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お砂糖豆知識[2001年4月]

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最終更新日:2010年3月6日

ALIC砂糖類情報
お砂糖豆知識

[2001年4月]
●てん菜のあれこれ   ●砂糖のあれこれ


てん菜のあれこれ

てん菜の特徴

(社)北海道てん菜協会

てん菜と飼料用ビート
 シシリー島で生まれたビートは、葉や根を利用する野菜として、ヨーロッパ各地に広がっていったが、ガーデンビートとも呼ばれるように、長い間家庭菜園での作物であった。
 畑作物となった最初のビートは家畜の餌として栽培されたものである。これらは飼料用ビート、あるいは家畜ビートと呼ばれている。
 ドイツでは食用ビートを「ローマビート」と呼び、飼料用ビートを「オランダビート」と呼ぶように、16世紀末にスペインからオランダを経てドイツに渡ってきた。17世紀末から18世紀にはフランスをはじめヨーロッパ各地に広がっていった。
 ドイツでの栽培面積を見ると、1955年の統計では飼料用ビートは48万4千haで、てん菜の26万4千haを大きく上回っており、ごく一般的な作物であったことがうかがわれる。現在では飼料用ビートの栽培面積は7千haにまで減少しており、てん菜が約50万haであることからみて、畑作物としての主役が入れ替わっている。
 飼料用ビートは日本でも明治時代にてん菜とともに試作が始まり、大正3年には「黄色中形」が優良品種に指定されている。昭和14年にはその後主力となる「シュガーマンゴールド」が優良品種となった。多汁、多肉質で、貯蔵性がよく、越冬用の飼料として、昭和40年代には3〜4千haの栽培面積があった。しかし、酪農の規模拡大に伴い、諸作業の機械化が難しいなどの理由で敬遠され、平成2年頃からはほとんど生産されなくなった。
 てん菜は飼料用ビートの中より選抜されたものであり、種としては全く同じものあるが、両者が分かれて約200年が経過し、それぞれの目的に合ったように品種改良がなされているので、今日では両者の性質は大きく異なっている。
 一般的に、飼料用ビートはてん菜と比較すると、根形が縦長で大きく、肉質は軟らかく、多汁質で、糖分は低い。
 根の色も「シュガーマンゴールド」は外皮及び肉色はてん菜同様白色であるが、過去に栽培されていた品種には外皮が桃色や橙色のものがあり、ベータ属植物の特徴がよく残っている。
 飼料用ビートの中にはてん菜と交雑して生まれた飼料用てん菜 (sugar beet for fodder) と呼ばれる糖分の高い品種があり、てん菜との区別が難しいものもあるが、古くからの飼料用ビートは根形とリングの数でてん菜と区別される。
 ベータ属の栽培種の根形を模式的に図示したが、飼料用ビートの根はてん菜と食用ビートとの中間的な形をしている (図1)。
図1 ベータ属栽培種の根形比較
ベータ属栽培種の根形比較図
(Handbuuch der Pflanzenzuchtung 1958 一部改変)

 てん菜は逆円すい形、食用ビートは球形、飼料用ビートは円筒形である。この形状は、食用ビートのように頸部が地上部で太り、根も地下部で肥大することによる。
 リングは根の横断面に同心円状に見られるものである (写真1)。このものは形成層と呼ばれ、水や養分を供給する管と砂糖を根に運ぶ管などからなり、このリング間の細胞に砂糖が蓄えられいる。通常、このリングの数はてん菜では8以上、飼料用ビートでは6以下のことが多い。リングの数と糖分との関係についてはてん菜の品種を用いて詳細に研究されたが、結果は関係がなかった。
 しかし、リング間の細胞の大きさと糖分とは関係が深く、細胞が小さく数が多いほど糖分が高く、繊維質で硬い。そのため、てん菜を飼料とすると馬の歯が欠けるなどという話しが生まれる。飼料用ビートが軟らかく、多汁質であるのはリング間の細胞が大きいためと思われる。
 同じ条件でてん菜 (モノエース) と飼料用ビート (シュガーマンゴールド) を栽培した結果は、てん菜の根重、糖分が57.6t/ha、18.00%であったのに対して飼料用ビートは75.8 t /ha、13.17%であった。また、非糖分のカリウム、ナトリウム、アミノ態窒素の含量も極端に多かった (日本甜菜製糖株式会社による成績 1986年)。確かに飼料用ビートの収量は多いが、糖分が低く、非糖分が多いことなどからみて、製糖原料としては不適で、てん菜とは別の栽培種といえる。

○参考資料 てん菜の育種学 E. Kanpp 著 (足立昇造訳) (1963)

てん菜のリング 飼料用ビートのリング
写真1 てん菜と飼料用ビートとのリングの比較
(断面をサフラニンで染色したもの)

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砂糖のあれこれ

ブラウンシュガーとは?

精糖工業会

 最近、手作りブームなのか、お菓子のレシピ本が人気である、という話をよく聞きます。そんな中、従来からよく質問を頂くのが、「ブラウンシュガー」の定義についてです。特に、外国のレシピには度々「ブラウンシュガー」という言葉が登場します。今回は、日本における「ブラウンシュガー」の位置付けについてお話したいと思います。

様々な「茶色い」砂糖
 「ブラウンシュガー」、直訳すれば「茶色い砂糖」です。日本で茶色い砂糖といえば、三温糖、中ざら糖、黒砂糖がありますが、ご存知の通り、これらはそれぞれ、形態も製法も異なります。三温糖、中ざら糖は分蜜糖であり、精製糖です。これらの色は結晶をつくる過程において糖の一部が分解し、カラメル化した色であり、製品によっては色の調整のためにさらにカラメルを後から添加しているものもあります。一方、黒砂糖は含蜜糖です。糖蜜を含んだままで茶色というより黒褐色といったほうがいいかもしれません。その他、これらの砂糖を原料に二次加工をしてつくられているものや、精製する前の原料糖 (粗糖) に近い製品などもあります。特に最近は健康ブームに乗って様々な製品が店頭に並んでいます。
 また、これらと形状が同じまたはよく似ているものでズバリ“ブラウンシュガー”という商品名の砂糖もあります。精糖工業会の会員メーカーの中にも“ブラウンシュガー”という商品を製造・販売しているところがあり ます。では、ブラウンシュガーの定義は何なのか?疑問が湧くのは当然です。

ブラウンシュガーの定義はない
 結論から言えば、ブラウンシュガーの明確な分類基準はありません。まさに直訳「茶色い砂糖」ということで、先に述べたすべての砂糖がブラウンシュガーに属することになります。つまり、「ブラウンシュガー」とは「上白糖」とか「グラニュー糖」など、一般化された名称ではなく、茶色い砂糖の総称というわけです。
 ですから、ブラウンシュガーという分類は、あくまでも「料理」という立場で考えればいいと思います。つまり、これらに共通する砂糖そのものが持つ独特の風味を生かす、ということです。もちろん、黒砂糖のような含蜜糖の方が、風味そのものは強くなりますし、「ブラウンシュガー」という商品名の砂糖でも、いわゆる三温糖のような精製糖の製法で作られているものもあれば、黒砂糖を二次加工して粉末状にしたりと様々です。また、上白糖やグラニュー糖を加熱し、少し茶色くして使うという方もおられるようです。私たちが質問を受けた場合は、一般的で最も手に入りやすい三温糖や中ざら糖を使えば無難ではないか、と答えていますが、製品によって形状や風味は微妙に違うでしょうから、使いやすさをいろいろと試してみて、自分の料理やお菓子に合ったものを揃えて使い分けるのも楽しいかもしれません。



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