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しょうゆ業界におけるめんつゆ・たれ類の動向等

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類情報ホームページ

[2008年10月]

【ユーザーから】
(財)日本醤油技術センター 技術第2部長 中台 忠信

1.はじめに

 しょうゆは古くから日本人の食生活に欠かせない調味料として愛用され、日本の食文化の中で重要な位置を占めてきた。今日では北米大陸を中心に世界十数カ国に輸出され、海外での生産数量も年々増加しているが、国内での消費量は減少傾向にある。

 この要因のひとつとしては、食の洋風化が考えられる。農林水産省の統計によれば、味噌や清酒の消費量が減少している一方で、マヨネーズ・ドレッシング類は増加しているが、しょうゆと同様の背景が存在していると考えられる。

 一方、女性の社会進出などに伴い、家事の軽減化が求められる中で、外食の日常化、テイクアウト惣菜の充実などにより、簡便性の高いしょうゆベース調味料類(しょうゆ加工品等)が普及し、その出荷量は増加してきている。

 本稿ではしょうゆやしょうゆ加工品等の動向を探るとともに、めんつゆ・たれ類など多くのしょうゆ加工品等に添加されている糖類の役割などについて述べることとする。

2.しょうゆ業界の現状

(1) 落ち込む国内消費
  しょうゆの全国出荷量は、1973年の129万キロリットルをピークに、その後徐々に減少し、2007年には92万キロリットルにまで落込んだ。同様に1人当たりのしょうゆ消費量は1973年には11.9リットルあったものが年々減少し、2006年には7.4リットルとなっている(図1)。


資料:農林水産省
注:1人当たりの消費量=年間出荷量/日本の総人口
図1 しょうゆの出荷数量および1人当たり消費量の推移


(2) しょうゆの消費は家庭用から業務・加工用へシフト
  日刊経済通信社によれば、業務・加工用しょうゆの出荷量の割合は、1975年の41.4%が2007年には66.1%と1.6倍に伸びている。一方で、家庭用しょうゆ(購入量/消費量で算出)の割合は、1972年の51.4%が2006年には35.1%(1972年比68%)に減少している(図2)。


資料:酒類食品統計月報
図2 用途別しょうゆ出荷量の割合


 次に、しょうゆの容器別出荷数量の比率を見ると、加工用タンクローリーの比率は、1985年の12.5%が2005年には24.2%と1.9倍に、業務用の10〜20リットルのプラスチック容器の比率は、1985年の4.5%が2005年には8.7%と1.9倍に、主として業務用と考えられる1.8リットルプラスチック(PET含む)容器の比率は、1985年の2.1%が2005年には12.2%と5.8倍にそれぞれ伸びている。これらしょうゆ容器の大型化は家庭用のしょうゆが業務・加工用にシフトしていることを示す(図3)。


資料:農林水産省、日本醤油協会、全国醤油工業協同組合連合会
図3 しょうゆの容器別出荷量比率の推移


 しょうゆの統計資料によれば、自家加工用しょうゆ(自社のしょうゆ加工品等の原料として使用されたしょうゆ)は2001年の7.0万キロリットルが2005年には8.5万キロリットルと1.2倍に伸びており、自社製品のつゆ類、たれ類、しょうゆ加工品として使用するケースが目立って増加している。

3.めんつゆ・たれ類の増加

(1) しょうゆ加工品等について
  しょうゆ加工品等には、しょうゆ加工品、めん類等用つゆ、たれ類があり、しょうゆ、食酢、食品メーカー各社で製造されている。これらのうち、めん類等つゆおよびたれ類にはほとんどの場合砂糖などの糖類が使われている。

 しょうゆ加工品とはしょうゆを原料とした液体調味料のうち、「○○しょうゆ」など商品名に「しょうゆ」のつくだししょうゆ、昆布しょうゆなどをいう。

 めん類等つゆとは、しょうゆに糖類および風味原料(かつおぶし、こんぶなど)から抽出した「だし」を加えたものまたはこれにみりん、食塩その他の調味料を加えたもので、めん類やてんぷらのつけ汁などに用いる味が薄く粘度が少ない液体をいう。

