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種子島における担い手育成と集落営農の取組〜鹿児島県西之表市深川集落の集落営農育成事例〜

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

今月の視点
[2007年11月]

 
鹿児島県熊毛支庁 農林水産部農政普及課 技術主査西原 文隆

1.はじめに

 種子島は、鹿児島市の南方約115kmに位置する総面積45,390ha、北北東から南南西の方向に細長く伸びた中くびれの紡錘型の島で、長さ58km、最大幅12km、島の中心付近の最もくびれたところの幅は6kmである(図1)。
 基本的には海岸段丘の島で、およそ8kmにわたるくびれ部を境にして、北東部及び南西部は海抜200m前後の丘陵性の山地が連なり、最高点は282mという平坦な島である。
 耕地面積は、総面積の19.6%にあたる約8,900haで、そのうち畑地の割合が78.5%と高いことが特徴である。
 気象は、平年値でみると、年平均気温20℃、年間降水量1,908mm、年間日照時間1,816時間の亜熱帯性気候であり、沿岸部は一年中霜の降りない地帯が帯状に取り巻いている。
 土壌は、黒色火山灰土が大部分であるが、温暖多雨条件が加わって過湿になりやすく、浸食度が大きいので、地力が消耗しやすい。このため、深耕や有機質投入などの対策が必要となる。

図1 種子島の位置

2.種子島の農業とさとうきびの位置付け

 種子島の農業産出額は、平成17年度が154億2,000万円で、耕種部門が68.2%、畜産部門が31.8%の構成比である。
 耕種部門では、さとうきびが36億1,870万円で最も高く、これに原料用(でん粉用・焼酎用)さつまいも、水稲、ばれいしょ、葉たばこ等の土地利用型作物が上位を占めている。近年では、青果用さつまいもや鹿児島ブランドに指定された装飾用植物のレザーリーフファンなどの生産が伸びてきている。
 一方、畜産部門では、肉用牛が32億7,886万円、乳用牛が18億2,829万円となっている。
 さとうきび生産は、種子島の農業産出額の22.1%を占めており、耕種部門でも32.5%を占める。
 また、平成17年産の収穫面積は2,349haで、これは耕地面積の26.4%を占め、普通畑の約35%を占める。
 さらに、さとうきびの栽培農家数は2,886戸で、これは種子島全農家戸数の66.8%にあたる。
 このように、農業算出額、収穫面積、栽培農家戸数などをみると、さとうきびは種子島農業の重要な基幹作物となっており、また、収穫されたさとうきびが、島内の甘しゃ糖工場で製糖されることから、原料代金、原料輸送、雇用代金など地域経済への波及効果は非常に大きく、種子島以南の離島同様、さとうきび産業は、地域経済を支える重要な産業と位置付けられている。

3.さとうきび生産現場の実状

 近年の種子島のさとうきび生産状況を見ると、収穫面積は、平成10年(2,222ha)以降増加基調にあったが、平成14年から3年連続で台風等の天候不良が続き、これが大きく影響して、平成16年以降減少に転じた。その結果、平成18年には平成16年より約250haの面積減となった。
 単収は6〜8tで、鹿児島県で最も高い。生産量は、平成12年に195,300tまで回復したものの、平成14年には155,200tに落ち込んだ。その後、徐々に増加しながら、平成17年には台風被害もなく、比較的好天に恵まれたこともあり188,700tまで回復した(図2、表1)。

図2 収穫面積と生産量の推移


 作型は、株出が約70%、春植が約30%、夏植はごく僅かで、品種は、農林8号が98%を占めている。
 栽培規模は、平成17年を見ると、10ha以上の生産者が4名いるものの、1ha未満の農家が全栽培農家の74%を占め、農家1戸当たりの平均収穫面積は81a、生産量は65tと全体的には零細農家が多い(表1、2)。

表1 種子島地域のさとうきび生産実績の推移


表2 栽培規模別農家戸数


 年齢階層別農家戸数は、65歳以上が約42%を占めており、高齢化が急速に進んでいる状況である。
 これら、農家戸数の減少や農業者の高齢化は、今後、農業生産や集落機能の維持が懸念される要因ともなっている(表1、3)。

