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さとうきび新品種「農林24号」の特性とその利用

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最終更新日:2010年3月6日

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[2008年8月]

【調査・報告】

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
バイオマス・資源作物開発チーム 上席研究員 松岡 誠


はじめに

 さとうきびは沖縄県および鹿児島県南西諸島において、栽培農家個数割合で約7割、畑作における栽培面積割合で約6割を占める基幹作物であり、農業、さらに地域社会、経済においても極めて重要な役割を担っている。しかし、近年、さとうきびの生産は、台風や干ばつなどの気象の影響、生産者の高齢化や収益性の低さなどの社会的な影響から減少傾向が続いている。ここ1、2年は天候にも恵まれたことから、多くの島で豊作となり、製糖工場も一息ついた感があるが、最盛期より原料の搬入量はかなり減少している。
  私たちは、今後のさとうきびの生産を安定化させるためには、収穫開始時期を前倒しし、収穫期間を拡張、さらなる省力化、畜産や他作目との連携による高収益化が必要であると考え、この方向性での新品種の育成を進めてきた。その結果、これまでに、年内収穫に十分に対応しうる早期高糖性品種として、沖縄県向けに「NiTn20」(農林20号)、鹿児島県向けに「Ni22」(農林22号)を育成し、その普及を進めつつある。沖縄本島南部では、ここ数年、さとうきびの収穫は従来の1月よりも早い12月下旬から実施されるようになってきており、「NiTn20」の活用は期待されているところである。しかし、一定の時期に集中する収穫や株出し管理作業などの労力競合を解消し、さとうきび生産性の一層の向上を図るためには、収穫時期のさらなる早期化が必要であると考えられる。
  同地域は黒穂病の発生地域であることから、普及品種としては黒穂病抵抗性を備えるものが望まれている。また、手刈り収穫が多いことから、1茎の重量が重い株出し多収性品種の需要は高いと思われる。そこで、一昨年、九州沖縄農業研究センターさとうきび育種ユニットでは、これらの条件を満たす沖縄本島南部地域向けの新品種「NiN24」(農林24号)を育成し、命名登録した。沖縄県の奨励品種として採用され、本格的な普及を進めているところである。本品種は株出し栽培での収量に優れる極早期高糖性の品種であり、沖縄県を中心とする南西諸島南部地域のさとうきびの反収増・増産に貢献するものと期待されている。この報告では、新品種の特性と、その有効な利用法について解説する。

新品種の来歴と特徴

 「NiN24」(農林24号、旧系統名:KN91―49)は、「F167」を種子親、「CP57―614」を花粉親として交配し種子を得、選抜(実生選抜は1991年)を重ねて育成した品種である(図1)。
  選抜においては1茎重と高糖性、早期収穫適性を重視した。さとうきび命名の国際的慣例に従い、日本で育成したことを示す「Ni」に、南アフリカ共和国(ナタール州)が交配地であることを示す「N」を加え、日本で命名登録した24番目の育成品種であることを示す「24」を続けて、「NiN24」とした。


図1   さとうきび新品種「NiN24」の系譜図


①形態的特性
  「NiN24」の育成地・種子島における草姿を図2に示した。葉色は「NiF8(農林8号)」と同じで「中」という評価であるが、「NiF8」よりもやや濃く、葉身長はやや長くなる。蔗茎の形態は「NiF8」と同じ円筒型である。蔗茎の基本色は「NiF8」と同じ“黄緑”であるが、複合色は“緑”で「NiF8」と異なる。茎長は「NiF8」よりもやや短く、茎径はやや太い。芽子の形は「NiF8」と同じ“円”に分類され、突出度が低く小さいという特徴がある(図3、図4)。


(撮影は平成18年12月25日、
育成地・種子島のほ場にて)
(撮影は平成18年12月26日、
育成地・種子島試験地にて)
図2  さとうきび新品種「NiN24」の草姿
図3   「NiN24」の節間

(撮影は平成18年12月26日、育成地・種子島試験地にて)
図4   「NiN24」の芽子


②生態的特性
  「NiN24」の発芽と萌芽は「NiF8」と同じく良好である。分げつ性は「NiF8」に劣り、原料茎数は「NiF8」よりも少ないが、茎径が太く、一茎重は重くなるために、収量性は「NiF8」とほぼ同じである。茎の直立性は「NiF8」よりもやや優れる。登熟は「NiF8」よりも早い。黒穂病には強い抵抗性を持っており、また、モザイク病、葉焼病、さび病類にも抵抗性がある。また、風による茎、梢頭部の折れ、倒伏にも比較的強い特性を持っている。

