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さとうきび工場における「コジェネレーション」 はレユニオン島から始まった

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ


[2009年4月]

琉球大学農学部 教授  川満 芳信

1.はじめに
2.レユニオン島におけるさとうきびの歴史
3.島の経済を支えるさとうきび産業
4.レユニオンのさとうきび栽培と製糖工場
5.糖みつの利用
6.トラッシュとバガスの有効利用「コジェネレーション」
7.コジェネレーションはレユニオンから始まった
8.エネルギー作物であるさとうきび

1.はじめに

 南西諸島のさとうきび産業は集団営農、WTOへの重要品目登録問題、増産プロジェクト、地球温暖化問題、バイオエタノール、E3プロジェクトなど、今大きな岐路に立たされている。さとうきび由来のバイオエタノールを自動車のガソリン燃料に3%混合し、二酸化炭素(CO2)の排出を減らそうとするE3プロジェクトが推進されている沖縄県宮古島市は、今年1月22日に環境モデル都市に指定され、その構想の中で現在の3倍のさとうきび生産量を目標に掲げている。また、2008年3月には農林水産省が進めているバイオマスタウン構想も認められ、さとうきびがエネルギー作物として注目され、地域のCO2排出量削減に大きく貢献する状況をみると、南西諸島におけるさとうきびの存在は大きい。一方、糖みつからバイオエタノールを製造し、E3、E10を達成しても、そのプロセスで排出されるCO2量は少なくなく、ライフサイクルアセスメント(LCA)やエネルギーバランスで比較すると、決してCO2抑制効果が高いとは言えない。バイオマスをエネルギーとして利用しようとする場合、直接燃焼して熱や電気に変換した方がそのエネルギー効率ははるかに高い。

 このような状況の中、2008年10月19日から23日にフランス海外県レユニオン島で開催された、国際甘蔗糖技術者会議(ISSCT)のワークショップ(製造工程、processing)に参加する機会があり、その中のフィールドツアーで見学したさとうきび工場の「コジェネレーション(注1)」システムは我々沖縄の将来のさとうきび産業のモデルになると期待されるので、その概要について報告する。ワークショップへの参加国は、レユニオン(参加者数22名)、モーリシャス(同13名)、ウガンダ(同5名)、日本(同4名)、オーストラリア(同2名)、インド、フランス、ニカラグア、ブラジル、南アフリカ(同各1名)であった。

2.レユニオン島におけるさとうきびの歴史

 マダガスカル島の東800キロのインド洋に浮かぶ小さな島、レユニオン島はフランス国の海外県である。島は東経55度30分、南緯21度に位置し、面積2,512平方キロ(佐賀県より小さめ)で、海岸線は207キロにも達し、地表は岩だらけで熱帯モンスーン気候に属する。島の最高峰のピトン・デ・ネージュ山(死火山)は標高3,069メートルもあり、島の南東部にも標高2,631メートルのピトン・ドゥ・ラ・フルネーズ山(活火山)がある。これらの山々のためモンスーン風上の東斜面では年間降水量が4,000ミリにも達し、風下の西斜面の年間降水量は1,000ミリ程度と少なくなる。また、12〜4月にはサイクロンに襲われる。

 1513年ポルトガルのインド植民地総督ペドロ・デ・マスカレニャス(Mascareignes)が「公式に」発見、1665年から植民地化が本格的に進み、1668年にさとうきびがマダガスカルよりもたらされたとされている。1700年代さとうきび産業は“arrack”酒を生産することからスタートし、その後に砂糖を生産するようになった。1740年島に最初のさとうきび工場が開業し、1814年には島名がブルボンに改名、1815年フランスに返還され、さとうきび産業は植民地経済の第1位の座を獲得するようになった。

 レユニオン島におけるさとうきび関係の歴史の概要は、表1のとおりである。

表1 レユニオン島におけるさとうきび関係の主な歴史

3.島の経済を支えるさとうきび産業

 島の人口は現在78万5千人で沖縄県より少なく、島根県と同じ程度である。民族は多様で、ヨーロッパ、アフリカ、インド、中国、インドモスリム系から構成されている。島の人口のうち、15歳以下が36%、35歳以下が50%を占め、「若い島」であるが、沖縄県と同様島には大きな産業がなく、失業率は25%と高い。

 島の主要な産業は、さとうきびの加工と観光で、沖縄県によく似ている。しかし、火山島であるため沖縄のような真っ白なビーチはなく、雰囲気はハワイ島と似ている。

 1993〜2006年の間の経済成長率は年間4.4%であり、2007年の国内総生産(GDP)は137億ユーロである。2007年の一人当たりのGDPは17,000ユーロとEU平均の55%である。

