場に定植した後のビートの栽培管理は、他の畑作物と余り大きく変わりませんので、一足飛びに収穫に入ります。
 一般的にビートの収量や含糖分は、10月の中・下旬には停滞傾向に入ります。この時期から降雪や凍結が心配される11月上旬までが収穫の適期と言えます。この時期を外すと年により多雪地帯では雪の下になる恐れがありますし、少雪地帯だと凍結して変質の恐れがあります。
 収穫は、茎葉冠部(クラウンともいい、根の頭の部分)を根から切断(タッピング)することから始まります。まず、タッパという切断専門の機械でタッピング処理をし、後から掘取専門のディガで根を掘り取る2工程処理の方式と、1台の機械がタッピング処理を先行しながら、同時に一方で掘り取り作業を行う1工程処理のビートハーベスターによる場合があります。
 いずれの場合も、切断装置の基本は同じで、ビートが大きくても小さくても自動的に切断位置を調整する機能が付いています。切断位置は農業団体と糖業間の取引協定で決められ、この位置より深く切りすぎると農家の収量減に結び付きますし、切り不足だと原料の受け渡し時に糖業が減量査定します。
 余談ですが、いずれの切断位置が合理的かは別として、協定ではEU諸国等で一般的に採用されている切断位置より1cm高く決めています。日本の収量水準はEU並みと言う方もいますが、厳密には基準の違いを考慮に入れなければならないでしょう。
 掘り取り機は、根を掘り起こすとともに、根に付着した土などを払い落とす装置、根を積み込む装置からなっています。

〔収穫作業はワンステージ方式が主流〕
 収穫の機械化が進められた当初は、機構が簡潔でトラブルが少なく能率が上がるとして、切断・掘り取りを別にしたタッパ・ディガ方式が好評でしたが、その後、機械精度が増したことや稼動時間や労力との関係もあって、近年は多くがワンステージのビートハーベスターを利用しています。
 わが国では特殊な例は別として、掘り取りと同時に1列先の畦をタッピング処理するタイプのハーベスターが多く、収穫したビートを積載するタンクを装備した1畦用収穫機が主流になっています。これらのタンカタイプの欠点は、収穫畦の途中でビートがオーバーフローしないよう、所定の堆積場所での排出が度々必要なことで、タンク容量が積載後の総重量などでおのずと決まるので、移動が多い分作業効率は落ちます。
 欧州ではフロントで茎葉を切断し、機械の後部で掘り取りをする3〜6畦などの多畦処理の機種が主流を占めています。処理畦数が多いため大型とはいえタンクがすぐ満杯になるので、堆積場と往復するトレーラーワゴンに収穫途中で積み替えたり、あるいは、同時に並行して走るトレーラーやトラックに直接積み込むアンローディングタイプのハーベスターが活躍しています。
 わが国の機械作業は、トラクター本機の後ろでの作業が一般的ですが、トラクターが大型化してきた現状を踏まえ、欧州のように必要に応じては、フロントとリアあるいはサイドで同時に複数の作業をする機械体系も検討が必要です。タッピングのフロント処理で非効率な枕地作業の排除や多畦処理導入、あるいは、フロント施肥装置で移植機のバランスを取るなど、試験機関の将来に向けた研究に期待するところ大です。

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砂糖のあれこれ

PL法と砂糖

精糖工業会

 皆さんは「PL法」という言葉を耳になさったことがあると思います。これは正式名称を「製造物責任法」と言い、PL(PRODUCT LIABILITY LAW)とはその英語名を略したものです。製造物責任法の公布は平成6年7月1日、施行は平成7年7月1日です。
 この法律の目的は同法1条に記載されています。そこには「この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造者等の損害賠償の責任を定めることにより、被害者の保護を図り…」とあります。
 それまでは、消費者がある製品によって損害を受けたとして損害賠償を求める場合は民法の規定が適用されていました。しかし、その場合は、かかる欠陥が製造業者の過失によるものであることを、消費者側が立証しなければなりませんでした。が、実際には消費者側による立証は困難と言えます。このため、消費者保護の観点に立って制定されたのがこの法律です。
 製造物責任法では、被害者側は製造物の欠陥を立証すればよいことになり、製造業者の過失を立証する必要はなくなりました。また、欠陥の立証についても、「社会通念上欠陥と認められる」程度の因果関係で足りるとされています。これにより、製造業者の自らの製品に対する責任は重くなり、より徹底した安全対策が求められることとなりました。
 
砂糖についてはどうか?
 では、砂糖について製造物責任法はどうかかわってくるのでしょうか?
 同法では、製造物の定義を「製造または加工された動産」としています。これは食品について言えば未加工の農畜産物(単に切断、冷凍、冷蔵、乾燥したものも含む)以外は全て対象になります。したがって、砂糖も製造物責任法の対象になり、精糖(製糖)メーカーも訴訟の対象になり得るわけです。
 しかし、製造物責任法の基本であり、かつ、最も重要な「責任の範囲」は、「製造物の欠陥が他人の生命・身体・財産に損害を与えた場合」となっています。つまり、製造物そのものの欠陥にとどまった場合は、同法は適用されません(これまで通り、民法の規定が適用されます)。このことを砂糖に当てはめて考えた場合、寄せられる苦情や問い合わせは(1)固結(2)変色(褐変反応)(3)べたつきなど、比較的軽微であり、かつ、消費者の保管方法に原因の一端がある場合がほとんどです。ましてや、砂糖そのものの安全性が根本的に問われたような事例はなく、砂糖そのものが品質的に非常に安定していることや、製糖メーカーの製造方法や製造管理・衛生管理の方法からみて、他人の生命・身体・財産に損害を与えるようなケースは考えられません。したがって、砂糖がPL法そのものに直接かかわることはないと言えます。

精糖業界の対応
 精糖工業会では平成7年3月に「PL法対策小委員会」を設置し、考えられる具体的な問題点について検討を開始し、同年7月に同小委員会を発展させる形で「PL法対策委員会」が設置されました。
 同委員会では、前述したように「砂糖そのものが他人の生命・身体・財産に損害を与えるようなケースは考えられない」という確認がなされましたが、間接的な問題として、(1)法律施行を機に、消費者からの苦情申し立てが増加することが考えられる。(2)苦情内容についても、意図的・悪質なクレームも予想されることから、以下の点について、個々のメーカーで今一度見直し、徹底を図る必要があるとの結論に達しました。
・苦情処理体制(窓口、社内連絡、クレーム処理方針)
・製品の安全確保(製造・保管システムと管理文書の保存、ロットNo管理)
・事故発生時の処理体制
・製品の注意表示の点検、見直し(各包装形態に応じた注意表示)
 *注意表示の欠陥も責任の対象になるため
・流通管理の徹底
・PL保険関係
 また、工業会事務局としては、各会員メーカーの苦情処理の窓口体制を把握するとともに、消費者からの問い合わせに対応するための共通マニュアル「砂糖の消費者対応マニュアル」(内部向け、非売品)を制作し、各会員会社に配布しました。
 その後、「PL法対策委員会」は年1〜2回程度開催されていますが、特段の問題点は報告されていません。しかし、表示問題、容器包装リサイクル法、遺伝子組換えの問題等、食品の安全性についての製造側の責任はますます大きくなることが予想されます。砂糖のイメージをダウンさせないためにも、消費者への適切な対応に努めています。

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