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中国の砂糖産業の概要〜成長著しい巨大市場とそのかじをとる中国政府〜

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類情報ホームページ


[2008年11月]

調査情報部調査課

 中国の砂糖産業は、甘しゃ糖(さとうきび)とてん菜糖(ビート)の2つの部門に分かれ、その生産の主流は甘しゃ糖部門で、砂糖生産全体の90%強を占めている。国内における砂糖の生産量(粗糖換算)は2001/02年度(10月〜9月)が970万トンだったが、2002/03年度には1,120万トン近くまで達した。2003/04年度から2005/06年度まではやや停滞して1,000万トン台で推移したが、その後は増加傾向にあり、2007/08年度には約1,610万トンにまで達する見込みである。砂糖の消費量は年々増加し、中国政府は、国際価格が高騰する中、国内市場の供給および価格安定のために国家備蓄砂糖の放出などの需給調整を行っている。
  このような中国の砂糖産業の概要について、英国の調査会社LMC社からの報告をもとに、とりまとめたので紹介する。
  なお、LMC社は今回の調査報告に当たり、中国砂糖協会からもデータを入手した。このため、本誌2006年8月号に掲載した同様の調査報告とは相違している過去データがある。

1.甘味料市場の概要

 中国の甘味料市場は砂糖と人工甘味料に加え、とうもろこしを原料とする甘味料から成り多様な市場といえる。都市化が進み、生活様式と食生活が急速に変化するにつれ、中国ではここ数年、食品産業が国民所得の増加率をも上回る成長を見せており、これを追い風に、甘味料の消費量もここ数年大きな伸びを示している。
  中国の砂糖産業は、甘しゃ糖部門とてん菜糖部門の2つに大別できる。さとうきびは主に南部の広西チワン族自治区、雲南省および広東省で、てん菜は北部の新疆ウイグル自治区と黒龍江省で、それぞれ栽培されている。2つの部門の規模を比べると、甘しゃ糖が砂糖全体の生産量の90%強を占め、圧倒的なシェアを誇っている。
  2000/01年度以降、生産量が増大し、その大部分はさとうきび産地に集中しているが、北西部の新疆ウイグル自治区ではてん菜の生産が拡大してきた。
  さとうきびは、広東省や福建省など従来からの産地よりも、広西チワン族自治区や雲南省を中心とする新興の産地での作付けが急速な伸びを見せるようになってきた。
  中国では、南部で砂糖の生産が盛んであるが、その背景には、これら地域の経済発展を促す政策を政府が進めていることが挙げられる。現在、中国で最大の生産量を誇るのは広西チワン族自治区で、ここ数年、中国全体の甘しゃ糖産糖量の60%ほどを占め、2006/07年度には生産量が700万トンを超えた。また、雲南省は同年度、180万トンであった。
  中国では、砂糖の供給が過剰と不足を繰り返す傾向にある。2003/04年度と2004/05年度には供給不足に陥ったが、2006/07年度と2007/08年度の増産で、供給過剰となった。砂糖の輸出競争力がないことから、政府は余剰在庫を買い上げるなどして、国内価格の暴落を防ぐ上で中心的な役割を担ってきた。
  政府はここ数年、砂糖産業の支援策として、サッカリンを中心に人工甘味料の生産能力を制限することに力を入れている。この取り組みによって、サッカリンから砂糖への消費の転換が促されたことで、砂糖の消費量は150万トンから200万トン程度増加した。とうもろこしを原料とする甘味料も、この政策により、2003/04年度以降、(当初が非常に小さかったとはいえ)市場シェアを伸ばしている。ただし、とうもろこし価格の世界的な高騰と国内のでん粉価格の上昇によって、この部門を取り巻く環境は現在、厳しさを増す状況にある。

