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インドネシアの砂糖産業の概要

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最終更新日:2010年3月6日

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海外レポート
[2002年7月]
 インドネシアの砂糖産業は、消費量が増加する一方、輸入の自由化、価格支持政策の撤廃、他作物への転作等により、過去10年間にわたり減少傾向が続いています。
こうしたインドネシアの砂糖産業について、英国の調査会社LMC社からの報告をもとに企画情報部でまとめたので紹介します。なお、この報告は2002年3月現在のものであり、最新のデータについては巻末資料編をご参照下さい。

企画情報部


国内の需給バランス
  その他の甘味料
砂糖制度の概要
  生産規制   価格支持
砂糖産業の現状 砂糖産業の構造
現在の問題点



国内の需給バランス

 インドネシアにおけるさとうきびの主要な栽培地域は、ジャワ島とランパン地域であり、ジャワ島が同国の総栽培面積の約60%を、ランパン地域が約30%を占めている。最近、他の地域での砂糖生産率が上昇しており、この傾向は今後も続くものと考えられている。
図1 インドネシアのさとうきび栽培地域
図1
 さとうきび生産量は、栽培面積の減少にしたがって、97/98年度の約2,800万トンから2000/01年度には2,350万トンにまで減少しており、産糖量も97/98年度の219万トンから2000/01年度には161万トンにまで減少している。特に、ジャワ島では、米の価格に比べてさとうきび価格が低くなっているために、さとうきびから米への転作が進んでいる。1トンの粗糖を生産するのに必要な原料量は約15トンであり、さとうきびの品質は比較的低くなっている(日本における12年産実績:鹿児島県 約8.5トン、沖縄県 約8.3トン)。
 1997年のアジア経済危機の影響を受けた97/98〜98/99年度を除くと、国内消費量は増加しており、98/99年度には280万トンにまで落ち込んだものの、2000/01年度には330万トンに回復し、国内産糖量と消費量の差は広がる傾向にある。国内で生産、消費される砂糖の95%は耕地白糖であり、精製糖の生産量は少ない。精製糖の生産量は、ジャワ島の国営工場での8万トン、民間の工場での15万トン程度と推測される。
 輸入量は、1994年以前は50万トン以下であったが、その後大幅に増加し、98/99年度には240万トンにまで達した。以前は主に白糖を輸入していたが、近年は粗糖での輸入が増加しており、その多くがタイ及びブラジルから輸入されるVHP(高糖度)粗糖で、直接消費されている。タイからのVHP粗糖の輸入量は、2000/01年度には30万トンに達したと推測されている。
図2 インドネシアの砂糖生産量及び消費量の推移
図2

表1 砂糖の需給バランス
(単位:1,000トン、粗糖換算)
  96/97年度 97/98年度 98/99年度 99/2000年度 2000/01年度
生産量 2,101 2,185 1,493 1,492 1,605
消費量 3,368 3,207 2,798 3,087 3,300
輸入量 合 計 1,493 1,721 2,395 1,784 1,589
粗 糖 286 167 921 795 739
白 糖 1,207 1,554 1,474 989 850
輸出量 合 計 8 0 0 16 80
粗 糖 0 0 0 16 80
白 糖 8 0 0 0 0
在庫量の変化 +218 +699 +1,090 +173 −186

表2 インドネシアのさとうきび生産量及び産糖量等の推移
  97/98年度 98/99 99/2000 2000/01 平 均
収穫面積 (1,000ha) 387 376 344 340 362
さとうきび生産量 (1,000トン) 27,983 27,166 24,000 23,500 25,662
単 収 (トン/ha) 72 72 70 69 71
産糖量 (1,000トン、粗糖換算) 2,185 1,493 1,492 1,605 1,694
さとうきび生産量/産糖量 (TC:TS) 12.8 18.2 16.1 14.6 15.1
さとうきび生産総額 (1,000US$) 671,434 250,158 303,906 326,537 388,009
農業粗生産額 (1,000US$) 36,677,282 17,701,375 27,554,674 25,900,128 26,958,365
農業粗生産額に占めるさとうきび
生産総額の割合 (%)
1.8 1.4 1.1 1.3 1.4