表3 年齢階層別農家戸数

表4 深川集落農家戸数の推移(担い手農家と認定農業者は内数)

4.西之表市深川集落での取り組み

 種子島の農業生産を支えるさとうきび、でん粉用さつまいも、水稲は、平成19年度からの経営所得安定対策の対象品目であり、認定農業者や農作業受託組織等を基にした担い手や集落営農組織等の育成が緊急課題となっている。

1)深川集落の概要
 深川集落は、西之表市街地から東シナ海を右手に見ながら南へ15kmの中種子町境に位置し、種子島を代表する「さとうきび」と「肉用牛」を主体とした地域である。特にさとうきびは、面積増加率や単収等で判定される西之表市さとうきび振興会の団体表彰を5年連続で受賞した、島内でも生産意欲の高い集落である。
 しかし、農業者の高齢化には歯止めがかかっていない(図3)。

図3 年代別経営者数の推移

表5 経営耕地面積の推移(単位:ha)


図4 深川集落農業産出額の推移


 熊毛支庁農林水産部農政普及課(種子島農業改良普及センターは、県出先機関の機構改革により、平成19年度、熊毛支庁農林水産部農政普及課として組織再編)では、深川集落を平成15年から、地域の活性化を図る地域農業・農村総合支援事業(国庫:県事業名)の重点対象地区に選定し、地域の合意形成に基づく自主的な話し合い活動を支援しながら、認定農業者や担い手農家等を核に地域営農の活性化が図られるよう、地元関係機関と総合指導班を編成し普及活動に取り組んできた。

2)支援活動の内容
 ①自主的な話し合い活動の推進
 ○平成15年度
 将来の地域農業のあるべき姿について話し合う検討委員会を、集落役員と集落内の各生産組織(普通作部会、園芸部会、畜産部会)代表で組織し、地域の実態把握・分析・課題整理を実施した。
 主な課題は、①高齢化・労力不足によりさとうきびの単収が低下傾向にある、②経営管理が不十分、③女性・後継者が集まる機会が少ない、④地域の農業ビジョンが明確にされていない、などであった。
 そこで、①規模拡大志向農家の意向把握、②地域の後継者参画による受託組織の育成(土づくり、株出管理、適期植付)、③パソコン複式簿記への誘導と経営診断の実施、④検討委員会の話し合い活動の充実、⑤地域農業ビジョンの作成などが、今後取り組むべき方策として、関係者の共通認識となった。

 ○平成16年度
 検討委員会は、深川自治会により深川集落営農推進委員会(委員13名)として自治会の下部組織に位置付けられた。
 同委員会では、目指すべき「集落の営農のあり方」について検討するため、集落内の全農家(経営主、配偶者、後継者)にアンケート調査を実施した。
 その結果から、認定農業者や担い手農家が規模拡大を実現しても、5年後のさとうきび栽培面積が10ha減少することが予想され、また、今後の営農体系については、農作業受託や共同作業、集落営農を希望する経営者が多いという傾向が見られた。

 ○平成17年度
 営農推進委員会で検討を重ねた結果、「作業受託型」の集落営農組織の育成を目指していくことに意見統一され、さとうきび収穫受託班、さとうきび株出受託班、飼料作物ロール作業受託班で構成される受託作業部会が設置された(図5、6、写真1)。

図5 深川集落の推進体制

図6受託作業部会の作業内容

写真1 受託作業部会における検討の様子


 その中のさとうきび収穫受託班は、集落内の3つの生産組合で組織され、当時、集落内のさとうきび栽培面積の56%、栽培農家の57%の作業委託があり、これまでにも年々増加してきていた。
受託作業部会では、今後の品目別経営安定対策に柔軟に対応しながら、集落内農業機械の有効利用が図られるよう、さとうきび・でん粉用さつまいもの管理受託班を発足していくことも意見統一された。

○平成18年度
 受託作業部会の活動充実を支援しながら、集落のさとうきびとでん粉用さつまいもを生産する農家全員が、品目別経営安定対策を安心して受けられるような「集落営農戦略ビジョン」の策定と、農地・水・環境保全対策事業を活用した、永続性のある営農と集落機能を維持する「種子島版集落営農組織」の結成に向けて、農家と関係機関が一体となって検討と実践支援を重ねた。