資料:LMC

2.砂糖の需給動向

 中国ではここ数年、砂糖消費量が比較的安定した伸びを見せる反面、生産量については、全体的増加傾向にあるものの、周期的に変動があるため、供給不足と供給過剰を繰り返している。
  中国は、必要に応じて他国より砂糖を輸入しているが、キューバのみ貿易協定に基づき、長期的な契約を結んでいるため、年間40万トン前後の砂糖を輸入しなければならず、国内の需給状況にかかわらず、国内在庫をより一層押し上げるといった一因となっている。
  その一方で、政府は、余剰在庫を需給調整に用いているため、輸出は最小限にとどめられてきた。中国では、砂糖の生産コストが国際的にみて高いため輸出競争力がなく、政府が輸出補助金を付けない限り、輸出によって余剰を解消することはできない。2001年12月に世界貿易機関(WTO)に加盟したことで、大規模な輸出補助金を支出することは事実上不可能となっている。

資料:LMC
図1 砂糖の生産量と消費量、純輸出量の推移
表1 砂糖の需給動向
(単位:1,000トン、粗糖換算)
注:2007/08は予測値
資料:ISO、LMC 推定値

国家砂糖備蓄制度〜備蓄砂糖を放出、積み増し〜
  政府は、国務院が1991年11月に公布した「国務院の砂糖調整経営管理関連政策通知について(原文:)」および財政部が1996年1月に公布した「国家備蓄砂糖財務管理方法(原文:)」に基づいて、国防上の突発的事件や自然災害時はもとより、国内市場のコントロールと価格安定のために、砂糖の備蓄および緊急時の放出のための国家砂糖備蓄制度を設けた。
  例えば、2002/03年度や2007/08年度のように供給過剰が生じると、政府は在庫を積み増して、余剰砂糖が市場に出るのを防ぎ、価格の支持を図ってきた。政府が2008年に入って国内市場から買い上げた砂糖は50万トンに上るが、その後も価格が平均的な生産コストを割り込む水準にまで下落したことを受けて、さらなる砂糖の買い上げを行う方向にある。これとは逆に、2004/05年度や2005/06年度のように生産不足に陥ると、政府は入札を実施して、備蓄砂糖の競売、放出を行うことで、砂糖価格の急騰を防止してきた。2006年1月には、価格の安定を図るために、国家備蓄分から18万4,000トンの砂糖が放出された。

砂糖工場の現状と品質
  現在、稼動中の296工場のうち、甘しゃ糖工場は251ヵ所、残りの45ヵ所は、てん菜糖工場である。
  中国で生産される砂糖は、次のとおり品質の高い順から4つの等級に区分できる。

  • プレミアムグレード(または精製糖)(45ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)単位未満)
  • スーパー、グレードA(80〜100ICUMSA単位)
  • ソフトホワイトシュガー
  • ソフトレッドシュガー

 生産量が最も多いのは、糖度が99.6度前後、色価が80から100ICUMSA単位の「グレードA」であり、生産量全体(てん菜糖と甘しゃ糖)の90%前後を占める。
  データのある製糖工場の大半は、糖度99.8度〜99.9度の砂糖を生産している。色価は砂糖の種類によってばらつきが見られる。てん菜糖は色価が15〜40ICUMSA単位と低い。一方、甘しゃ糖は大半が31〜100ICUMSA単位となっている。

表2 種類別の砂糖の品質
注:一部の甘しゃ糖工場、てん菜糖工場および精糖工場のデータから算出。
資料:LMC

中国の貿易政策
  中国では、国内市場の安定を維持し、国内の製糖業者を保護することを目的とした砂糖の貿易政策が採られており、国内の生産量が不足した時以外に、粗糖の加工ならびに国内で販売するために輸入することはできない。なお、粗糖は精製後に白糖として再輸出するとの確約があれば、輸入が許可される。この再輸出は、プレミアムグレードの砂糖が高騰している時には、魅力的な事業といえる。
  近年、中国は砂糖の純輸入国の状態が続き、輸入量が2007/08年度は、粗糖換算でおよそ90万トンに上る。再輸出分を差し引くと、これは砂糖消費量全体の6%ほどに当たる。

