[2004年11月]
オーストラリアは、世界最大の砂糖生産・輸出国の1つで、近年の砂糖生産量は500〜600万トンで推移し、その大部分が輸出されている。オーストラリアには全7州中、Queensland(QLD)州、New South Wales(NSW)州、Western Australia州の3州で砂糖が生産されており、オーストラリア産糖の95%がQLD産となっている。また、さとうきびの生産については、QLD州北東部からNSW州北部へ南北に伸びる沿岸地帯で行われている。
このようなオーストラリアの砂糖産業について、LMCからの報告をもとに調査情報部でとりまとめたので紹介する。
生産状況
需給バランス
粗糖の生産量は、全体の75〜80%を占めている。97/98年度には、過去最高の590万トン、輸出量は460万トンを記録した。その後、干ばつ、台風、病害の影響により、生産量が減少した年度もあったが、04/05年度は560万トンと過去最高水準にまで達するものと予想されている。
QLD州では、ほぼ毎年、生産された砂糖の80〜85%が輸出されている。輸出量は、過去5年間400万トン前後で推移しており、大部分は粗糖が占めている。これは、精糖工場の生産能力の限度を超えてしまうためである。ただし、オーストラリア産の粗糖は、品質が上質なため信頼性が高く、主として、国外の精糖業者との長期契約により取引されている。
オーストラリアのさとうきびは、近年品質の低下が見られていることから、砂糖産業内でも問題視されている。このため、国際市場において、高品質のブラジル産粗糖にシェアを奪われる事態を招く結果となっている。
また、オーストラリアでは、90年代前半に砂糖生産量が約50%増加している。これは、主に規制緩和などによる政策改革の成果であるとみられる。しかし、その後現在までの10年間については、砂糖産業は全体的に停滞状態が続いている。
さらに、同国の砂糖産業は、世界屈指の生産性を誇っている。しかし、生産性は、国際価格の動向に大きく左右される。近年における国際価格の低迷や病害、天候不順により、原料作物の収量低下を招いた。その結果、2000/01年度および02/03年度は政府の資金援助を受けることとなった。また、新政策導入に伴い、04/05年度についても政府からの資金援助が行われることになっている。
図 90/91〜04/05年度のオーストラリアにおける生産量、消費量および輸出量の推移 |
(単位:100万トン、粗糖換算) |
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表1 砂糖の需給バランス |
(単位:1,000トン、粗糖換算) |
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注 :03/04年度は推定 資料:ISO、LMC推定 |
さとうきび農家
さとうきび農家は、QLD州に約6,500戸、NSW州に約650戸、Western Australia州に約20戸ある。農家の大半は自営農家で、面積は1戸につき平均76haとなっており、大半は30〜250haにより農業を営んでいる。国内における農業・製糖の兼業はBundaberg Sugar社のみである。同社は、QLD州のさとうきび生産地全体の2%に相当する9,000haの農地を所有している。
オーストラリア産さとうきびにショ糖含有量の割合が高いのは、生産技術が高いだけではなく、北部を除いて気候が恵まれていることや、年間工場操業期間が比較的短いこと(糖度の高い時期に集中的に製糖を行う)、さらに製糖工場への効率的な輸送体制が整備されていることなどが挙げられる。オーストラリアでは、収穫されたさとうきびの品質劣化を抑えるため、18時間以内に製糖されることになっている。98/99〜02/03年度の期間は、病害や天候不順の影響により、砂糖生産量が減少したものの、これらの要因により、世界でも品質の高い砂糖の生産を可能にしている。
また、オーストラリア産さとうきびの糖液は、純度が高く、高操業率の要因となっている。糖液の純度は平均約86%となっており、製糖歩留の高さに寄与している。一方、オーストラリア北部地方では降雨量が多いため、糖液の純度が最も低い。
オーストラリアでは、毎年さとうきびを収穫できるのは、栽培面積の85%程度となっている。これは、雨による播種の遅れにより、生育に18ヵ月を要することが原因と見られている。
表2 さとうきびの生産量等の推移 |
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製糖産業
製糖産業においては、近年の諸問題に対応するために構造改革が進んでおり、国内工場を所有している会社の合併や、海外資本の新規会社参入が見られる。
