[1999年6月]
本稿は、平成9年度海外研究調査事業の一環として、平成10年3月にLMC International Ltd.から海外主要5カ国の砂糖産業について報告を受けたものをベースに、その後の情報を追加する等により企画情報部が取りまとめたものです。
米国は、世界最大の砂糖及び異性化糖の生産国、消費国であるとともに、世界最大の原料糖輸入国の1つでもある。
ビートは14州で栽培されており、さとうきびは本土の3州(フロリダ、ルイジアナ及びテキサス)及びハワイで栽培されている。また、異性化糖工場は、主に中西部に集中している。
【1】砂糖産業の概要
1.国内需給バランス
米国は、長年砂糖の輸入国であるが、砂糖の生産量が過去10年間で(特にビート部門で)大きく増加しているにもかかわらず、消費量が生産量を大きく上回る傾向が続いている。表1に示されているデータでは、この期間の消費量は微増となっているが、過去10年間に砂糖の消費量は、平均約2%の増加率で大きく増加したことが要因となっている。国内の消費量と生産量との格差は、ビートが豊作だった1994/95年〜1996/97年の期間でさえ粗糖換算で平均200万トンを上回っている。
輸入量は、国内の消費量と生産量の格差以上となっているが、これは精製糖業者が精製糖を再輸出しているためであり、再輸出するための粗糖を関税割当の枠外で輸入することが認められている(後述)。
砂糖の生産量は、1980年代の初頭以降大きく増加しており、1980/81年の粗糖換算で530万トンから1994/95年には720万トンに達している。
表1:砂糖の需給バランス〔1994/95−1996/97〕
| 1994/95 | 1995/96 | 1996/97 |
生 産 | 7,201 | 6,686 | 6,510 |
消 費 | 8,524 | 8,636 | 8,664 |
輸 入 粗糖 白糖 合計 |
1,586 43 1,629 |
2,524 38 2,562 |
2,621 47 2,667 |
輸 出 粗糖 白糖 合計 |
1 688 690 |
10 362 372 |
7 233 241 |
在庫変化 | (383) | 239 | 273 |
2.ビート、さとうきび及び砂糖等の生産実績
米国のビート糖及び甘しゃ糖産業は、大規模なものである。1994/95年〜1996/97年の間では、米国の砂糖生産量の55%は、カリフォルニア、ノースウェスト、グレート・プレーン、レッド・リバー・バリー及びグレート・レークスなどの地域で栽培されているビートによるものであった。甘しゃ糖の生産量は、フロリダ、ハワイ、ルイジアナ及びテキサスの4州に集中している。
ビートは、主に栽培農家もしくは共同でビート工場を所有している農場経営者によって栽培されている。農場の平均規模は、州によって異なるが拡大傾向にある。ビート栽培農場の全地域平均ビート収穫面積は、約65〜70haである。ミネソタ及びノース・ダコタのレッド・リバー・バリーの農場は、全地域中最も大規模であり、1992/93年には1農場当たり平均約100haを収穫しているが、1,000haを超える大規模農場もあった。
民間の甘しゃ糖工場の多くは、自社工場の最低処理量を確保するため、独自のさとうきび栽培地を所有しており、フロリダでは約2/3、ハワイでは全てがそれになっている。これに対し、ルイジアナでは、ほとんどが通常の農場経営者によって栽培されており、テキサスでは唯一の甘しゃ糖工場を共同で所有している農場経営者によって栽培されている。
表2a及び表2bは、各部門の生産実績の推移を示している。ビート部門においては、ha当たり6.0トン〜7.0トンのビート糖を生産しているのに対して、さとうきびにおいてはha当たり7.5トン〜9.0トンの砂糖を生産している。
表2a:ビートの生産量及び生産額〔1994/95−1996/97〕
| 単 位 | 1994/95 | 1995/96 | 1996/97 |
収穫面積 | 千ha | 584 | 573 | 536 |
生産量 | 千トン | 28,897 | 25,425 | 24,204 |
