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国際砂糖機関 (ISO) のワークショップ及び市場評価・消費・統計委員会について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/海外情報


海外レポート
[2001年7月]


 国際砂糖機関 (ISO) は、国際砂糖協定の規定を遂行するための最高機関である理事会等を春と秋に開いています。インドのニューデリーで開催された今回の会合では、理事会において事務局長ピーター・バロン氏の再任が決まった他、ワークショップでは、「WTO における砂糖」 の標題の下で、ISO、EU、オーストラリア及びインドの代表者から講演が行われ、我が国からは 「新たな砂糖制度と WTO 農業交渉日本提案」 と題し説明が行われました。なお、ワークショップにおける講演内容等については、当事業団企画情報部にも所蔵しておりますので、お問い合わせ下さい。

農林水産省生産局特産振興課 課長補佐 塩川 白良


1. はじめに   2. ワークショップ
3. 我が国の説明 4. 市場評価・消費・統計委員会
5. 終わりに  



1. はじめに

 平成13年5月28日〜30日に、インド国ニューデリーにおいて、ISO 主催のワークショップ、市場評価・消費・統計委員会及び理事会が開催された。
 参加国・地域は、EU、豪州、キューバ、ブラジル、ケニア、フィジーなど25か国であった。我が国からは、私のほか、豊田在英国日本国大使館参事官、薄井農畜産業振興事業団農産流通第1課長、庄司同情報第2課課長補佐、多賀日本ビート糖業協会会長、相原同協会理事が参加した。



2. ワークショップ

 ワークショップの標題は開催国であるインドが決定するものであるが、今回は、「WTO における砂糖」 という表題の下、ISO 事務局の Lindsay Jolly 氏が WTO 交渉の現況を説明した。
 次に、EU 委員会砂糖課の Franz Empl 氏は、EU の砂糖制度は農業協定と矛盾しているにもかかわらず、一切の根本的な変更が行われず存続してきたが、今後新たなラウンドにどのように対応していくかについての見通しを説明した。
 豪州のクイーンズランドシュガー社専務の Warren Males 氏は、WTO 交渉における 「砂糖貿易の改革と自由化に向けた世界同盟」 の立場とケアンズグループの立場の類似点、米国及び EU で検討されている農業政策の変更とそれらが WTO に与える重要性について説明した。さらに、当該同盟が、WTO 交渉の結果として、砂糖政策の自由化を求めていることが表明された。
 インドの Alka 氏は、農業協定の規定が国際砂糖市場に与えた影響は不十分であり、現在の農業交渉における自由化への圧力が、加盟国の砂糖政策に有益な効果を与えると主張した。

説明をする塩川氏
ISOのワークショップで説明をする塩川氏
ワークショップにおける発表者達
ISOのワークショップにおける発表者達

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3. 我が国の説明

 我が国は、一昨年秋に開催された ISO セミナーにおいて小山砂糖類課長が 「我が国の砂糖をめぐる情勢と制度見直しの方向性」 について説明したことを受け、砂糖制度改正の具体的な内容と効果について説明するとともに、WTO 農業交渉における日本の立場をアピールするため、今回の会合で最も多くの参加者が集まるワークショップにおいて、私が 「新たな砂糖制度と WTO 農業交渉日本提案」 という表題で、以下の内容を説明した。
 我が国の砂糖消費量は、戦後増加したものの、近年、消費者の甘味離れ等によって減少している。地域経済にとって北海道のてん菜生産、鹿児島県、沖縄県におけるさとうきび生産が重要であり、その生産を維持する必要がある。しかしながら、国内産糖の価格支持費用が織り込まれる国内産糖は高いことから、砂糖の需要の減少を招いている。このため、砂糖制度の円滑な運営が困難になってきた。
 この問題に対処するため、2000年10月から新たな制度が開始され、砂糖価格を引き下げることにより、砂糖需要の維持・増大を図っている。さらに、市場原理の円滑な導入を図るため、最低生産者価格及び国産糖に対する助成の算出方法を変更した。このほか、砂糖の消費を拡大するため、キャンペーンを実施している。
 これらにより、国内の砂糖の卸売価格は国際糖価が上昇している中で、1年前に比べて10円/kg程度下落している。また、我が国の砂糖の需要量は、12砂糖年度において10年ぶりに3万トン増加すると見込んでいる。
 次に、昨年12月に WTO に提出した農業交渉の日本提案のポイントを説明した。日本国の提案の基本的姿勢は、「多様な農業の共存」 で、(1) 農業の多面的機能への配慮、(2) 食料安全保障の確保、(3) 農産物輸出国と輸入国に適用されるルールの不均衡の是正、(4) 開発途上国への配慮、(5) 消費者・市民社会の関心への配慮の5点を追求している。
 また、各国が交渉を進めるに当たって考慮すべき重要な問題として、「UR 合意の実施状況の検証」 を最優先にするべきということと、世界的な農政上の問題として、農業の多面的機能、食料安全保障の追及を認識した上で、交渉すべきということをあげている。
 さらに、市場アクセス、国内支持、輸出規律、開発途上国への配慮について具体的に説明を行った。