表3 砂糖の国別輸入量(2006年)
(単位:1,000トン、粗糖換算)
資料:LMC

砂糖の国内消費〜1人当たりの消費量は年々増加〜
  中国の砂糖の国内消費は、家庭用消費が各年度とも全体の20%程度を占め、それ以外は業務用である。過去7年間この構造は変化していない。業務用では、飲料が29%、菓子類が12%、パン類が10%で用途の主流をなしている。家庭用消費量が2001/02年度の1,873千トンから2007/08年度には2,866千トンという飛躍的な伸びを示した最大の要因は、1人当たりの消費量の増加であり、2007/08年度は10.9kgと見込まれている。

表4 砂糖の消費量の推移
(単位:1,000トン、粗糖換算)
注1:概算値、2:予測値
資料:LMC

3.その他の甘味料

異性化糖〜需要の着実な伸び〜
  中国では、とうもろこしを原料とする甘味料の需要は比較的少ないとはいえ、急速に拡大している。このうち飛び抜けて消費量が多いのはぶどう糖で、400万トンほどに上る(白糖換算で220万トン)。
  異性化糖は、2007/08年の消費量が飲料産業およびパン類産業向けを中心におよそ100万トン(白糖換算)に上った。この部門の成長は目覚ましく、近年、砂糖から市場シェアを奪うようになってきた。
  とうもろこしを原料とする甘味料の生産拡大を促す要因を分かりやすく説明するために、図2に、砂糖と価格が拮抗した時に異性化糖製造業者が受け取ることのできる加工マージンを示した。
  2006年には砂糖価格が急騰したことで、異性化糖の加工マージンが上昇し、異性化糖の生産拡大を促す強い誘因となった。
  2007年以降、砂糖価格が下落する一方、とうもろこしの価格が上昇してはいるものの、この上昇分を補うように、副産物(コーングルテンフィード、コーングルテンミール、コーンオイル)も値上がりしている。そのため、加工マージンは2005年当時の水準近くにまで下落したが、高い水準を維持している。
  異性化糖の生産は、原料となるとうもろこし価格や砂糖価格の他に、でん粉の価格にも左右される。図3で、でん粉と異性化糖のマージンを比較した。
  マージンは、異性化糖が先ほど述べたように2006年をピークに低下しているのに対して、とうもろこし価格は、タピオカの価格高騰などもあり、過去最高を更新し続けている。でん粉から異性化糖を製造するには、追加の資本コストとエネルギー費がかかることを踏まえると、でん粉と比べた場合の異性化糖の魅力は、ここ2、3年に限っては横ばい状態である。

表5 砂糖およびとうもろこしを原料とする甘味料消費の推移の推移
(単位:1,000トン、白糖換算)
資料:LMC
資料:LMC
図2 異性化糖の加工マージン
資料:LMC
図3 でん粉と異性化糖のマージンの比較

代替甘味料〜人工甘味料生産量、消費量ともに世界一〜
  中国は、人工甘味料の生産量、消費量ともに世界一である。2006年の消費量は砂糖換算(概算)でおよそ320万トンに達する。中でもサッカリンとチクロのシェアが多い。
  中国政府が国内製糖業者を支援するために、サッカリンの生産を制限する方針を決めたことを受けて、サッカリンの消費量は2000年から減少し続けている。政府は人工甘味料市場におけるサッカリンのシェアを制限するために、年間生産量と国内販売量の目標値を定めてきたが、実際の販売量はこの目標値を上回る傾向にある。
  その一方で、中国産のサッカリンとチクロは、生産量で世界市場を席巻している。サッカリンとチクロの2006年の輸出量は、サッカリンが砂糖換算で480万トン、チクロが70万トンに達し、それぞれの国内の生産量の70%と60%を占めている。輸出は、ほぼすべてアジア向けである。
  表6に、中国における人工甘味料の消費量を示した。残念ながら、人工甘味料市場は、参入企業が少ない上に、一般に公開されている情報があまりないため、その動向を把握することが極めて難しい。また、この市場は現在、サッカリン工場の閉鎖が相次ぎ、これによる短期的、長期的な影響が見極めづらいなど、絶えず変化する状況にある。こうした理由から、ここでは2006年までのデータしか示していない。