現在、オーストラリア国内には12社29工場あり、そのうち25工場はQLD州にある。砂糖産業最大手はCSR Limited社、次いでBundaberg Sugar社となっている。CSR Limited社は、7工場を所有し、年間220万トンを生産している。これは、国内総生産量の約40%に相当する。Bundaberg Sugar社は、2000年中頃にベルギーのFinasucre社に買収され、同社の傘下となった。生産量は年間80万トンで、これは国内総生産量の15%に相当する。
また、Bundaberg Sugar社は、合理化の一環として、2003年にMoreton工場を閉鎖した。また、2002年と2003年には、Mackay Sugar cooperative Association Ltd社がコスト削減策の一環として、Pleystowe工場の操業を停止した。
QLD州に所在している工場の平均規模は、国際水準を上回っているものの、それほど大きくはない。1日当たりの原料処理量は、1万トン以上となっている。平均操業日数は100〜140日の範囲となっている。
生産される粗糖は、いくつかの等級に分類される。そのうち糖度が高いものが「超高度粗糖(VHP)」および「QLD高糖度粗糖(QHP)」の2つである。この2つの違いは、QHP糖が洗糖されるのに対し、VHP糖は洗浄されて生産されていることである。QHP糖で使われる洗糖という生産方法では、砂糖の結晶が溶けにくくなり、VHP糖よりも再生量が多くなるが、糖度はVHP糖よりも若干低くなる傾向にある。ただし、オーストラリア産粗糖の大部分は、糖度が99度前後のものであり、「ブランド I」(第一等級)に分類されている。
80年代後半までは、十分な生産量も確保されていたことから、大部分の工場の生産体制は週7日の無休体制で行われた。このため、工場稼働率は飛躍的に向上した。90年代半ば以降は、国際糖価の下落や農業生産の低下により、90年代中頃に多くの工場が設備拡張を行った。2000/01年度および01/02年度にはさとうきびの供給量が減少したが、操業日数を短縮するなどの工夫により、稼働率を低下させずに、他の年と同水準を維持している。
QLD州では、最近の2年間に南部地方のMoreton工場が閉鎖、中部地方のPleystowe工場が一時閉鎖された。今後は北部地方においても合理化が進められる予定となっており、砂糖産業の合理化は進んでいくものとみられている。
表3 製糖工場の生産能力等 |
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表4 製糖企業および工場一覧 1 |
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注:1. 所有構造は現在のデータ。場所は03/04年度、生産量および生産能力は02/03年度のデータ。
2. 産糖量を生産能力で割った数字。 |
精製糖製造産業
精製糖工場は現在3社が4工場を所有している。3社とは、THE Sugar Australia Pty Ltd.社、Bundaberg Sugar社、Manil
dra Harwood Sugars社である。オーストラリアでは、精製糖が年間100万トン生産されている。主な輸出先は、インドネシアやフィリピンで、ニュージーランドへはわずかとなっている。オーストラリア産糖の品質は高品質で、ICUMA色価が45未満ものである。
90年代には、産業の規制緩和と農地拡大が進められた。この中で、Sugar Australia社が設立された。同社は、CSR社、Mackay Sugar社、ED&F Man社の3社が出資して設立された会社であり、CSR社、Mackay Sugar社の設備を使っている。なお、ED&F Man社の持ち株は、その後CSR社が全株取得した。
表5 砂糖生産内訳 |
(単位:1,000トン、粗糖換算) |
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表6 オーストラリアの精製糖企業 |
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砂糖消費
消費量については、近年横ばい傾向が続いているものの、国民1人当たりに換算すると年間50kg(粗糖換算)を超えており、日本の約3倍となっている。全消費量の20%は家庭向けとして消費され、それ以外は業務用として消費されている。その用途は多種であるが、飲料向けが最も多く、約半分を占めている。次いで多いのが菓子向けとなっている。
表7 砂糖消費内訳の推移 |
(単位:1,000トン、粗糖換算) |
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異性化糖および代替甘味料
オーストラリアにおける異性化糖の生産量は、国内甘味料生産量の0.1%程度となっている。オーストラリアでは、国内砂糖価格が国際価格を下回るため、異性化糖産業は競争力が弱く、今後も変化しないものと見られている。国内で異性化糖の生産を行っているのは、Manildra社のみである。同社は、国内産の小麦を原料として異性化糖を生産している。
