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お砂糖豆知識[2002年10月]

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最終更新日:2010年3月6日

ALIC砂糖類情報
お砂糖豆知識
[2002年10月]

砂糖と糖尿病

企画情報部

 日本の食生活は1950年代頃から高度経済成長を背景に一気に欧米化へと進み、動物性たんぱく質や脂肪の摂取が増えてきました。また、自動車の普及等、生活環境が便利になったことにより、身体活動を行うことが少なくなってきました。このようなことから、生活習慣病が増えてきました。その1つに糖尿病があります。糖尿病は様々な合併症を引き起こす恐ろしい病気です。糖尿病に 「糖」 と文字があるので 「甘いもの」 を食べると発症してしまうと誤解している人が多いようです。

ブドウ糖とインスリンの働き
 糖尿病は遺伝的要素があれば発病する可能性が高いと言われています。その他肥満やストレスなどあらゆる環境の影響が重なって発病するようです。体内で正常にブドウ糖が利用でされず、それによって身体のあらゆる機能が低下する病気です。ブドウ糖は身体を動かす際のエネルギー源で、特に、脳では唯一のエネルギー源となります(注)。このように身体にとって大切なブドウ糖は、血液に溶け込み身体のすみずみまで運ばれます。この血液中に溶け込んでいるブドウ糖を 「血糖」 といいますが、この血糖の濃度を 「血糖値」 といい、この血糖値が正常な値に保たれている必要があります。この血糖値を調整するホルモンが人の体に備わっています。とくに血糖値を下げるホルモンがインスリンです。インスリンは血液中のブドウ糖を組織に取り込むための役割を果たしているため、インスリンが正常に作用しないと、筋肉や脳、脂肪細胞などにブドウ糖が取り込まれないこととなり、身体の各細胞内ではエネルギー不足となり影響が甚大です。そのためインスリンの働きが重要なのです。

糖尿病の2つのタイプ
 糖尿病には2つのタイプがあります。
 1つはインスリン依存型糖尿病(I型)といわれており、糖尿病の患者数のうち2〜3%といわれています。この型は、膵臓でインスリンを作っているランゲルハンス島のβ細胞がウイルス等の感染により破壊され、インスリンの産生、分泌ができなくなってしまうものです。この場合はインスリン注射が必要となってきます。
 もう1つはインスリン非依存型糖尿病(II型)といわれており、この型の糖尿病患者数は全糖尿病患者数の80%とも90%ともいわれています。遺伝的要素の他、過食、運動不足などのため、肥満となり、糖の代謝が悪化するために起こるものです。インスリンは正常に分泌されるにもかかわらず、筋肉、肝臓、脂肪細胞など、糖を取り込み代謝する組織のインスリンに対する反応性が低下することによって起こるもので、どんなにインスリンを増産しても血糖値は下がらず、この状態が続くと膵臓が疲労してインスリン産生能力が徐々に低下してしまうものです。

砂糖の摂取が糖尿病を引き起こすか
グラフ
 さて、甘いものを食べると糖尿病を発症するのでしょうか。統計的に糖尿病の患者数と砂糖の消費量の推移を見ると、糖尿病の患者数は戦後増加しているにも関わらず、砂糖の消費量は減少しています。(図)もし、砂糖が糖尿病の原因なら糖尿病患者は減っているはずです。実際は砂糖の消費量と糖尿病患者数は反比例しています。
 このことから、糖尿病は遺伝的要素に加え、過食や運動不足等が重なり合って発症するのであり、決して砂糖の摂取が糖尿病の直接的な原因とはいえないのです。
 また、FAO(国連食糧農業機関)、WHO(世界保健機関)は 「砂糖摂取が子供の行動過多(Hyper Activity)や糖尿病に直接結びつくことはない。砂糖摂取が肥満を促進することはない。」 と宣言しています。
 糖尿病は遺伝的要素のある人が、エネルギーの過剰摂取(食べすぎ)や運動不足により発症しやすくなるものです。バランス良い適度な食事と適度な運動が糖尿病の予防には大切なことです。
(注)絶食が続いた特別な状況を除きます。
参考文献:
おいしく食べて治す糖尿病(ナツメ社)
「砂糖は太る」 の誤解 高田明和著(講談社)
「糖尿病と砂糖」 宮崎滋 執筆(砂糖類情報2001年9月号)



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