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EU砂糖制度等の概要について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/海外情報


海外レポート
[1999年5月]
農産流通部・企画情報部


1.生産割当  2.支持価格  3.輸出補助金
4.C糖  5.ACP諸国等からの特恵輸入
6.輸入関税とWTO約定   7.異性化糖に対する政策
8.砂糖を使用した調製品・加工品に対する輸入規制


 EUは現在15ヵ国(フランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、英国、アイルランド、デンマーク、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、オーストリア、フィンランド、スウェーデン)で構成されており、1997/98年度の砂糖生産数量は粗糖ベースで1,919万トン、輸入量は同195.1万トン、消費量は同1,474.8万トン、輸出量は同662.6万トンとなっている。
 EUの砂糖制度は、共通農業政策(CAP)の1部門として、砂糖(ビート糖、甘しゃ糖)、異性化糖、ビート、さとうきび、糖みつ、イヌリンシロップ、その他の砂糖製品などを対象として設定されている。砂糖類の中には、他部門の市場制度によってカバーされているものもある。例えば、ぶどう糖はでん粉から作られることから穀物制度でカバーされ、牛乳から作られる乳糖は、酪農制度でカバーされている。また、カラメルは、ショ糖の割合が50%以上のものは砂糖部門、50%未満のものは穀物部門でカバーされている。
 EUの砂糖制度は、域内の砂糖需給調整と砂糖の価格安定を目的として、(1)砂糖メーカー・農家の安定的収入を図るため生産割当制度による生産制限の実施、(2) 指標(目標)価格及び介入価格による価格支持(ただし、介入買入れは農産物ではなく、加工品に対して行われる。)、(3)輸出に対する補助金、(4)ACP諸国等旧植民地産砂糖のEU市場へのアクセスの保証などの政策により構成されているが、砂糖部門においては、介入買入れは過去行われた実績はなく、輸出によるバランスを保つ方策が実施されている。
 EUの砂糖制度のメカニズムは図1のとおりであるが、国境調整措置のもと制度の運営に必要な資金については、EU域内で生産されるビート糖から生産者賦課金を徴収し、A、B割当内の砂糖に対して輸出補助金を与えるという基本的には独立採算方式により運営されている。

図1:EU砂糖制度メカニズム
(単位:ユーロ/トン、白糖ベース)
EU砂糖制度メカニズム
1. 輸入価格は、関税0のフランス海外県(DOM)の価格であり、域外から輸入される場合は、世界価格に粗糖の輸入関税354ユーロ/トン(1999/2000)を加えた価格となる。
2. 輸出補助金は生産賦課金(A割当2%、B割当最大39.5%)によって充当されるが、輸出補助金の額は決定したものではなく、毎週行われる輸出業者による入札によって決定される。

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1.生産割当

 EU域内で取り引きされる砂糖は、基本割当(A割当)及び特別割当(B割当)により生産されたものに限る。A割当は、概ね国内消費量の水準を反映しており、B割当は、当初不作の際の保険として立案されたが、その後は余剰生産分を補助金付きで輸出されるものを含めて、コストを削減するために規模拡大を図る生産者に利用された。また、B割当はA割当のパーセンテージで設定されているが、これは国によって異なる。例えば、イギリスは、A割当の10%しかB割当を所有していないが、フランス、ドイツは、それぞれ26.9%、30.8%を所有している。このことは、A、B割当が過去の国内生産水準を反映する形で設定されているためである。A割当+B割当が最大割当数量となり、これを超えて生産された砂糖はC糖と言われる。C糖は輸出補助金なしでEU外へ輸出しなければならないにもかかわらず、実際には意識的に輸出用として生産されているケースが多い。C糖のうちA割当の20%までは翌年に繰越すことができるとされているため、世界価格が低迷している際は、意識的に翌年に繰越される場合もある。その際は在庫払戻金の対象となる。
 当初、ビート糖の生産割当が1968年に創設された際には、5年に1度見直されるとされたが、必ずしもこのパターンに従うわけではなく、現在各加盟国に割当てられている割当は、基本的に1982年に設定されたものであり、適用期間である2000/01年度まで変わらない。オーストリア、フィンランド、スウェーデンは、1995年1月にEUに加盟したが、別途割当枠を与えられている。1997/98年度の加盟国別生産割当は表1のとおりである。

