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アメリカ合衆国の砂糖産業の概要

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/海外情報


海外レポート
[2003年6月]

 アメリカ合衆国は、砂糖及び異性化糖の主要な生産国及び消費国ですが、砂糖については世界4位の輸入国でもあり、そのほとんどは日本同様、粗糖で輸入しています(2003年3月現在)。また、砂糖産業は、最低価格を保証するローンレート制度と関税割当(TRQ)によって輸入量を調整することで、国内価格を支持されています。
 こうしたアメリカ合衆国の砂糖産業について、英国の調査会社LMC社からの報告をもとに、企画情報部でまとめたので紹介します。なお、この報告は2002年11月現在のものであり、最新のデータについては巻末資料編をご参照下さい。

企画情報部


生産状況
  さとうきび及びビートの生産  国内の需給バランス
  異性化糖の動向  その他の甘味料
砂糖制度の概要
  ローンレート制度  現物支払制度  国境措置
  メキシコからの市場アクセスの問題  販売割当
  さとうきび、ビート生産者と製糖業者との関係  砂糖政策の決定機関
砂糖産業の現状
  甘しゃ糖産業  ビート糖産業  砂糖の流通
  砂糖産業の現在の問題点


生産状況

さとうきび及びビートの生産
 アメリカ合衆国では、さとうきびとビートの両方から砂糖を生産している。さとうきびは本土のフロリダ州、ルイジアナ州、テキサス州の3州とハワイでのみ栽培されており、ビートは17の州で栽培されている。
 1ha当たりの砂糖生産量は、さとうきびでは約9トンであるのに対し、ビートでは約7トンとさとうきびの方が上回っている。また、さとうきび栽培地域のうち、ハワイでの単収は他の州よりも高く、世界最高レベルにあり、これは収量にも反映されている。ルイジアナ州では、生育期間が短く、さとうきびが成熟するために十分な期間が取れないため、砂糖の収量は他のさとうきび栽培地域を下回っている。ルイジアナ州でのさとうきび生育期間は9ヵ月と、フロリダ州の12〜14ヵ月、ハワイの24ヵ月に比べて短い。
 ビートでは、かんがい設備が完全に整っていることから、南西部(特にカリフォルニア州)での砂糖の収量が最も高くなっている。一方、Red River Valley地域では、かんがい率が低いこと、肥培管理があまり行われていないことから、他の地域に比べて砂糖の収量が低い。

国内の需給バランス
 砂糖産業は、この10年間で飛躍的な成長を遂げた。99/2000年度の産糖量は過去最高の820万トンとなったが、消費量も増加したため、依然として国内消費量が生産量を上回っている。消費量については、1980年代初めには、砂糖に比べて価格の低い異性化糖との競争によって急激に落込んだが、1985年以降には増加に転じ、現在では80/81年度とほぼ同量の900万トンにまで回復している。
 国内生産で供給しきれない不足分は輸入によって補っているが、その大部分は輸入割当(TRQ)内で粗糖を輸入し、国内で精製している。近年、TRQは大幅に削減されている。
 また、年間10万トンをカナダ、メキシコ、ジャマイカに向けて再輸出しており、そのうち約90%が精製糖である。
 消費量は99/2000〜01/02年度の間に、約4%増加している。これは、この期間に人口が2.5%増加したことによるものであると考えられる。1990年代以降、消費量の内訳は、焼き菓子が最大であり、次いで砂糖菓子となっている。また、飲料での消費が全体の1.4%と少ないが、これは、飲料に使用される甘味料の大半が異性化糖であるためである。
図1 アメリカ合衆国の砂糖生産量及び消費量の推移 (単位:100万トン、粗糖換算)
図1

表1 砂糖の需給バランス (単位:1,000トン、粗糖換算)
  97/98年度 98/99 99/2000 2000/01 01/02
生産量 合計
粗糖
白糖
6,941
2,961
3,980
7,691
3,432
4,259
8,163
3,670
4,493
7,867
3,665
4,202
7,216
3,627
3,589
消費量   8,986 9,007 8,992 9,191 9,342
輸入量 合計
粗糖
白糖
2,180
2,169
11
1,656
1,587
69
1,302
1,290
12
1,428
1,378
50
1,520
1,465
55
輸出量 合計
粗糖
白糖
148
0
148
139
11
128
83
10
73
128
13
115
113
0
113
在庫量の変化   −13 +201 +3909 −24 −719