②認定農業者への支援
 深川集落には、平成12年度までは認定農業者がいなかったが、平成18年度までに11人まで増加した。これらの認定農業者は受託作業部会の主力メンバーでもあり、さとうきび栽培面積は集落全体の40%を占めている。
 農政普及課では、この認定農業者の中の7名を経営体育成総合支援事業の対象農家に位置付け、さとうきびの栽培技術と畜産の飼養技術、さらに経営管理能力の向上支援を展開し、それぞれの経営部門の技術診断と経営分析により経営基盤の確立された個別経営体としても育成しているところである(写真2、3)。

写真2 株出管理機効果確認実証検討会の様子
写真3 経営管理能力向上研修の様子

3)活動の成果
 営農推進委員会は、平成18年11月22日、集落農業者と関係機関出席のもと、「深川集落営農戦略ビジョン」の集落全体への説明を行い、合意形成を図った(写真4)。

写真4 「営農戦略ビジョン」の合意形成の場

 これまで、集落内の農業者に対する意向調査の結果を受け、今後の経営安定対策や高齢化に対応した集落営農組織の育成に向けて、集落の営農推進委員会を中心に話し合いを進めてきた結果、深川の集落営農は、集落の全農家が参加して、地域の合意に基づいて組織化された生産組織やオペレーター(図7の受託作業部会)が、さとうきびやでん粉用さつまいも栽培の基幹作業(耕耘、定植、収穫等)を受託し、生産農家全員が品目別経営安定対策を安心して受けられる“作業受委託型集落営農組織”を結成することで合意された。
 ここに、種子島初の品目別経営安定対策を安心して受けられる“畑作版の作業受委託型集落営農組織”が誕生することとなった。
 この集落営農組織には、さとうきびの収穫や株出管理、飼料作物の収穫を受託する作業班の他に、さとうきびとでん粉用さつまいもの基幹作業を受託する作業班が整備され、また、機械利用のあり方については、受託可能なケーンハーベスター、株出管理機、トラクター等の大型機械を、原則として受託作業部会に登録することが決定されている。
 大まかな受委託の流れは、①集落内の農家が受託作業部会に作業を委託、②各作業班は受託作業部会を通して作業を受託・実施、③受託作業部会から西之表市農業管理センター(西之表市のさとうきびや早期米を中心に、管理・収穫受託作業や軽量機械のリース業務を展開する農地保有合理化法人)への作業実施報告により、管理センターが委託農家に料金請求と徴収を代行(手数料が発生)、④管理センターから各作業班の実施オペレーターに作業料金が支払われる仕組みとなっている。(図7)

図6受託作業部会の作業内容

5.今後の課題及び振興方針

 今後、安定した農家経営と農村社会の維持・発展のためには、農家経営を引き受けてくれる個別経営体や組織経営体の育成は必要不可欠である。
 今回の受託作業部会を核とした深川集落営農組織は、種子島の集落営農の一事例であり、設立後間もなく、これから様々な課題が出てくることが予想される。それらの課題を一つ一つ、地域の合意形成を図りながら解決することで、地域において汎用性の高いモデル事例となり得ると期待される。
 本来目指すべき永続性ある農業構造の構築に向けて、歩みは遅くても、時には後退することがあっても、何かが以前と違うことを意識し合いながら取り組んでいくことが必要であり、その最初のステップとして、①土地の利用調整を話し合える土俵があること、②品目を越えた利害調整の話し合いができる土俵があること、等の体制づくりが最も重要である。
 種子島では他にも集落営農組織の設立に向けて意欲を示している集落があり、地域の農業振興と地域社会の活性化に向けた気運は高まってきている。農政普及課としてもその要望に応えるべく、これまで蓄積された経験を活かしつつ、さらに地域の実情に即した育成手法として改善を加えながら、関係機関一体となって指導・支援を継続していくことにしている。

参考資料:
(資料:H17年度熊毛地域農業の動向、平成17年度さとうきび及び甘しゃ糖生産実績、2005年農林業センサス、市町村別統計書)

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