単 収 | トン/ha/年 | 49 | 44 | 45 |
産糖量 | 千トン/粗糖換算 | 4,153 | 3,578 | 3,666 |
原料処理量/産糖量 | トン | 7.0 | 7.1 | 6.6 |
A ビート生産額 | 千US$ | 1,234,164 | 1,068,088 | 1,211,272 |
B 農業生産額 | 千US$ | 132,960,260 | 139,040,400 | ― |
A/B比率 | % | 0.9 | 0.8 | ― |
(注) |
(1) LMC社平成10年3月の報告による。
(2) 97/98、98/99年の収穫面積、生産量は、各578ha、587ha、27,113千トン、29,629千トンである。 |
表2b:さとうきびの生産量及び生産額〔1994/95−1996/97〕
| 単 位 | 1994/95 | 1995/96 | 1996/97 |
収穫面積 | 千ha | 357 | 354 | 338 |
生産量 | 千トン | 26,676 | 26,449 | 25,123 |
単 収 | トン/ha/年 | 75 | 75 | 74 |
産糖量 | 千トン/粗糖換算 | 3,159 | 3,220 | 2,929 |
原料処理量/産糖量 | トン | 8.4 | 8.2 | 8.6 |
A ビート生産額 | 千US$ | 855,640 | 860,073 | 783,712 |
B 農業生産額 | 千US$ | 132,960,260 | 139,040,400 | ― |
A/B比率 | % | 0.6 | 0.6 | ― |
(注) |
(1) LMC社平成10年3月の報告による。
(2) 97/98、98/99年の収穫面積、生産量は、各348ha、361ha、27,219千トン、28,922千トンである。 |
州による格差は、特にさとうきびでは大きく、ha当たり5トン強の砂糖を生産しているルイジアナからハワイの12トン強までさまざまである。ビート部門においては、その差違はそれほど大きくなく、最も生産性が低いレッド・リバー・バリーの5トンからカリフォルニアの8トンとなっている。
ビート及びさとうきびの収穫面積は、ほぼ横ばい傾向で推移しているが、ハワイ州では、さとうきびの栽培地が農地以外の不動産売買に転用されたり、高付加価値作物に転換され減少している。
3.生産量及び消費量
表3は、1994/95年〜1996/97年の甘しゃ糖及びビート糖の国内生産量並びに輸入粗糖から生産された精製糖の生産量を示している。
表3:砂糖生産量の内訳〔1994/95−1996/97〕
| 1994/95 | 1995/96 | 1996/97 |
国産糖 生産量 |
甘しゃ糖 | 3,159 | 3,220 | 2,929 |
ビート糖 | 4,153 | 3,578 | 3,666 |
合 計 | 7,201 | 6,686 | 6,510 |
精製糖 生産量 |
国産粗糖 | 3,159 | 3,220 | 2,929 |
輸入粗糖 | 1,586 | 2,524 | 2,621 |
合 計 | 4,744 | 5,744 | 5,550 |
(注) |
(1) LMC社平成10年3月の報告による。
(2) 97/98の甘しゃ糖、ビート糖、合計は、各3,294千トン、3,981千トン、7,276千トンで、98/99は、各3,458千トン、3,833千トン、7,291千トンである。 |
国内生産量のうち、ビート糖の生産量は50%〜60%を占めているが、その割合は緩やかに低下しており、ビートが不作であった1995/96年には53.5%まで落ち込んだ。
国内の原料糖の生産量が減少し、輸入粗糖から生産された精製糖が増加したため、精製糖全体の生産量は、1994/95年〜1996/97年の間に増加している。輸入粗糖から生産される精製糖は、表に示されている3年間では精製糖の総生産量の33.4%から47.2%に増加している。
表4は、米国の砂糖の消費量及び各エンド・ユーザーの内訳を示している。総消費量は、1994年〜1996年の間に約5%増加したが、(1)人口が増加した、(2)1人当たりの消費量が増加した(1996年は、1994年より2.5%増加している)ことが要因と考えられる。