表6 人工甘味料消費の推移
(単位:1,000トン、白糖換算)
資料:LMC

4.さとうきびおよびてん菜の生産状況

〜さとうきび生産の90%は広西チワン族自治区、雲南省、広東省〜
  中国では、2006/07年度には、さとうきび、てん菜ともに収穫量が2005/06年度に比べて大幅に増加した。広西チワン族自治区では、作付面積の増加に単収の上昇が重なり、さとうきびの収穫量の増加幅が最も大きかった。同自治区では今後も生産量が増加する可能性が極めて高いが、他のさとうきびおよびてん菜の産地では、代替作物との激しい競争が繰り広げられている。
  2007/08年度には、さとうきびの作付面積は引き続き増加して、甘しゃ糖の生産量の増加に拍車がかかった。てん菜の作付面積は、2002/03年度から2004/05年度にかけて減り続けたが、2005/06年度以降上昇に転じている。
 
(1) さとうきび
〜収穫量が1億トンを超える〜

  中国におけるさとうきびの作付面積は、2002/03年度の約110万ヘクタールから、2007/08年度には約170万ヘクタールへと6年間で増大し、収穫量も1億トンを超えるまでになった。
  さとうきびの単収は1ヘクタール当たり平均70トン前後で、世界の主要な甘しゃ糖生産国に比べると低いが、ここ2年間で、幾分の改善が見られる。一方、単収は地域によって大きな開きがあり、広東省と四川省が常に1ヘクタール当たり75トンを超えているのに対して、雲南省と湖南省は60トンに満たない。
  ショ糖含有率は14%前後で、ここ20年間、わずかな改善しか見られない。
  作付面積が増加していることを受けて、産糖量も増加傾向にあり、2007/08年度は、2002/03年度に比べて約7割上昇し、1,487万トンに達した。

資料:LMC
図4 さとうきび1ヘクタール当たりの産糖量の推移
表7 さとうきびの生産動向
注: さとうきびの生産額は、各年の砂糖の生産に使われたさとうきびの数量に、砂糖に加工されたさとうきび1トン当たりの農家受取価格を乗じたものである。
資料: LMC(中国砂糖協会によるデータ)

〜工場数減により、工場の処理能力が向上〜
  中国政府は近年、産業合理化策の一環として、工場の稼働率向上を目指し、不採算経営の製糖工場を閉鎖させる政策を進めてきた。そのため、甘しゃ糖部門の生産の拡大が、甘しゃ糖工場の増加にはつながっていない。このことからも、こうした政策の徹底が図られてきたことがよく分かる。むしろ1990年代後半から合理化の進展で、2002/03年度から2007/08年度の6年間だけでも、操業している工場の数が13%も減った。さとうきびの供給量の増加に、工場の数の減少が重なった結果、残った工場の一日当たりの処理能力ならびに処理量が拡大するとともに稼動日数が増加した。
  図5を見ると、工場の減少によって、1工場当たりの甘しゃ糖の生産量が近年、増加傾向にある。特にさとうきびの大豊作だった2006/07年度および2007/08年度は、著しい伸びを示している。

資料:LMC
図5 1工場当たりの甘しゃ糖生産量の推移
表8 甘しゃ糖工場の生産実績
注: 稼働日数は、製糖期間の日数から工場の休止日数を差し引いたものである。
資料: LMC(中国砂糖協会によるデータ)

