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グアテマラ砂糖産業の概要

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最終更新日:2010年3月6日

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海外レポート
[2002年2月]
 グアテマラの砂糖産業は1980年代半ばから急速に発展し、産糖量は1990年代末には、1980年代初めに比べて約3倍にまで増加し、160万トン以上になっています。産糖量の増加により、砂糖の生産にかかるコストは引き下げられています。国内消費量は着実に増加したにも関わらず、同国の主要な輸出品として、年間100万トン以上を輸出しており、粗糖、白糖ともに世界の主要な輸出国の1つになっています。
 こうしたグアテマラの砂糖産業について、英国の調査会社 LMC 社からの報告をもとに、企画情報部で取りまとめましたので紹介します。なお、この報告は2001年8月現在のものであり、最新のデータについては巻末資料編をご参照下さい。

企画情報部


国内の需給バランス   生産実績   砂糖の消費量
砂糖制度の概要
  生産管理  国内価格支持  販売協定
  さとうきび生産者と製糖工場との関係
砂糖産業の現状   現在の問題点



国内の需給バランス

 さとうきびはグアテマラのすべての地域で栽培されているが、特に南部沿岸の Escuintla、Suchitepequez、Retalhuleu で多く栽培されており、同国の製糖工場17工場中15工場がこの地域に所在している。
 グアテマラは、世界第8位の砂糖輸出国 (99/2000年度現在) であり、中南米ではキューバ、ブラジルに次いで第3位の砂糖輸出国 (99//2000年度現在) となっている。表1に示すように、96/97〜2000/01年度における平均産糖量は約160万トン (粗糖換算) で、そのうち60%以上が輸出向けの粗糖、25%以上が国内、輸出両用の白糖 (粗糖から若干精製が進んでいるが精製糖ほど白くない耕地白糖)、残りが精製糖となっている。輸出量は、産糖量の約70%に当たる約120万トンで、うち80%以上が粗糖、残りが白糖あるいは精製糖となっている。グアテマラは、米国市場への関税割当を持っており、96/97〜2000/01年度における平均割当量は5.6万トンであった。
 一方、国内消費量は約43万トンと産糖量の30%以下であり、そのほとんどが白糖で、残りが精製糖となっている。国内販売額は、砂糖生産に係る総売上額の3分の1以下である。

図1 グアテマラの砂糖生産量及び消費量の推移
グアテマラの砂糖生産量及び消費量の推移

表1 砂糖の需給バランス
(単位:1,000トン、粗糖換算)
  96/97年度 97/98年度 98/99年度 99/2000年度 2000/01年度
産糖量 合 計 1,445 1,707 1,550 1,660 1,818
粗 糖 797 1,132 1,007 1,035  
白 糖 452 407 378 446  
精製糖 196 168 165 179  
消 費 量 392 401 445 451 468
輸入量 合 計 0 0 0 0 0
粗 糖 0 0 0 0 0
白 糖 0 0 0 0 0
輸出量 合 計 1,047 1,323 1,093 1,140 1,285
粗 糖 769 1,101 892 935 1,105
白 糖 278 222 200 205 180
在庫量の変化 +6 −17 +12 −69 +65

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生産実績

 さとうきびの収穫面積と単収の増加により、97/98年度の産糖量は96/97年度に比べ、約20%増加したが、98/99年度には、悪天候のため前年度を大きく下回った。
 さとうきび畑のうち、約55%が製糖工場によって所有あるいは管理されており、残り約45%が農家によって管理されている。農家の多くは、数百haにも及ぶ広大な農地を所有しており、20ha以下の小規模農場で生産されるさとうきびはごくわずかである。
 グアテマラさとうきび研究センター (以下 CENGICANA という) は研究、技術支援等の業務を行っており、砂糖産業が利益を生み、発展するために、優れた技術を創造し、実用化することに貢献している。具体的には、品種改良を通じて砂糖の収量を高める研究を行っている。現在行われている品種の開発は最終段階に入っており、これらの品種は約5年後には商業的に栽培されるとみられる。現在、一般的に CP722086 が栽培されているが、今後 68P23、CP781312、P731547 が栽培されるようになると思われる。砂糖産業は、CENGICANA の支援により、悪天候でも収量を一定のレベルに保つことが可能となったことから、同センターを重要な機関と位置付けている。

表2 グアテマラのさとうきび生産量及び産糖量の推移
  96/97年 97/98年 98/99年 99/2000年 平 均
収穫面積 (1,000ha) 168 180 180 180 177
さとうきび生産量 (1,000トン) 14,587 17,420 15,427 14,139 15,393
単 収 (トン/ha) 87 97 86 79 87
産糖量 (1,000トン、粗糖換算) 1,445 1,707 1,550 1,660 1,591
さとうきび生産量/産糖量 (TC:TS) 10.1 10.2 10.0 8.5 9.7
さとうきび生産総額 (注1) (1,000US$) 269,270 277,912 204,258 169,355 230,199
農業粗生産額 (1,000US$) 3,787,910 4,090,612 4,654,716 4,210,786 4,186,006
農業粗生産額に占める
さとうきび生産総額の割合 (%)
7.1 6.8 4.4 4.0 5.5
注1) さとうきび生産総額は、さとうきび生産量に農家が受け取る1トン当たりのさとうきび価格を乗じることにより算出される。