表4:砂糖消費量の内訳〔1994−1996〕
|
1994年 | 1995年 | 1996年 |
千トン | % | 千トン | % | 千トン | % |
家庭用消費 | 3,548.0 | 42 | 3,648.6 | 42 | 3,707.8 | 42 |
加工用消費 飲 物 パン類 菓子類 乳製品 缶詰製品とジャム 他の用途(食品外含む) 小 計 |
153.8 1,924.9 1,294.8 446.7 317.5 770.2 4,907.9 |
2 23 15 5 4 9 58 |
166.7 1,878.5 1,352.9 445.7 275.1 914.1 5,033.1 |
2 22 16 5 3 11 58 |
193.3 1,965.3 1,316.5 438.8 313.6 902.3 5,129.7 |
2 22 15 5 4 10 58 |
合 計 | 8,455.9 | 100 | 8,681.7 | 100 | 8,837.5 | 100 |
1人当たりの消費量(kg/人) | 32.4 | 33.0 | 33.2 |
家庭消費量及び産業部門の消費割合は、この3年間では変化しておらず、家庭消費量は1990年代初頭までに増加し、その状態を維持している。1人当たりの消費量の増加には、次の3つの主な要因が考えられる。(1)ダイエットへの関心が低脂肪食品の需要を増大させていることである。味覚、満腹感及び食感を維持するために、多くの食品において脂肪に代わって砂糖が使用された。(2)消費者は、徐々に、砂糖を含んでいる調理済食品及びパン類などのコンビニエンス・フードを選択するようになっている。(3)砂糖業界及び砂糖協会は、健康食品としての砂糖のイメージアップに努めており、消費行動を変えるのに成功している。砂糖協会は、砂糖は「純粋で自然のものであり」かつ「安全」であることを強調している。
砂糖協会は、砂糖に対する消費者の行動を注視しており、砂糖の宣伝及び販売促進キャンペーンが消費者の砂糖への認識を大きく改善したと報告している。
一方、飲料部門においては、砂糖のシェアが極めて小さく、全ての飲料に異性化糖もしくは人工甘味料が使用されていることを示している。異性化糖は、全甘味料の34%を占めており、1990年の32%から増加している。異性化糖の消費量の70%以上は、飲料部門において消費されている。人工甘味料のシェアは、1990年以降1%低下している。アスパルテームは、最も広く使用されているが、1990年以降シェアを増大させている。サッカリンは、もう1つの主な人工甘味料であるが、特に家畜の飼料産業及び電気メッキ産業など食品以外の産業部門において、主に利用されている。アセスルファム-Kは、平成10年7月、使用が認可された。
4.異性化糖の位置付け
表5は、砂糖及び異性化糖の生産量、消費量及び貿易量を示している。米国では大量の異性化糖が生産、消費されており、世界の需給の70%以上を占めている。また、カナダ及びメキシコに隣接しているため、両国との貿易も行われている。
表5:砂糖・異性化糖の生産量及び消費量〔1994/95−1996/97〕
| 1994/95 | 1995/96 | 1996/97 |
生 産 量 |
砂糖 a 異性化糖 %(異/砂) |
7,201 7,061 50 |
6,686 7,342 52 |
6,510 7,635 54 |
消 費 量 |
砂糖 b 異性化糖 %(異/砂) |
8,524 7,068 45 |
8,636 7,344 46 |
8,664 7,477 46 |
輸 入 量 |
砂糖 c 異性化糖 %(異/砂) |
1,629 100 6 |
2,562 131 5 |
2,667 145 5 |
輸 出 量 |
砂糖 d 異性化糖 %(異/砂) |
690 93 12 |
372 129 26 |
241 304 56 |
在庫((a+c)-(b+d)) |
-383 | 239 | 273 |
(注) |
(1) LMC社平成10年3月の報告による。
