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徳之島における作業受委託の事務手続きの優良事例〜基幹作業の受委託状況を把握し事務作業を効率化〜

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類情報ホームページ

[2009年5月]

【生産地から】
鹿児島事務所

1 はじめに

 19年度から始まった品目別経営安定対策においては、甘味資源作物または、でん粉原料用いも交付金の対象生産者となるために、一定の要件を満たすことが必要であるが、21年度までの特例措置として、地域の1/2以上の生産者が参加する担い手育成組織の参加者についても、交付金の交付を受けることができることとなっている。この特例期間が終了する21年度末まで残り1年となり、各地で担い手の育成への取り組みが積極的に行われているが、特例対象者の本則要件への移行を促進するためには、基幹作業の受委託の推進が有効であり、受委託の実態を書面に記録した上で、それをいかにして交付金申請事務手続きにスムーズに反映させていくのかが課題となっている。

 本稿では、生産者と営農集団など受託者との間でさとうきび栽培作業の受委託などを効率的に把握し、JAなどの事務取りまとめ機関における事務作業の合理化を実現している徳之島地域の取り組みを紹介する。

2 徳之島の状況

 徳之島は、鹿児島県下のさとうきび生産地域において最大の生産量を誇る主産地であり、さとうきびの生産者数が3,386人(20年産対象生産者数)と鹿児島県のさとうきび生産者の1/3以上を占めている。

 これら生産者の品目別経営安定対策の要件区分別の内訳は、表1のとおり「特例要件を活用する者」(A−5)の占める割合が、17.2%と県平均の27.9%と比べ低い水準となっており、一方「一定の要件を有する者へ基幹作業を委託している者」(A−4)の占める割合が67.4%(同上2,281人)と県平均の52.0%と比べ高い水準となっていることが寄与して本則要件を満たす者(表1のA−1からA−4の者を指す)の割合が高くなっている。

 徳之島がその他の地域に比べA−4の者が多い理由としては、ハーベスタによる機械収穫の割合が平成19年産期においてさとうきび収穫量の75.6%(表2)に達しており、生産組合などに収穫作業を委託することによってA−4としての要件を満たす者が多いことがあげられる。

 徳之島には、現在、113台のハーベスタが稼働しており、収穫作業受託者は認定農業者(A−1)が14人、一定の収穫作業規模を有する者(A−2)が19人および受託組織・サービス事業体が59組織の計92者存在している。

表1 平成20年産の要件区分別生産者数
(単位 上段:人、下段:%)
*上記数値は、平成20年12月26日までに対象生産者の登録が完了したもの。
「対象要件区分」
A−1: 認定農業者、特定農業団体又はこれと同様の要件を満たす組織
A−2: 収穫面積の合計が1.0ha以上である生産者(法人を含む)、収穫面積の合計が4.5ha以上である協業組織
A−3: 収穫作業面積の合計が4.5ha以上である共同利用組織の構成員
A−4: A−1・A−2の生産者又は収穫作業面積の合計が4.5ha以上である受託組織・サービス事業体に基幹作業を委託している者
A−5: 知事の申し出に基づき受託組織等が存在しない地域として指定された地域で、さとうきび生産農家の2分の1以上が参加して組織される担い手育成組織の参加者
表2 平成19年産の収穫作業の機械化状況
(単位:トン、%)
資料:鹿児島県農政部農産園芸課「さとうきび及び甘しゃ糖生産実績」
表3 平成19年産の徳之島における収穫作業受託者の内訳
(単位:者)
受託組織・サービス事業体:収穫作業面積が4.5ha以上であるもの

3 19年産の取り組み

 甘味資源作物要件審査申請書(以下、「要件審査申請書」)の提出において、対象生産者であるための判断基準(基幹作業)が収穫面積であるA−4の生産者の場合、受委託の面積を確定するため、受委託の契約書の提出、もしくは収穫作業実施申込書の提出を行い、地域すべての収穫作業が終了した時点で、改めて作業実施証明書の提出を行うことが必要となっている。