表1:加盟国別生産割当(1997/98)
(単位:トン、白糖ベース)
  A割当 B割当 合 計 A/B(%)
オーストリア 316,52973,881390,41023.3
ベルギー/ルクセンブルグ 680,000146,000826,00021.5
デンマーク 328,00096,629424,62929.5
フィンランド 133,43313,343146,77610.0
フランス
 本土
 海外領土
2,996,000
2,530,000
466,000
805,833
759,233
46,600
3,801,833
3,289,233
512,600
26.9
30.0
10.0
ドイツ 2,637,703811,6103,449,31330.8
ギリシャ 290,00029,000319,00010.0
アイルランド 182,00018,200200,20010.0
イタリア 1,320,000248,2501,568,25018.8
オランダ 690,000182,000872,00026.4
ポルトガル
 本土
 アゾレス諸島
72,727
63,636
9,091
7,273
6,364
909
80,000
70,000
10,000
10.0
10.0
10.0
スペイン 960,00040,0001,000,0004.2
スウェーデン 336,36433,636370,00010.0
イギリス 1,040,000104,0001,144,00010.0
EU15カ国合計 11,982,7562,609,65514,592,41121.8

 EU閣僚理事会で決定された生産割当数量は、EU委員会によって加盟各国の介入機関(共通農業政策のもとで市場介入を担当する公的機関)に通知され、更に介入機関は、自国のビート製糖業者に配分する。製糖業者は配分された割当を各ビート生産農家に割当てる責任を持つが、製糖業者と生産農家の間でその年度の生産数量などを契約するケースが多い。製糖業者と生産農家との契約は、EU加盟国及び工場毎に違うが、British Sugar社(英国)での聞き取り調査では、A、B割当の契約は過去の実績にしたがって行われるが、C糖については契約はしていない。なお、C糖を大量に生産したことによって契約量が増加するものではない。しかし、過去の慣習によってC糖用ビートも含め、原料ビートは全量買い上げているのが実態であると言う。また、割当を消化できなかった場合、割当を没収されることもあると聞くが、実際には割当以上生産しているケースが多いため、その様な実績はほとんどない。生産者個人に割当がされるのではなく、土地に割当がされていると考えられ、土地の売買によって割当が移動することとなる場合が多い。

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2.支持価格

(1) 指標(目標)価格
 665ユーロ/トン(3月31日現在、1ユーロ=130.79円)
 ガット・ウルグアイ・ラウンド合意以前の輸入課徴金制度においては、EU域内に輸入される砂糖は、ACP諸国産砂糖等の特恵関税対象品を除き、境界価格(白糖価格に域内所定地点までの輸送費を加えた額)と国際価格との差額が輸入課徴金として徴収されていた。この境界価格はガット・ウルグアイ・ラウンド合意を踏まえ、輸入課徴金制度が撤廃され関税化されたことにより、目標価格となった。この価格は、白糖について設定されており、工場出荷価格を表している。しかし、現在ではこの価格はほとんど現実的な意味を持っていない。
(2) 介入価格
 631.9ユーロ/トン(原料糖569.2ユーロ/トン)
 域内市場で砂糖価格が下落した場合、各国の介入機関が下支えする価格として介入価格がある。現在、631.9ユーロ/トンに設定されていて、目標価格の約95%となっている。実際には、ビートの最低生産者価格46.67ユーロ/トンに歩留り(13%)を乗じ、白糖換算した原料価格(366.7ユーロ/トン)に原料輸送・搬入費(44.1ユーロ/トン)、加工経費(243.6ユーロ/トン)を加え、製糖業者の収益となる糖みつ販売収益(22.5ユーロ/トン)を差し引いた価格となっている(表2参照)。この価格は、欧州委員会が介入機関を通して、A、B割当の砂糖を購入する工場出荷価格を表すもので、砂糖の価格を下支えする意味合いのものである。しかし、介入機関が介入した実績はなく、A、B割当以外のC糖については、この価格は適用されない。

