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沖縄県における担い手育成に向けた取り組み

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類情報ホームページ

[2009年2月]

【生産地から】
沖縄県農林水産部糖業農産課

 平成19年産さとうきびより新たな経営安定対策が実施され、平成21年産までの特例により支援対象となっている生産農家を特例期間中に本則要件へ誘導することが急務となっている。

 そのため、沖縄県では、市町村、JAなどをはじめとする関係機関と連携し、全ての生産農家が支援対象となるよう、受託体制の整備や作業機械の導入など、担い手育成に向けた条件整備に努めているところである。ここでは、その取り組みの概要について紹介したい。

1 さとうきび生産の現状

 本題に入る前に、さとうきびの担い手育成との関連が大きい収穫機械化の状況および経営安定対策の支援対象要件充足状況について触れておく。

(1)機械収穫率の推移
  図1は地域別に機械収穫率(以下機械化率という)の推移を整理したものである。県全体では40%の機械化率となっているが、地域により状況は大きく異なる。19/20年期で機械化が最も進展しているのは、南部離島で75%、次いで、八重山および本島北部が50%を超える機械化率となっており、これらの地域では県平均を上回っている。なお、南部離島の機械化率が突出しているのは、南北大東島がほぼ100%機械収穫であることが機械化率を押し上げているためである。

図1 地域別機械収穫率の推移

 一方、宮古は24%、本島中部は17%となっており、最も機械化の遅れている本島南部では10%程度に留まっており、これらの地域の機械化率は県平均を大きく下回っている状況である。本島中・南部の機械化遅延は、ほ場が狭小であったり、傾斜地に位置するなど、機械化が困難な条件が少なからず存在することが大きく関連している。

(2)担い手の状況
  図2は平成19年産さとうきび交付金交付実績に基づく、対象要件区分別農家割合を示している。現在、特例要件を活用している生産者(A−5)の割合が比較的少ないのは、本島北部(43%)、周辺離島(41%)、八重山(39%)であり、いずれも収穫の機械化が進展している地域である。逆に収穫機械化が進んでいない本島中部(85%)、本島南部(78%)、宮古(59%)は特例要件で支援対象となっている農家の割合が高い地域である。

「対象要件区分」
A―1:認定農業者,特定農業団体又はこれと同様の要件を満たす組織
A―2:一定の作業規模を有するもの(個人:1.0ha 以上,組織:4.5ha 以上)
A―3:共同利用組織に参加している者
A―4:一定の要件を有するものへ基幹作業を委託している者
A―5:特例要件を活用する者(地域の1/2以上の生産者が参加する担い手育成組織の参加者)
図2 地域別担い手育成の状況

2 担い手育成に向けた取り組みと方向性

(1)これまでの取り組み概要
  本則要件充足に向けた担い手育成に際して、県段階では各地区に先行モデル集落、また市町村段階においてはモデル集落を設定し、方法論も含めて、これら集落での取り組み事例を手本に、県下全域での担い手育成を展開していくという手順で取り組みを進めているところである。

 これまでの取り組みとして、「さとうきび担い手育成推進会議」(平成19年2月)を皮切りに、モデル集落における説明会や意見交換会、作業受委託体制整備に向けたワーキングチームの設置、県下5地区のJAさとうきび対策室に担い手育成支援のためのコーディネータを設置など、各種の取り組みを行ってきている。

(2)担い手育成の方向性
  現在A−5の生産者が平成22年以降も品目別経営安定対策の支援対象となるための担い手育成方向として、既に大規模さとうきび経営を展開している農家や園芸・畜産など他部門との複合経営を実践している農家については認定農業者(A−1)へ、また、現状の収穫面積規模が一定規模あり、かつ着実に借地などによる収穫面積拡大が見込める農家については収穫面積規模1ヘクタール以上農家(A−2)への誘導を進めており、その成果もわずかずつであるが現れてきている。しかしながら、この2つの要件で支援対象となり得る農家数は全体からみるとごく一部であり、多くの農家は基幹作業を委託する者(A−4)、もしくは機械などの共同利用組織の構成員(A−3)に誘導する必要がある。

 これまで行ってきた意見交換会や市町村などとのヒアリング結果から、県下においては一部に共同利用組織を指向し、取り組みを進めている事例もあるが、申請事務に伴う農家への負担や組織運営の継続性などに不安が残ることから、作業料金の支出は伴うものの、基幹作業を委託する者へ誘導することが現実的な対応との判断をする市町村が多く、現在、市町村、JAなどの関係機関が一体となって作業受委託体制等の条件整備に取り組んでいるところである(砂糖類情報2008年12月号「第8回さとうきび・甘蔗糖関係検討会の概要について」参照)。

3 作業受委託を推進する上での課題

 作業受委託を推進する上での主な課題を整理すると次のようなものが上げられる。

(1)株出し管理作業の有効性の明示
  ほ場の条件などから機械収穫が困難なほ場もある。また現在のハーベスタの整備水準からしても、すべてのほ場を機械で収穫することは不可能であり、収穫以外の基幹作業についても受委託体制を早急に整備する必要がある。

 とりわけ、株出し栽培の割合が高い地域においては、収穫作業を除くと実質的に選択できる基幹作業が株出し管理に限定される。生産農家が納得して作業を委託するためにも、株出し管理の費用対効果を客観的なデータで明示することが必要であり、これまでの試験データに加えて、実証展示ほの設置も並行して行っているところである。さらに、比較的安い料金水準で作業を行うことができる簡易な株出し管理機(図3)などの実演も積極的に実施し、農家の評価を仰いでいるところである。

図3 簡易な株出し管理機械(根切と施肥を一工程でできる)

(2)相対による受委託事例における受託者の組織化
  宮古・石垣を中心に、耕起・整地や植付け作業の受委託が実態として行われていながら、作業契約が相対で行われているために、現状のままでは、支援対象要件(A−4)を充足できない事例がある。こうした相対による受委託事例の掘り起こしと、その場合の受託者の組織化を図る必要がある。

 これら以外にも、オペレータの確保や受委託情報の一元化などの課題もある。

4 今後の取り組み

 これまでの取り組みにより、誘導の方向性についてはほぼ明確になりつつあるが、当事者である生産農家の合意形成という大きな課題が残されている。また、受託組織の運営方式やオペレータの組織化、さらには諸申請事務に係る関係機関の役割分担など、実務的な対応・調整も残されている。

 さらに、耕うん機すら利用することが難しいという不利な条件のほ場においてさとうきび生産を行っている農家への対応も課題として残されているが、関係機関との連携をさらに強化し、平成22年以降も、生産農家が安心してさとうきび生産が継続できるよう、条件整備に取り組んでいきたい。

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