表2 さとうきび生産量及び産糖量等の推移
  97/98年度 98/99 99/2000 2000/01 01/02
収穫面積 (1,000ha) 348 359 381 395 393
さとうきび生産量 (1,000トン) 27,218 29,704 30,461 31,108 29,733
単 収 (トン/ha) 78 83 80 79 76
産糖量 (1,000トン、粗糖換算) 2,961 3,432 3,670 3,665 3,627
さとうきび生産量/産糖量 (TC:TS) 9.2 8.4 8.6 8.5 8.2
さとうきび生産額 (1,000USドル) 842,839 893,048 859,572 895,074 1,076,657
農業粗生産額 (1,000USドル) 166,016,000 175,804,000 185,372,000 196,492,000 201,644,000
農業粗生産額に占める
さとうきび生産額の割合 (%)
0.5 0.5 0.5 0.5 0.5

表3 ビート生産額及び産糖量等の推移
  97/98年度 98/99 99/2000 2000/01 01/02
収穫面積 (1,000ha) 578 587 618 556 503
ビート生産量 (1,000トン) 27,112 29,483 30,318 29,521 23,394
単 収 (トン/ha) 47 50 49 53 46
産糖量 (1,000トン、粗糖換算) 3,980 4,259 4,493 4,202 3,589
ビート生産量/産糖量 (TC:TS) 6.8 6.9 6.7 7.0 6.5
ビート生産額 (1,000USドル) 1,174,452 1,1175,582 1,243,224 1,112,902 1,021,070
農業粗生産額 (1,000USドル) 166,010,000 175,804,000 185,372,000 196,492,000 201,644,000
農業粗生産額に占める
ビート生産額の割合 (%)
0.7 0.7 0.7 0.6 0.6

表4 砂糖の用途別消費量
  97/98年度 98/99 99/2000 2000/01 01/02
家 庭 用 42.0% 42.1% 42.3% 42.4% 42.5%
業 務 用
 飲 料
 焼き菓子
 砂糖菓子
 乳製品
 果物及び食品
 その他 (食品以外の利用を含む)
小計

1.7%
23.8%
14.9%
4.7%
3.4%
9.5%
57.9%

1.6%
23.9%
15.0%
4.6%
3.4%
9.6%
58.0%

1.5%
23.8%
14.9%
4.5%
3.3%
9.6%
57.7%

1.4%
23.9%
14.9%
4.4%
3.3%
9.6%
57.6%

1.4%
24.3%
15.2%
4.4%
3.4%
9.8%
58.4%
合 計 (1,000トン、粗糖換算) 8,986 9,007 8,992 9,129 9,278
1人当たり消費量 (kg/人) 33.3 33.1 32.2 32.2 31.2
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異性化糖の動向
 国内の砂糖価格が高いことと、砂糖制度の対象外になっていることから、異性化糖の生産が伸びた。
 1968年に42%ものの異性化糖の生産が開始されたが、食品産業(特に飲料製造者)には甘味が不十分であると不評であったことから、1978年に55%ものが開発されるまではあまり使用されなかった。異性化糖の需要は、砂糖に比べて価格が安かったため大手の飲料製造者が砂糖に代わって使用したこと、1990年代半ばに清涼飲料の需要が伸びたことによって増加し、1999年には、生産量は世界の異性化糖生産量の75%を占めるまでになった。その後、清涼飲料の販売量が一段落したことと砂糖価格が低下したことから、需要は停滞している。
 異性化糖産業は、海外、特にメキシコ市場への進出を計画したが、これに対して、メキシコは国内保護政策として、1997年にトン当たり55〜175USドルの反ダンピング関税を導入した。WTO及びNAFTAは、メキシコに対して協定違反であるとの裁定を下したが、関税は依然として据え置かれたままである。さらに、最近、メキシコでは、異性化糖を使った清涼飲料の小売価格に対して10〜20%の税を導入したことにより、清涼飲料向け甘味料は異性化糖から砂糖への回帰が見られる。

