ホーム > 砂糖 > 各国の砂糖制度 > インドネシアの砂糖産業の概要について
最終更新日:2010年3月6日
国際情報審査役 |
1.砂糖産業の概要 | 3.主要な生産状況 |
1)国内需給バランス
|
|
2.生産量、消費量および貿易量の内訳 | |
1)砂糖の生産量
|
4.砂糖制度の主な特徴 |
2)砂糖の消費量
|
|
3)輸出入量
|
|
4)異性化糖の位置づけ
|
|
5)代替甘味料の位置づけ
|
|
6)糖蜜及びエタノール産業
|
|
5.砂糖産業の現状 | |
6.砂糖産業の現在の問題 |
インドネシアは、砂糖の大輸入国である一方、砂糖の自給率向上に向けた政府の取組みが行われている。またASEAN諸国との間で進む貿易交渉において、国内の砂糖産業を守るために、砂糖を「最重要品目(highly sensitive products)」に入れる提案をおこなっている。
こうしたインドネシアの砂糖産業について、英国の調査会社LMC社からの報告をもとに国際情報審査役でまとめたので紹介する。
1.砂糖産業の概要
1)国内需給バランス
インドネシアでは1990年代初めに一旦、砂糖の自給達成に近づいたが、その後、消費が引き続き増加した反面、生産量が落ち込んだ結果、1990年代終わりまでには、輸入量が200万トン強前後で推移するようになった。
近年、生産量が回復を見せ始めたものの、人口と所得の増加にともない消費量も堅調な伸びを示しているため、輸入は拡大している。
そういった傾向の中で、輸入全体に占める粗糖と白糖の比率が逆転している。白糖の輸入量は2000/01年度の120万トン強から2003/04年度の160万トン強に増えたのをピークに減少し、2007/08年度には60万トンほどにとどまったのに対して、粗糖の輸入量は新設された独立型精糖工場の新規需要ならびに需要増大を背景に2000/01年度の60万トンから2007/08年度には150万トンに3倍近くも急増する見通しである。
図1 1991/92年度〜2007/08年度の生産量、消費量および純輸出量の推移 |
表1 2000/01年度〜2007/08年度の砂糖需給バランスの推移(単位:1,000トン、粗糖換算) |
2.生産量、消費量および貿易量の内訳
1)砂糖の生産量
国産のさとうきびを原料とする砂糖のほとんどは耕地白糖である。SHS I品質と呼ばれているが、品質の正確な基準については不明である。
精製糖は輸入された粗糖を原料としている。インドネシアの精糖工場で生産される砂糖はEC2等級糖(EC No.2grade sugar)で、色価が45ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)単位以下、糖度が99.8度以上、水分が0.06%以下である。
2)砂糖の消費量
総消費量は2000/01年度以降、年平均3〜4%程度の伸びを見せている。2007/08年度の消費量(粗糖換算)は家庭用が260万トン程度、加工用が200万トン強に上る見通しである。
加工用部門では、飲料が加工用途に占める割合で55%、全体でも25%を占め最も多い。一人当たりの消費量は着実に増えており、20キロ強に達している。
インドネシアでは、国内の精糖企業は精製糖を加工用部門にしか販売できず、家庭用部門は耕地白糖しか購入できないと法律で定められているが、この2つの部門を常に明確に区分できるとは限らず、重複するケースが生じることは避けられない。例えば、小規模な家族経営の会社は、恐らくいずれの部門に入れることも可能であると思われ、これが、この区分をあいまいにする要因となる場合がある。そのため、国産の精製糖の10%程度が家庭用部門に販売されていると見られる。
3)輸出入量
粗糖の最大の輸入先はタイで、他にブラジルとオーストラリアからも輸入されている。ただ、ここ最近は、タイからの輸入量が2000年のおよそ46万5,000トンから2006年には11万トンと75%ほども急減した反面、オーストラリアからの輸入が同時期、5万トン強から45万トン弱へと8倍もの伸びを見せた。
・白糖に関しても、タイは最大の輸入先であるが、最近ではEUからの輸入も多い。しかし、設備更新への投資が続いていることを考えると、今後、輸入砂糖に占める粗糖の比率が増大するのは確実であると思われる。