 たれ類とはしょうゆを原料とした味が濃く粘度が比較的高い「たれ」であり、「しょうゆ加工品」以外のもの(例:焼肉のたれ、照り焼のたれ、米菓のたれなど)をいう。

 家計調査報告によれば、1世帯当たりの年間支出金額において、しょうゆは1977年の4,139円が2006年には2,160円と52%に減少している。一方、つゆ・たれの支出金額は1987年の2,317円が2006年には3,688円と1.6倍に伸び、1994年に両者が逆転している(図4)。


資料:総務省統計局「家計調査報告」
図4 しょうゆおよびめんつゆ・たれ類の世帯当たり支出金額の推移


 これらが伸びている要因としては、外食の日常化、テイクアウト惣菜の充実など食の簡便化が進んだことなどが考えられる。

(2) 増加するめんつゆ・たれ類
  日刊経済通信社の調査によれば、しょうゆを原料とするめんつゆ類の生産量は汎用需要の拡大などから、1982年の4.9万キロリットルが2007年には20.6万キロリットルと4.2倍に伸びており、販売金額は942億円に達している。

 農林水産省資料によれば、しょうゆを原料とするたれ類の生産量は、1982年の4.0万キロリットルから1999年に16.7万キロリットルとピークに達し、2006年には若干減少したが15.7万キロリットルと1982年の3.9倍に伸びている。たれ類は焼肉のたれ、焼鳥のたれ、その他のたれである魚類のたれ、うなぎの蒲焼のたれなどに多様化している(図5)。


資料:酒類食品統計月報
図5 めんつゆ・たれ類などの生産量の推移


 日刊経済通信社の調査によれば、たれ類全体に占める業務・加工用の焼肉などのたれ類の比率は、1982年の17.4%が2001年に39.5%とピークに達し、その後若干減少し、2006年には37.9%(1982年の2.2倍)になっている。たれ類もしょうゆと同様に業務・加工用へシフトしている。

4.めんつゆ・たれ類への糖類の使用状況

(1) 糖類の効果
  人間の感じる味として生理学的には甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つの基本味があると言われているが、しょうゆにはこの5つの基本味が渾然一体となって存在している。このうちの甘味については、小麦のでん粉が醸造中変化したぶどう糖のほか、グリセリン(糖アルコール)やグリシン(アミノ酸)も含まれ、ほのかな甘味をかもし出している。めんつゆ・たれ類の場合には、目的に応じてさらに甘味を付与するために糖類が加えられる。現在の日本人は濃い塩味を避け、甘味を好む嗜好があると言われており、特に甘いしょうゆが好まれる九州地方においては、「甘いは旨い」とも言われている。

 また、たれ類に添加された糖類特に還元糖は加熱調理・加工により、醤油由来のアミノ酸とアミノカルボニル反応を起こし、食欲をそそる好ましい香味、すなわち加熱調理フレーバーが形成される。このことは蒲焼や焼鳥で日常体験している。

 さらに、めんつゆ・たれ類は食塩濃度が低いために、そのままでは水分活性(Aw)が高く、容器包装詰低酸性食品(pHが4.6を超え、かつ、Awが0.94を超える容器包装詰めの食品)としてボツリヌス菌対策のためにレトルト殺菌やチルド流通が必要であるが、糖類を添加することにより浸透圧が増加し、Awが0.94以下に低下して上記のボツリヌス菌対策の一環となる。

 その他甘味物質同士を混合すると旨味物質のように著しいものではないが、相乗効果が認められる。めんつゆ・たれ類に使用されるしょうゆには甘味を有するアミノ酸であるグリシンが含まれているので、砂糖やぶどう糖との相乗効果が期待できる。

(2) めんつゆ・たれ類に糖類を使用する場合の留意事項
  めんつゆ・たれ類においては旨味成分であるアミノ酸含量の多いしょうゆが使用されるので、ぶどう糖や果糖など還元性の糖類と併用して加熱すると着色・着香・こく・てりなどに関与するアミノカルボニル反応を起こす。従って、甘味、着色・着香のうちどちらの効果を優先するかにより、砂糖などの非還元性の糖類を使用するか還元性の糖類を使用するかを選択する必要がある。