表5 異性化糖の生産量等の推移 (単位:1,000トン、固形換算)
  97/98年度 98/99 99/2000 2000/01 01/02
生産量 8,194 8,479 8,472 8,397 8,424
消費量 7,954 8,239 8,265 8,281 8,308
輸入量 120 120 121 257 141
輸出量 360 360 328 257 257
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その他の甘味料
 アメリカでは高甘味度甘味料として、アスパルテームが最も多く使われており、消費量は砂糖換算で160万トンに達している。アスパルテームの約75%が飲料に使用されており、今後も需要は増加すると思われる。
 スクラロースは、1998年に承認されたのを機に、消費量は急速に増加しており、アスパルテームの需要を脅かしつつある。
 サッカリンも主要な高甘味度甘味料の一つである。食品医薬品局によって2000年まで 「発ガン性物質である可能性があるもの」 のリストに挙げられており、サッカリンを使用している食品にはガンになる可能性があるとの記載が義務付けられていた。しかし、このリストから除外されて以降はカロリーを調整した製品や強甘味度甘味料への使用が増加した。また、食品以外にも家畜飼料や金属メッキ産業等において使用されている。
 アセスルファム-Kの飲料への使用は、1998年に承認されたところであるが、2002年の消費量は砂糖換算で20万トンに達すると予想されている。しかし、スクラロース等、他の甘味料との競争もあるため、今後の見通しとしては、20万トンを超えることはないと思われる。
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砂糖制度の概要

 現在の制度は2002年農業法(Farm Security and Investment Act of 2002)に基づいており、07/08年度末まで有効である。この法律は、政府が国内価格を維持するために、市場に介入することを認めており、実際には、商品信用公社(CCC)を通じたローン制度によって介入されている。CCCは、農産物価格の安定、支持、保護のために設立された、政府が運営する公社である。
 国内の白糖価格は、輸出向け白糖価格の3倍近くにもなっており、国内の粗糖価格も世界市場での白糖価格を大きく上回っている。

表6 さとうきび、ビート及び砂糖の価格 (99/2000〜01/02年度平均)
(単位:USドル/トン)
  さとうきび、ビート 白 糖 粗 糖
さとうきび価格
ビート価格
24
40
-
-
-
-
卸売価格
 国内販売
 世界市場

-
-

532
197

211
-
小売価格
 国内販売

-

948

-

ローンレート制度
 生産者は、毎年、砂糖を担保にローンを借りることができる。粗糖のローンレートは1ポンド当たり0.18USドルに、ビート糖は1ポンド当たり0.229USドルに設定されている。ローンを借りた生産者は、年度の終わりまでに返済するか、砂糖による現物返済かのいずれかを選択しなければならない。現物返済の場合には、砂糖の所有権はCCCに移行し、CCCは最終的にバイヤーの役割を果たす。 2000年までは、政府が輸入割当(TRQ)を136万トン以上に設定した場合には、生産者は現物返済を選択することはできなかった。2001年農業法においては、現物返済の際のTRQによる制限がなくなり、生産者は、TRQの数量に関係なく現物返済が可能となった。
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現物支払制度
 99/2000年度の国内生産が高水準であったため、TRQによる輸入量を最低に設定しても、国内市場は供給過剰となった。さらに、NAFTA協定によりメキシコからの輸入が増加したため、国内の粗糖価格は急落し、CCCが在庫を抱える結果となった。また、政府は、急務の策として市場に直接介入し、約12万トンの砂糖を買い上げた。
 農務省は、CCCの在庫処理のために、現物支払制度(PIKプログラム)を実施した。この制度により、生産者はビートの収穫を行わない代わりに、CCCの余剰在庫の砂糖を受け取ることが勧められ、2000年には、4万1,000haのビート畑が26万9,400トンの精製糖と引き換えに処分された。この結果、2000/01年度半ばには100万トンを超えていたCCCの余剰在庫の減少につながり、同国の在庫量は99/2000年度末の約300万トンから2000/01年度末には約230万トンに減少し、在庫量/消費量比率も99/2000年度末の33%から25%にまで減少した。01/02年度には、エタノール生産者に対する約9万1,000トンの売却及び販売相手を制限しない公開販売によって、CCCの在庫はさらに減少した。
 現物支払制度は、当初、一時的措置とされていたが、01/02年度にも引き続き同様の制度が実施され、20万トン(粗糖換算)の砂糖と引き換えに3万7,000haのさとうきび畑及びビート畑が処分された。2002年農業法では、今後の現物支払制度の実施については、農務省に決定権があるものの、この制度が今後も継続されれば、「連邦政府の資金に頼らない」というこれまでの砂糖制度の強みを覆すことになる。