・輸入砂糖の糖度は98.5度から98.8度程度である。一方、色価に関しては、1,200ICUMSA単位以下の輸入砂糖は、粗糖とみなされない。これは、貿易業者が粗糖用の低い関税で輸入した低品質の白糖を家庭用部門に販売することを防ぐための措置である。
表2 2000/01年度〜2007/08年度の砂糖消費内訳の推移(単位:1,000トン、粗糖換算) |
表3 砂糖の国別輸入量(単位:1,000トン、粗糖換算) |
4)異性化糖の位置づけ
異性化糖は需要が少ないことに変わりがないものの、消費量がここ数年で60%を超える伸びを示し、2000/01年度の1万5,000トンから2007/08年度には2万4,000トンに達するものと予想される。現在は、有カロリー甘味料の消費全体に占める比率が1%にも満たないとはいえ、国内初の大規模な異性化糖工場の建設が現在計画されていることなどから、今後、その人気が高まる可能性がある。
インドネシアでは異性化糖の輸出入を行っておらず、異性化糖はすべて国内で生産ならびに消費される。
表4 2000/01年度〜2007/08年度の有カロリー甘味料需給バランスの推移 |
(単位:1,000トン、白糖・固形換算) |
5)代替甘味料の位置づけ
インドネシアの代替甘味料部門は比較的規模が大きく、2007/08年度の消費量は甘味度による白糖換算で80万トン強に上るものと予想される。これは甘味料全体のおよそ16%にあたり、ここ数年で一定の市場占有率を確保したと言える。
ノンカロリー人工甘味料の中で最も人気があるのはサッカリンで、人工甘味料では全体の3分の2、代替甘味料でも全体の10%ほどを占めている。
インドネシアは1998年まで世界有数のチクロ生産国であったが、中国との輸出競争の激化に、政府によるチクロ(およびサッカリン)生産への新規投資の規制が重なり、その後、生産量が減少した。しかし、2000/01年度以降は、村レベルで製造される飲料を中心にチクロの消費が着実に増えており、再び増加に転じつつあるように見受けられる。
アスパルテームは、飲料、家庭用および非食用の各部門を中心に、伝統的にサッカリンとチクロがほぼ独占していた市場にわずかではあるが食い込んできており、2007/08年度には消費量が白糖換算で2万トンに達する見通しである。ステビオサイドは、家庭用部門やその他の食品部門などで5,000トン前後消費されている。
6)糖蜜及びエタノール産業
糖蜜は、生産量が2000/01年度の100万トン強から2007/08年度には150万トン強へと50%近く、消費量が同時期、90万トン弱から120万トン強へと40%ほど、それぞれ増加する見込みである。
このような国内生産の拡大にともない糖蜜の輸入量は減少し、2006/07年度以降はゼロとなっている。その一方で、輸出量は2000/01年度の11万8,000トンから2007/08年度には40万トンを超え、実に240%を超える伸びを見せるものと予想される。
一方で、インドネシアのエタノール部門は現時点ではまだ規模が小さく、生産能力は年間1億7,000万リットル程度に過ぎない。
砂糖産業内でもエタノールの生産は普及しておらず、飲料産業向けに糖蜜を原料とした飲用アルコールを生産する蒸留所は58ヵ所あるが、このうちエタノールの製造を手がけているのは3ヵ所しかない。
しかし、政府が燃料の輸入需要の削減と雇用創出に力を入れるなか、国内のエタノール産業の育成に対する関心は非常に高い。具体的な時期についての合意には至っていないものの、ガソリンへのエタノールの混合を義務付ける措置を導入する可能性について一部で議論がなされている。
表5 2000/01年度〜2007/08年度の代替甘味料消費の推移 |
(単位:1,000トン、甘味度による白糖換算数量) |
表6 糖蜜およびエタノールの生産量の推移 |
3.主要な生産状況
1)栽培部門の生産状況
インドネシアでは、さとうきびの単収がここ数年の平均で75トンと高い上に、比較的安定している。一方で、同国は熱帯地域に位置し、しょ糖の生成を促す一日の寒暖の差が少ないため、さとうきびの品質が低く、1トンの砂糖を生産するためには平均で12.5トン以上のさとうきびが必要となる。
