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循環型であってこそ維持可能な甘味資源作物

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類情報ホームページ

[2009年7月]

【視点】
株式会社農林中金総合研究所 特別理事 蔦谷 栄一

1.不可欠な距離・時間の短縮と関係性・循環の回復

 現在、「食料、農業・農村基本計画」の見直し検討と農政改革関係閣僚会合が並行して進行しており、そこでの最大の焦点は、担い手の確保、経営の確立、農地の集積、米生産調整・減反と水田フル活用にあり、取組結果として食料安全保障の確立、食料自給率の向上を図ることができるかどうかが問われる。そして将来見通しが持てない現状から脱皮して、生産者が一定の努力を積み上げれば獲得可能となる将来展望を示していくことが切実に求められている。

 改めて日本が食料自給率を低下させてきた構造を確認しておけば、国内自給が可能な米の消費量を減少させる一方で、食肉・油脂類などの消費量が増加し、大きく食生活が変化してきたが、飼料穀物をはじめとして農産物の内外価格差は大きく、貿易自由化の流れの中で輸入圧力も強く輸入依存度を高めることになり、結果的に国内生産が消費需要の変化に追いついていけなかったものである。すなわち一体であった食と農が乖離(かいり)してしまったところに、食料自給率を大幅に低下させることになった最大要因がある。

 食と農の乖離の背景には、農産物流通の広域化や大量加工・大量販売の進行による距離・時間の拡大がある。これを可能にしてきたのが卸売市場制度の整備であり、加工処理や保冷技術などの技術進展であり、ポスト・ハーベストや防腐剤などの利用であり、さらには自由貿易の進展と国際分業であった。距離・時間の拡大によって多様な食生活が可能になるとともに、多くの経済的メリットがもたらされたことは確かである。しかしながら一方で、関係性・循環の喪失という、人、生きものを含めた自然循環を可能にする持続的な関係を失うという大きな代償を余儀なくされてもきた。生産者と消費者との関係は分断され、表示や認証に頼るしかなくなってしまった。また広域流通に対応した大農機具や農薬・化学肥料を使用しての近代農業は、人間と田んぼの生きものなどとの関係を分断し、生きもの同士の関係である生態系の貧困化を招いてきた。生きものの循環、畜産を含めた複合経営も減少し、窒素過剰をきたしている。

 食料自給率向上のためには、先にあげた担い手の確保や農地の集積、水田のフル活用などについての取組強化はもちろんであるが、これに加えて、そのベースとして地産地消などによる距離・時間の短縮と同時に、関係性・循環の回復についての取組みを、地域単位で具体的に展開していく必要がある。農政の抜本的見直しが求められているといえる。

2.さとうきびの島経済への大きく多様な貢献

 こうした構図は基本的には砂糖にも当てはまるものと考えられる。砂糖の需要量は約220万トンであるのに対して、供給は輸入粗糖を原料にして製造された精製糖が約6割、国内産糖が約4割となっており、総合での食料自給率と並んでいる。そして砂糖の原料となる甘味資源作物生産地は、てん菜が北海道、さとうきびが沖縄県と鹿児島県南西諸島に集中しており、特産地化しているのが現状である。

 筆者は若い頃転勤で高松に赴任し、4年を過ごしたが、讃岐といえば自然に三白と言葉が続いて出てくるほどに讃岐三白はよく知られている。三白は塩と砂糖と綿花であり、江戸時代に商品性の高い特産物として生産が奨励されたのではないかと思われるが、今では三白の面影をたどることは容易でない。砂糖について言えば、かろうじて和三盆という抹茶などをいただくときのお菓子として珍重される砂糖を固めたお菓子があるぐらいのものである。筆者の個人的経験を振り返っても、母の実家が愛知県の豊橋にあり、昭和30年頃までは自給用として畑でさとうきびを生産していた。山を走り回ったり、川で魚を獲ったりした後で、畑にあるさとうきびを切り倒して、おやつにむしゃぶりついたことが思い起こされる。以前は貴重品として扱われながらも、少なからず全国各地で甘味資源作物は生産されてきたわけであるが、現在では輸入粗糖を原料とする精製糖にすっかり席巻されてしまった。

 その甘味資源作物の二本柱の一方であるさとうきびについて、筆者が認識を変えさせられるきっかけになったのが、早や5年ほど前の、種子島にある九州沖縄農業研究センターのさとうきび試験地の見学である。さとうきびは甘味資源として生産され、島の経済を支えていることは言うまでもないが、バガス(搾汁残渣)は製糖工場のエネルギー源として利用されるとともに、家畜の飼料、敷料としても使われ、循環の輪を描いていた。そしてさとうきびは台風や干ばつに強いばかりでなく、ほ場に残る有機物は豊富で、地力維持能力も高いという。まさに適地適作であり、多面的機能発揮も含めて島にとってはなくてはならない基幹作物であるさとうきびが、地域農業のみならず地域経済に対してきわめて大きくかつ多様な役割を果たしていた。こうした中でさとうきびの育種開発(当時)も、「新しい特性の発見に基づき、地域の生活と作物との新しい関係の樹立を図る」ことに重点が置かれ、収穫早期化による梅雨時のほ場の被覆、土砂流出の最小化、梢頭部供給期間の拡張による農畜複合体系の基盤強化、バガスのアルコール変換やパルプ化などの、さとうきびによる新たな循環利用システムの開発がテーマとされていたのであった。

3.欠かせない国民・消費者の理解

 今後、さとうきびを含めた甘味資源作物の生産を持続させていくためには、担い手の確保や農地の集積などが必要であるが、とにもかくにも経営として成り立たせていくことが前提となる。てん菜から製造されるてん菜糖で約2倍、さとうきびで製造される甘しゃ糖で約6倍もの内外価格差がある現状、経営支援なくして生産持続は困難であり、砂糖価格調整制度が不可欠とされるゆえんである。市場化・自由化・国際化の流れが執拗に続く中、経営支援の継続・強化を図っていくには、甘味資源作物生産の必要性についての国民、消費者のさらなる理解獲得が欠かせない。このためには甘味資源としての生産にとどまらず、多面的機能の発揮、循環の回復、バイオ資源としての活用などをいっそう推進し、甘味資源作物が地域農業・地域経済にとって必要不可欠なものであることを具体的な取組実践をつうじて訴えかけていくとともに、生産者と消費者との交流も図りながら、経営支援の必要性についての納得感を得ていくことが絶対に欠かせないものと考える。


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