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てん菜の種子生産(採種栽培)の現状(2)

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最終更新日:2010年3月7日

砂糖類ホームページ/国内情報

生産地から
[2005年7月]

(財)甘味資源振興会 札幌事務所長 永田 伸彦


2.品種の増殖のための採種栽培
おわりに


2.品種の増殖のための採種栽培
  増殖採種は規模が大きいので機械の導入により省力化が図られているが、作業の流れは前述した育種研究用採種栽培と基本的には同じである。
 以下増殖のための採種栽培法として、母根養成の直播方式と移植方式を中心に述べる(秋播種から1年間で採種する世代促進法による方式は特別の場合のため省略する)。なお米国などでは前年採種圃場に秋播種し、越冬させて抜き取らずそのまま採種する直播方式をとっている。
 品種増殖にはその種子親と花粉親の2系統交配によって大規模で増殖する。現在の普及種子の多くは輸入品種であり、その安定供給を図るためホクレンでは女満別町で、日甜では江別市でそれぞれ採種を行っている。しかし採種農家が年々高齢化し人手不足も重なり、採種作業の省力化による効率的、安定的採種作業が急務となっていた。また甘味資源振興会の実施する国内育成品種の高品質原種生産など、低コスト化のための機械化採種を図ることが重要となっていた。これらの情勢を踏まえて2001年から独立法人農畜産業振興機構による助成を受け、甘味資源振興会が事業主体となり、この原種や増殖時の採種作業に適応する機械開発を実施した。
 女満別と江別では栽培法の違いのため、母根の大きさに差があり、また気象条件、土壌の違い、植付け方法や収穫方法が異なる。ここではその概要を述べることとする。
 ホクレン管内普及種子のほぼ全量を女満別で、日甜管内普及種子の1/2〜1/3は江別で採種している。

表1 母根養成圃場および採種圃場面積など(2004年)


表2 母根の大きさと採種量  てん菜(北農会1929)


(1) 母根養成が直播栽培の場合(女満別)

(1)母根養成
 前月号でも述べたが、母根の大きさにより種子生産量があまり変わらないので、取り扱いやすさや、1年目の栽培面積を節約するため採種用母根として小母根(これをステックリングと呼ぶ)を養成する。
播種作業
 女満別では母根養成栽培法として、従来の30cm畦幅での栽培法では一般作物の管理に用いるトラクタが入れないので、専用トラクタを用いなければならない。この栽培法では手間がかかる上、播種時はトラクタの轍による踏圧部分の種子の発芽や生育不良を生じるので、機械管理のしやすい60〜66cm畦幅の1畦3条播の新しい栽培法を考案し、この栽培法に適応する機械が開発された。
 従来使われていた播種機の播種板、鎮圧、覆土輪を改良し、2条側肥機構を付けた大型肥料タンクを取り付け、鎮圧輪は2連式ロ−ラ−としたほか、各作業機能の向上を図った施肥播種機を製作した。これは4畦3条播きで株間15cmの密植播種できる機械である。この機械により従来の数回の作業工程は、整地作業を省略した施肥播種同時作業となった。この施肥播種機の作業効率は5時間/haである。
 従来の作業:ロータリー1回掛け→石灰全面散布→肥料全面散布→サブソイラー1回掛け→ロータリー2回掛け→プランター播種
 新施肥播種機による作業:ロータリー1回掛け→施肥播種

<施肥播種機>

施肥播種機全景

作業風景

播種鎮圧機構

播種板部分

3条播きの母根養成畑播種直後

生育状況

収穫作業
 従来は極端な狭畦栽培で栽培管理に不便を生じたが、新栽培法で効率的管理作業を可能にした。また母根収穫も、これまでは茎葉処理作業と、堀取り作業のほか、平行してトラックに積む作業がなされていて、茎葉処理畦と堀取り畦のズレを生じて掘り残しが目立ち、精度が悪かったばかりか、3工程の作業のため3人のオペレ−タが必要であった。そこで、茎葉処理、掘り取り、積み込みのすべての作業を一人のオペレ−タで一度にできるコンピュ−タ制御を取り入れた母根収穫機を開発した。母根の堀取り時、収容時の損傷も最小限にする工夫がなされている。
 作業効率の試算にあたっては、圃場条件・作付状況により作業体系が異なるため圃場の長さを180m、1往復に1回収穫機からトラックへ積込、1作業工程(畦1回分)につき旋回・回送時間を5分と仮定して算出している。
 収穫された母根は、規格母根(直播栽培の母根は径3cm〜7cmとしている)が選別され、湿度100%近くにし、約2℃の低温に保った貯蔵庫で定植時期の翌春まで貯蔵される。

表3 作業能率調査(ホクレン女満別工場調査)