民間の製糖企業は、国営工場にさとうきびを供給する小規模な農家に比べて、さとうきびの単収と砂糖の歩留まりがはるかに多い。ジャワ島以外の地域の国営工場が2005/06年度に生産した砂糖の量は1ヘクタール当たり4トン程度で、民間の製糖企業の平均7トンを大きく下回っている。また、図2からわかるように、ジャワ島以外の地域の工場は、ジャワ島の工場よりも砂糖の歩留まりが一貫して高い。
図2に、民間工場・国営工場別ならびに地域別の砂糖の歩留まりと、インドネシア全体の平均歩留まりの推移を示した。
2000/01年度から2003/04年度の4年間、さとうきびの質の低下によって、ジャワ島以外の地域を中心にさとうの歩留まりが著しく低下した。この主な要因としては、さとうきびの価格下落にともない、きめ細かな栽培が行われなかったことだけでなく、植え替えに投資する意欲が奪われたことが挙げられる。また国内価格の低迷によって、収益性の高い代替作物への転換も相次いだ。
農園の大部分が老朽化し、生産力に劣り、再生の必要があるなか、インドネシア政府はさとうきびの植え替えプログラムを導入した。5万ha分のさとうきびが高収量品種に植え替えられるとともに、「食料安全融資計画(Kredit Ketahanan Pangan―KKP)」を通じて、さとうきび栽培農家を対象とした低利融資制度が開始された。これに加え、高水準の砂糖最低価格も設定されている。こうした政府の対応によって、収穫量は2004/05年度に、粗糖換算で220万トンにまで回復し、その後2年間も、順調な伸びを示した。
表7 2000/01年度〜2006/07年度のさとうきび生産状況の推移 |
図2 1998/99年度〜2005/06年度の砂糖歩留まりの推移 |
表8 2000/01年度〜2006/07年度の製糖工場の主な生産状況の推移 |
2)製糖部門の生産状況
インドネシアの製糖部門の処理能力は平均で年間さとうきび3,500トン程度である。ただし、2000/01年度以降に一部の国営化が進められ、工場の平均処理能力がおそよ10%アップし、産糖量は2000/01年度の1,700トンから2006/07年度には約2,500トンに50%近くも上昇した。また図3からも、ジャワ島以外の地域の工場で同時期、1工場当たりの産糖量が50%近い伸びを示していることがわかる。
4.砂糖制度の主な特徴
アジア金融危機を受けた国際通貨基金(IMF)との協定の一環として、インドネシアの砂糖市場は1998年に部分的ではあるが自由化された。ところが、安価な輸入砂糖が急増したため、インドネシア政府は、輸入の規制や、栽培農家を対象とした最低価格の設定など、国内の砂糖産業の保護策を進めている。
インドネシアの砂糖部門の課題としては、未発達な農法、生産資材費の高さ、さとうきびの成長期における施肥不足、融資制度の未整備などが挙げられる。これらすべてが不振の要因となって、国内生産者は輸入砂糖に押され、苦戦を強いられている。こうした事態を受け、同政府は2002年から国内生産者の支援を目的に一連の保護策を打ち出してきた。
図3 1998/99年度〜2005/06年度の工場あたり産糖量の推移 |
1)生産管理
インドネシアには現在、砂糖の生産量を管理する制度はない。生産を区域に分割する措置も取られていないため、栽培農家はさとうきびをどの工場へも自由に納入できる。
2)国内価格支持
インドネシア政府は2004年に白糖の最低価格を導入した。最低価格は2007年9月現在、1キロ当たり4,800インドネシア・ルピア(1米ドル9,122ルピア換算で、1トン当たり526米ドル)である。砂糖は実際には、さとうきび生産の端境期を中心に、この最低価格よりも幾分高い水準で取引される傾向にある。
砂糖産業を対象とした主な支援策としては、最低価格のほかに、輸入割当制度と輸入許可制度も採られている。砂糖部門の改革によって、食料調達庁(National Logistics Agency―BULOG)は唯一の輸入機関ではなくなり、民間企業も砂糖の輸入・販売を手がけるようになったが、その一方で、輸入許可証の義務付けや関税など、輸入に対する規制は厳しい。