 輸入金額は37億ユーロ、輸出品は砂糖、ラム酒、魚加工品などで金額は2,620億ユーロに達する。企業は3万2千あるが、その95%が従業員10名以下の零細企業である。

 島の面積の17%に当たる43,700ヘクタール(以下、ha)が農耕地であり、そのうち24,500ha(60%)がさとうきび畑である。図1は1995年から2007年までのさとうきび生産量と砂糖生産量の推移である。2007年は砂糖生産が落ち込んだものの、それまでの間原料茎重量では180万トン(以下、t)、砂糖生産量はほぼ20万tで推移していた。図2は、単位面積当たりの砂糖収量の推移であるが、毎年1.8%ずつ右上がりに増大している。この要因としては品種改良と栽培技術の向上が考えられ、特に、年4,000ミリもの降水量がある山からパイプラインで西側斜面に水を引き、かんがい施設を充実させた効果が大きいと言われている。その結果、不毛の地が見事なさとうきびほ場に変化したことが衛星写真でも確認できる(図3)。

図1 レユニオン島におけるさとうきび生産量と砂糖生産量の推移
資料:Canne à Sucre Création Variétale Technologie Sucriére
図2 レユニオン島における砂糖生産量、収穫面積、
および単位面積当たりの砂糖生産量の推移
図3 レユニオン島南部におけるかんがい設備設置前後の変化

4.レユニオンのさとうきび栽培と製糖工場

 レユニオン島におけるさとうきびの栽培品種はトラッシュの多い(コジェネレーションにとっては長所)R570と易脱葉性のR579が主流である。プランテーションのコスト削減のために株出し回数に育種目標を絞った結果、南アフリカの7回、コロンビアやモーリシャスの6回を上回る、9回という驚異的な株出し回数を達成している。

 レユニオン島のさとうきび産業の特徴は、2工場が協力し分業して島の農業を支えている点にある。島の北東部にはBois-Rouge工場が、南西部にはLe Gol工場がある。農家のさとうきびほ場で収穫されたさとうきびは、近くの集荷施設に集められ、その後2工場に搬送される(図4)。かつてはさとうきび工場であった場所が集荷場化している。さとうきびの収穫は手刈りが主で、Le Gol工場管内の機械化率は10%、Bois-Rouge工場管内は平坦な地形が多いため機械化率が30%と、島の地形の影響を受けている(図5)。収穫されたさとうきびはトラクターの先端に取り付けたクラブでトレーラーに積まれ、そのままけん引されて集荷場に向かう(図6)。集荷場では重量と品質が評価され、その後、大型トレーラーに集積される(図7、8)。品質評価用としてランダムに約3キロがサンプリングされ、グロースケーン(注2)のまま細裂、圧搾後、炎光法(注3)で蔗汁糖度を測定している。

資料:Canne à Sucre Création Variétale Technologie Sucriére
図4 島の北東部にはBois-Rouge工場が、
南西部にはLe Gol工場があり、集荷施設は12ある。
図5 収穫は鋭いなたを用いた手刈りで行い、トラッシュも全て工場に送られる。
図6 収穫後トラッシュもすべてトレーラーに積まれ集荷施設に送られる。
図7 集荷施設では、計量後(左)、糖度測定用にサンプリングが行われる(右)。
図8 集荷施設では、大型トレーラーに積み替えられる。

 レユニオン島におけるさとうきび収穫は、7月から12月の6カ月間行われる。島の北東にあるBois-Rouge工場の一日当たりの原料処理量は8千tで、年間80万tを圧搾し、10万tの砂糖を生産している(図9)。最新鋭の前抽出装置(preExtractor)を備えたディフューザー(Diffuser)タイプ(注4)の搾汁方法で、6基の高性能効用缶(effects evaporation)が2008年から稼働し、高いレベルで自動化された精製糖工場である。また、2008年から全く新しい膜によるフィルターケーキ(Mud)の除去法が試験的に導入され、実用化レベルに至っているとの事である(図10)。今後、沖縄の工場にもこの膜を利用した新しい不純物除去装置が導入されれば、糖分回収率の向上が期待できる。

図9 Bois-Rouge工場
図10 Bois-Rouge工場に2007年設置されたpreExtractor(左)と、
2008年から試験的に導入された膜によるケーキ除去方法(右)

