和菓子は千年を超える歴史を日本の食文化として生き続けてきただけに実に多くの種類を持っている。
よく知られる “饅頭” を例に挙げても、まず蒸し饅頭と焼き饅頭がある。蒸し饅頭は、餡を種(皮の部分)で包み蒸気を使って蒸しあげるものを言うが、中の餡は、小豆こし餡、小倉餡、つぶし餡、白餡、紅餡、金時餡、うずら餡、えんどう餡、栗餡、くるみ餡、ごま餡、柚子餡、抹茶餡、みそ餡、その他と数多く、別に栗や梅などを実のまま用いるものもある。
また、種の部分に黒砂糖、きな粉、味噌などを加えたものや、米粉(上用粉、カルカン粉など)を用いたもの、そば粉を用いるもの、薯蕷類(つくね芋類)のねばりを利用してふっくらと仕上げるもの、あるいは、麹で発酵膨張させる “酒饅頭”、葛を用いた “葛饅頭” など、ざっと数えるだけで20〜30種類は挙げることができる。
種類が多いのは “饅頭” に限らない。羊羹や最中も同様である。
こうした製法や材料による分類の他に、形状、大きさ、その地域の特長などが加味されるわけであるから、その種類の数は驚くほどにのぼる。
そうした多種類の和菓子の中に “塩味” の菓子がある。
代表的なものでいうと “塩大福”、 “塩羊羹”、 “塩がま”、 “しおみ饅頭” などである。
根強い人気がある商品であり、ところによっては、この塩味の商品のみを製造販売している店もある。
食べると当然だが “塩味” がする。
さぞかし “塩” が入っているのかと思うと実は、“塩味” ではあるものの、塩はさほど入っていない。
使われている砂糖の量のわずか2%〜5%程度のものである。
塩味と言いながら、実は、その味は砂糖によって引立てられているのである。
砂糖の魅力といえば勿論 “甘味” ではあるが、甘味以外にもっともっと大切な働きがあることに気付かされる。
それは何かと言うと、様々な材料の持ち味を引き出す力である。
和菓子は材料の持っている静かな香りや味を生かして繊細だが、実は、砂糖の力があってこそのことなのである。
多種類の商品群を持つ和菓子ではあるが、その全ては砂糖によって生かされているということである。