表2:白糖基準介入価格の積算法(1997/98)
(単位:通貨/トン)
  ユーロ
原料費 注1 366.7
輸送・搬入費 44.1
加工経費 243.6
製造費計 654.4
糖蜜販売収入相当 -22.5
基準介入価格 631.9
注:1  工場が81.25%ショ糖を砂糖として抽出できると仮定して、(基準ショ糖含有率16%)のビート1トン当たり47.67ECUの基準ビート価格から導かれる。

 白糖介入価格は、EUの中でも異なり、表3のとおりイギリス、アイルランド、イタリア、フィンランド、スペイン及びポルトガルにおいては、砂糖不足地域との判断から余剰地域からの輸送コストを反映してEUの基準介入価格より高く設定されている。

表3:域内の介入価格(1997/98)
(単位:通貨/トン)
  ユーロ 基準介入価格との価格差
基準介入価格 631.9
フィンランド、アイルランド、
ポルトガル、イギリス
646.514.6
イタリア 677.845.9
スペイン 648.816.9

 また、粗糖については白糖介入価格から輸送経費(8.5ユーロ/トン)及び精製マージン(54.2ユーロ/トン)を差し引き、製品歩留り(92%)を調整して算出される。インド洋のレユニオン諸島及びカリブのグアドループ諸島に所在するフランス海外県(DOM)から輸入される約19万トンの粗糖などはこの価格で搬入されることとなる(表4参照)。

表4:原料糖介入価格の導き方(1997/98)
(単位:通貨/トン)
  ユーロ
基準白糖介入価格 631.9
輸送経費 8.5
精製マージン 54.2
原料糖介入価格(精糖ベース) 569.2
注: 粗糖換算で原料糖介入価格を導くためには、これらの価格に0.92が乗せられる。

(3) 最低生産者価格
 この価格は、農家に対しての支持価格であり、現在47.67ユーロ/トンとなっている。白糖介入価格から製糖業者取り分となる糖みつ販売収入を加算した後、製糖業者の加工マージン、ビート原料搬入経費及び原料費に歩留りを勘案することによって決定される。実際には、農家はこの価格から生産者賦課金を差し引いた価格、A割当の場合47.67ユーロ/トンの98%、B割当の場合98〜60.5%を受け取ることとなる。
(4) 生産者賦課金
 砂糖の輸出費用は、基本的にはEUの農業予算から財政補助を受けず生産者賦課金によって埋め合わされる。A割当に対しては介入価格の2%が課せられ、B割当にはこの2%に加え、更に最高37.5%の賦課金が課せられる。この生産者賦課金は、原則として生産者60%、製糖業者40%で負担する。ただし、これはビートの根中糖分16%を基準としたもので、実際には原料ビートの糖度はこれ以上であるケースが多いため、生産者の負担割合は軽減されていることが多い。
 また、砂糖の域内価格と国際価格差が大きく、生産者賦課金によって輸出補助金の必要額を賄いきれない場合、追加の賦課金(赤字解消賦課金)が課せられる。これは、生産者賦課金制度が実施されて以来、累積した赤字を補填するため、1985/86年度に導入されたが、1988年2月に追加賦課金として存続することが、合意された。追加賦課金は、1987/88年に初めて課され、その後1990/91年、1993/94年、1994/95年と課された。
 なお、この資金はEUの公的機関である欧州農業指導補償基金(EAGGF)が管理を行い、輸出補助金に補填される。
(5) 在庫賦課金
 砂糖制度においては、年間を通して砂糖が秩序正しく市場に出回るよう、在庫が義務づけられている。この在庫にかかるコストを賄うため、全ての砂糖の販売に在庫賦課金を課し、在庫された砂糖に対してEAGGFは在庫払戻金を支払う。
 また、1974年の砂糖不足を契機に、過去12ヵ月の割当の範囲内で実際に製造された量の3〜10%構築在庫が義務づけられている(世界価格が安い時は増加する。)が、これについても在庫払戻金の対象となる。現在の在庫賦課金及び在庫払戻金の額は次のとおり。
 在庫賦課金  20ユーロ/トン/年
 在庫払戻金  3.8ユーロ/トン/月