また、オーストラリアでは異性化糖の輸入は行われていない。従って、国内生産分は全て消費されている。用途は主に飲料向けである。その具体的な内訳は、栄養剤、アルコール飲料およびManildra社のオリジナルブランドの飲料に使われている。
代替甘味料の中でもアスパルテームとサッカリンの需要が比較的高く、2003年度においては、それぞれ甘味料全体の7%、2%を占めている。
表8 砂糖及び異性化糖の生産量、消費量等の推移 |
(単位:1,000トン、白糖換算) |
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表9 代替甘味料の消費量の推移 |
(単位:1,000トン、白糖換算) |
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砂糖制度の概要
生産管理
旧砂糖産業法制定時に実施された政策の1つに、さとうきび生産地の拡大政策があった。具体的には、「さとうきびの栽培面積を1995年までに毎年最低2.5%ずつ拡大すること」とされた。1989年には5%、1990年には8%と栽培面積の拡大は前年までに進められており、これをさらに継続する形がとられている。その結果、1989年から1996年までの間に、QLD州の生産地は、36万3千haから48万4千haと33%増となった。これにより、需要に見合った農地面積が確保された。農地拡大は、Burdekin地区の灌漑農業により、収穫量が高まったためである。なお、1992年から2000年までの間に、さとうきび生産地は31%拡大した。
砂糖の国内価格維持
1997年7月には、輸入粗糖および白糖に対する関税が全て撤廃された。関税撤廃による国内価格への影響については、粗糖と白糖では大きく異なる。政府による直接の価格政策は行われていない。また、管理価格の設定、買い上げによる市場介入のいずれも行われていない。ただし、価格への影響については、粗糖と白糖では状況が大きく異なる。
[1] 粗糖の国内価格≒輸出基準価格
輸入粗糖に対する関税撤廃に伴い、「QLD砂糖公社(QSL)が国内市場で粗糖を販売する際には、輸出基準価格で販売すること」が法律により明記された。この結果、粗糖の国内卸売価格は、国際価格とほぼ一致した水準となる。
QLD州では、1999年に廃止されたが、すでに国内価格と輸出価格の差がなくなっていたため、実質的な影響は皆無に等しかった。新規参入農家や収穫量の多い農家は、オーストラリアより高価格のアメリカへ輸出し、収益を得ている。
オーストラリアの生産者にとって、国内価格を維持することは、諸外国よりも比較的容易である。これは、近年、国内生産量の80%以上が輸出されているためである。
[2] 生産者へのさとうきび代金支払い方法
以前はプール価格制度に基づいて行われていたが、現在は各市場での売上を加重平均した金額から、QSLの負担経費(販売管理費、倉庫保管料など)を差し引いた価格が支払われている。99/2000年度〜03/04年度の平均は、トン当たり約24米ドルである。
[3] 小売価格
オーストラリアでは国内で5年間販売された全ての砂糖に対して1キロ当たり豪ドルに換算すると3セントが一律に課税される(ただし表中価格は税抜き価格である)。
表10 さとうきび、砂糖の平均価格 |
(単位:US$/トン) |
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さとうきび |
白 糖 |
粗 糖 |
買上価格 |
24 |
− |
− |
卸売価格
― 国内
― 特恵輸出
― 世界市場輸出
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− − −
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291 − 223
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180 448 173
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小売価格 ― 国内 |
− |
696 |
− |
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市場アクセス
国内生産者に対しては、輸入糖に対する関税もなく、保護政策が全く行われていない。WTO上における特恵関税割当数量も存在しない。
表11 輸出入関税 |
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粗糖 |
白糖 |
現行関税率 |
A$0/t |
A$0/t |
WTO公約
関税
基本税率
最終税率
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A$140/t A$70/t
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A$140/t A$70/t
