お砂糖の疑問
精糖工業会
第5回 「砂糖の包装について」
一般の消費者の皆さんが砂糖を購入される際、最も馴染みが深いのがポリエチレンの袋に入った1kg等の製品でしょう。前回、容器包装リサイクル法との関連で、これらの製品には包装素材の識別表示(マーク)を付する義務があることをお話しましたが、その他、製品の安全な保管や輸送のため、様々な工夫がなされ、今日に至っています。今回はこのことについてお話します。
消費者の砂糖購入形態の変化
第二次世界大戦前、日本人の一人当たりの砂糖消費量は、昭和14年で年間15.9kg、昭和15年で13.5kg程でした。その当時、一般の消費者が砂糖を購入する際は、いわゆる「乾物屋さん」のようなお店で量り売りによって購入するのが一般的でした。
その後、戦時中の国による供給統制(配給制)の後、昭和27年に統制が撤廃されましたが、昭和30年前後から、各製糖会社の設備拡充と相まって、その形態に少しづつ変化が現れ始めました。
量り売りの場合、30kg等の紙袋に入った砂糖を小売店が仕入れ、店頭で容器に移し替えられて販売されていましたが、その際の管理が不充分な場合、異物の混入や外気の湿気を吸う等のクレームがあったようです。また、小売店の人手不足や、スーパーマーケットのような量販店形態の発展に伴い、家庭用砂糖の小袋化が進められました。
最初は紙袋
昭和30年代前半の小袋の一般的な形態は紙袋で、内側をラミネートしたものでしたが、容器としての耐久性や、そのものが外から見える透明な袋により商品をアピールする需要が高まったことなどから、現在のようなポリエチレン袋に転換していきました。
しかし、このような製品を大量に生産するには自動包装の機械が必要です。特に上白糖のような水分を多く含む砂糖の包装の自動化には大変な苦労があったようです。機械メーカーとの共同開発により、自動包装機械が完成し、現在のような形態が定着し始めたのは、昭和30年代の後半からだということです。
ピンホールの意味
ところで、このような自動包装機は、砂糖を連続的にポリエチレンの袋に注入し、熱をかけて閉じる(ヒートシール)方法を採っていました。そのため、閉じる時にどうしても空気が入り、膨れた状態になってしまいます。この状態のままだと、輸送時や保管時(重ねて積んだ場合など)に袋が破れる危険性が生じます。そこで、空気を押し出し、形を整える必要性から、ごく微細な穴(ピンホール)を開けることになったのです。
特殊シール方式の導入
その後暫くは、前述したような方式での小袋包装の形態が続きました。ピンホールそのものはごく微細な穴ですから、それ自体から外部の異物(ちり・ホコリなど)が直接入ることはまず考えられません。しかし、虫などがこれを足がかりに食い破り、中に入る可能性は否定できません。精糖工業会では、消費者の皆さんのご質問に対しては、吸湿による固結防止や移り香を防ぐという意味も含めて「できるだけフタ等のできる容器で、密閉して保存して下さい。」と申し上げていました。
しかし、昨今、食品の異物混入事件等が数多く明らかになり、消費者の食の安全に対する意識が高まる中、このピンホールの問題は、砂糖業界にとっても課題の一つでした。そのような中、新たに特殊なシール方法が開発されました。
こ れは、袋を閉じる時に、空気の通り道を迷路のように入り組んだ形で開けてやることにより、異物や虫などが中の砂糖に混入することを防ぐもので、穀物やストッキングの包装にも似たようなものが使われていました。現在では、殆どの製糖会社がこの方法を採用しています。
砂糖の包装形態については、消費者の方々から様々なご意見を頂戴します。安全に、安心して、また便利にお使い頂く為に、今後も研究の余地はあるのだろうと思います。
特殊シール方式の袋 |