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中国の砂糖産業の概要について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/海外情報

海外レポート
[2004年5月]

 中国では、甘しゃ糖とてん菜糖の生産がともに行われており、その大部分が甘しゃ糖となっています。02/03年度について言えば、生産量の約9割を甘しゃ糖が占めています。
 また、1990年以降中国の砂糖消費量は、増加傾向にありますが、それは国の政策により、砂糖へ移行したことも要因のひとつと考えられます。
 こうした中国の砂糖産業の概要について、英国の調査会社LMC社からの報告をもとに、調査情報部でまとめたので紹介します。

調査情報部


生産状況
  需給バランス  てん菜生産状況  さとうきび生産状況
  製糖産業  代替甘味料について  異性化糖について
  砂糖生産  砂糖の消費
砂糖制度の概要
  砂糖産業の現状  販売協定  農家と製糖業者の関係
  砂糖産業の現在の問題


生産状況

需給バランス
 砂糖の生産量は、過去2年間で飛躍的に増大しているが、それは甘しゃ糖の増大分によるものである。2000/01年度の670万トンから02/03年度には1,150万トンと、2年で70%増加している。このように、中国では、生産量が変動していることから、供給過剰と供給不足を繰り返している。その結果、砂糖の輸入量も毎年変動しており、生産過剰期と生産不足期の間の供給量を調節するために、政府は在庫調整を行っている。
 ここ2年ほどは、生産量だけではなく、消費量についても急速な伸びが見られるようになった。これは、人工甘味料(特にサッカリン)の生産能力を削減するという政府の政策によるものである。その結果、消費者の消費傾向は、砂糖へ移行が進んだ。これに伴い、砂糖生産量は、約150〜200万トン増加したと見られている。

表1  砂糖の需給バランス (単位:1,000トン、粗糖換算)
表1

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てん菜生産状況
 てん菜の収穫面積は、過去6年で約50万haから約35万haに減少している。
 2002/03年度は、てん菜の収穫量が99/2000〜01/02年度より多かったことから、産糖量は98/99年度と同水準となった。  てん菜の平均単収は、25トンにすぎず、世界のてん菜生産国の平均を下回っている。また、てん菜の生産量は、これまでほとんど増加していない。ただし、2002/03年度は、単収が30トンを超える異例の豊作となった。
 てん菜の主要生産地は、北西に位置するウイグル自治区と北東部の黒龍江省で、この2地域で国内総生産量の約70%を占めている。02/03年度の生産量は、ウイグル自治区が約48万トン、黒竜江省が約31万トンである。中国北西部に生産拡大政策が導入され、北西部のウイグル自治区では特に生産量に増加傾向が見られる。ただし、てん菜糖全体の生産量は、1990年以降、下落傾向を示している。
 てん菜の収穫量は、地域によってばらつきが生じている。例えば黒龍江省では、過去6年間の平均収穫量が、1ha当たり15トンであった。これは、世界最低水準の収穫量である。一方、ウイグル自治区では、生産地の拡大により、単収は40トンを超えているものの、1990年以降、全体としては減少傾向にある。その理由としては、低農業生産性、低工場稼働率、トウモロコシなどの代替作物との競合が挙げられる。
 てん菜のショ糖含有率は、97/98年度〜2002/03年度の平均で約14.5%である。これは、92/93年度〜96/97年度の5年間の平均を若干下回る数値である。
 てん菜からのショ糖産出量は、2000/01年度には大きく落ち込んだものの、02/03年度には、1ha当たり約4トンにまで回復した。これについても、中国は、世界のてん菜生産国の中で最低の数値を示している。

