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株出しの単収向上に有効な一芽苗による欠株補植について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類情報ホームページ

[2009年6月]

【調査・報告】
沖縄県営農支援課広域技術支援班 主幹 伊志嶺 正人

1.はじめに

 平成20年産の沖縄県のさとうきび生産は、生育前半の少雨傾向で地域によっては茎長の伸びが抑えられるなどの影響はあったが、大きな台風被害もなく、かん水と生育後半からの適度な降雨によって収穫実績で約88万トンを確保し、春植え、夏植え、株出しの各作型ともに平年単収を超え、品質も高い豊作の年となった。

 平成16年産から17年産にかけては台風被害などによって60万トン台にまで生産量が落ち込んだが、その後、生産農家と関係機関が一体となっての早期施肥や分げつ茎数を増やす適期培土など、肥培管理の実施と積極的なかん水への支援・啓発活動が継続されてきたことも、増産に結びついた要因として挙げられよう。

 単収を上げるためには栽培初期の茎数確保とその後の茎伸長が基本である。特に今後増加するとみられるハーベスターによる収穫を実施するほ場においては、株の引き抜きや踏みつぶしで生じた欠株を解消して株数を確保する補植技術が、株出し栽培を継続していくうえで最も重要になってくる(図2)。

図1 平成20年度北部地区増産推進大会におけるかん水方法の実演
(上段:点滴かんがい、下段:移動式スプリンクラー)
図2 単収向上対策は茎数確保と茎伸長から

 沖縄県では株出し栽培の単収向上対策として、収穫直後の早期肥培管理と欠株補植を各地で展示実証しながら進めている。

2.補植用の苗について

 株出しの欠株補植については、収穫直後からの地下芽子の萌芽、あるいは収穫前から発生した遅発茎の生育が早いことから、萌芽株をスコップやくわで分けて植えたり(株分け)、収穫時の梢頭部を直接挿し苗にしたり、フィルターケーキで発根させて用いてきた。二芽苗(注1)の場合は、発芽するまでの間に生長の早い株に生育を抑えられることで弱小茎となることが多いため、収穫茎としてではなく収穫後に株出萌芽する地下芽子の確保を期待して補植されてきた。

 ハーベスター収穫後に生じる欠株は、10アール当たり300〜400カ所もあるため、大量の補植苗が必要である。種苗業者の多量生産によって、広範囲な株出し面積への欠株補植に側枝苗(注2)の供給が可能となったが、苗自体が小さいため植え替えによる再育苗で大きくしたり、1カ所に複数移植したり、補植後に苗周囲の株を刈り込んだりなど農家は工夫しながら利用している。それでも、側枝苗による補植は母茎のみ生長して分げつが出現しなかったり、あるいは周囲の株に抑制され、弱小茎になる場合が多かった。

 そのため、県農業研究センターでは、一芽苗(注1)をセルトレイ(注3)育苗して補植する技術を開発し、関係機関と共にその普及に努めてきた。

図3 梢頭部苗の発芽・発根促進
図4 JAおきなわグループの苗生産・販売会社でセルトレイ育苗中の側枝苗

3.一芽苗の育苗

 これまで一芽苗のセルトレイ育苗は、側枝苗や野菜類のように棚やブロックの上に網を載せ、トレイを置くエアープルーニング方式で行われてきた。各地で育苗された一芽苗は、母茎のみ大きくなるが分げつが出現しないため、生長点をプライヤーで強めに挟んでストレスを掛けたり、補植前に母茎をやや折って、分げつの発生促進を試みた。

 しかし、多量育苗でのプライヤー処理や補植しながらの母茎の折り曲げ作業は手間が掛かり、この分げつ促進方法の普及は困難であった。

 畑に移植した一芽苗は、分げつを生じるものの発生が遅く、弱小茎になる場合も多い。一芽苗と隣接する株の一株当たり収穫茎数を比較すると、一芽苗では約2.4本で、隣接株の茎数より少なかった(表1)。

図5 エアープルーニング方式育苗
表1 補植苗と隣接株の収量比較
沖縄県農業研究センター作物班(平成19年度普及成果情報)

 補植苗を原料茎として生長させ、分げつを増やすためには、ハーベスター収穫直後の株揃え作業で欠株部分を確認し、早期に補植することで元株による生長抑制を回避することが必要となる。

4.分げつの出現しやすい置床式の一芽苗育苗方法

 本島北部恩納村の金城政雄氏はこれまで一芽苗の伏せ込み育苗による大苗作りで、ハーベスター収穫後の欠株補植を行い、地域の平均単収を上回る株出し栽培を続けてきた※が、一芽苗のセルトレイ育苗でも分げつの盛んな苗作りを実現している。
※ 砂糖類情報2005年11号―優良きび作事例紹介―