産業貿易省が2002年9月に公布した砂糖販売規制条例(sugar marketing regulation)によって、指定輸入業者(輸入精糖業者(importer producer―IP))以外の粗糖輸入は規制されている。指定輸入業者も、自らの施設で精糖することが義務付けられるとともに、他者に対して、あるいは市場において粗糖を販売することが禁じられている。また、耕地白糖を輸入できるのは、砂糖の登録輸入業者(Registered Importer for sugar―IT―sugar)5社だけである。
2004/05年度から2006/07年度までの3年間における、さとうきびおよび砂糖の国内平均価格は、さとうきびの生産者価格が27米ドル/トン前後であるのに対して、砂糖の卸売価格は470米ドル/トンであった。
価格支持策の撤廃と、輸入砂糖に対する国内生産者の競争力の著しい低下が、安価な輸入砂糖の急増を招くなか、砂糖産業では輸入関税を最高80%にまで引き上げることを求める声が強い。しかし、このような政策の転換にはIMFの暗黙の同意が必要になると思われるが、これがすぐに実現する可能性はまずない。
インドネシア政府は現在までのところ、こうした砂糖産業からの要求をはねつけている一方で、砂糖をAFTA(ASEAN自由貿易地域)の「最重要品目(high sensitive list)」に入れる提案を行っている。(注:機構参考説明)
表9 2004/05〜2006/07年度のさとうきびおよび砂糖平均価格(米ドル/トン) |
図4 2000/01年度〜2006/07年度の国内卸売価格の推移 |
(機構参考説明)
AFTA(ASEAN自由貿易地域)はCEPT(セプト、Common Effective Preferential Tariff,共通有効特恵関税)という域内関税制度を用い、域内の関税障壁、非関税障壁を引き下げることにより貿易の自由化を図り、域内経済の活性化を促進することとしている。このCEPTの関税削減リスト(IL,Inclusion Lists)の対象となっている品目については、インドネシアは原則として全ての物品に対して2010年1月1日より前に関税を撤廃しなければならない。
ただしCEPTは一部の品目について例外的な取り扱いを認めており、重要品目(Sensitive products)及び最重要品目(Highly sensitive products)がその取り扱いの一部にあたる。
これについては、重要品目が2010年までの関税削減率を緩やかにできるうえ、最終関税を0〜5%までに削減することを求めていることに対し、最重要品目については(インドネシアの場合、)最終関税を20%までの削減で済ますことができものとなっている。
また非関税措置についても取り決めが行われており、数量制限措置(Quantitative restriction,数量制限や輸入許可制など)の2010年までの撤廃も決められている。
インドネシアが提出している2007年のCEPTの関税率表によると、砂糖(HSコード1701)の分類については、全てS(HSL)との標記がなされており、現状重要品目の取り扱いである砂糖が最重要品目へ分類が変更されるよう、インドネシア政府がASEANに対して求めていることを表しているものと見られ、その最終的な結果が注目される。
また、同様にインドネシア政府による報告によれば、非関税措置についても、輸入砂糖に対する物品税の徴収、砂糖や一部砂糖関連製品に対する輸入許可制度などが行われており、2010年以降これらの措置についてもどのような取り扱いがされるかも注意する必要がある。
3)市場アクセス
輸入砂糖の1キロ当たりの関税は現在、粗糖が550インドネシア・ルピア、白糖が790インドネシア・ルピアで、2007年の国際価格に照らすと、従価税は粗糖が24%、白糖が28%となる。いずれの料率も、インドネシアのWTO約束表で定められた全輸入砂糖および白糖の最終関税率95%よりも低い。
4)販売制度
インドネシアでは現在、政府による砂糖の国内市場や国内価格の管理を行っていない。BULOGが砂糖輸入業務を独占する体制に終止符が打たれたことで、市場の動向に応じた種類と量の砂糖が輸入されるようになった。自由化される前には、BULOGが輸入する砂糖は白糖に限られていたが、独占の撤廃によって粗糖として輸入され、国内で精製される砂糖の量が増えている。こうした輸入糖の一部はVHP(高糖度)粗糖で、直接消費される。
砂糖市場の自由化に向けた取り組みの一環として、砂糖貿易の許可制度も廃止された。
表10 現在の貿易政策の内容 |
