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てん菜およびてん菜糖の利用実態と今後の方向性について(平成18年度砂糖に関する学術調査報告から)

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

今月の視点
[2007年11月]

【調査・報告】

北海道大学大学院農学研究院 教授 飯澤 理一郎
酪農学園大学酪農学部 講師 杉村 泰彦
北海道大学大学院農学院 共生基盤学専攻 博士課程 今野 聖士

 本調査は、砂糖消費が減少傾向にある中で、北海道におけるてん菜およびてん菜糖にとって、今後いかなる方向性・方策が必要とされるのかを探ったものである。一つめは食品としての砂糖消費、二つめは砂糖の他用途(食品以外)への利用、三つめは輪作上必要不可欠な作物であるてん菜の食用としての利用である。
 このため、砂糖ユーザーの聞き取り調査を行い、それらを踏まえ、てん菜およびてん菜糖の今後の方向性について考察を行った。


 てん菜は、北海道畑作農業にとって、輪作を行う上で必要不可欠な作物である。ばれいしょ・麦類・豆類・てん菜の4作物での理想的な輪作においては、北海道の畑作面積(4作物の作付面積)の4分の1、網走地域のようにばれいしょ・麦類・てん菜の3作物輪作であれば3分の1はてん菜であることが求められる。
 しかし、てん菜の作付面積は表1に示したとおり、1985年の72,132haをピークに1990年には71,952ha、1995年には70,016ha、2000年には69,109haと減少し、以降は6.5〜6.7万ha台へ落ち込んでいる。しかも、1989年に始まった原料糖への仕向けが増大し、今や25〜30万トン台、35%以上を占めるまでになってきている。作付面積で見れば、この間、4〜6千haの減少である。こうした減少には、需要に応じた生産を目指す北海道農協畑作・青果対策本部の設定する「畑作物作付け指標」が大きく影響していたことは言うまでもない。てん菜の作付面積の減少の結果、普通畑面積に占めるてん菜の作付比率は1985年の17.0%から良くて16.7〜17.8%、2005年には16.4%に下落してきているのである。わずか0.2〜0.3%、2005年でも0.6%の減少にしか過ぎないが、面積では数千haに達するわけで、輪作を維持するという観点からすれば、決して看過できる面積ではない。
 てん菜の作付面積を維持する方途として考えられるのは、一つめは食品分野におけるてん菜糖の方向性であり、二つめは砂糖の他用途への利用であり、三つめはてん菜の砂糖製造以外での利用、いわば「てん菜の他用途利用」である。以下、それぞれの事例について触れておきたい。

表1 てん菜の作付面積等の推移
(単位:ha、トン、%)
注: 1)1985年ではなく1986年からとしたのは、同年から糖分取引に移行したためである
2)( )内は産糖量に対する割合である
資料: 「てん菜糖業年鑑2006」北海道てん菜協会


1.食品分野におけるてん菜糖の方向性

  2005年度時点で砂糖消費量の最も多い分野は菓子・パンで74.1万トン、33.3%を占め、以下、清涼飲料(40.9万トン、18.4%)、家庭(31.2万トン、14.0%)、乳製品(20.7万トン、9.3%)、小口業務(18.8万トン、8.4%)、漬物(12.4万トン、5.6%)、調味料(12.2万トン、5.5%)と続いている。
  以下、①パン・菓子メーカー、②清涼飲料メーカー、③てん菜糖メーカーなどに対する調査を基に、てん菜糖使用の現状と、今後の方向性について検討する。

①パン・菓子メーカー
  まず、砂糖の最大の消費先であるパン・菓子メーカーであるが、調査先の会社は北海道に存在する小規模メーカーであり、特に使用する原料の産地にこだわった製品を重点的に生産しているメーカーである。小麦粉に対する砂糖の使用割合は、食パンで5〜6%、菓子パンで20%とされ、他社との比較で、食パンでは大きな差がないものの、菓子パンではおよそ倍ほどの開きがある。多分に、製品コンセプトの相違や販路の相違が、そこには反映されている。また、菓子パンが減少しフランスパン・バターロールなどが増加したこともあって、メーカー全体としての砂糖消費量は、重量比で小麦粉の25%程度から15%程度に低下してきている。また、パン・菓子生地の着色を避けたい場合、てん菜グラニュー糖・上白糖を使用しているが、てん菜糖を使用している主な理由は「地元産で出自明快」という原料へのこだわりからである。

②清涼飲料メーカー
  次に、パン・菓子メーカーに次いで消費量の多い清涼飲料メーカーである。北海道内の清涼飲料メーカーの中には、北海道産のてん菜糖にこだわりを持ち、北海道産原料使用を打ち出しながら販売戦略を構築しているところも出始めており、北海道産てん菜糖にとっては明るい一面も見えだしているのである。
 甘味料を使用する炭酸飲料の生産量は、表2に見られるように、1990年の299万klをピークに今や260〜270万kl台に減少している。また、生産量が1985年の65.3万klから90年には266.6万kl、2000年には661.4万kl、そして2005年には848.1万klと顕著に伸びてきているコーヒー・茶系飲料でも、無砂糖系の緑茶・ウーロン茶などがその割合を急速に高めていることもあって、砂糖消費総体としては多くを期待できないものの、こと北海道産てん菜糖という面では、製パン・製菓業界と同様、「食の安全・安心性」や「トレーサビリティ・システム」と関わって、今後の消費拡大が進んでいく可能性も否定できないのである。