(2) 異性化糖の生産量は固形換算で表されているが、砂糖のデータを他の表に合わせるために、ここでは原料糖換算で砂糖を表している。 |
米国における異性化糖は、トウモロコシから生産されており、生産量は1994/95年以降増加している。中でも果糖分55%ものの生産量は、果糖分42%ものと比較して増加しており、現在、総生産量の60%以上を占めている。異性化糖の国内消費量もまた、異性化糖が特に飲料産業などいくつかの産業における砂糖の市場シェアを侵食し続けているため、砂糖の消費量と比較して増加している。
異性化糖の主な輸出先国の1つであるメキシコへの輸出が増加したこともあり、米国が1996/97年に異性化糖の純輸出国となった。しかし、メキシコは、米国から輸入される異性化糖に高関税を課しており、今後の輸出に不確定要素がある。また、メキシコの砂糖産業は、異性化糖の輸入を抑制するために、より安価な砂糖を飲料産業へ提供するための契約をユーザーと締結している。カナダは、米国の異性化糖輸出量の20%を占め、米国にとって重要な輸出対象国となっている。
【2】砂糖政策の概要
1.砂糖政策の変遷
1934年に制定された砂糖法に始まる米国の砂糖政策(砂糖プログラム)は、その後、(1)砂糖の国別輸入数量割当、(2)砂糖の国内販売割当、(3)商品金融公社(CCC)買い上げ(質流れ)による砂糖及び砂糖原料作物の価格支持、(4)販売賦課金による砂糖プログラム運営の独立採算性等を備えていたが、最近は次第に簡素化されてきた。
現行の砂糖プログラムは、1996年農業法に基づき、(1)CCCの価格支持融資を通じた砂糖及び砂糖原料作物の価格支持、(2)輸入砂糖の関税割当等の国境措置、(3)販売賦課金制度を柱として実施されている。
1990年農業法下における政策との主要な違いは、(1)前法にあった一定条件下における砂糖の販売割当規定が、2,002作物年度まで停止されたこと、(2)CCCの価格支持融資において、担保砂糖の質流れは、砂糖の関税割当が136万トンを上回った場合にのみ可能と変更されたこと、(3)担保砂糖をCCCに質流れさせた場合、製糖業者に新たに罰金を課すとされたこと、(4)砂糖プログラムを連邦政府財政負担ゼロで運用するとの規定(コストゼロ運用規定)が廃止されたこと、(5)砂糖プログラムの赤字運営を改善するため、販売賦課金が引き上げられたこと、である。
表6:米国の砂糖需給
項目 |
1996/97 |
1997/98(推計) |
1998/99(見通し) |
期初(10月1日)在庫 |
1,353 |
1,350 |
1,523 |
生 産 ビート糖 甘しゃ糖 |
6,536 3,641 2,896 |
7,276 3,982 3,294 |
7,291 3,833 3,458 |
輸 入 関税割当(実輸入量) その他(関税割当外) |
2,517 2,066 451 |
1,962 1,569 393 |
1,730 1,280 449 |
総供給量 |
10,406 |
10,588 |
10,544 |
輸 出 |
191 |
162 |
159 |
国内出荷 食 用 その他 その他消費 |
8,838 8,676 161 27 |
8,904 8,774 130 (2) |
9,049 8,848 201 0 |
総消費量 |
9,057 |
9,065 |
9,208 |
期末在庫 |
1,350 |
1,523 |
1,336 |
期末在庫率 |
14.9% |
16.8% |
14.5% |
(注) |
1. | 米国農務省「世界農産物需給見通し(WASDE)」4月版による。 |
2. | 関税割当外の輸入には再輸出用原料糖、二次税率適用品等が含まれる。 |
3. | 輸出のほとんどは再輸出品である。 |
4. | 国内出荷の「その他」は、再輸出用の含糖製品製造用として転売されたもの、非食用アルコール向け及び飼料用である。 |
2.価格支持融資 (CCCによる短期融資制度)
CCCが農作物等を担保としてローンレート(融資する際のその農産物の融資単価)で融資し、市場価格がそれを下回った場合、生産者は担保物件を質流れさせることにより返済を免除される(ローンレートでの価格を保証される。)という米国農業政策上の主要手段の1つであり、砂糖プログラムにおいても適用されている。