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最低輸入量(百万トン) |
該当なし |
輸出補助金引き下げ
輸出量(千トン)
輸出費用(%)
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該当なし 該当なし
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最終移行期間 |
2001/02 |
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販売協定
オーストラリアで生産される砂糖の95%を生産しているQLD州では、粗糖の仕入れおよび販売はQSLが行っている。
QSLがオーストラリア国内で粗糖を販売する際には、輸出基準価格(FOB価格)と同価格で販売することが義務付けられている。なお、NSW州とWestern Australia州については、市場が小規模なため、QSLの対象外となっている。
精製糖の輸入については、国内産業保護措置により、輸入諸経費見合い分が上乗せされるため、国内販売価格は高くなっている。また、精製糖業者は、粗糖を輸入せずに、QSLから購入することも認められている。この場合、仕入価格は輸出基準価格と同価格となり、国内で販売する際には、安く仕入れて高く売渡すシステムとなっている。
QSLは全ての砂糖を輸出基準価格で販売しているが、QLD州では「販売条件統一制度」を設けている。これが間接的に価格維持の役割を果たすことにつながっている。
販売統一条件とは、QSLが販売する砂糖は全て輸送費込みの価格(C&F)で販売するというもので、これにより、QSLは輸出先の仕向地を自社で選択・決定することができる。アジア地域において砂糖の価格が上昇すれば、それによる恩恵を受けることが可能となる。
販売条件統一制度が今後も継続されるかどうかは不明である。これは、国内における販売規制緩和実施の際、砂糖産業再構築策の一環として、この制度の見直しが提案されていたことや、輸出市場においてもQSLによる統一条件下において長期販売の維持が可能か否か疑問であるなどの点が挙げられるためである。
農家と製糖業者の関係
さとうきび農家は、基本的には自ら資金を調達し、農業を営んでいるが、「収穫協力」という名目で、工場からの資金援助も一部受けている。この資金は、工場が無休体制の操業を維持するために農家に時間外労働を要請した見返りに、時間外労働手当を目的として支払われているものである。
収穫したさとうきびは、工場指定の配送先もしくは工場あてに直接出荷されている。これは農家の責任で行われている。工場によっては、取引先農家に対し、物流費を支払っている。金額については、農家と工場の話し合いによって決められている。
QLD州では、農家と工場が「収益分配協定」(Revenue Sharing Agreement)を結んでいる。この協定では、さとうきびの価格は、農家の収入の割合を基に決められており、さとうきびの品質と工場の生産性に基づいて価格計算が行われる。
従って、農家に支払うさとうきび代金の価格は固定ではなく、近年は60〜65%程度で推移している。ただし、さとうきびの輸送費用負担については、さとうきび販売収益の中から、工場が負担することが義務付けられている。
1989年以降、農家と工場が収益分配協定を結んでいるのは、粗糖の販売についてのみである。精製糖については、生産・販売における収益は全て工場の収入になる。また、糖液とバガスについては、工場のみの所有権となる。糖液の販売は、1960年代に「オーストラリア糖液販売組合」が発足して以来、国内販売・輸出ともに、この組織を通じて各工場が共同販売する方式が採られている。
砂糖産業の現状
オーストラリアは、1990年代に実施した規制緩和およびそれに続く農地拡大により、コストの低減を実現し、低コスト高生産国となった。
同国の砂糖市場は、世界規模からみて、開放・自由化が進んでいる市場の1つである。また、農家と工場、国内販売と輸出のいずれに対しても、政府による政策は行われていないに等しい。
ただし、砂糖産業の形態および規模を見直し、産業再構築を図る目的や国際価格の低迷に伴う諸問題が生じたため、政府による所得支援、金利軽減、経営改善政策を行っている。
オーストラリアでは、国と州において砂糖政策が実施されている。国の所管官庁は財務省および第一次産業エネルギー省であり、関税の撤廃や税制変更など、国家的もしくは全国規模の政策が行われている。QLD州を例にとると、州政府がQSLを通じて砂糖産業に関係する個別で具体的な政策を実施している。
オーストラリアの砂糖産業では、農家と工場の利害を代表する団体が存在している。代表的な3団体として、NSW州とQLD州のさとうきび団体「さとうきび生産者連合(CANEGROWERS)」、「さとうきび生産者協会」(Australian Cane Farmers Association)、29工場により設立された団体の「オーストラリア砂糖生産工場連絡会」(Australian Sugar Milling Council)がある。