表2 てん菜の生産状況
表2
注 ビート生産額は製糖されたビートの量に農家が受け取る1トンあたりのビート価格をかけたもの

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さとうきび生産状況
 近年、中国では砂糖の生産量が急速に増加しているが、その多くは甘しゃ糖の生産増によるものである。特に新興産地の広西自治区と雲南省の伸びが大きい。
 生産地が国内西部に向かって拡大しているのは、これらの地域に対する政府の開発政策によるものである。広西自治区は、省(自治区)単位では国内最大の砂糖生産地域で、02/03年度の生産量は、約500トンに達している。
 てん菜同様、さとうきび収穫量についても地域間格差が非常に大きい。02/03年度の単収は、広西自治区は70トン、雲南省は50トンであった。広東省、福建省などの伝統的な産地では競争が激しいことから、生産量が伸び悩んでいる。
 さとうきびの収穫面積は、過去6年で約100万haから140万haに拡大している。収穫量については、不作だった2000/01年度には5,000万トンを下回ったが、現在は8,400万トンに達している。
 単収は、豊作の年を除くと、60トン未満となっており、世界の主要生産国の平均を下回っている。過去6年間、さとうきびの収穫量は伸びていない。ただし、単収は、90年代前半には50トン程度であったが、近年はそれ以上となっている。
 含糖率の国際平均は、約13%である。中国もほぼこの水準であるが、過去20年間ではほぼ同水準で推移しており、最近わずかに改善したにすぎない。
 2003年初めに、農業省は、さとうきびを含む主要作物の開発に関する最新の「5ヵ年計画」を発表した。それによると、広西自治区、雲南省、広東省が「さとうきび生産重点開発地域」に指定された。2007年までに、これら3地域で、全国の砂糖生産量の65%を生産する計画である。

表3 さとうきびの生産状況
表3
注: きび生産額は製糖されたさとうきびの量に農家が受け取る1トンあたりのさとうきびの価格をかけたもの

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製糖産業
 中国には甘しゃ糖工場が261工場ある。外国企業が出資し、経営に関わっている工場(外資系工場は、9工場ある。これらの工場は、地方の工場よりはるかに大規模で、砂糖を生産する工場の過半数を占めている。
 製糖工場の多くは、蒸気を発生させるための燃料に石炭を使用している。さとうきびの絞りかすは、製糖工場に隣接している製紙工場や芯材工場で使われることが多い。現在は工場の拡張や改良が徐々に進んでいる。今後エネルギー効率の良い設備が導入されれば、省エネルギー化が進むとともに、さとうきびの絞りかすを売却して電力に利用する機会が増える可能性があると考えられている。
 中国ではさとうきび産業が拡大しているが、製糖工場は増加していない。97/98年度から工場の合理化が進められているため、工場数はむしろ減少しており、02/03年度までに30%減となっている。しかし、工場数が減少したものの、さとうきびの供給量が増加したことから、残った工場の平均生産能力と生産量は向上している。特に稼動期間については、従来は200日未満であったのが、02/03年度には250日を超えるようになった。
 中国の製糖工場では、近代的生産技術が導入されていない工場が多い割には、糖分抽出率は比較的良好である。それは、工場搬入前にさとうきび生産農家がトラッシュをできるだけ取り除き、製糖にとって良質の原料が製糖に使われているためだと考えられる。また、農家は、さとうきびの梢頭部と葉の部分を家畜の飼料にしている。
 工場の従業員数は、国際平均よりも多い。500〜600人規模の工場が多いが、稼動状況によって大きく異なる。機械化の進んだ大規模工場もあるが、これらの工場は小規模で、機械化・自動化の進捗状況は良いとは言えない。中国の工場は、従業員数が多い割には賃金が低いのが特徴で、そのため、砂糖生産量1トン当たりの人件費は、世界で最も低い部類に入っている。
 中国には、てん菜糖工場が87工場あるが、現在外資系の工場は存在しない。
 てん菜糖の生産量は、97/98年度まで増加傾向になかった。ただし、多数の工場を閉鎖したことから、工場1件当たりの平均生産量と生産能力は向上した。工場数は、6年間で40%以上減少したが、甘しゃ糖の場合と同様、閉鎖した工場の多くは休眠状態である。一方、稼動日数は、200日前後で推移したが、99/2000年度と2000/01年度には急激な落ち込みを見せた。ただし、過去5年間でてん菜糖工場が減少し、設備稼働率が改善したために、ここ数年の1工場当たりのてん菜糖生産量は、増加傾向にある。しかし、製糖率は約77%と他のてん菜生産国の平均水準を大きく下回っている。これは、製糖技術が低いこと、てん菜の品種が少ないこと、場合によってはてん菜が長期間貯蔵されること等の要因が影響しているものと考えられる。
 製糖率が低い要因は、ディフューザー以外に海外の技術が導入されていないことが挙げられる。また、甘しゃ糖産業とは異なり、てん菜糖産業では外国との合弁企業は1つもない。
中国のてん菜糖工場は、稼動期間が9月から翌年4月までとなっている。厳寒地で冬は気温が零下まで下がることから、てん菜を冷凍状態で貯蔵・製糖する。このため、収穫期以降も稼動することが可能となる。ただし、地面が長期に渡り凍結する前に、てん菜を収穫する必要がある。しかし、近年、実際の工場の稼動期間は、9月から翌年4月よりも短く、黒龍江省の一部では、稼動期間がわずか60日間という工場もある。99/2000年度及び2000/01年度には深刻なてん菜不足により、工場の稼動期間が大幅に短縮された。一部の工場では、てん菜を確保する手段として、農家(農村の協同組織)に奨励金を支払い、自社の工場に出荷するように要請しているところもある。中国のてん菜糖工場の従業員数は、甘しゃ糖工場同様、世界の平均よりも多い。