担保物件は、通常、農産物とされているが、砂糖制度の場合は、原料作物に貯蔵性がないことから、担保物件は砂糖、融資対象者は製糖業者とされており、原料作物の生産者は、この融資制度を利用する製糖業者に出荷することを通じて間接的に支持される仕組みとなっている。この融資は貸付期間9ヵ月の短期融資であり、年度開始(10月)以降のどの時点でも受けられる。
融資を受ける製糖業者は、ローンレートに基づいて農務省が定める最低支持価格により原料作物を買い上げるよう義務づけられている。(ただし、ビートについては、後述するように多少異なる仕組みとなっている。)
出荷先製糖工場がこの融資を利用しない場合、原料作物生産者は価格支持を受けられない。
ローンレートは、甘しゃ粗糖とビート精製糖について、年度ごとに、全国平均単価と各生産州ごとの単価が定められており、全国平均単価は、1996作物年度から2002作物年度において各18.00セント/ポンド、22.90セント/ポンドとなっている(いずれも1995年水準のまま)。
各州のローンレートは、各州の生産地域と通常の仕向先地との間の実際の輸送コストを調整して定められている(表7)。また、原料さとうきびの州別最低支持価格は、表8の通りである。
表7:州別ローンレート
製糖する場所(州) |
1994 |
1995 |
1996 |
1997 |
1998 |
甘しゃ糖 |
フロリダ州 |
17.85 |
17.88 |
17.88 |
17.88 |
17.85 |
ハワイ州 |
17.90 |
17.92 |
17.77 |
17.77 |
17.74 |
ルイジアナ州 |
18.35 |
18.28 |
18.30 |
18.30 |
18.30 |
テキサス州 |
18.09 |
18.10 |
18.06 |
18.06 |
18.01 |
プエルトリコ |
18.13 |
18.13 |
18.09 |
18.09 |
18.14 |
ビート糖 |
ミシガン・オハイオ州 |
24.26 |
23.51 |
23.79 |
23.79 |
23.80 |
ミネソタ・1/2ノースダコタ |
23.41 |
22.96 |
22.73 |
22.73 |
22.73 |
コロンビア・ネブラスカ州等 |
23.11 |
22.54 |
23.01 |
23.61 |
23.88 |
テキサス州 |
23.99 |
23.51 |
23.61 |
23.61 |
23.88 |
モンタナ・ニューウェールズ等 |
22.98 |
22.44 |
22.19 |
22.19 |
22.39 |
東アイダホ州等 |
22.99 |
22.46 |
22.48 |
22.48 |
22.40 |
西アイダホ州等 |
22.99 |
22.46 |
22.48 |
22.48 |
22.40 |
カリフォルニア州 |
23.86 |
23.48 |
23.62 |
23.62 |
23.82 |
(注)米国農務省「砂糖プログラム・ファクトシート」99年2月版による。 |
表8:さとうきびの州別最低指示価格
州 名 |
1994 |
1995 |
1996 |
1997 |
1998 |
フロリダ州 |
23.50 |
23.36 |
23.36 |
23.36 |
22.83 |
ハワイ州 |
21.20 |
21.59 |
21.58 |
21.58 |
21.12 |
ルイジアナ州 |
20.48 |
20.46 |
20.75 |
20.75 |
20.84 |
テキサス州 |
18.36 |
18.78 |
19.51 |
19.51 |
18.48 |
プエルトリコ |
15.95 |
16.51 |
16.57 |
16.57 |
15.14 |
ビートについては、1994作物年度以降、ビート生産者と製糖業者との契約により、ローンレートから一定のコストを差し引いた純販売額(net selling price)に基づいて支払われる方式に変更されており、原料ビートの最低価格は、その平均砂糖含有量に基づいて算定される。