4. 市場評価・消費・統計委員会

 市場評価・消費・統計委員会においては、以下の説明が行われた。
 世界の砂糖市場の状況について、(1) 2000/01年の世界の生産量は3月の予測より40万トン減の1億2,910万トンになる一方、消費量は3月の予測より20万トン減の1億3,260万トンになり、供給不足量は350万トンになること、(2) 2001/02年の世界の生産量は1億3,220万トン〜1億3,250万トンになる一方、消費量は、今年度よりも630万トン多い1億3,540万トンとなり、供給不足量は今年度と同程度の約300万トンになるという説明があった。また、異性化糖、糖みつ、燃料用エタノールの需給・価格についての説明が行われた。
 月次の国際砂糖協定価格には、様々な手法を使って分析した結果、統計的に意味のある季節変動は認められなかったという説明があった。
 旧ソ連の市場について、(1) 旧ソ連の砂糖生産の下落は、消費量の減少によってではなく、輸入量の増加によって賄われたこと、(2) 精製糖ではなく、粗糖の輸入が増加しているが、これは、てん菜糖企業が製造能力と労働力を活用し、利益を得るために粗糖を精製しているからであるという説明があった。
 さらに、世界の砂糖精製能力の拡大の影響について、(1) サウジアラビアのドバイとジェッダで、1997/98年から、それぞれ75万トン、50万トンの精製糖工場が稼動を開始したことによって、EU、中国からの精製糖輸入が、豪州、ブラジル、南アフリカからの粗糖輸入に置き換わったこと、(2) 精製糖のプレミアムが回復すれば中東は再び精製能力の拡大の焦点になるという説明があった。
 昨年秋に出された CARMEN (欧州国民の食事における炭水化物の取扱い) 研究では、(1) 普通食のグループ、(2) パン、いも、パスタといったでん粉食からのカロリーを増やし、普通食に比べて脂肪からのカロリーを10%減らしたグループ、(3) 低脂肪ヨーグルト、砂糖製品、砂糖をかけたシリアルといったでん粉、砂糖、砂糖を多く含むものからのエネルギーを増やし、普通食に比べて脂肪からのカロリーを10%減らしたグループに分けて、6か月間モニターした。その結果、普通食のグループはわずかに体重が増加したにもかかわらず、低脂肪食のグループは1kg近く体重を減らした。この研究は、体重コントロールにおいて砂糖がでん粉と同じ効果をもっていることを実証した最初の成果であるとの解説があった。

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5. 終わりに

 以上にように、ワークショップにおいて、WTO 農業交渉の我が国の立場を説明することができたことは、非常に意義があったと考えている。ただし、発表した国・地域の内容の違いについて、討議する機会があれば、さらに有意義なものになったと考えている。
 なお、市場評価・消費・統計委員会については、内容が十分に分析・検討されていないものもあり、今後の改善が必要であろう。

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