表4 てん菜糖工場の技術的能力指標
表4
表5 甘しゃ糖工場の技術的能力指標
表5

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代替甘味料について
 中国は、代替甘味料の生産量、消費量ともに世界第一位である。政府は、砂糖生産者支援策として、サッカリンの生産制限を実施した。その結果、人工甘味料の使用量は、2000/01年度の約440万トンから、現在は年間約300万トン(砂糖換算)にまで減少した。この政策は、代替甘味料の生産に決定的な影響を与えた。中国で生産される代替甘味料は、サッカリンが圧倒的に多いが、工場の解体が進んだことにより、生産量は過去3年間で150〜200万トン減少した。それでも甘味消費量全体の約30%は依然として人工甘味料が占めており、中でもサッカリンの消費量が群を抜いて多く、人工甘味料の約75%を占めている。サッカリンに次いで多いのはチクロ、ステビオサイドで、生産量はそれぞれ36万5,000トン、18万9,000トン(砂糖換算)となっている。
 中国産のサッカリンとチクロは、世界の人工甘味料市場で大きなシェアを占めている。国内市場向けのサッカリン生産量が減少したとはいえ、国内向け・輸出用ともに人工甘味料の大部分を依然としてサッカリンとチクロが占めている。国内市場向け生産量は縮小しても、中国は依然として、サッカリンの主要輸出国である。
 ところがここ数年、人工甘味料の販売政策をめぐり、中国とアメリカとの間で貿易摩擦が生じるようになった。2001年には、米国第一位のサッカリン生産者が、米国国際貿易委員会(USITC)に対し「中国は、アメリカ市場においてダンピング販売を行っている」との陳情書を提出した。
 USITCは、「中国からの輸入によって、アメリカ国内のサッカリン産業が著しく不利益を被っていると考えるに足る根拠が存在する」との判断を下した。これは、中国産のサッカリンが市場占有率獲得を目的に、アメリカ国内で「ダンピング販売」されていることを意味する。2002年12月末には、USITCの判断により、中国産サッカリンの輸入に対して暫定的にダンピング防止措置が課された。

表6 代替甘味料の消費量の推移 (単位:1,000トン、白糖換算)
表6

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異性化糖について
 中国では、異性化糖はあまり生産されておらず、販売量は70万トン(砂糖換算)に満たない程度である。中国の異性化糖産業はまだ発展途上で、これから発展する余地はあるが、現在のところ、飲料用と菓子・パン類にわずかな需要がある程度となっている。
 中国では、澱粉質甘味料への総需要は比較的低い。澱粉質甘味料の中で市場占有率が最も大きいのはブドウ糖で、需要は30万トン(砂糖換算)を超えている。

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砂糖生産
 白糖と精製糖の内訳についての公式な統計資料が乏しいため、正確な内訳を把握するのは困難である。てん菜糖工場では、様々な品種の白糖を生産している。ただし、最高級品質の砂糖を生産する能力のある工場はごくわずかしか存在しない。
 中国産の砂糖で最も一般的なのは、「グレードA」で、糖度が99.6度、ICUMSA色価が150〜200である。この砂糖は、広西自治区の南寧や雲南省の昆明などの砂糖取引所において、国内価格の基準になっている等級である。ICUMSA色価60〜80の高品質の砂糖を生産しているのは、イオン交換設備のある工場だけである。

表7 砂糖と異性化糖の生産量、消費量、輸出入量の推移 (単位:1,000トン、白糖換算)
表7
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砂糖の消費
 各年度とも、家庭用消費が全体の25%前後を占めており、これ以外は、工業生産用である。工業用生産用では、飲料、菓子・パン類の生産が大きな比重を占めている。
 中国では、人口増加率が鈍っているにもかかわらず、1人あたりの消費量は伸びている。過去3年間の消費量の増加は、1人あたりの消費量の増加につながっている。

表8 砂糖消費内訳の推移 (単位:1,000トン、粗糖換算)
表8
資料: LMC予想
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砂糖制度の概要