この方式変更に伴い、短期融資を受ける製糖業者に対しては、原料ビートの最低価格水準が勧告されることになっている。
砂糖プログラムの下、さとうきび生産者は砂糖販売純益の約60%ないし65%、ビート生産者は同約50%ないし55%を受け取っているとみられている。
なお、1996年農業法により、1997会計年度から2002会計年度の間、担保物件の質流れは、砂糖の関税割当枠が136万トン(150万ショートトン。粗糖換算)を超えた場合にのみ可能と修正された。したがって、関税割当枠がそれ以下の場合、価格支持融資は返済が必要な融資となる。また、質流れが可能となった場合でも、質流れさせる場合には、甘しゃ粗糖について1.0セント/ポンド、ビート精製糖について1.07セント/ポンドの罰金が課せられることに変更された。
3.砂糖に関する国境措置
砂糖に関する国境措置としては、砂糖及び砂糖を含む製品の関税割当、砂糖の再輸出プログラム、砂糖の輸入禁止措置がある。
1) 砂糖の関税割当
砂糖に関する関税割当制度には、砂糖そのものの関税割当と砂糖を含む物品の関税割当との2つがある。
ア.砂糖の関税割当
砂糖の関税割当は、粗糖と精製糖に分けて行われている。
(1) 粗糖の関税割当
WTOで約束されたミニマムアクセス(1,117,195トン)を下限として、需給事情を踏まえて毎年数量が変動する性格のものであり、1999会計年度の第一次割当枠は、甘しゃ糖について粗糖換算1,164,937トンとなっている。農務省が毎月実施する世界農産物需給見通し(WASDE)の1月、3月及び5月報告において米国の期末在庫率が15.5%以下と見通される場合、150,000トン追加されることになっているが、同報告における在庫率見通しはそれを上回っている(5月報告では16.0%)。一次税率はゼロまたは僅か、二次税率はUR合意に基づき、398.5$/トン(95年1月1日)から338.7$/トン(2000年末)へと引き下げられていくことになっている。
上記総枠は、通商代表部により40ヵ国に対し国別に配分されている(表9参照)。
表9:甘しゃ粗糖関税割当の国別配分(上位15カ国分)
ドミニカ共和国 |
190,657 |
アルゼンチン |
46,581 |
メキシコ |
25,000 |
ブラジル |
157,076 |
ペルー |
44,415 |
南アフリカ |
24,915 |
フィリピン |
146,243 |
パナマ |
31,415 |
ニカラグア |
22,749 |
オーストラリア |
89,912 |
エルサルバドル |
28,165 |
スワジランド |
17,322 |
グァテマラ |
51,997 |
コロンビア |
25,999 |
タ イ |
15,166 |
(2) 精製糖の関税割当
1999会計年度の割当枠は50,000トンであり、そのうち25,000トンは北米自由貿易協定(NAFTA)に基づきメキシコに割り当てられ、残り25,000トンのうち10,300トンはカナダ向けとされている。残量の配分は、先着順方式で行われる(WTO上のミニマムアクセスは22千トン)。
なお、メキシコに対しては、上記割当に表9の25,000トンを含めた50,000トンのほか、2,954トンが追加的に割り当てられている。
二次税率は、UR合意に基づき、420.5$/トン(95年1月1日)から357.4$/トン(2000年末)へと引き下げられていくことになっている。
イ.砂糖を含む製品の関税割当
物品別に次のような仕組みとなっており、メキシコとメキシコ以外で扱いが異なっている。
(1) 砂糖(「さとうきびまたはビートから生産された砂糖」とされている。以下、(7)まで同じ。)を含むシロップで、輸入時の外観及び包装から原料用と見られるものメキシコ以外の国については割当枠ゼロ、メキシコについては年1,500トン(1994年)から年々拡大し、1,900トン(2002年)となる割当枠。(2003年以降は制限なし。)
(2) 砂糖を乾燥重量で65%超含む物品で、輸入時の外観及び包装から原料用と見られるものメキシコ以外の国については割当枠ゼロ、メキシコについては1,500トン(1994年)から年々拡大し、1,900トン(2002年)となる割当枠。(2003年以降は制限なし。)