国境措置
 割当外の粗糖及び白糖の関税率は、それぞれトン当たり338.70USドル及び357.40USドルに設定されている。
 農務省は、国内の需給調整により、粗糖価格を一定の水準に維持しようとしている。アメリカ合衆国は砂糖の輸入国であることから、輸入割当制度によって、輸入許可量を変えることで需給を調整していた。輸入割当制度は、無税あるいは特恵税率での輸入割当を設定し、それ以外の輸入には高関税を課した。
 アメリカ合衆国は、WTOからミニマムアクセスとして粗糖換算で113万9,000トンの砂糖を低関税で輸入することが義務付けられており、そのうち2万2,000トンは精製糖で輸入することとされている。01/02年度のTRQは、このミニマムアクセスの数量に設定されている。
 また、砂糖の輸出に対する輸出補助金等の支援は、これまでに実施されていない。

表7 国境措置
  粗  糖 白  糖
現行の関税率
 割当内(TRQ)
 割当外

0%
337.7USドル/トン

0%
357.4USドル/トン
GATT の義務
 関 税
  基本税率
  最終税率

398.5USドル/トン
338.7USドル/トン

420.5USドル/トン
357.4USドル/トン
 ミニマム・アクセス (トン、粗糖換算) 1,117,195 22,000
 輸出補助金削減
  数 量 (1,000トン)
  率 (%)

適用なし
適用なし
最終期限 2000/01年度
注) オーストラリア、ブラジル、南アフリカからの割当内の輸入に対しては、粗糖の0.625セント/ポンド、白糖1.6625セント/ポンドの関税率が適用される。
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メキシコからの市場アクセスの問題
 現在、砂糖産業にとっての問題点は、メキシコからのアメリカ合衆国の砂糖市場への流入である。メキシコからの割当外での輸入関税は、粗糖、白糖ともに、2002年には1ポンド当たり9.61セントに設定されているが、順次引き下げ、2008年には撤廃することが計画されている。NAFTA協定では、メキシコには生産過剰分(exportable surplus)を無税で合衆国に輸出する権利があるとしている。生産過剰分の解釈に関して、メキシコは砂糖のみの生産による過剰分であるとしており、一方、アメリカ合衆国は異性化糖等も含めた甘味料全体の生産を考慮した場合の過剰分であると主張しており、現在も協議中である。現在、合衆国内の粗糖価格は世界市場価格に比べて1ポンド当たり14〜16セント高く、メキシコにとっては割当外での関税を考慮しても世界市場に向けて輸出するよりも利益がでるため、割当外での輸入の拡大を合衆国に求めている。

表8 メキシコからの割当外輸入に対する関税削減計画
  セント/kg セント/ポンド
2000年
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
28.25
24.72
21.19
17.66
14.12
10.59
7.06
3.53
0
11.21
9.61
8.01
6.41
4.8
3.2
1.6
0
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販売割当
 2002年農業法では販売割当制度が再導入され、政府は、国内の食品製造者向け販売のうち54.35%をビート糖に45.65%を甘しゃ糖に割り当てている。
 現在、生産調整は行われていないが、販売割当を設定することによって、間接的に生産量が調整されていると考えられる。

さとうきび、ビート生産者と製糖業者との関係
 さとうきびに対する支払制度については、生産地域ごとに異なる支払制度が存在している。フロリダ州では、さとうきび1トン当たりの砂糖及び糖みつの標準数量を基として、さとうきびの代金が支払われる。ルイジアナ州では、砂糖と糖みつの販売による収益を、生産者と製糖工場とで分配する、収益分配制度に基づいてさとうきび価格が定められる。テキサス州及びハワイでは、さとうきびは製糖会社が栽培しているため、収益を分配する必要がない。
 ビートに対する支払制度には、五大湖契約とホリー契約の2種類がある。五大湖契約では、ビート糖、糖みつ、ビートパルプの販売による純販売収益(総収益から販売費用を差し引いたもの)の約53%がビート生産者に支払われる。その支払方法は、実際にビートから生産された砂糖の数量に基づいているため、「sugar-in-the-bag」 方式とも呼ばれる。ホリー契約は、出荷時のビートの含糖率に応じて、ビートの代金が支払われるため、「sugar-in-the-beet」 方式として知られている。この方式では、砂糖のみの販売による純販売収益が、ビート生産者と製糖業者間で分配されており、ビート生産者は副産物による収益は受け取っていない。ホリー契約の生産者の分配率は、平均すると純砂糖販売収益の約60%である。副産物からの収益を含めた場合には53%程度に相当し、五大湖契約の場合とほぼ同率である。