砂糖制度の現状
 近年、政府は産業合理化政策の一環として、不採算経営の工場を閉鎖する方針を進めている。閉鎖の判断基準は、一定の生産能力を達成しているかどうかではなく、主に財務状態である。不採算経営工場を閉鎖することにより、残った工場全体の稼働率を向上させることもできると考えられる。
 かつて、中国は構造的な供給不足であった。近年、国内において生産の増大に伴い、以前に比べると、需給が均衡するようになった。今後の展望としては、政府の価格維持政策は、在庫調整という重要な役割を果たすものと思われる。
 政府は、01/02年度や02/03年度のように、余剰在庫が増加したときは、在庫蓄積を進め、市場において供給過剰の状態にならないために、価格の安定を図るという方法を採ってきた。反対に、2000/01年度のように生産量が減少したときは、入札を実施し、在庫を売却し、価格の高騰を抑える方法を採ってきた。現在もこの政策が再び実施されており、2003年12月下旬には、白糖在庫5万トンが入札された。
 国内が生産過剰状態のときは、在庫を輸出する方法もある。しかし、中国では生産コストが比較的高く、国際市場で販売しても利益が出ない。したがって、政府が輸出補助金を支給しない限り、輸出による余剰在庫の解消は不可能である。中国は、2001年12月にWTOに加盟した。このため、大規模な輸出補助金の支給は、事実上不可能となっている。また、キューバとの間に、国内需給状況にかかわらず、年間約30万トンの砂糖を輸入するという長期の貿易協定を結んでいるため、常に一定水準以上の砂糖が輸入される。このため、国内在庫がさらに押し上げされることになる。
 中国政府は、国内の砂糖市場への介入権限を持っており、現実に価格操作や需給調整などの介入を行っている。国の政策について定めた公式文書には「砂糖の輸入に対する関税率」、「許可割当制度による輸入管理」、「甘しゃ糖工場・てん菜糖工場の国有化・省有化」、「在庫の買い上げと売却」、「代替甘味料政策」(特にサッカリンの生産と国内販売の管理に関するもの)がある。
 以上の政策文書は、砂糖の国内価格を国際価格からある程度分離させることを目的としている。注視すべきことは、特定の基準価格は設定しておらず、価格そのものに関する政策を設けていないということである。政府の目的は、需給調整であり、それが結果的に砂糖の価格に影響するということである。したがって、実際の国内価格は、国際価格と連動したものになっている。平均輸入価格とは、関税を含む輸入価格のことである。輸出平均価格とは、国際市場における砂糖の販売価格から、陸地における輸送費を差し引いた価格である。陸地輸送費とは、工場出荷から輸出港渡しまでに要する輸送費のことである。国内価格と平均輸入価格はほぼ同水準になっており、政府の価格維持政策は、有効であると言える。国内の需給状況が供給過剰になった時期においても、在庫蓄積の措置がとられるため、平均輸出価格の下落を防ぐことができる。
 政府は、価格維持政策として、砂糖の輸入制限を行っている。これは、輸入割当制度と輸入許可制度により、行われている。近年輸入の多くは粗糖で、精糖後、再輸出されている。COFCO(中国粮油食品進出口有限公司)とCSTWC(中国烟草糖酒有限公司)が主な輸入企業である。
 中国では、WTO協定に基づく輸入割当数量(TRQ)として、2002年には、176万4,000トンの割当数量を設定したが、国内価格の維持と農家への支援を図るため、2002年3月に輸入を一時停止した。今後の輸入停止については、不明である。ただし、2002年に輸入停止を行ったことから、同様の措置を行うものと思われる。2002/03年度の中国の輸入量は、輸入割当数量の3分の1にも達していない。割当数量内の輸入については、関税率は低いが、下落傾向にある国内価格を輸入諸経費が上回ってしまうため、利益が出ない。輸入割当数量は、2003年が185万トン、2004年が194万トン5,000トンと増加しており、その70%を国営の貿易会社が輸入することとなっている。
 輸入割当のうち、70万トンが委託精糖、再輸出用の粗糖である。
 WTOにおける砂糖の輸入関税率は、当初20%に設定されていたが、2004年中に15%に引き下げられる予定である。割当数量を超える輸入分については、2003年には58%となっている。これについても、2004年中には50%に引き下げられる予定である。
 割当数量内の輸入及び割当数量を超える輸入のどちらについても、依然として輸入許可制度による管理が行われている。このため、割当数量内の70%を少数の国営貿易会社が輸入し、残りの30%をそれ以外の企業が輸入するという状況が今後も続くものと思われる。輸入許可制度は、管理強化を目的としていると同時に、割当数量を越える輸入を防止することが目的と考えられる。割当数量を超える輸入が行われるのは、国内で生産不足に陥り、消費を補うために必要な場合だけである。また、割当数量を超える輸入を行う場合は、政府は国営の貿易会社に輸入許可を与えると考えられる。
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販売協定
 1990年代以降、国内市場における砂糖取引が自由化され、製糖工場は、自ら生産した砂糖を自己責任で販売することとなった。これは、現在も続いている。ただし、国営の商社が依然として存在しており、工場を砂糖から買い付け消費者に販売する「仲買人」として、現在も重要な役割を果たしている。