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その他の甘味料
 異性化糖は、2000/01年度には産糖量の約1%に当たる1万6,000トン(砂糖換算)が国内で生産されている。現在、大規模な異性化糖工場の建設が計画中であり、消費量は今後数年間で飛躍的に増加すると予想されている。
 デキストロースの消費量は、比較的安定しており、約1万〜1万1,000トンとなっている。輸入量は700トンと少なく、消費量の93%がPT Sorini社等、国内のメーカーで生産されている。
 ぶどう糖は、2000年には国内では生産されておらず、4,900トンが輸入され、1,900トンが再輸出された。インドネシアでは、ぶどう糖は菓子業界で最も多く使用されている。
 また、低カロリー甘味料も多く使用されており、2000年の消費量は全甘味料の消費の約15%に相当する、56万トン(砂糖換算)と推測されている。現在、高甘味度甘味料が砂糖等の従来の甘味料市場に進出しつつあり、今後、さらに低カロリー甘味料の占める割合は増加すると思われる。
 インドネシアはチクロの主要生産国であったが、中国との競争が厳しくなったこと、チクロ及びサッカリンの生産に対する新規投資が制限されたことにより、1995年以降、チクロの生産量は減少している。1997年以降、アスパルテームが飲料、卓上甘味料分野においてサッカリン及びチクロに代わりつつあり、アスパルテームの消費量は2000年には8,800トン(砂糖換算)に達したと推測されている。ステビアも、主に卓上甘味料に使用されており、2000年には2,500トン(砂糖換算)が消費された。

表3 砂糖及び異性化糖の生産量等の推移
(1,000トン、砂糖換算)
  96/97年度 97/98 98/99 99/2000 2000/01
生産量 砂糖
異性化糖
異性化糖の割合 (%)
2,101
16
0.8%
2,185
16
20.7%
1,493
8
0.5%
1,492
13
0.9%
1,605
16
1.0%
消費量 砂糖
異性化糖
異性化糖の割合 (%)
3,368
16
0.5%
3,207
16
0.5%
2,798
8
0.3%
3,087
13
0.4%
3,300
16
0.5%

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砂糖制度の概要

 97〜98年のアジア経済危機において、国際通貨基金(IMF)との援助協定の主要条件が、政府の独占状態を廃止し、自由化することであった。そのため、食料調達庁(National Logistics Agency:BULOG)は唯一の輸入機関ではなくなり、同時に砂糖取引の許可制度も廃止された。現在、政府による国内砂糖市場の統制は行われず、砂糖の輸入販売は民間企業によって行われている。

生産規制
 現在、砂糖の生産において、量的な管理は実施されておらず、また、農家はどの工場にでもさとうきびを納入できる。
 政府独占企業の自由化以前には、BULOGが国内生産、輸入ともに砂糖の購入販売を取しきっており、製糖業者は製品をBULOG以外に販売することは認められておらず、砂糖は政府の決めた価格で販売業者に売り渡されていた。また、砂糖の流通量を月ごとに定めることによって小売価格を調整していた。
 しかし、自由化以後、すべての生産規制及び世界市場からの輸入制限は撤廃され、産糖量は各企業により決定されることとなった。


価格支持
 自由化以前は、砂糖業界は多くの市場規制を受けており、政府が砂糖及びさとうきびの最低価格を設定していた。しかし、この政策はすでに廃止され、現在、最低価格は設定されておらず、さとうきび価格は国内砂糖価格に連動している。しかし、2000年には、世界市場価格の低迷により、国内市場価格も大きく下がったため、政府は、一時的措置として、最低さとうきび価格を砂糖価格が1kg当たり2,500ルピーの場合の価格に設定した。この政府による介入は、国営の製糖企業だけでなく民間の企業にも適用されたが、2001年には再び廃止された
 さとうきび農家と製糖業者間の収益の配分は、さとうきび農家が65%、製糖業者が35%となっており、さとうきび農家の収入は次のように計算される。
さとうきび農家の収入=TC×R×1,003×65%×Ps
TC(Tonnes of cane)=さとうきびのトン数
R(Rendement)=糖分の回収率
Ps(Price of suger)=砂糖価格
1.003=調整率
 農家が受け取るさとうきび平均価格は、1トン当たり約18USドルと、タイや南アフリカ等、政府が国内価格を支持している他の砂糖生産国に比べて低くなっている。
 アジア経済危機の後、砂糖産業は自由化され、国内砂糖価格は世界砂糖価格に連動することになり、砂糖価格はUSドル建てでは大幅に低下した。しかし、同時期に、USドルに対して大幅なルピー安となったため、砂糖価格は急激な価格インフレによって、ルピー建てでは1997年から1998年の間に約2倍に上昇した。
図3 インドネシアの卸売価格の推移
図3

表4 さとうきびと砂糖の価格 (1996〜2000年平均)
(単位:US$/トン)
  さとうきび 白 糖
さとうきび価格 18  
卸売価格
 国内販売
 自由市場輸出