(2) てん菜
〜収穫量1,000万トン〜

  中国では、てん菜の作付面積は、2002/03年度のおよそ34万ヘクタール近くから2007/08年度には25万ヘクタール程度にまで減少した。しかし、単収がここ数年、目覚しい上昇を見せたことで、てん菜の収穫量は2005/06年度に比べて約60%も増大し、2006/07年度には、1,000万トンを超えた。
  てん菜の単収は2002/03年度から比べると2006/07年度には約4割上昇し、1ヘクタール当たり約42トンまで上がったが、それでも世界のてん菜糖産業の平均に比べて著しく低い。その一方で、さとうきび部門と同様に、てん菜の単収も地域によって大きな開きが見られ、黒龍江省と吉林省がこの6年間、1ヘクタール当たり平均20トン未満で世界でも最低水準であるのに対して、生産が拡大し、かんがいが進んだ新疆ウイグル自治区では平均50トンを超え、また、遼寧省でも40トン強に達している。
  中国国内のてん菜種子の品質が悪いことから、豊作の場合を除き、単収のさらなる上昇は見込めない。てん菜の場合、他の主要作物とは異なり、中国政府と省政府が種子の研究をあまり重視していないのが現状である。2006/07年度と2007/08年度には国産種子の入手が困難となり、輸入品が使われた。これらの輸入品種は単収が多い反面、国産に比べてショ糖含有率が低い。業界内からは、中国の栽培状況に適した品種の開発に関心を寄せる声も聞かれるようになってきた。今後、国産種子の開発が大規模に行われるようになれば、単収を上げることができるかもしれない。

資料:LMC
図6 てん菜1ヘクタール当たりの産糖量の推移
表9 てん菜の生産動向
注: てん菜の生産額は、各年の砂糖の生産に使われたてん菜の数量に、砂糖に加工されたてん菜1トン当たりの農家受取価格を乗じたものである。
資料: LMC(中国砂糖協会によるデータ)

〜工場数減により、工場の稼働日数が回復〜
  てん菜糖工場の閉鎖が相次ぎ、工場数が2001/02年度の63から2007/08年度の45と約3割減ったことで、処理能力および処理量が向上した。閉鎖された工場には、稼動を休止していた工場が含まれている可能性があるとはいえ、工場の数が減ったことで、稼働率の向上が促され、稼動日数も2007/08年度には110日にまで回復した(表10)。
  図7を見ると、工場数の減少に伴い、1工場当たりのてん菜糖の生産量が近年、増加傾向にある。豊作に恵まれた2006/07年度と2007/08年度にかけて急増している。
  この5年間、てん菜糖工場が減少したことで、稼働率が向上したとはいえ、ショ糖の回収率は77%程度にとどまり、主要国の水準にはるかに及ばない。この要因としては、製糖技術ならびに栽培品種の品質の低さ、そして、場合によっては、てん菜の貯蔵期間の長さが挙げられる。

資料:LMC
図7 1工場当たりのてん菜糖生産量の推移
表10 てん菜糖工場の生産実績
注: 稼働日数は、製糖期間の日数から工場の休止日数を差し引いたものである。
資料: LMC(中国砂糖協会によるデータ)

5.砂糖産業の現状

製糖産業および精糖産業の構造
  中国では現在、251の甘しゃ糖工場と45のてん菜糖工場が稼動しているが、その所有形態と管理体制は複雑である。1990年代に産業再編が進められた結果、甘しゃ糖部門では国営工場の大部分が外国との合併会社か、政府を過半数株主とする株式会社、もしくは民間会社となった。工場のほとんどは国内企業の傘下にあり、外資系工場がわずかながら存在している。

製糖コストおよび精糖コスト
(1) 甘しゃ糖の生産コスト

  生産コストは、広西チワン族自治区が平均を大幅に下回る一方で、広東省と海南省が平均をはるかに上回るなど、地域によってばらつきが大きい。
  栽培部門、製糖部門ともに労働コストが比較的高い。これは賃金が低いものの、さとうきびの収穫と工場の製糖工程で自動化が遅れ、延べ労働時間数が多く、砂糖1トン当たりのコストがかさむことによるものである。中国では甘しゃ糖の生産量の増加が、その他の単位コストを抑える要因となっている。
  中国の場合、工場の資本コストをかなり削減できる余地がある。これは、世界的に見ても最も規模が小さい部類に入り、スケール・メリットがほとんど得られないにもかかわらず、業界全体としては依然として過剰設備に悩まされているためである。しかし、近年は、整理統合が進められる中、工場が相次いで閉鎖され、幾分改善が見られるようになってきた。
  図8で1990/91年度から2007/08年度における甘しゃ糖生産コストの推移を、1990/91年度の総コストを100とした時の指数として示した。工場のコストの削減分が、生産資材(肥料、化学薬品など)価格および人件費の高騰による農場のコストの上昇分に相殺され、総コストの削減に反映されていないことが分かる。