 Le Gol工場の一日当たりの原料処理量は9千tで、2007年は70万tを圧搾し10万tの砂糖を生産した(図11)。5基のミルは通常タイプで、2006年から6基の高性能効用缶(effects evaporation)が稼働し、高いレベルで自動化された製糖工場である。

図11 Le Gol工場

 レユニオン島にあるこれら2工場は見事なパートナーシップを保ち、二つのスペシャルシュガーをブランド化している(図12)。フランスのパリで目にするこれらスペシャルシュガーブランドは、レユニオン島とフランスの他の海外県で製品化したものである。特徴は、減農薬栽培のさとうきびを原料にしている点にある。

資料:Canne à Sucre Création Variétale Technologie Sucriére
図12 両工場のスペシャル砂糖ブランド(左がBois-Rouge、右がLe Gol工場)

5.糖みつの利用

 両工場の甘しゃ糖度(Pol)を比較すると、Le Gol工場管内がBois-Rouge工場管内に比べ高い(図13)。その原因として、恐らく、地形的な要因で生じる降水量の違いが関係していると考えられる。

資料:Canne à Sucre Création Variétale Technologie Sucriére
図13 両工場の甘しゃ糖度の推移

 図14は、両工場における糖みつへのショ糖のロスであるが、甘しゃ糖度の低いBois-Rouge工場におけるショ糖ロスが高い。これら糖みつをどのように利用しているのか、また、その廃液はどのように処理しているのかを調査することが、同ワークショップへ参加する筆者の最大の目的であった。その答えは、バイオエタノールの一種の高級ラム酒の生産であった(図15)。ラム酒工場内には8基の発酵タンクを備え、製品の品質管理用ラボラトリーを有し、また、樽貯蔵の様子の写真撮影は禁止され、高級ブランドを維持する重要性とその意気込みが感じられた。工場で生産されたラム酒はフランス本国を経由して世界各地に輸出されると同時に、島内でも販売され高い評価を得ている。特に、工場の一角にある直売店へは、年間4,000名の客が訪れ、その半数がラム酒やスペシャルシュガーを購入するとの事で、工場の収益に大きく貢献しているとの事であった(図16)。試算してみると、2,000名の客が一人200ユーロの買い物をすると、日本円で5,000万円にも達し、工場にとっては大きな収益になる。

資料:Canne à Sucre Création Variétale Technologie Sucriére
図14 両工場における糖みつによるショ糖のロス
図15 Bois-Rouge工場の一角にあるラム酒工場(サバンナ)
図16 工場の一角にあるラム酒と砂糖製品の直売店(年間4,000人が訪れる)。
最上段のラム酒は一本215ユーロ(日本円で3万円)である。

 ただ、ラム酒の蒸留残さ液の処理は、200mの井戸を掘って地下に流し込んでいるとのことで、この処理方法の改善が課題である。一方、現在、宮古島で取り組んでいる環境省が実施しているE3プロジェクトにおいても、バイオエタノールを蒸留した後の残さ液の処理が問題点となっており、さとうきび畑への還元について実験をおこなっていることから、この研究成果に期待が集まる。

6.トラッシュとバガスの有効利用「コジェネレーション」

 今回、レユニオン島で開催されたISSCTのワークショップは、グリーンケーン(注5)が砂糖製造工程に対しどの様な影響を及ぼすか、を議論するのが目的であった。

 沖縄の場合、農家から集められた全茎無脱葉のさとうきび原料は製糖工場内にある集中脱葉装置によってクリーンケーン(注6)とトラッシュに分けられ、圧搾される。その後、分離されたトラッシュはフィルターケーキとともにたい肥工場に引き取られ、そこで完熟たい肥となってさとうきびほ場に還元されるか、さとうきび以外の農業へ利用される。持続的なさとうきび農業を達成するに当たっては、この沖縄方式が極めて有効であると考えられる。

 ところが、レユニオン島の場合、工場に搬入された全茎無脱葉のさとうきびはトラッシュも一緒に細裂され、そのままミルで圧搾され、結果として大量のバガスを発生させている(図17)。そして、これらバガスは隣接する発電所のバガス保管庫に運ばれ、乾燥後、高圧ボイラーに供給され、32メガワットの発電機を2台稼働させるエネルギーとなる。そこで発生した電気と蒸気は再び製糖工場に供給され、製糖行程に使用される。すなわち、製糖工場からボイラーおよび発電部分を分離し、バガスは電力会社に売り、電力会社からは電気と蒸気を買う、ユニークな方法を採っている。

図17 レユニオンではトラッシュも一緒に細裂され、圧搾される(Le Gol工場)。
図18 製糖工場(左)からバガスが供給され、
発電所(右)からは電気と蒸気が供給される(Le Gol工場)。