381
334
小売価格
 国内販売


435

 現行の輸入関税は、粗糖に対しては20%、白糖に対しては25%と、WTO協定での最終税率95%に比べはるかに低く、さらに、価格支持政策が撤廃されたため、国内産糖は輸入糖に対抗できず、世界市場から安価な砂糖が大量に輸入されるようになった。砂糖業界は、輸入関税を最高80%にまで高めるよう要求しているが、関税の引き上げにはIMFとの合意が必要であるため難しいと思われる。
 また、インドネシア政府は、ASEANに対して砂糖を輸入制限品目表に入れる提案を行っており、この提案が受け入れられれば、ASEAN自由貿易地域での輸入関税の撤廃は2010年まで延期される。

表5 現在の貿易政策に関する情報
  粗  糖 白  糖
現在の関税率 20% 25%
GATT の義務  
関 税
 基本関税
 最終関税率

110%
95%

110%
95%
ミニマム・アクセス
 (トン、粗糖換算)
適用なし
輸出補助金削減
 数 量 (1,000トン)
 率 (%)

n/a
n/a
最終期限 04/05年度

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砂糖産業の現状

砂糖産業の構造
 インドネシアの砂糖業界には、国営企業と民間企業が存在し、ジャワ島においては国営企業が、ジャワ島以外の地域においては民間企業が中心となっている。生産コストは、ルピーの切り下げにより国内生産費が低減したこと、また農場及び工場を大規模に運営することにより、多くの工程で低減されている。
 国営企業は、砂糖産業において総生産量の約60%を占めている。ジャワ島には約50カ所の国営工場が存在しているが、その多くは設備がかなり旧式であり、小規模な工場となっている。
 民間企業での産糖量は総生産量の約40%であるが、その大半がジャワ島以外の地域で生産されている。ジャワ島以外の地域にある工場は、ジャワ島の工場に比べて設備が新しく、規模が大きい傾向にある。また、民間企業では、大幅にさとうきび及び砂糖の収量が増加しており、ジャワ島以外の地域での平均さとうきび収量は国営企業では1ha当たり57トン程度であるのに対し、民間企業では78トンに達している。砂糖の収量もさとうきび収量を反映して国営企業ではha当たり3トンであるのに対し、民間企業では7トンに達している。
 インドネシアには独立系の精糖企業も存在し、民間企業であるSerang工場は、年間15万トンの精糖能力を持っている。

表6 主要製糖企業の現状(2001年)
  収穫面積
(ha)
さとうきび生産量
(トン)
単 収
(トン/ha)
産糖量
(トン)
ジャワ島
PT PG Rajawali II
PTP Nusantara IX
PTP Nusantara X
PTP Nusantara XI
PT Bapippundip
PT Kebon Agung
PT Madu Baru
PT PG Rajawali I

22,420
26,990
55,748
61,638

19,021
4,612
18,747
209,176

1,523,250
1,680,688
4,656,085
4,426,878

1,221,312
316,367
1,481,046
15,305,626

67.9
62.3
83.5
71.8

64.2
68.6
79.0
73.2

84,430
104,283
285,392
290,191

72,463
19,715
89,025
945,499
ジャワ島以外
PTP Nusantara II
PTP Nusantara VII
PTP Nusantara XIII
PTP Nusantara XIV
PT Gunung Madu Plant
PT Gula Putih Mataram
PT PG Rajawali II
PT Sweet Indolampung
PTP Centramas
PT PG Rajawali III

13,885
23,253

9,973
23,301
21,659

12,898
17,694
3,510
6,477
132,650

1,012,075
1,373,534

354,572
2,022,672
1,780,227

1,059,225
1,509,102
205,537
347,588
99,644,532

72.9
59.1

35.6
86.8
82.2

82.1
85.3
58.6
53.7
72.9

45,584
76,128

21,290
175,501
164,614

98,248
153,240
9,813
23,376
767,794
インドネシア合計 341,826 24,970,158 73.0 1,713,293
注) PTPは国営企業、PTは民間企業である。
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現在の問題点

 政府は、経営の合理化とコストの低減により、国営企業の生産性向上を図っているが、具体的な実施方法については示しておらず、政策は不透明なものとなっている。1つの方法として民営化も考えられるが、民間企業を誘致するのに有効な策は採られていない。
 市場の自由化により国内の砂糖価格は低下している。一方、都心部から離れ政治的に不安定な地域では、砂糖を販売することに対するリスクのために、砂糖の価格は年々上昇している。政府は、効率的に砂糖を販売するために、国営製糖工場で生産される砂糖を現地の市場に販売している。この政策は効果的であるが、国営製糖工場のない地域での砂糖価格の高騰は、依然として問題となっている。



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