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3.輸出補助金

 A、B割当の枠内であれば輸出補助金を受けて輸出することができる。基本的には250トン以上の砂糖については、EU委員会が行う毎週水曜日の入札で輸出補助金の権利を受け輸出許可書を入手して輸出する。
 この輸出補助金は、ACP諸国等から輸入された粗糖及び海外領土(DOM)から搬入された粗糖から生産された精製糖の再輸出以外は、生産者賦課金で賄うこととなる。
 ガット・ウルグアイ・ラウンド合意に伴い、補助金付き輸出は6年間に数量ベースで21%、財政支出ベースで36%削減される。合意の内容は表5のとおり。
 また、ACP諸国及びインドから輸入される量と同水準までの輸出量については削減の対象外となり、C糖は輸出補助金を受けずに輸出されるため約束の対象外となる。

表5:輸出補助金の削減に関するガット・ウルグアイ・ラウンド合意
  輸出補助金
(百万ユーロ)
輸出量
(千トン)
基本期間(1986年〜1990年) 779.91,612.0
1995/96年度 733.11,555.6
96/97 686.31,499.2
97/98 639.51,442.7
98/99 592.71,386.3
99/2000 549.51,329.9
2000/01 499.11,273.5
削減幅 ▲ 279.1▲ 339.6
削減率 ▲ 36%▲ 21%
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4.C糖

 A、B割当以外の砂糖をC糖とよんでおり、最近のC糖の実績は約200万トンとなっている。C糖はEU内での取引はできず、C糖が生産された年度の翌年1月1日までにEU加盟国以外に輸出されなければならない。もし、その日までに輸出できなかった場合、罰金が課せられる(輸入関税プラス2ユーロ/トン)こととなっているが、過去にはそのような実績はない。また、C糖に対しては支持価格は適用されず、輸出補助金も支払われない。
 なお、C糖は翌砂糖年度のA割当分として最大A割当の20%まで繰り越すことができる(表6参照)。

表6:1998/99年の砂糖生産見込み
表6:1998/99年の砂糖生産見込み
(1) スペインの収穫面積には、5,000haのポルトガル分を含む。
(2) フランスの精製糖の内訳は、グアドループ諸島の57千トン、レユニオン諸島の180千トンである。
(3) ポルトガルのビート生産量には、スペインで収穫されたビートから生産された約40千トンのビート糖を含む。
出所:C.C.E, F.I.R.S.
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5.ACP諸国等からの特恵輸入

 特恵輸入の砂糖とは、ACP諸国とのロメ協定及びインドとの協定の下で輸入される砂糖のことである。ロメ協定でACP諸国からは年間白糖換算で1,294,682トンの砂糖を輸入することになっているほか、インドとも似たような協定を結んでおり10,000トンまでの輸入を認めている。
 この粗糖から生産された白糖を域外へ再輸出する場合の輸出補助金は、生産者賦課金からではなくEU一般会計から支出され、資金の管理は、生産者賦課金と同様、EAGGFが管理を行っている(表7参照)。

表7:ACP諸国等の輸入割当量(1995〜)
(単位:トン、白糖ベース)
国名数量国名数量
バルバドス 50,312.4 マラウィ 20,824.4
ベリーズ 40,348.8 モーリシャス 491,030.5
コンゴ 10,168.1 セントキッヅ・ネイビス 15,590.9
フィジー 165,348.3 スワジランド 117,844.5
ガイアナ 159,410.1 タンザニア 10,186.1
コートジボアール 10,186.1 トリニダード・ドバゴ 43,751.0
インド 10,000.0 ジンバブエ 30,224.8
ジャマイカ 118,696.0    
マダガスカル 10,760.0 合 計 1,304,682.0
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6.輸入関税とWTO約定

 原料糖に対する現在の関税は354ユーロ/トン(これは、WTO約定で2000年までに339ユーロ/トンに低減する。)となっている(表8、9参照)。

表8:現行の貿易政策
  白糖(ユーロ/トン) 粗糖
(ユーロ/トン)
現行の関税率
WTO約定
 基本税率(開始年)
 最終税率(最終年)
437

524
419
354

424
339
ミニマムアクセス

輸出補助金削減
 ―量(千トン)
 ―金額(%)