5)栽培農家と製糖業者間のとりきめ
栽培農家と製糖業者は、砂糖ならびに糖蜜の販売から得た利益を分配している。この分配率は現在、栽培農家が65%、製糖業者が35%である。栽培農家が受け取る分配金の算定方法を下に整理した。
栽培農家分配金=TC×R×1.003×65%×Ps
TC=さとうきびのトン数
R=ショ糖回収率
1.003=定係数または調整係数
Ps=砂糖価格
5.砂糖産業の現状
インドネシアの砂糖産業は、ジャワ島の国営部門、ジャワ島以外の地域の国営部門、ジャワ島以外の地域を中心とした民間砂糖部門の3つに大別できる。
1)製糖産業
・支配的なシェアを誇ってきた国営企業だが、市場占有率が2001/02年度の63%から2005/06年度には53%にまで低下し、衰えが見え始めた。一方、民間企業は、ほとんどがスマトラ島のランパンに生産拠点を置いている。ジャワ島の国営部門はおよそ35ヵ所の工場から構成され、主に小規模農家からさとうきびの供給を受けている。インドネシアには製糖工場が59あるが、そのうち42が国営で老朽化したものがほとんどを占め、改修の必要があることを確認された工場は実に52にも上る。
・インドネシア政府は1970年代以降、ジャワ島以外の地域における民間部門の活性化を図るため、これら地域の砂糖産業に資金を投入する政策を推進してきた。ジャワ島以外の地域では土壌が肥沃とは言えず、概して砂糖の潜在的な生産力が低いが、ジャワ島に比べて、工場の近代化と大規模化が進んでいる。
・工場の規模は、国営工場か民間工場か、また地域によっても大きく異なる。ジャワ島の2005/06年度における工場の平均処理能力(1日当たりのさとうきびの処理量)を見ると、最低が国営企業の2,600トンにとどまったのに対して、最高が民間企業の3,300トンに達している。ジャワ島以外の地域では、国営工場が平均で約6,100トン、民間工場が約9,400トンと、こうした処理能力の差がより一層顕著となる。
・これに加え、ジャワ島ではここ数年、さとうきびの作付面積も減少している。この主な要因としては、下記などが挙げられる。
1.コメと比べて砂糖の価格が下落し、砂糖からコメに栽培を転換する農家が相次いだ。
2.各農家の裁量が広がった。
3.さとうきびの生産資材費と比べて、砂糖の価格が下落した。
・民間工場のほとんどは、ジャワ島以外の地域に拠点を置いている。民間部門で中心的な役割を果たすのは主要企業4社(このうち3社は同じグループの傘下)で、その生産量を合わせると国内全体のおよそ50%に上る。ジャワ島以外の地域は気候などが、さとうきびの生育条件にあまり適していないとはいえ、農家と工場の規模が大きい上に、急激なルピア安にともない国内の生産資材費が下がったことで、コストが比較的低い農家や工場が多い。
・ジャワ島以外の地域では、国営工場と民間工場の業績に歴然とした差がある。民間製糖企業は、国営製糖企業に比べて、砂糖の歩留まりとさとうきびの単収がはるかに高い。1ヘクタール当たりの産糖量は、ジャワ島以外の地域の国営製糖企業が平均で4トンにとどまるのに対して、民間製糖企業は平均で7トン弱に達している。
2)精糖産業
インドネシアで現在稼動している精糖工場は5つである。
・このうち3ヵ所(PT Jawamanis、PT Sentra、PT Permata)はジャワ島西部にあるCilegonの港湾地区にある。
・Angel精糖工場は、Cilegon港から20キロほど離れた場所に位置している。
・DUS精糖工場は、2006年に稼動を始めたばかりで、ジャワ島中部にある。
5ヵ所のうち4ヵ所の精糖工場が処理能力の増強を計画している。認可された処理能力を超えて増強することはできない(言い換えると、許可を得て輸入できる粗糖の数量に左右される)とはいえ、PT Jawamanis、PT Permata、Angelの3精糖工場はいずれも2008年に生産量を30%前後増やす予定である。
インドネシアでは精糖部門が大きな注目を集めており、投資コストの低さと、さとうきびの供給にかかわるリスク回避を理由に、製糖産業よりも精糖産業を好む投資家が多い。