(3) 砂糖を乾燥重量で10%超含む一定のココア製品(含まれる砂糖が結晶形または乾燥した非定形をしておらず、かつ、輸入時の外観及び包装から小売り用と見られるものを除く)メキシコを除く全ての国については総枠で年2,313トン。メキシコについてはゼロ。
(4) 砂糖を乾燥重量で10%超含む一定の小麦粉混合物またはパン生地(ドウ)((3)と同様の除外規定あり)
メキシコを除く全ての国については総枠で年5,398トン、メキシコについてはゼロ。
(5) 砂糖を乾燥重量で10%超含むその他の物品(含まれる砂糖が結晶形または乾燥した非定形をしておらず、かつ、輸入時の外観及び包装から小売り用と見られるもの、またはそのまま菓子パン類の装飾用等に用いられるものを除く)メキシコを除く全ての国については総枠で年64,709トン、メキシコについてはゼロ。
(6) 砂糖を乾燥重量で10%超含む一定の調味料((5)と同様の除外規定あり)メキシコを除く全ての国については総枠で年689トン、メキシコについてはゼロ。
(7) メキシコから輸入された砂糖を乾燥重量で10%超含む種々の物品で、加糖ココアや加糖小麦粉ミックス(baker's mixes)、同パン生地(ドウ)を含む。((5)と同様の除外規定あり)メキシコについて年12,791トン(1994年)から年々拡大し、16,203トン(2002年)となる割当枠。(2003年以降は制限なし。)
2) 精製糖再輸出プログラム
精製糖業者が輸入粗糖を精製して再輸出するかまたは認可された再輸出用含糖製品の製造業者に転売する場合、その粗糖の輸入関税が99%減額される仕組みであり、再輸出条件付きで連邦農務省の輸入許可を得ると、上記関税割当の枠外で原料粗糖の輸入が許可される。
精製糖業者は、粗糖の輸入時点から90日以内にそれを精製して再輸出または上記製造業者に転売する必要がある。再輸出または転売される砂糖は、必ずしも輸入粗糖から精製されたものである必要はなく、量が同じであれば、国産糖で代替することができる。
精製糖業者は、再輸出または転売した時点で、既に支払った関税額の99%の払い戻しを請求できる。この場合の関税額は、関税割当の二次税率とは異なり、14$/トンとなっている。
再輸出用粗糖の輸入先は、主としてグァテマラ、コロンビア、ドミニカ共和国等の中南米諸国であり、精製糖としての再輸出先は、主としてカナダ、ドミニカ共和国、ハイチ、ジャマイカ、ヨルダン、ペルー、トルコとされている。
期限内に再輸出または転売できなかった場合は、できなかった分について罰金が課せられるとともに、その分の許可が取り消される。
3) 輸入禁止措置
キューバ産砂糖については、輸入禁止となっている。
4.販売賦課金
製糖業者(さとうきび及びビートの最初の加工業者)は、砂糖の販売賦課金として、各0.2475セント/ポンド(甘しゃ糖ローンレートの1.375%)、0.2654セント/ポンド(ビート糖ローンレートの1.159%)の賦課金をCCCに拠出する必要がある。この賦課金単価は、砂糖プログラムの赤字運営を改善するため、1990年農業法当時の水準よりも引き上げられている。
5.月別報告書の提出
全ての製糖業者及び精製糖業者は、毎月、さとうきび及びビートの購入量、原料砂糖の購入量、砂糖の生産量、輸入量、出荷量、在庫量を報告するよう義務づけられており、連邦農務省農家サービス庁はこれらのデータを「甘味料市場データ」としてとりまとめ、毎月発行している。
6.北米自由貿易協定(NAFTA)について
NAFTAの下、米国とメキシコ両国間の砂糖貿易に関する障壁は、2008年までの15年間に全て取り除かれることになっている。また、メキシコは米国向けに、2000年までは毎年25,000トンの粗糖または精製糖を関税なしで輸出できるほか、2000年から2008年までの間は、自国に純余剰砂糖が生じた場合、最大25万トンまで関税なしで輸出できるとされており、米国の砂糖産業に影響を与えうると言われている。
類似の問題は、カナダとの間でも生じている模様である。