最終期限
1,418,209


339.6
36

2000/01

表9:EUにおける粗糖及び白糖の輸入関税(1995/96〜2000/01)
  白糖(ユーロ/トン) 粗糖
(ユーロ/トン)
GATT基準 524424
1995/96年度 507410
1996/97 489396
1997/98 472382
1998/99 454368
1999/2000 437354
2000/01 419339
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7.異性化糖に対する政策

 EUは、20年以上前に世界で最初に異性化糖を生産した地域のひとつであった。制度保護のため各国別にイソグルコース生産割当(イソグルコースは、異性化糖が欧州規則で認知されている名称)を導入した。表10は、EUの生産国についての現在のイソグルコース生産割当である。

表10:イソグルコース生産割当(1997/98)
(単位:千トン、固型換算)
  A割当 B割当 合 計
ベルギー 571672
フィンランド 11112
フランス 16420
ドイツ 29736
ギリシャ 11213
イタリア 17420
オランダ 729
ポルトガル 8210
スペイン 75883
イギリス 22627
合 計 25251303

 割当の数量は、果糖含有率によって定められており、42%もののイソグルコースに換算される。この規定は、42%もののシロップの含有率増加の大きな抑止力として機能しているため、より高い果糖含有率のものが生産されることはほとんどない。A、B割当を超えて生産されるイソグルコースは、Cイソグルコースと呼ばれ数量は僅かであり、輸出補助金を受けずにEU加盟国以外に輸出されている。
 チコリーやキクイモなどの原料から生産される果糖(イヌリン・シロップ)もまた、EUの割当を受けている。これらの割当は、現在の生産量の水準を遥かに超えて設定されており、したがって生産量の増加は可能である。表11が示すとおり、フランス、オランダ及びベルギーのみがEU内のイヌリン生産割当を持っている。しかし、フランスは、唯一のイヌリン・シロップ工場が小麦グルコースの製造に転換されたため、1996/97年以降はイヌリン・シロップを生産していない。

表11:イヌリン生産割当(1997/98)
(単位:千トン、固型換算)
  A割当 B割当 合 計
ベルギー 17641217
フランス 20525
オランダ 661682
合 計 26262323
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8.砂糖を使用した調製品・加工品に対する輸入規制

 砂糖を使用した調製品・加工品(以下加工品等という)に対する措置は、EU砂糖制度とは別の制度で規制されているが、EU域内価格より安い国際価格の砂糖を使用した加工品等が、域内産の砂糖を使用した加工品に不利とならないよう、関税が徴収される。EU域内に砂糖を輸入する場合、ロメ協定で輸入される関税を免除されるものや特恵砂糖割当によって関税を低減されて輸入されるもの以外は、域内糖価と均衡を保つための輸入関税が課される。これと同様に加工品等についても課税されることとなっている。
 輸入関税は、加工品としての関税と農産物の側面からの関税を合算した形で算出される。加工品としての関税額は、他の一般工業製品と同様に域内の加工産業を保護する目的で、製品自体の輸入価格に応じて一定割合の従価税として課される。農産物としての関税は、砂糖に限らず、EU共通農業政策によって価格支持を受けている特定の農産物(砂糖、穀物、乳製品など)に対して、各農産物ごとに算出された関税率を合算する形で算出される。該当する各農産品には、それぞれ最低含有比率(砂糖の場合、5%未満は対象外)が定められており、含有率がこれを上回る場合は、課税されることとなる。
 砂糖の場合、ガット・ウルグアイ・ラウンド合意以前は、加工品等に含まれる推定砂糖使用量に砂糖の域内価格と国際価格の差額を乗じた額が可変課徴金として関税に上乗せされていた。しかし、ガット・ウルグアイ・ラウンド合意後は可変課徴金に見合う額の特定税率(固定)が課せられており、この固定税率は、含糖率に対応して課せられることとなっている。したがって、国際価格が大幅に下落しない限り、可変課徴金と同様の効果が得られるものである。
 このように、EUにおいては、各種措置がきめ細かく設けられているが、これらの多くは、1958年設立された欧州共同体(EEC)の当初加盟国(6ヵ国)が、現在の共通農業政策の原形である農産物の共通価格政策をまとめ上げた当初から導入された歴史的な政策であり、1968年に共通農業政策が本格的に実施された以降もガット・ウルグアイ・ラウンド国別約束の一環として国際的に認知され、継続されているものである。

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