粗糖を輸入して精製する許可を受けた企業は現在、11社ある。だが、家庭用部門には国産さとうきびを原料とした砂糖(インドネシア国内では、「農家糖(farmer sugar)」と呼ばれている)の供給しか認められていないため、精糖工場の供給先は国内の加工部門に限定されている(推算で白糖190万トン前後)。耕地白糖が大幅に不足していると産業貿易省が判断しない限り、精製糖を家庭用部門に供給することはできず、設備過剰に陥る危険性が高い。そのため、政府は、新たな許可書の発行を停止しており、また、同部門にさらなる投資を行うことはできないと明言しているが、すでに輸入許可書の発行を受けている既存の精糖工場を買収することは可能であると思われる。
表14に、認可処理能力と所在地に加えて、現在稼動しているか否かをグループ別に示した。現在稼動している精糖工場に認められた処理能力が、精糖市場全体の規模に等しい点は注目に値する。現在は稼動していないとはいえ、輸入粗糖を精製する許可を得ている企業が他にも6社あるため、認可処理能力の合計は、現在の国内市場の規模よりもはるかに多い350万トンに上る。
設備過剰が同部門にもたらす問題の大きさは、言うまでもなく、計画されている精糖工場がどの程度早く操業を開始するかによって決まる。すべての精糖工場が確実に生産を開始するとはとても言えないのが現状ではあるが、3つの精糖工場新設プロジェクトは、よく練られた内容で、実施に移される態勢が整ったように思われる。これらのプロジェクトが進められれば、2009年までに精製能力がさらに50万トン程度増えることになる。
この問題に対処するため、インドネシア政府は、新設の精糖工場に供給される粗糖の60%以上を国産にすることを義務付けると発表した。しかし、この政策の実効性は未知数と言える。支持価格で直接消費用の砂糖として販売することもでき、また、粗糖と耕地白糖の生産コストにあまり差がないことから、粗糖の国内生産者は高い水準の価格設定を求める可能性が高い。そうなれば、国産粗糖の価格が、粗糖の輸入コストを大幅に上回りかねず、新たな精糖工場は国産粗糖の購入コストをまかなうことができなくなる。
表11 2006/07年度におけるジャワ島の工場の生産状況(生産量は2005/06年度分) |
表12 2006/07年度におけるジャワ島以外の工場の生産状況(生産量は2005/06年度分) |
表13 主要な製糖会社(2006/07年度) |
表14 主要な製糖会社 |
6.砂糖産業の現在の問題
● 政府は引き続き国営工場の改修に取り組んでいるが、その作業は相変わらず遅々として進んでいない。工場の最近の負債構造を見ると、銀行が貸し渋りをしている現状が浮かび上がってくる。国営企業にとって砂糖は現在、収益性の高い事業であるが、砂糖の関税が極めて低い水準に設定された2000年代初めに、国営企業は莫大な負債を背負った。また、国営企業はコーヒーやココアなどほかの産品を扱うことも少なくないが、それが高収益を常にもたらしてきた訳ではない。砂糖産業を支援するため、政府はソフトローン(長期低利貸付)を約束しているが、現在のところまだ具体化されていない。
● 貸し渋りは、さとうきび栽培部門でも大きな問題となっている。1997年の金融危機前までは、銀行は有利な金利で農家に積極的に融資を行っていた。しかし、その後、こうした状況が一転したため、政府から有利な条件で貸付を受ける制度もあるとはいえ、同部門の業績向上はすべて、個々の農家の投資によって実現せざるを得ない。
● 先に説明したように、精糖部門では既存の工場が規模の拡大を図るとともに、新たな工場が操業を開始するなか、設備過剰に陥る恐れが出てきており、これが最大の問題となっている。この問題にどのような対応がなされるのか、まだ不透明ではあるが、一つの方策としては、政府が精糖工場に国内家庭用市場への販売を一部認めることが考えられる。とりわけ、砂糖の生産量の増加を上回るペースで消費量がこのまま伸び続ければ、これは魅力的な選択肢となる可能性が高い。
● インドネシアでもバイオ燃料は現在、大きな注目を集めており、政府はバイオエネルギーの原料作物の栽培用に最高350万ヘクタールの土地を造成(約350万人分の雇用を創出)するという野心的な計画を掲げている。しかし現在のところ、この目標の達成に向けた明確な道筋は示されておらず、法制度も整備されていない。ただ、適した規制体制が整えられるとすれば、さとうきびとキャッサバがエタノールの原料に最適であると思われる。
ページのトップへ |