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砂糖の消費量

 砂糖の消費量は80/81〜2000/01年度にかけて、毎年約4%の割合で増加しており、現在、国内消費量は約47万トンとなっている。1人当たり消費量は約39kgと日本の約2倍となっている。国内で消費される砂糖のほとんどは白糖であり、残りが精製糖となっている。全消費量のうち、家庭内消費が約74%を占めており、実需者向けは約26%と比較的少ない。実需者による砂糖消費量のうち、飲料向けが最も多く約70%を占め、残りは製パン、ワイン、乳製品、医薬品等に使われている。
 その他の甘味料は、国内の砂糖消費量に重要な影響を及ぼしていない。



砂糖制度の概要

生産管理
 政府は、生産調節を行っていないが、経済省、さとうきび生産者、製糖工場の代表者で構成される砂糖評議会により、年度毎に生産目標が定められている。
 米国への関税割当による輸出は、世界価格をはるかに上回り、国内価格よりも高い価格で輸出できるため魅力的であり、製糖工場はできるだけ多くの砂糖をこの割当で輸出することを望んでいる。そのため、米国向けの輸出割当を工場に割り当てることが必要とされ、砂糖評議会が、総砂糖生産目標の設定とともに、国内砂糖販売割当と米国向けの割当の各工場への振り分けを行っている。各工場への米国向けの割当は、過去の生産実績、工場能力、前年度の割当消化実績を考慮して定められる。

国内価格支持
 砂糖の価格も、政府ではなく、製糖業者によって組織される協会である Asazgua によって決められる。政府は、関税等により国内価格を支持しており、5,000トン (粗糖換算) の関税割当を上回る輸入には、輸入関税が課される。
 表3は、グアテマラの GATT 協定の内容等を示している。関税割当は5,000トンに設定されており、割当内での輸入関税率は0%である。割当外の輸入には20%の関税が課されているが、この関税率は WTO 協定による関税率をはるかに下回っている。また、メキシコ、エルサルバドル、ホンジュラス等の国からの輸入は、20%の関税が免除されている。
 他の砂糖生産国と異なり、グアテマラ国内で消費されるすべての砂糖は、ビタミンAを強化したものでなければならない。国連と中央アメリカ栄養研究所 (Central American Nutrition Institute : INCAP) でのいくつかの研究により、この試みは、子供の健康を顕著に改善し、眼科、呼吸器科関連の疾病を減少させたことが示されており、微量栄養素に関する計画で最も成功したものと評価されている。ビタミンAの強化にかかる費用は、すべてグアテマラの砂糖産業が負担している。グアテマラへ砂糖を輸入する際には、商品にビタミンAを添加することが求められ、採算的に魅力のないものとなるため、この制度は非関税障壁として効果的に作用している。
 表4は、96/97〜99/2000年度における、さとうきび及び砂糖の平均価格を示している。さとうきびの平均価格は、トン当たり約15USドルと、タイ、南アフリカ等の諸国のさとうきび価格を下回っており、砂糖産業への価格支持が弱いことが反映されている。
 政府は、国内砂糖価格を直接調整していないが、砂糖産業による砂糖価格の引き上げが不当な場合には、意向表明を越えて介入し、業界に異議を申し立てることができるとしている。例えば、砂糖産業は2000年1月に砂糖価格を15%引き上げたが、政府はこれに対して、約22万トンの割当を設定し、20%の輸入関税を免除することにより、国内市場を輸入糖に開放した。政府と Asazgua 間での協議の結果、この砂糖価格の値上げは撤回され、政府は輸入割当を5,000トンに削減し、砂糖価格と割当量を毎年見直すことで合意した。
 グアテマラでは国内産糖量の約70%が輸出されるため、国内価格支持は、他の国ほど生産者にとって重要ではない。

表3 現在の貿易政策に関する情報
  粗  糖 白  糖
現在の関税率 20% 20%
GATT の義務  
関 税
 基本関税 (US$)
 最終関税率 (US$)

178
160

178
160
ミニマム・アクセス
 (トン、粗糖換算)
適用なし
輸出補助金削減
 数 量 (1,000トン)
 率 (%)

適用なし
適用なし
最終期限 2004年度

表4 さとうきびと砂糖の価格 (97/98〜99/2000年度平均)
(単位:US$/トン)
  さとうきび 白 糖 粗 糖
さとうきび価格 15
卸売価格
 国内販売
 特恵輸出
 自由市場輸出




396

229


445
198
小売価格
 国内販売


485


販売協定
 米国向け輸出割当の各工場への配分は、砂糖評議会により決められるが、世界市場への輸出に関する市場協定は、砂糖評議会ではなく、Asazugua により決定される。
 国内市場での砂糖の流通、価格の決定及び販売は、砂糖産業が所有する流通会社である COMETRO (最近までは Distribudora Azucarera Guatemalteca : DAZGUA として知られていた) によって行われている。COMETRO は、生産量に基づいて各工場に国内市場向け割当を配分し、各工場は、国内市場向けの砂糖を COMETRO を経由して販売する。