 現在、この育苗技術を「農業現場での実践を通じて自ら生み出した」「地域において広範囲な利用や高収量効果が期待できる技術」という農林水産省の平成20年度現場創造型技術(匠の技)に挙げて、本島北部を中心に県内各地への普及を図っている。

 金城氏は伏せ込み育苗の経験を生かして土づくりに力を入れ、堆肥と土、砂を混ぜた後、ふるいに掛けてセルトレイ用の培養土とし、同様に混合した土で高さ15cmほどの苗床を作り、さらに堆肥を広げその上にセルトレイを置き、3〜4カ月間育苗している。

図6 育苗中から分げつが盛んな一芽苗
図7 盛り上げた床土にセルトレイを置いて育苗する

 今期は、簡易パイプハウスで品種に農林20号と17号を供して11月中旬から育苗を開始した。ハウス内で育苗した一芽苗は育苗2カ月ですでに分げつが出現し、個体差は見られるがエアープルーニング方式で育苗された苗とは発根と分げつの様子が異なった。

 一芽苗は発芽しながら蔗苗根を伸長させ、母茎と分げつの生長と共に茎根を増やしていく。分げつが多いほど茎根の発生も多かった(図8)。

図8 育苗中の分げつ発生の様子と蔗苗根、茎根、分げつの生育

 限られたセルトレイ内の土壌環境だけで育つ苗と床土から養水分の補給がある苗では生育に掛かるストレスが異なり、それが分げつの差を生じていると考えられる(図9)。

図9 床土の上で育苗する「匠の技」と従来の育苗法の比較

 このように育てられた一芽苗は、3月から4月の間に約120アールの株出ほ場へ補植された。苗は蒸散を抑えるため葉を短く切って、活着を促すため補植前にたっぷり水を掛けてから細刃のくわで植え付けていく。補植による増収効果の検証については、北部農業改良普及課の設置した展示ほで、生育調査と収量調査が行われることになっている。

図10 ハーベスター収穫後のクワを使った欠株補植と補植適期苗

5.苗の再生

 本島南部でも一芽苗による補植が行われているが、南城市糸数地区ではフィルターケーキを培養土としてコンクリート床上でセルトレイ育苗している事例があり、昨年9月から育苗を始め4カ月の育苗期間を経ても分げつがなく、苗は生育不良と根詰まり状態を呈していた。

 しかし、この苗をコンクリート床からフィルターケーキ上に移し置いて約1カ月後、新たな茎根と分げつの発生が見られた。このことから、根部を通しての養水分補給が苗を活性化させたと考えられ、床土上での育苗の有効性が確認された。

図11 コンクリート床上で育苗された一芽苗
図12 フィルターケーキにセルトレイ苗を置くことで苗が活性化した

6.今後の課題

 株出しの欠株には、旺盛な発根と分げつを有する苗を補植することによって原料茎数の増加による単収の向上が期待できる。

 一芽苗を床土上で育苗する利点は、活力のある大苗を作ることによって元株の生育に負けない補植ができるため、補植適期の幅が広がることにある。そのため、他の管理作業との競合を避けて、補植作業を計画的かつ柔軟に実施することができる。

 さとうきびの収穫時期は雨天も多いことから、ハーベスター収穫も時折中断するが、苗さえ準備できていれば土壌が湿って機械が畑に入れない時こそ、補植に適した作業日となる。

 今後は県内に欠株補植を普及して株出し作型の単収を上げるため、各地域で展示ほの設置を行い、一芽苗補植の効果を実証しながら、地域の土壌、品種、手刈りあるいは機械刈りという収穫体系にも応じた育苗技術を確立していく必要がある。

 苗の生産についても各地区の生産組合で行い、各農家の収穫時期に合わせ早期補植できるような苗の供給体制づくりを検討する必要がある。


(注1)さとうきびは、栄養体繁殖性の植物であることから、種苗増殖はさとうきびの茎をいくつかに切って上に埋め込み、発芽させて行う。芽は各節から発生し、1節を含む形に切断した場合一芽苗、2節で切断した場合、二芽苗と呼ぶ。一般的には二芽苗を用いることが多い。

(注2)生育途中のさとうきびの梢頭部を切除し、各節から側芽を発芽させこれを切り分け育てていく苗。

(注3)小さいくさび形のポットが連結して並んでいる育苗パネル
図13 さとうきび生産農家交流会で一芽苗の育苗方法を説明

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