③品質特性
  沖縄本島南部地域における1月〜2月の収穫では蔗汁糖度、純糖率ともに「NiF8」とほぼ同程度である。早期高糖で11月の収穫でも高糖である。繊維分は「NiF8」よりもやや高い傾向が見られる(表2)。収穫後の品質劣化の程度は、「NiF8」より大きいが、「NCo310」よりは小さく、実用上の問題はない。

④「NiN24」の特記すべき特徴
1) 沖縄本島南部における1月〜2月の収穫では、「NiF8」に比べ1茎重が重く、原料が重いため可製糖量が多くなる(表1)。
2) 夏植え型栽培(8月〜9月の植え付け)による早期収穫では、「NiF8」に比べ原料茎重が重く、可製糖量が多くなる(表3)。
3) 夏植え型栽培による11月収穫の甘蔗糖度は基準糖度(13.1%)以上となり、11月からの収穫が十分に可能である。また、年によっては10月からの収穫も可能と思われる(表3)。
4) 株出し栽培で発病の多い黒穂病に対する抵抗性は“強”で、黒穂病汚染地域への普及も問題ない。

表1  さとうきび新品種「NiN24」の特性概要
注)  ()内は同じ標準品種NiF8に対する比率(%)を示す。生検は生産力検定試験を、奨決は奨励品種決定調査を示す。育成地の春植えは1月初旬、株出しは12月初旬の調査結果である。沖縄県農研センターは春植え、株出しともに1月〜2月の調査結果である。調査期間は西暦の下2桁表示とした。

表2   「NiN24」の品質特性
注)  上段は沖縄県農研センターにおける奨励品種決定調査の春植え1〜2月収穫における調査結果、下段は同センターにおける夏植え型栽培による11月収穫の調査結果(新植は平成17年度、株出しは18年度)。

表3  夏植え型栽培による「NiN24」の早期収穫調査結果
注)  ( )内は同じ作型で栽培したNiF8(標準品種)に対する比率(%)を示す。奨決は奨励品種決定調査を示す。奨決現地は奨励品種決定調査現地適応性検定試験を示す。調査期間は、西暦の下2桁表示とした。*は2回めの株出しである。**は12月収獲後の株出しである。


⑤栽培上の注意点

1) 新植で11月収穫を行う場合、夏植え型(8月〜9月の植え付け)での栽培が推奨される。
2) 重粘なジャーガル土壌※3における春植えでは、植え付けに注意が必要。よく発芽させ、茎数を確保するために、硬化していない充実した芽子を持つ健全な種苗を、過覆土とならないように植え付ける。

 以上のように「NiN24」は極早期高糖で、11月収穫においても既存の品種より甘蔗糖度が高く、11月からの収穫にも十分に対応することができる。また11月収穫後の株出しの収量も優れることから、「夏植え型秋収穫栽培」での活用が特に有効である。夏植え型秋収穫栽培は、気象災害に強く多収であるという夏植えの利点を活かし、さらに、現在の収穫時期(12月〜4月)よりも気温の高い秋(10月〜11月)に収穫することにより、引き続き行われる株出し栽培での収量をも改善できるという新しい作型である。この新品種「NiN24」と夏植え型秋収穫栽培をセットで導入・普及することにより、沖縄本島南部地域における収穫期(現在は12月中下旬から)の前進と株出し収量の向上が実現できるものと考えている。また、「NiN24」は、現在、沖縄県だけで奨励品種として採用されているが、育成途中の試験結果をみると鹿児島県の沖永良部島、与論島などでは高い評価が得られている。これらの島においては、再度、栽培試験を実施して、普及・利用の可能性について再検討する必要があろう。

用語の説明

※1 ブリックス
蔗汁中の可溶性固形分の割合

※2 純糖率
可溶性固形分中のショ糖の割合

※3 ジャーガル土壌
沖縄本島中部から南部にかけて分布する土壌。弱アルカリ性の灰色で粘性のある土質。


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