さとうきび生産者と製糖工場との関係
 さとうきびの価格は、Asazgua によって決定され、毎年、年度の初めにさとうきび生産者と製糖工場間の収益配分についての交渉が行われる。一般的に、粗糖、糖みつ、白糖の販売による収益のさとうきび生産者の取り分は55%であり、精製糖生産による付加価値は、工場に割り当てられる。さとうきび生産者への支払いは、3回に分けて均等に支払われ、第1回目は収穫中に行われる。
 さとうきびの最低価格は、砂糖1トン当たり約87.5USドルであり、圧搾期の初めに砂糖評議会によって算出される。理論的には、次期シーズンの砂糖価格予想をもとに算出されることになっているが、実際には、さとうきび生産者の採算が取れるように設定されている。さらに、さとうきび価格には、さとうきびの品質に基づき、最低価格にプレミアムが加算されている。



砂糖産業の現状

 現在、稼動している製糖工場は、Concepcion、El Baul、Tulula、La Sonrisa、Guadalupe、Tierra Buena、Pantaleon、Los Tarros、San Diego、La Union、Magdalena、Trinidad、Palo Gordo、Madre Tierra、Santa Teresa、Santa Ana、El Pilar の17工場である。グアテマラ地区にある Santa Teresa 工場、Santa Rosa 地区にある La Sonrisa 工場以外の工場は、すべて南部沿岸地域の Escuintla、Suchitepequez、Retalhuleu に所在している。比較的大規模な Pantaleon 工場か Conceotion 工場によって、その他の工場は所有されており、さらに、この2工場も Pantaleon S. A. に所有されている。
 製糖工場の平均圧搾能力は、1日当たり7,500トンであり、南アフリカ等の諸国の平均圧搾能力をやや上回っている。また、製糖工場の総さとうきび圧搾能力は、1日当たり約13万トンである。Suchitepequez にある Palo Gordo 工場は、1日当たり12万リットルの稼動能力をもつ蒸留施設を備えている。
 製糖工場は、粗糖と白糖の両方を生産する能力を有している。さらに、Pantaleon 工場、Conceotion 工場、Santa Ana 工場は、精製糖工場を併設しており、年間15万トン以上の精製糖を生産している。
 さとうきびの絞りかすであるバガスは、1960年代末から、製糖工場内で発電に用いられている。当初、バガスによる発電は、砂糖産業が使用する電力の負担を軽減するために行われたが、発電技術の運営、管理能力が向上するにつれ、砂糖産業は余剰電力を国内電力網に販売するようになった。現在、6つの製糖工場が、余剰電力を国内電力網に販売する契約を結んでいる。

砂糖の流通
 主要な都市においては、砂糖は COMETRO が運営する卸売店を経由して流通する。1990年代の初めに、マネージメント及びマーケティング改革の一環として、採算性に関する調査が行われた結果、消費を助長するためには、卸売店を増やす必要があると確認された。
 グアテマラの砂糖は、実需者向けにバルクでの輸送、実需者及び卸売向けに1〜1.2トン袋及び25kg袋、小売市場向けに25kg以下の袋という形態で流通している。1990年代中頃から、小売市場では、Cana Real、Nevada、El Costal 等の糖種別に、0.4kg、2.0kg、2.3kg、4.6kgに包装され、販売されている。小規模の実需者は、流通業者を介して砂糖を購入する傾向にあるが、一方、スーパーマーケット等の大規模小売業向けには、製糖工場が砂糖を包装し直接販売することを望んでいる。
 輸出される砂糖は、太平洋岸の Puerto Quetzal にある港に集められる。この港は、3万トン規模の船への荷積みが可能であり、バルクの粗糖を1時間に500トン積込むことができる。港の倉庫貯蔵能力は、バルクの粗糖4万トンと袋入り砂糖2万トンである。



現在の問題点

 グアテマラの砂糖産業においては、砂糖の国内販売価格を設定する権限が業界に集中していることが問題となっている。前述のように、2000年1月の値上げは、政府の介入により撤回されたが、この値上げは、世界市場価格の低迷時に行われたため、政府のみならず、主要実需者の間にも懸念を引き起こした。
 また、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグアの中米4カ国 (CA-4) とカナダとの間の自由貿易協定の交渉が開始される予定である。現在、グアテマラはカナダに対し、年間3,000トン以上の精製糖を輸出し、約100万USドルを得ている。カナダの精製糖に対する現行の輸入関税は、30.88カナダドルであり、関税の撤廃は、グアテマラ砂糖産業に大きな利益をもたらすと思われる。しかし、カナダの砂糖産業に及ぼす影響を考慮すると、カナダ政府が精製糖に対する輸入関税を完全に撤廃するかは、今のところ不明である。




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