 しょうゆと糖類を添加しためんつゆ・たれ類は特に高温で保存されると、しょうゆ由来のアミノ酸と糖類が反応してストレッカー分解(注)により炭酸ガスを発生し、PET容器を膨脹させる場合があるので注意が必要である。

 増粘剤としてたれ類にでん粉を使用する場合は、アミラーゼを含有する生しょうゆの混入やアミラーゼ生産性の微生物の混入は、でん粉の分解による粘度低下の原因となるため避ける必要がある。さらに、でん粉をたれ類に利用する時には、でん粉の老化による白濁や離水も問題となるので、老化が起こりにくいアミロペクチンの多い種類のでん粉を使用する必要がある。なお、もち種(ワキシー種)とうもろこしを原料としたワキシーコーンスターチは、粘性が強く透明度が高く老化しにくい。

 ソルビトールやマルチトールなどの糖アルコールを甘味料として使用する場合は、経口付加時、血糖値の上昇がなく、低カロリーであるので、糖尿病患者用食品の甘味料として適しているが、多量摂取した時や、特異体質の人は軟便あるいは下痢を起こす場合があるため、適量の添加が必要である。

(3) 糖類の使用動向
  農林水産省(一部業界推計)資料によれば、2006年におけるめん類等つゆの出荷量はストレートが16,420キロリットル、希釈用が97,642キロリットルである。

 めんつゆ・たれ類に含まれる炭水化物の含有量を示した資料は少ないが、五訂日本食品標準成分表によれば、めんつゆでは、ストレートの場合100グラム当たり8.7グラム、三倍濃厚のものでは20.0グラムとなっている。

 これらの含有量を上記の出荷量に単純に当てはめると、ストレートもので約1,400トン、希釈もので2万トン弱の糖類がめんつゆの成分として出荷されたことになる。

 たれ類の場合は、用途によって味付けに幅があるため、糖類の添加量も商品によって大きな差がある。たれ類の原料配合が開示されている市販品の100グラム当たりの糖類添加の平均値は、焼肉のたれが20.4グラム、焼鳥のたれが28.3グラム、その他たれが27.6グラムである。

 なお、農林水産省資料によれば、2005年におけるたれ類の出荷数量は焼肉のたれが51,568キロリットル、焼鳥のたれが8,271キロリットル、その他たれが94,842キロリットルとなっている。

 これらの含有量を上記の出荷量に単純に当てはめると、焼肉のたれで約1万トン、焼鳥のたれで約2,300トン、その他たれで約2万6千トンの糖類がたれ類の成分として出荷されたことになる。

5.めんつゆ・たれ類の今後の動向

 外食・中食・加工食品の多用を例として、消費者が食に簡便性を求める傾向は今後も続くものと思われる。さらに外食やテイクアウト食品業界において、ヘルシーな和食の人気は高まっている。このようなことから、めんつゆ・たれ類などしょうゆ加工品等の需要は今後も堅調に推移すると考えられる。

6.おわりに

 長年、しょうゆは日本人の食生活に密着してきたが、前述したように国内における消費量は減少し、しょうゆ加工品等であるつゆやたれにシフトしている。

 その一方で日本食ブームなどを受け、しょうゆは世界に広く普及してきている。財務省の資料によれば、しょうゆの輸出数量は1989年に約8,400キロリットルだったものが、2006年には約17,000キロリットルまで増加した。また、輸出先は1994年頃までは米国のシェアが大部分を占めていたが、日本のしょぅゆ製造メーカーがあいついで米国での現地生産を開始したため1995年以降の米国への輸出数量が急減し、他の国々がシェアが伸び、輸出先が多様化している(図6)。なかでも中国の伸びが顕著であるが、この理由としては経済発展に伴い日本のしょうゆを購入する富裕層が増えたことなどが考えられる。


資料:財務省
図6 輸出先別しょうゆ輸出数量の推移


 国内の消費量が伸び悩んでいる現状を考えると、今後世界の味覚に合わせたしょうゆおよびしょうゆ加工品等の開発が期待される。

(注)ストレッカー分解
  アミノカルボニル反応の副産物として起こる反応のこと。α―ジカルボニル化合物とα―アミノ酸が反応して、アルデヒドやピラジンを生成する反応。


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