砂糖政策の決定機関
 砂糖政策は、国の行政機関、立法機関、政策の影響を受ける生産者団体によって検討される。
 従来、砂糖政策は行政機関である農務省が方針案を提出し、議会がこれを審議した。議会における、小委員会、農業委員会レベルでの審議の際に、製糖業者やユーザーを代表する団体との意見交換を行い、最終法案が作成される。最終的に、法案は大統領によって承認され、農務省によって実施される。 最近まで、農場法に基づく砂糖制度は5年に1度審議されていた。
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砂糖産業の現状

甘しゃ糖産業
 甘しゃ糖工場は、21社26工場が稼動しており、そのほとんどが民間会社である。これらの工場の平均処理能力は、1日当たり1万140トンである。ハワイ、ルイジアナ州、フロリダ州では、2000年以降に閉鎖された甘しゃ糖工場もある。
 また、精製糖工場は、製糖工場から独立した工場が8工場、製糖工場に付属した工場が2工場稼動している。

表9 甘しゃ糖工場の現状 (1)
表9
表9 甘しゃ糖工場の現状 (2)
表9

表10 精製糖工場の現状
表10
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ビート糖産業
 ビート糖工場は、10社28工場が稼動している。これらの工場の平均処理能力は、1日当たり6,270トンである。最近の動向として、ビートの生産者組合が製糖工場を買収し、生産と加工を統合する動きがあり、この2年間で13の製糖工場が買収されている。
 最近では、以下の買収が行われた。
・Michigan Beet Growers' Co-operativeがImperial SugarからMichiganに所在する4つの製糖工場を買収した。
・Tate & Lyle がNebraska、Wyoming、Colorado、Montanaにある6ヵ所の製糖工場をRocky Mountain Sugar Growers' Co-operativeに売却した。
・Imperial's Sugarは、WyomingにあるWorland工場をWyoming Sugar Company Limitedに売却した。
・American Crystal Sugar CompanyはImperial SugarからSidney工場、Torrington工場、Hereford工場を買収することを発表している。また、Torrington工場については、Western Sugarが25年間、借り受けることになっている。
 ビート糖工場は操業期間が長いことが特徴的である。気候が寒冷であり、多くの工場においてビートを冷蔵した状態で保存できるため、冬中かけて圧搾作業を行うことができる。

表11 ビート糖工場の現状
表11 表11
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砂糖の流通
 精製糖工場は、食品製造業者、小売向け、外食産業の3部門に向けて、それぞれ65%、20〜25%、10〜15%の割合で販売している。大手の食品製造業者は精精糖工場と直接、価格の交渉を行っており、砂糖も直接受け渡しされている。また、小売向けの砂糖については、精製糖工場で小袋包装されて流通している。
 砂糖の流通の特徴は、自社ブランドの砂糖を地域を限定して販売しており、全国的に販売されているブランドがないことである。また、一般的に精製糖工場は、必要に応じて適時、受け渡しを行う 「Just-in-time」 方式によって、自社の製品を短時間で配送することを保証している。そのため、工場から離れた地域における受け渡しにも対応するために、中継倉庫を所有している会社もある。

砂糖産業の現在の問題点
 2002年農業法での主な変更点は、販売割当が設けられ、国内生産による販売量を制限したことである。導入初年度には市場価格は一定の水準に保たれ、割当制度が効を奏したように思われる。しかし、メキシコからの輸入がほとんど行われなかったこと、ルイジアナ州での生産量が前年度に比べて14%減少したことによる影響もあり、今後も価格が維持されるかは疑問である。
 また、割当導入前後でビート栽培面積にほとんど変化が見られず、販売割当が今後も継続された場合には、割当を超えた生産による在庫が増大することになると思われる。政府は在庫を処理するために、メキシコからの輸入を制限することも考えられる。
 最近行われた、American Crystal によるSidney工場及びTorrigton工場の買収により、American Crystalの割当は全体の35%に拡大した。買収の際に割当の移行は制限されておらず、今後、割当が他の地域に譲渡される可能性もある。
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