[2001年7月]
1. EU農業委員会提案の概要
2000年 (夏頃?) にフィシュラー農業委員は、同委員会に対し、現行制度を5年間延長するとの提案を行 ったが、もっと大胆な改革を行うべしとする委員会内部の強烈な抵抗に直面した。
これを受けて、2000年10月、農業委員会は、現行制度の基本を2年間延長し、その間に、より革新的な提案を行い得るか否か検討するという、(いわば時間稼ぎの)提案を農業閣僚理事会に行った。その内容は、次のとおり。
ア) 生産割当制度、生産者賦課金制度、ACP諸国及びインドからの砂糖特恵輸入制度の3点は02/03年度まで2年間延長。その間、域内産砂糖の支持価格は現行のまま固定。
イ) 以下の変更を導入。
(1) 域内産砂糖、イソグルコース (小麦澱粉から製造される異性化糖)、イヌリン (菊芋から製造される多糖類) 生産クォータを、全体で恒久的に115,000トン削減。(0.75%に相当。00/01年度一時的に導入された478,000トンの削減を含まない。)
うち、砂糖割当量の削減は110,000トン。(0.75%の削減に相当)
(2) 製糖業者に対する在庫費用払戻し制度 (余剰砂糖の在庫費用に対する助成措置) の廃止
(3) 最低在庫構築義務の撤廃
(4) 化学工業用砂糖及び異性化糖の価格補填を100%自主財源化 (生産者賦課金)
2. 2000年12月19日開催された農業閣僚理事会においてこの提案が審議されたが、賛成は英国、オランダ、デンマーク及びスウェーデンの4カ国のみで、イタリア及びフィンランドは棄権し、残り9カ国は現行制度を6年間延長すべしとして反対したため、否決された。
生産割当量の削減にはほとんど国が反対、在庫費用払い戻し制度についても5ヶ国は賛成したが、他の国は現行制度の存続を希望した。
このため、委員会提案は、欧州議会の意見表明を待って委員会に送り戻され、再提案を待つことになった。
注) 現行のEU制度では、何らかの制度改正を提案し得るのは委員会のみ、その提案に対する最終決定を行い得るのは、閣僚理事会のみとされている。ただし、閣僚理事会が最終決定するには、欧州議会の意見表明を待たなければならない。
また、委員会提案が否決され、新制度への移行が期限切れ(砂糖制度の場合、6月末日)となった場合、委員会は、「共通市場を守るため」、一方的に自らの提案を実施に移すことができることになっている。
3. 2001年3月13日に開催された同議会は、委員会提案を反対349票、賛成125票、棄権29票で否決。現行制度は過去30年間にわたって円滑に機能してきており、1999年のベルリンサミットで合意されたように、2006年までそのまま延長されるべきであるとの意見を表明した。
議会における論点は、現行制度を2年間延長して見なおすと、主用農作物制度 (CAP) 見直しの時期と重なってしまうという点にあった。
注) 2001年5月ニューデリーで開催されたISOワークショップにおけるEU側報告者によれば、今回の制度見直しは (1) アジェンダ2000モデルによる価格引き下げと直接所得補償の導入、(2) 長期にわたる価格引き下げ、(3) 現行価格の維持と多少の割当量削減、さらに在庫助成の廃止の組み合わせ、の3案が検討され、前提となるEU財政フレームからみて (3) 案が選択されたものとされている。
また、2000年春時点においては、現行制度は100%生産者賦課金による独立採算性でスムーズに機能しており、直接所得補償制度に移行して、ただでさえ厳しいEU財政を圧迫させることはできないとされていた。
4. これを受けて、農業委員会は4月24日に修正提案を行ったが、やはり否決された。妥協した提案が提出され、新制度として成立したのは、5月22日の農業閣僚理事会であった。
新制度のポイントは次のとおり。
(1) 新制度は、2000年7月1日から適用され、2006年6月末までの5年間継続される。
(2) 農業委員会は、2003年当初に、新制度の全ての点に関してレビューした結果を提出する。このレビュー結果には、将来の改革に関する適切な提案をつけ加えることが出来る。
(3) 在庫費用払戻し制度は廃止されるが、必要な経過措置が設けられる。同様な経過措置は、C糖についても設けられる。
(4) 生産割当量は恒久的に115,000トン削減。
(5) 最低在庫構築義務の撤廃。
(6) 化学工業用の砂糖と異性化糖の価格補填は、全額、生産者賦課金から支出。
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