③てん菜糖メーカー
 国内産糖の80%前後を占め、60万トン超を産出するてん菜糖業界もてん菜糖の需要・消費拡大に積極的に乗り出している。かつては、てん菜糖は「使用時に泡立つ」とか「えぐささが残る」などとの指摘もあったが、その後、濾過技術を進歩させ、こうした弱点を克服している。パン・菓子業界や清涼飲料業界でもてん菜糖に対する品質上の苦情は全く聞かれず、また、出自の明快性などを打ち出すためにてん菜糖への切り替えも徐々に進んできていると見られることは、そのことを裏付けていよう。
 北海道産の原料100%であるてん菜糖業各社では「安全・安心」、「出自明快」などを打ち出しながら、需要・消費の拡大に努めている。そうした努力もあってか、大手清涼飲料メーカーや大手パン・菓子メーカーもてん菜糖を使用するようになったケースもある。また、糖みつを含むてん菜含みつ糖や北海道産てん菜糖をうたったプライベート・ブランドの小袋砂糖・スティックなどの生産も増加している。さらに、新たな需要・消費先を開拓すべく、小口需要者を積極的に開拓したりしている。

2.てん菜糖の新たな用途の可能性

 てん菜糖工場の煎糖工程に従事し、絶えず糖液に接する煎糖係の手が何時も艶があり綺麗なことに着目し、てん菜糖がアトピー性皮膚炎などに効能があり、肌を滑らかにするのではないかということから、広島県の化粧品メーカーがてん菜糖メーカーと協力しながらスキンケア商品の開発に乗り出していることは、新たな用途の開発という点で特筆に値する。
 同社では、てん菜糖を主原料としたスキンケア商品を開発し、今、全国的な販売を開始している。スキンケア商品の砂糖使用割合は重量ベースで80%程に達し、残り20%はオリーブ・オイルなどであり、いずれも食用としても通じるものであり、昨今の「安全・安心」を求める風潮に優れて合致したものといえる。同社の社長はアメリカの化粧品原料メーカーで働いた経験を持ち、その際に経験した砂糖を入れた風呂や砂糖を原料とした化粧品が商品開発の原点となった。社長の言によれば、「砂糖には皮膚を柔らかくする効果」があり、砂糖を使用したスキンケア商品は「通販生活」誌の掲載商品にも選ばれ、また、大学病院への納品も始まり、販売は徐々に伸びてきているとされる。更に、今後、「砂糖を配合した石鹸」や砂糖・ココナツオイル・ビタミンBなどを原料とした「切り傷用のスキンケア商品」の開発に着手する予定とされており、まだまだ砂糖の用途は広いと考えられる。もう既にメーカー・サイドなどでは取り組まれていることとも想定されるが、異業種交流などを活発化し、多様な他用途への利用の道を開拓していくことが求められているといえよう。

表2 清涼飲料等の生産量
(単位:千kl)
資料: 食品需給研究センター「平成17年度食料需要予測調査分
析事業食品産業動態調査報告書 第2編統計資料編」

3.食材としてのてん菜の利用の可能性

  もう一つは、てん菜の食材、いわば“野菜”としての利用である。てん菜の主産地・十勝支庁で活動する「十勝郷土料理研究会」では10年ほど前から、食材としてのてん菜利用の検討を行ってきている。灰汁の出にくいてん菜の灰汁抜きの方法を開発し、また数々の料理を開発してきている。開発された料理は、てん菜かき揚げ、てん菜フライ、てん菜のはさみ揚げ、てん菜の粕漬け、ビートチップス、ビートきんぴらなどである。これら料理法は月一回開かれる郷土料理教室(「十勝郷土料理研究会」主催」)で受講者に伝えられる。料理講習が何回となく開かれてきたこともあり、てん菜を食材とした料理はかなり広範な人々に認知されているものと推察される。
  そして、こうした活動がバックとなって、帯広市内に「てん菜かき揚げそば」を提供するそば屋も誕生している。メニュー表には常時掲げられていることもあり、その宣伝効果は大きいと言える。
  てん菜の食材としての利用を拡大するためには、まず、てん菜が一種の野菜として流通する環境が整備されなければならない。今のところ、「十勝郷土料理研究会」やそば屋では知り合いの農家から購入しているとのことであるが、それではなかなか広範に普及することにはならない。また、てん菜をそのままの形状で市場に出すか、あるいは半加工状態(スライスして水につけた状態など)にするかなど、今後、検討しなければならない課題は多い。しかし、ロシアなどでは食用てん菜(「ビーツ」と呼ばれる)が不可欠の食材とされており、また、最近の「珍野菜」指向の強まりなどを考え合わせれば、てん菜の野菜としての需要が今後大いに拡大する可能性は大きいと言えるのではないだろうか。

てん菜入りかき揚げ
てん菜チップス
赤い食用てん菜

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