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最終更新日:2010年3月6日
1.はじめに
種子島は、鹿児島市の南方約115kmの海上に位置する島で、最高点でも282mしかない丘陵地が連なる平坦な島で、中央部から南部にかけて段丘台地が発達していますが、海側から見るとほとんど平らな島にしか見えません。気象は、平年値で見ると、年平均気温20℃、年間降水量1,908mm、年間日照時間1,816時間の亜熱帯性気候であり、沿岸部は1年中ほとんど霜が降りない無霜地帯ですが、内陸部は、降霜します。人口は、1市2町で約34,000人おり、就業人口の約3割を農業が占めていますが、昭和50年代には、約6割だったのと比べると、約半数にまで減少しています。
さとうきびは、種子島を含む鹿児島県の南西諸島の地域経済を支える重要な基幹作物ですが、近年株出し栽培の収量低下が現地で問題となっています。その原因としては、ハリガネムシによる被害、品種の問題等いろいろと考えられます。その一つとして労働力不足や収穫作業との競合による株出し管理作業の遅れや不徹底が考えられました。そこで、収穫時期別に株出し管理時期の検討を行って、株出し管理の時期がその後の生育や収量にどのような影響を及ぼすのかを調査したので、紹介します。
2.種子島におけるさとうきび栽培
通常の株出し管理作業は、株揃え・根切り・排土・施肥・除草剤散布を行います。
しかし、種子島においては奄美地域や沖縄県に比べ気温が低いので、上記作業に加えて、必ずマルチ張りが必要となります(図1)。
これは、種子島の冬季の気温が、奄美地域に比べ5℃程度低くなるため、さとうきびの生育が緩慢になるからです。マルチによる地温上昇の効果で、発芽や萌芽が促進され、無マルチ栽培と比較すると初期生育に大きな差が生じます(図2)。
図1 株出し管理作業 |
図2 萌芽性(左:無マルチ、右:マルチ) |
3.試験の方法
品種は、NiF8を用いて、12月から1か月おきに3月まで収穫した後、それぞれ、収穫直後、1か月後、2か月後に株出し管理を行い、株出し管理の時期がその後の生育や収量にどのような影響を及ぼすのか試験を行いました(表1、図3)。株出し管理作業等は慣行栽培に従っています。
表1 試験区の構成(計12区) |
図3 試験区の設定(2月の状態) |
4.株出し管理時期の違いによる初期生育
5月29日の茎数調査では、12月〜3月の収穫時期において、いずれも、収穫直後の管理の茎数が最も多く、次いで収穫1か月後、収穫2か月後の順となりました。また、種子島で安定した収量が期待できる2万本/10aの萌芽数を確保できたのは、1〜3月収穫の直後管理と1か月後管理でした(図4、図5)。
図4 株出し管理時期別の初期茎数(5/29) |
図5 3月収穫における初期生育(6/10) |
5.株出し管理時期の収量への影響
2か年の試験結果から、収量は、収穫直後管理が最も高く、1か月後、2か月後管理の順となりました。しかし、収穫直後と1か月後管理の差は小さく、収穫2か月後管理では大幅に減収しました(図6)。
また、12月収穫は、収穫直後の株出し管理であっても、1〜3月収穫に比べて収量は低くなりました(図6)。
このことから、収穫後2か月以上の株出し管理の遅れは、大きく減収につながることが明らかになりました。
図6 株出し管理時期別の収量(原料茎重) |
6.株出し管理時期による品質への影響
蔗汁糖度とは、さとうきびを絞った汁の糖度のことで品質の指標となります。
2か年の試験結果から、蔗汁糖度は、株出し管理までの期間に関わらず、ほぼ一定でした(図7)。このことから、株出し管理の時期は、収量に影響するものの、品質には影響しないといえます。
図7 株出し管理時期別の蔗汁糖度 |
7.まとめ
以上のように種子島では、株出し管理時期の適期を逃すことで大きく減収することがわかりました。株出し栽培によって安定した多収を得るためには、以下のことが重要です。
①1〜3月収穫では、収穫直後から1か月を目途に速やかに株出し管理を行うことにより、萌芽や初期生育が良好となり、安定した収量が見込まれる。
②株出し管理の遅れ(例:収穫2か月後管理)は、10〜40%の減収となる。
③12月収穫では、直後に株出し管理を行っても、萌芽が不安定で1〜3月収穫より収量が低いので、株出し栽培を行う場合は、12月収穫を避ける。
④蔗汁品質は、株出し管理の時期による差は認められない。
種子島においては、冬季の気温が低いため、株出し栽培でも必ずマルチを張り、株出し管理作業をなるべく早く行うことで、萌芽数が多く初期生育が旺盛となり、株出し栽培の安定多収につながります。
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