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さとうきびの単収向上は基本的な栽培技術から

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

生産地から
[2007年2月]

沖縄県宮古農政・農業改良普及センター
沖縄県八重山農政・農業改良普及センター
沖縄県農林水産部糖業農産課さとうきび班
農業技術班  赤嶺 義人
農業技術班  山本 真靖
主任技師 伊志嶺 正人

1 地域優良事例の紹介

 沖縄県では、さとうきびの増産に向けた取り組みとして、新植夏植や春植の単収向上対策を始めとして、株出栽培面積の拡大による収穫面積の確保と適期肥培管理、早期株出管理による単収向上を推進しています。
 平成18年3月には新品種の普及やハーベスターの小型化に伴う機械化体系に対応して「さとうきび栽培指針」を改訂しました。また、同指針のダイジェスト版を活用して単収向上のため関係機関に配布し、指導普及に努めています。
 併せて、平成18年8月からは各地区の農業改良普及センター等の協力のもと、単収向上に取り組んで実績を上げているさとうきび農家を優良事例として、JAおきなわの機関誌「あじまあ」に掲載し、農家全体の栽培技術向上の普及・啓発に取り組んでいます。
 その中から今回、夏植一辺倒の宮古地域で7年〜10年も株出栽培を継続している
洲鎌三郎さんと、八重山郡小浜島に移住し、さとうきび栽培を始めて数年で、地域の平均単収を上回る実績を上げている小林洋さんの事例を紹介します。




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2 株出栽培の基本は土づくりから


 〈宮古地域〉
 宮古本島及び離島地域ではカンシャクシコメツキ幼虫(ハリガネムシ)やコガネムシ類の幼虫等の土壌害虫による株出不萌芽が多発生し、沖縄本島・離島に比べて株出栽培が困難なため、夏植に突出した作型になっています(図1)。


図1 各地域の作型別収穫面積
(平成17/18年期)

 その中で、宮古島市下地の洲鎌さんは畜産との複合経営で、牛糞堆肥と緑肥による土づくりに力を入れ、夏植だけでなく株出栽培にも積極的に取り組んでいます(図2)。
 平成17/18年期の作型別の収穫実績は、夏植48%、春植15%、株出37%と株出の割合が高くなっています。
 品種についてはNiF8が約70%、Ni15が16%、宮古1号が11%と早期高糖品種中心の構成となっており、毎年100トン以上の生産量を上げ、平均甘蔗糖度も15度を越えています。


図2 洲鎌さんの作型別収穫面積の推移

(1) 更新時の土づくり
 株出の収穫が終わって夏植の新植更新する場合、緑肥としてクロタラリアを4月中旬に播種し、2m以上に生長した後にプラウで鋤込み、さらに自家製の牛糞堆肥を5トン/10a散布して土づくりを行い、長期株出の更新時にはパワーショベルによる深耕も行っています。

(2) 良苗植付けと欠株補植で茎数確保
 夏植用の良苗を確保するため、毎年2月頃に栽培面積の10分の1を苗畑用として植付けています。
 夏植新植では、良苗を選別して植えていますが、それでも発生する欠株に備えて補植用の苗も同時に植え、移植によって茎数を確保しています。
 収穫後の株出にも欠株発生は少ないが、補植は必ず行っています。

(3) 害虫防除の徹底
 植付け時にはTD粒剤等を土壌処理していますが、ハリガネムシ、メイチュウ類の発生が多いほ場にはアドバンテージ粒剤を使用したり、特に、ハリガネムシの発生が多いほ場では、植付け前に乳剤の5千倍希釈液に苗を浸漬してから植え付けるなど、ほ場ごとに応じた害虫防除を行っています。
 また、アオドウガネやハリガネムシの5月の防除についても徹底して実施し、収穫前に発生する立ち枯れと収穫後の株出不萌芽を防止して、欠株を出さないように努めています。

(4) 除草作業の徹底
 特に、生育初期は、早めの除草によってさとうきびの生育と分げつ発生が雑草で抑えられないように努めています。

(5) 株出管理
 収穫は手刈りが主なため、剥葉した枯れ葉が畑を覆っているので、枯れ葉を隔畦ごとに溝部分にまとめます。 枯れ葉を除去した溝に化成肥料を基肥として10a当たり2.5袋施用し、耕耘機で根切りします。
 根切りした溝に牛糞堆肥を施用して、耕耘機で土を埋め戻します。この作業を収穫の終わる3月下旬から4月にかけて行い、2回目の追肥を5月に行っています。
 収穫後の株出管理では毎回、牛糞堆肥を施用して地力維持に努めています。

(6) 新しい技術は実践して自分の畑に合うやり方で
 洲鎌さんはさとうきび栽培の指導や情報提供を受けたら、実践によって結果を検証し、それぞれの圃場に適した品種や栽培方法を改善しながら単収向上に努め、夏植単収10トン、株出単収6トン以上を確保しています。


新植夏植の生育状況(NiF8)


NiF8の株出5作目の生育状況と洲鎌さん


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3 適期肥培管理の重要性

 〈八重山地域〉
 小林さんは栃木県から八重山郡竹富町小浜島に移住し、さとうきび栽培を始めて3年目になります。
 きび作りは初心者ながら地元農家の教えを受け、現在、NiF8の夏植を主体に約130アールの栽培面積を作付けしていますが、単収も地域の平均単収より高く、注目されています。


(1) 良質苗の植付と補植の徹底による茎数確保
 植付け前に苗を水に浸漬し、植付け時にも良苗を選別して植えて発芽率を高め、欠株が生じると2節苗を伏込んで補植しています。
図3 小林さんと小浜島夏植の単収比較

(2) 基本的な肥培管理の徹底
 さとうきびの栽培指針に基づいて、培土や施肥管理、病害虫防除、除草等の基本的な作業を適期に行い、分げつ本数を確保することに努めて、単収の向上を目指しています。
 地域の篤農家や製糖工場の農務指導員のアドバイスを受け、単収向上のための栽培技術を実践しています。
 朝や夕方など、時間があれば畑に足を運び、雑草の発生状況やさとうきびの生育を観察し、畑ごとに必要な作業や肥培管理を適期に行うようにしています。
 今後は春植・株出体系へシフトしながら、さらに単収を高めるさとうきび栽培に取り組むことを目標にしています。
 小浜島でも、若年層の担い手が少なくなり、さとうきび栽培農家の高齢化が課題となっていますが、日々さとうきび生産に熱意をもって取り組んでいる小林さんは、島のさとうきび産業を支えていく担い手として、地域からも期待されています。


NiF8の夏植生育状況と小林さん


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4 さとうきび栽培の基本技術

 以上の事例では、堆肥施用による土づくりや新植における良苗の利用、病害虫防除の徹底、補植による欠株対策等の基本的な栽培技術と地域の実態に合った栽培方法の実践が、単収向上と生産性向上につながることを示しています。
 今後も、島ごと、地域ごとに異なるさまざまな条件下で単収向上を実現している事例の掘り起こしを行い、基本技術の実践が増産への近道であることを普及・啓発して行く必要があります。



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