QLD州では、1999年に制定された「砂糖産業法」に基づき、砂糖産業への監督および規制政策が行われている。この法律は、旧砂糖産業法(1991年制定)および「砂糖産業の工場合理化に関する法律」(1991年制定)に代わるものとして制定された。
また、砂糖の国際価格の低迷に伴い、近年農家や工場へ支援策が導入されるようになった。2000年には、政府により8,300万豪ドル(65億5千万円)の公的資金が投入された(実績額は6,200万豪ドル(48億9千万円))。その目的は、10ヵ月間の所得支援、新規融資(5万豪ドル(395万円)以内)、および既存の借入金(10万豪ドル(789万円)以内)に対する金利減免措置、国内各地における資金支援相談などである。
さらに、2004年3月、砂糖改革法案に基づき、2000年の支援金額から大幅増となる4億4,400万豪ドル(350億3,160万円)の資金援助措置が国会と州議会で承認された。この措置は、米国とのFTAにおいて、砂糖が例外品目となり、オーストラリアからアメリカの市場アクセスの改善が困難となったためと見られている。資金援助は、政府と州政府が協同して行われる。資金財源は、砂糖税および州政府により負担される。
砂糖税とは、国内で販売される砂糖に対し、1キログラム当たり3セント(豪ドル建て)を一律課税するというものであり、課税実施期間は5年間で、95万トンの砂糖が課税対象となる見込みである。ただし、輸出用の飲料および食料品の原料となる砂糖は対象外である。資金財源の大部分をこの税金で賄われることとなるが、不足分については、州政府が負担することとされている。
その主な内訳は、砂糖産業への支援が1億4,600万豪ドル(115億1,900万円)、農家への所得支援が2,100万豪ドル(16億5,700万円)、エタノールなどを利用し、新規用途向けにさとうきびを利用した場合(アルコール製造などの食用外産業向け資金)が7,500万豪ドル(59億1,800万円)となっている。また、さとうきび生産から撤退する農家への支援策として、1件当たり10万豪ドル(789万円)支給される。
QLD州さとうきび生産者協会調べによると、現在さとうきび農家6,500件のうち、最大2,000件の農家がこの制度を利用して、さとうきび生産から撤退すると予想している。また、同協会では、撤退による影響は、05/06年度収穫分から出るものと見ている。
昨年は、世界中の輸送費急騰により、オーストラリアの砂糖産業が保護される結果となった。これは、アジア地域向け輸出において、ニューヨーク11(粗糖)価格以上の砂糖に対して、同価格に上乗せする輸送費を1ポンド当たり1〜2セント引き上げたためである。
また近年は、豪ドルに対し、米ドルのレートが上昇しており、砂糖産業にとって懸念材料の1つとなっている。豪ドル高の進行により、国際市場へ輸出したオーストラリア産糖の利益の目減りにつながることとなる。
砂糖産業の現在の問題
(1) 1999年から2001年の間には、オーストラリアでは赤さび病が発生した。特にMackay地域だけでさとうきび生産量が40%減少し、QLD州は深刻な被害を受けた。Mackay地域では、Q124という品種が多く栽培されているが、同品種は赤さび病に対する抵抗力が弱く、甚大な被害を被ったことから、農家は新品種への移行を余儀なくさせられた。このため、01/02年度は天候に恵まれたにもかかわらず、産糖量の低下を招くこととなった。しかし、最近は新品種の導入効果が見られ、収穫量については回復傾向にある。
また、2000/01年度には、産糖量が14トン/haから10トン/haまで減少した。01/02年度からは回復の兆しが見られたが、この影響は03/04年度まで続くこととなった。
さらに、2000年1月から2003年4月の間に干ばつ・洪水などの自然災害や、ペスト、さとうきびの病害などが生産者に影響を与えた。
(2) 1990年代後半のブラジル砂糖産業の急成長により、1999年からの国際糖価の低迷に悩まされている。また、極東市場における競合国であるタイでは、価格支持政策が導入されたため、近年著しい発展を遂げたオーストラリアでは、国内価格も輸出基準価格と同一に設定されているため、国内価格の影響を非常に受けやすくなっている。
さらに、近年の為替市場において豪ドルが高騰し、2001年から2004年までの間に対米ドルレートが33%上昇した。このため、オーストラリアの輸出競争力は低下し、収入減をもたらすこととなった。
(3) 競争力に影響をもたらす懸念のひとつに、オーストラリア産粗糖よりもブラジル産の高品質粗糖が国際市場において高く評価されていることが挙げられる。精製糖事業者は、製造コストを抑えるために、高品質の粗糖を求めている。ブラジル中南部では、最初の製造工程において高品質粗糖が生産されるため、余計なコストがかからず、一番糖の搾汁糖液が全てエタノール生産に利用されている。