農家と製糖業者の関係
 中国のさとうきび価格は、年度ごとに政府が決定している。以前は価格が長期間固定されていたが、現在は、柔軟な方式となっている。これにより、農家への価格支払いの仕組みを改善しようという狙いがある。
 政府は、協定価格の導入を検討している。これは、農家と工場が砂糖を取引する際の価格を一定の計算式によって決定するものである。てん菜、さとうきびのいずれについても、従来は農家と工場間で協定価格を設ける仕組みが存在しなかったが、広西自治地区の外資系企業から、このような方式を導入しようという動きがあった。これらの外資系企業は、現在、広西自治区においてこの方式を正式に採用するように働きかけている。

表9 さとうきび、てん菜及び砂糖の平均価格
(単位:US$/トン)
  さとうきび ビート 白 糖
  20.9 29.8
卸売価格
 ― 国内価格
 ― 特恵輸出
 ― 世界市場輸出









427

195
小売価格
 ― 国内



628

表10 輸出入関税 (単位:US$/トン)
  粗糖 白糖
 現行関税率
 ― 割当内
 ― 割当外

15%
50%

15%
50%
 GATT譲許
 基本税率
 最終税率

100%
50%

100%
50%
 最低輸入量(100万トン) 1,945,000
 輸出補助金引き下げ 該当なし
 最終移行期間 2004/05
注: 輸入は国の輸入配給会社CEROILフーズの責任である。個人輸入業者は許可を必要とする。LTCの下行なわれる輸入の関税は低いか、またはゼロである。
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砂糖産業の現在の問題
 てん菜糖産業は、ここ数年で著しい発展を遂げた。これは、政府の産業合理化・収益改善政策により、赤字経営工場の閉鎖が行われたためである。1990年代中期以降、50工場がこの政策により閉鎖された。95/96年には98工場が稼動していたが、現在は47工場である。この方針は、今後も続く可能性が高い。てん菜糖産業は、コスト効率の観点から、生産量に大きな余剰が生じても、国際市場に輸出できないためである。工場の閉鎖以外で改善されるのは、てん菜の平均収穫量や含糖率の向上などが挙げられる。
 甘しゃ糖産業でも、てん菜糖産業と同様の政策が採られたが、閉鎖した工場の割合はてん菜糖工場ほど大きくない。それは、国・省・郡の各レベルの利害が一致せず、そのため工場の閉鎖が進まないからである。国営企業と合弁企業2社(英国のBritish Sugar社とタイのMitr Phol社で、いずれも広西自治区に工場を持つ)を除いた残りの80%が国有企業である点が注目に値する。政府としては、国家政策として不採算工場の閉鎖を推し進める方針には変わりなくても、省及び郡のレベルでは、閉鎖による雇用への影響やさとうきび農家の収入確保、省や郡の税収確保などが優先課題となる。
 このことから、改革の足かせとなり、改革が進まず、先送りされてしまう傾向は続くものと見られる。ただし、砂糖産業全体としては、いずれ工場閉鎖を計画的に進めていくことが望ましいと考えられている。
 広西自治区の甘しゃ糖工場に外国企業が投資したことが契機となり、農家と工場間で協定価格を設ける制度を正式に導入するかどうかの議論が起こったが、外資系合弁工場が単独でそのような方式を実施するのは難しい。それは、さとうきび農家が、リスクの低い国営工場との取引を選択するものと考えられるからである。しかし、このような方式が多くの省で導入される日も遠くないものと見られる。
 砂糖の消費量維持政策として、政府はサッカリンの生産量削減策を実施したが、この政策は、長期的には別の影響をもたらす可能性がある。砂糖に代わる別の人工甘味料が低コストで国内生産されるようになれば、消費傾向が砂糖から他の甘味料へ移行するという可能性も考えられる。
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