資料:LMC
図8 甘しゃ糖生産コストの推移

(2) てん菜糖の生産コスト
  中国のてん菜糖の生産コストは世界の平均よりも低いが、栽培部門と製糖部門ではコストが大きく異なる。中国では製糖部門のコストが比較的高く、世界の平均とほぼ変わらないのに対して、栽培部門のコストはこの6年間、世界で最も低い部類に入る。
  栽培部門ではてん菜の収穫量が増加した結果、近年、コスト競争力が高まっている。てん菜の単収と1ヘクタール当たりの産糖量については、生産性の極めて高い国の水準にははるかに及ばないとはいえ、近年、着実に上昇してきた。
  中国の人件費は国際的な水準に照らすと低いが、建設業および製造業などの部門で労働力の需要が高まっているため、急速に上昇しつつある。こうした傾向が今後も続けば、農業の資本集約化に向けた動きが加速する可能性が高い。例えば、黒龍江省と新疆ウイグル自治区では、多くの大規模農家が作付と収穫の機械化を進めることを検討している。業界関係者によると、これら農家が2008/09年度にもてん菜用の収穫機と植付け機を輸入するのではないかという。
  中国の製糖部門では、賃金と資本コストの低さなどから、コスト競争力は低くないが、国際的な水準に照らすと工場の規模が小さく、スケール・メリットをほとんど得ることができないのが現状である。この10年間で80ほどの工場が閉鎖されたため、2007/08年度現在、操業しているのはわずか45工場しかない。今後も工場が閉鎖され、それと平行して、既存の工場の拡張が行われれば、中期的には生産コストのさらなる削減が図られるものと予想される。
  1990/91年度から2007/08年度にわたる長期的なてん菜糖生産コストの推移を、1990/91年度の総コストを100とした時の指数で、図9に示した。

資料:LMC
図9 てん菜糖生産コストの推移

6.砂糖産業を取り巻く課題

 甘味料の需要の高まりにこれからどのように対応していくかが、今後の最大の課題になる。人工甘味料は少なくとも現在のところ、最もコスト競争力があるものの、中国政府が砂糖などの有カロリー甘味料に有利な政策を採用し、先に述べたように、とうもろこしを原料とする甘味料がここ数年急速な成長を見せ、砂糖からある程度の市場シェアを奪うまでになってきた。しかし、とうもろこしの価格高騰に砂糖の価格低迷が重なり、この部門を取り巻く環境は厳しさを増す状況にある。これに加え、タピオカ価格の上昇がでん粉価格を押し上げ、異性化糖の生産能力拡充に対するスターチ・糖化企業(ウェットミリング)の投資意欲が減退している。これは今後1、2年にわたって注視する必要のある課題といえる。
  甘味料の需要拡大への対応で砂糖が中心的な役割を果たすと見られるなか、英国のBritish Sugar社が先ごろ合併会社BoTian Sugar Company社を設立するなど、中国の砂糖部門は投資先として注目を集めている。BoTian Sugar Company社は設立当初から、黒龍江省、河北省ならびに内モンゴル自治区に4つのてん菜糖工場と他の地域に7つの甘しゃ糖工場を所有、操業している。British Sugar社は、すでに4つの甘しゃ糖工場を持っているが、てん菜糖部門への進出にも意欲的で、12工場の買収を進めており、てん菜糖部門が有望な投資先であることがよく分かる。
  その一方で、多くの国で見られるように、中国でも代替作物の価格高騰に伴い、さとうきびとてん菜の仕入れ価格が上昇している。これは甘しゃ糖とてん菜糖、両部門に共通する問題であるが、この影響は、作付の決定を毎年度行うてん菜糖部門で顕著である。この問題に対処するため、農家に支払うてん菜の仕入価格を、20%も引き上げることを余儀なくされている業者もいる。てん菜の価格は現在、1トン当たり40米ドル前後にまで上昇しており、砂糖の価格が回復しない限り、てん菜の加工マージンが今後縮小することは間違いないとみられる。


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