(2)採種栽培
 冬期間貯蔵されていた母根を翌春選別した後定植する。定植は定植機械に畦別に区分されて積まれている母根を手で差し込む方式である。栽植様式は種子親5畦に対して花粉親1畦の割合で定植する。
 採種圃場では花粉親を飛ばし終えると、多胚花粉親の種子が単胚種子親の種子との混合を避けるため花粉親を除去する必要がある。これまで手作業で莫大な労力を要したが、花粉親処理機が開発されて大幅な省力化が実現した。
 本機種はトラクタ−前方両側にスクリュ−回転方式の下枝かき分け機構(オ−ガ−)を取り付け、花粉親と種子親の枝のもつれを機械的に仕分けして、後方で鍬き込んで行くものである。
収穫作業
 開花結実後自走式刈取機で刈り取られ(通風を良くするため高刈りする)、その場で日干しにし、途中乾燥促進のため茎を反転機で浮かす作業を行い、10日後(条件がよければ4〜5日)コンバインで収穫する。
 精選作業の流れは基本的には研究用の種子の精選と同じだが、すべての工程が機械化している。ただし会社では内部資料としてそのノウハウが公表されないので省略するが、普及用種子として、精選種子はさらに次の工程を経ることになる。
 粒径別精選→発芽試験→比重選等再精選→コ−テイング(被覆作業)→再粒径別の精選→発芽試験
 発芽試験は濾紙による簡便法のほか、圃場発芽率に近い値を示すものとして、熱消毒された砂に置床して調査する砂法発芽試験法を用いた発芽試験が行われる。

母根収穫機全景

母根収容タンク

収穫作業

茎葉処理跡の状態

母根の運搬車への積み込み

収穫された母根

母根定植作業

採種畑生育状況
   

花粉親処理機作業状況

処理後の状況

種子収穫用刈取機全景

種子収穫用刈取機の作業状況

種子茎乾燥促進用反転機

反転機作業状況

コンバイン作業風景

コ−テイングされた普及用種子

(2) 母根養成が移植栽培の場合(江別)
(1)母根養成
 江別の母根養成は、30cm畦幅の密植栽培であるが、紙筒移植栽培なので、どうしても母根は大きくなる。極端に小さなものや、大きなものは除くが、収穫したほぼ全量を採種圃場に展開している。母根養成圃場の管理は狭畦栽培のため専用の中耕機械などで行う。
 収穫は人手作業で行う。母根を引き抜き、土を落とし茎葉を除去した後、畑に穴を掘り貯蔵する。女満別に比べて農家の作付け規模が小さいので、各農家は戸別に翌年採種に必要な母根を自分の畑で養成する。
 写真ではエンピツ削り風に茎葉をきれいに除去した母根を貯蔵している。茎葉は腐敗の基となるため、できるだけ除去した方がよいが、最近は手間がないのでクラウン部分の少し上で茎葉をカットして貯蔵する方法が主流である。

(2)採種栽培
 母根は腐敗した母根を除き、定植機で植え付ける。
 江別では女満別と異なり、農家規模が小さいため機械導入が遅れていた。しかし近年の労力不足も深刻化し、栽培意欲も薄れる心配が生じた。そこで採種栽培用に輸入機械を導入・改造し対応したので、機械に合わせて栽植様式は図2のように種子親6畦:花粉親2畦とし、機械が作業しやすいように空畦を設けているので、面積あたりの種子親本数はやや少なくなっている。
 栽培様式を替えて使用可能にした花粉親処理機、種子収穫用刈取機は、外見的に女満別で開発したものと類似しているので、写真は省略する。
 江別の収穫作業に専用コンバインを導入するには、女満別に比較して規模が小さく、大型機械では農家間の機械の移動も時間がかかるため、ピックアップ機構を開発し農家の保有する汎用コンバインに取り付け、これにより圃場の種子茎を拾い上げ、脱穀・収穫する。現在は4台の機械が稼働している。
 コンバイン収穫後、蒸れを防ぐため、すぐ通風乾燥機で人工乾燥し、精選工程に移し、被覆種子(コ−テイング種子、ペレット種子)に加工し普及種子が得られる。

地下貯蔵母根




収穫前の状況

ピックアップ収穫

収穫後の状態

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おわりに

(1) 品種開発材料の採種栽培
 以上、前月号に引き続き2回にわたり、てん菜の種子生産の現状について述べた。
 てん菜は他殖性作物で採種には隔離が必要であり、また1年目に母根養成栽培、2年目に採種栽培を行うという2年間1世代の2年生作物のため、種子生産に手間がかかる作物である。他の作物と同様、「種子を制するものは、食物を制す」と言われるように、種子の自給が重要である。
 てん菜では輸入種子が多く、海外からそのまま普及種子を輸入する量も多い。しかし全量が輸入種子では高品質安定種子供給に不安を伴う。また国内採種体制維持も重要であることから、国内採種を実施しているのである。そこで海外に比して規模が小さいとはいえ、我が国に適した機械化による省力化によって低コスト生産の努力を行っていることが理解頂けたと思う。
 今後は高性能、効率的精選技術の開発により、さらなる生産コストの低減が図られることを期待したい。
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