 JAあまみ徳之島事業本部および天城事業本部(以下、「JA」)は、生産者の要件審査申請書の取りまとめに当たって、制度のスタート年度である19年産は、A−4の生産者の受委託状況の把握を行うため、委託者と受託者の間で受委託契約書を交わし、契約した内容を途中で変更することなく履行するよう委託する側の生産者を指導した。

 JAの指導は、契約書で対応した方が、収穫作業実施申込書よりも当初契約の内容どおりに履行される可能性が高く、事務手続きの負担も軽くなるとの考えによるものであったが、結果的には出荷割当などの作業スケジュールの関係から作業の委託を行う予定のほ場を自らが収穫してしまったことなどの理由により作業が契約どおり履行されないケースが多く、契約書の修正(委託するほ場の追加および削除などの変更)が発生した結果、精算払いの事務手続きの際に要件審査申請書などの補正作業が膨大に発生し、事務作業が滞る事態となった。

4 20年産の新たな取り組み

 19年度の反省を踏まえ、代理人であるJAあまみ徳之島事業本部および天城事業本部は、JA鹿児島県中央会総合情報システム部の協力も得たうえで、以下の仕組みにより受委託の状況を確認するスキームを構築した。

(1) 収穫作業実施申込書様式を島内で統一する。

(2) 収穫作業実施申込書にはあらかじめ要件審査申請書記載のものと同一の生産者毎のほ場情報を印字して配布する。(これにより受託者とJAで同一のほ場情報を共有。)

(3) 受託者から事前に受託状況を報告してもらうとともに、収穫期間中の毎日ほ場ごとの収穫状況を出荷伝票に記載された出荷場所により確認を行う。

5 新たな取り組みの成果

 JAあまみ徳之島事業本部の かなめ 糖業課長は、「平成20年産からの新たな取り組みは、精算払いが終了しておらず取り組み途中ではあるが、昨年と比べ事務作業の効率が格段に向上した。昨年産は、委託する側の生産者(約3,000人以上)を指導していたが、今年産は、受託する側(92事業体など)に協力を仰ぐこととしたことにより意思の伝達がスムーズになったことが大きい。」と感想を述べている。

 新たな取り組みの成果のポイントは以下のとおり。

①収穫作業実施申込書の様式を島内で統一したうえで、ほ場情報も要件審査申請書の内容と同様にしたことにより、申込書と申請書の確認作業を大幅に軽減できた。

②営農集団などの受託者から受託状況の報告を受けるスキームとしたため、受託状況の把握が容易になった。

③収穫期に毎日、収穫作業の実施状況を報告してもらうことによって精算払時に行う補正作業が収穫期から行えるようになり、作業が平準化された。

[取り組みの流れ]

 5月にJAが生産者へ昨年のほ場情報データを基にした事前確認書を郵送し、当年産のさとうきびに係るほ場の情報を生産者に確認してもらう。

 7月に、生産者からJAに返送された事前確認書のほ場データでシステムの情報を更新する。

 8月初旬に、JAが生産者毎にほ場情報を記載した収穫作業実施申込書を全生産者に郵送する。収穫作業を委託したい生産者は、郵送された収穫作業実施申込書に必要事項を記入し、直接、営農集団または個人の生産者などに申し込む。

 9月に、各営農集団などは、生産者から申し込まれた収穫作業実施申込書のコピーを郵送してJAに受託状況を報告する。

 JAは、収穫期には、営農集団などの受託者が記入した出荷伝票から出荷場所を確認し、事前の報告から変更があった場合はその都度受託者に確認しデータを変更する。

[取り組みのイメージ]

6 おわりに

 徳之島の受委託に係る事務手続きの事例が、すべての地域に応用できるとは限らないが、基幹作業の受委託を促進するうえで参考にして頂きたいと考えている。

 機構もJAなどの代理人の事務手続きが少しでも軽減されるよう知恵を出していきたいと考えていますので、ご意見・ご要望などがあれば機構の鹿児島事務所または那覇事務所までご相談ください。

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