 もし、沖縄県の石垣島製糖,翔南製糖等に導入されている集中脱葉装置をレユニオン島の製糖工場に導入した場合、クリーンケーンだけを圧搾することができ,そのバガスと先に分離したトラッシュの両方をコジェネレーション発電に廻せば、ミルの搾汁率や製糖工場全体の歩留まりも飛躍的に向上すると思われる。そのことを、ワークショップの参加者に、筆者が沖縄県の集中脱葉装置の事例を用いて説明したところ、興味を示した。

7.コジェネレーションはレユニオンから始まった

 1980年、当時のBeufonds(発電所)はさとうきびバガスをオンラインで利用するために機能を高め、1983年には製糖工場に発電所を併設し、最初に45バール(注7)の高圧ボイラーを導入し、25メガワットの発電を開始した。年間5,170万キロワット時の発電量であり、島の年間使用量の20%にあたる。

 1992年、Bois Rouge Cogeneration Plants(CTBR)はバガスと石炭を燃焼できるプラントを完成させ、30メガワットクラスの発電設備を2基備え、コジェネレーションシステムを完成させた。

 一方、Le Gol Cogeneration Plants(CTG)は1996年に完成したもので、CTBRと同様にバガスと石炭を用いた32メガワットクラスの発電設備を2基備え、コジェネレーションシステムを完成させた。

 このようにコジェネレーションがレユニオンでスタートした理由として、7月から11月は乾期で降水量も少なく水力発電量が不足がちとなることが多々あり,その時期はさとうきびの収穫製糖時期でもあり、バガスによる余剰電力を島の電力として利用できないか検討を始めたのがきっかけと言われている。

 1983年から1992年までは、2電力会社が60万tの石炭と60万tのバガスを燃焼させ、島の電力の60%を賄っていた。バガスだけで、275ギガワット時を発電し、島の電力消費量の10%に相当し、CO2に換算すると、35万tの削減になる。

 2008年現在では、両工場に隣接するコジェネレーション電力会社は、島の電力の44%を供給し、バガス単独でみると22%にも達する。

8.エネルギー作物であるさとうきび

 C4光合成を行うさとうきびの葉の光合成速度は、強日射、高温条件下で他の植物に比べ極めて高い。光合成速度を単位葉面積で比較すると、C3植物は15〜30μmolCO2m−2s−1(注8)、C4植物は25〜40μmolCO2m−2s−1であり、さとうきびは35〜40μmolCO2m−2s−1と極めて高い。これら葉で固定されたCO2は、転流され根、茎、葉を再生産しながら茎にショ糖として蓄積される。ショ糖、還元糖、バガス、トラッシュ、梢頭部、糖みつも全て、葉の光合成作用に依存している。CO2はさとうきびの光合成の基質であるが、同時に地球温暖化ガスでもある。1年間に世界で生産されるさとうきびの原料茎重は12億tにも達し、その値からCO2固定量を試算すると7.7億tにも及ぶ。このさとうきびが固定した大気CO2をできるだけ長く地球に留めることができれば、地球温暖化ガスの増加を効率よく抑えることができる。その考えを具体化したのがカーボンニュートラル的性質を利用したバイオエタノールの生産とコジェネレーションの導入である。

 今回、レユニオン島で見たコジェネレーションシステムは、さとうきびは単なる砂糖の生産作物ではなく、電気エネルギーも生産し、地域のエネルギー問題,地球環境問題に大きく貢献しうる万能作物、エネルギー作物としての威厳を教えてくれた。

(注1)  コジェネレーション:石油やガスなどの1次エネルギーから、「動力+熱」や「電力+熱」のように、2種類以上の2次エネルギーを取り出すシステム。
(注2) グロースケーン:トラッシュが含まれたままのさとうきび。対語はクリーンケーン。
(注3) 炎光法:糖度を測定する方法の1種で、HPLCやNIRといった方法に比べ昔ながらの方法。
(注4) ディフューザータイプ:沖縄県の翔南製糖で行われている、温水を使用した砂糖抽出方法。
(注5) グリーンケーン:火入れを行わずに収穫されたさとうきび。
(注6) クリーンケーン:収穫後 剥葉( はくよう ) を行ったさとうきび。
(注7) バール:圧力の単位。1メガダインの力が1平方センチの面積に作用するときの力。
(注8) μmolCO2m−2s−1:光合成速度を表す単位。1秒間に1㎡の葉が吸収するCO2の量を表わす。

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