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干ばつ・台風と南・北大東島 −2004年夏・秋−

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

今月の視点
[2005年5月]

【調査・報告〔生産/利用技術〕】

独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構
九州沖縄農業研究センター 作物機能開発部長
  杉本 明


1.はじめに   2.調査結果   3.今後の栽培技術の方向


1.はじめに
 琉球弧のさとうきびは干ばつと台風の中にある。例外はない。さとうきびの単位収量は沖縄県が鹿児島県より低く、中でも久米島、南大東島、北大東島などで低く、不安定である。
 今年は、台風の当たり年といわれるが、南・北大東島地域はその最前衛として深刻な事態を迎えた。春植や株出しさとうきびの生育初期から旺盛前期の重要な時期に当たる6月21日〜8月9日までの雨量が、わずか14ミリメートルと少なく、干ばつによる生育阻害も深刻であった。その上、8月29日に最大瞬間風速38.2メートル、9月5日には最大瞬間風速52.8メートル、10月19日にも最大瞬間風速38.8メートルと、3度にわたり台風に見舞われ、風折と共に、激しい潮風害を受けた。度重なる気象災害でさとうきびの生育は極めて悪く、予想収量は北大東島が10アール当たり2.262トン、南大東島で2.891トンと低い。
 このような状況下でも、島内の被害状況、被害後の生育状況は均一ではなく、生育には差異が大きいといわれている。その差異の意味するところ、要因を知り、台風や干ばつに抵抗力のあるさとうきび栽培技術確立の方向(当面の対策と将来の方向)を探るために、2004年10月2日から10月5日の行程で南・北大東島を踏査し、被害の概要と被害後の生育状況を調査した。両島には、沖縄県農業試験場、九州沖縄農業研究センターの試験圃場が設置され、変異の大きな集団を用いた系統の特性評価が行われている。農家圃場間の差異に加え、試験圃場での系統間の生育の差異を紹介し、安定多収生産への道を考えたい。


1.台風、干ばつに対するさとうきびの作物としての特徴と作型の特徴

 C4光合成をするさとうきびは養水分があればどんどん大きくなる。熱帯雨林気候のインドネシアの肥沃な圃場などでは4〜5mの高さにも達する。要水量(1グラムの乾物を生産するために必要な水の量)は数多い作物の中でも最も低いものの一つである。さとうきびの生育に水がいらないこと(灌水が不要なこと)を意味するのではなく、適切な水供給があれば、高温・強日射を特徴とする熱帯・亜熱帯の気象条件下で極多収になる事を意味する。根系が比較的豊かだといわれるが、生育の大敵が干ばつであること、生育旺盛期までの適切な水供給が多収の基本であることは体験的に知られており、干ばつが常発する南・北大東島では簡易な溜池と点滴灌漑施設の設置が盛んである。植え付け、初期生育の良否が栽培成否の鍵であり、種苗品質が重要であることも良く知られている。
 植え付け前後の干ばつによる出芽・株立ち不良、あるいは植え付け後の干ばつによる出芽後の枯死は、少収を引き起こす最初の問題である。出芽・株立ちは、節に付着している腋芽の生存、生長の開始と継続によって確保される。外部環境でいえば、このことは植え付け前後の適切な土壌養水分と温度の確保であり、適度な降雨、施肥、土壌の物理性・化学性の維持、雑草や害虫による生育阻害の排除によって確保される。作物に沿っていえば、このことは、健全な腋芽の付着した栄養に富む種苗の利用が肝要であることを示している。
 台風時の強風は生育の時期によっては茎の折損という大きな被害をもたらす。潮風害も大きく、さとうきびの生葉は枯れ上がり出葉による回復も遅い。台風通過後に雨が少ない場合には被害が顕著である。このように深刻な被害をもたらす一方、倒伏、葉の欠失・損傷を経て茎が再起し、新たな出葉を得て回復に至る場合も多い。さとうきびが南西諸島で継続的に栽培される理由の一つである。
 台風も干ばつも、被害の軽重は生育時期や品種特性、肥培管理、圃場の属性との関係が深い。夏植は比較的強く、春植や株出しでは弱いことが知られている。この違いは、台風や干ばつが発生する時の、さとうきびの根張り、茎の生育程度の差異によると推察される。干ばつ時、土壌中の養水の分布が同じであれば、根系が豊かであること、とりわけ土壌深部に根が届いていれば有利であるし、台風に際し、同じ強さの外力が茎に加わるのであれば、受ける点が多いほど、すなわち支点となる節が多いほど力は分散される。もちろん茎自体の折損抵抗力、葉鞘による茎の保護力の影響も大きいであろう。一方、台風通過後の緑葉の回復には品種間差異が大きい。数年前に久米島などを対象に普及が始められた「Ni17」は、既存の品種と比べ折損しにくく、潮風害などによる生葉の損傷からの回復が早いことが知られる。節間が短いために支点が多く外力が分散されること、梢頭部が太くて葉鞘の抱合度が比較的堅いこと、台風被害後の出葉に際して、茎内の栄養が豊富であること、茎の発生位置が深く根系が豊かなため、被害後の新たな出葉に際し養水分の吸収力が高いためと推察される。


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2.調査結果
(1) 生育の差異と圃場・肥培管理の特徴
 2004年10月2日〜10月5日の間、南大東島、北大東島に滞在し、被害程度の異なる圃場を踏査した。島内の位置、周辺の条件、植え付け時期と肥培管理の概要の異なる圃場を選定し、先に述べたさとうきびの作物としての特徴、作型の特徴、品種の特徴を視点として生育の差異を評価した。

写真1 島南側幕上圃場 春植
(写真1から8は南大東島 9から16は北大東島である。)
写真2 島南西側幕上圃場 春植
写真3 幕下圃場 4月植「Ni11」
写真4 幕上圃場 株出し「Ni9」
写真5 島西側幕上圃場 春植「F161」
写真6 幕上圃場 春植「F161」
写真7 幕下圃場 夏植「Ni15」写
 写真8 幕元圃場 株出し「F161」

 写真1は南大東島、島南側幕上の春植圃場である。点滴灌漑のチューブが張られているが2回の台風による潮風害の被害が大きい。画面奥の植生が枯れ上がっている様子からは潮風害の激しさがうかがわれる。写真2も同様で、島の南西の幕上の圃場である。灌水はされていない。写真1ほどの潮風害の跡はないが少収になること必至である。写真3は、幕下の圃場、4月植の「Ni11」である。欠株はなく本数は多い。雑草はなく肥培管理は良好であるが伸長が極不良で少収は必至である。写真4は幕上、やや傾斜地の「Ni9」、株出し1回目の圃場。大きな欠株が多く、生育はムラで多収は期待できない。一方、生育の良い圃場も随所に認められる。写真5は島西側の幕上、春植の「F161」である。点滴灌漑を実施しており、肥培管理も良好で、生育は旺盛である。台風被害の跡もほとんど認められず多収が期待される。写真6は幕上、「F161」の春植である。被害の大きい写真2と道路を挟んだ反対側に位置する圃場で気象条件はほぼ同様と思われるが、灌水で初期生育が促進されており、生育良好で茎数も多い。台風被害の痕跡も見られず多収が期待される。写真7は幕下、「Ni15」の夏植である。生育は極めて良好、生葉も多い。台風の被害は見られず多収が期待できる。写真8は環境に恵まれた幕元、「F161」の株出しである。幕元である上に点滴灌漑が施され、茎の伸びが良く、生葉も良好で多収が期待される。このように、南大東島における良好な生育は、適切な灌水、夏植、圃場の位置が幕元であることなどの条件で導かれ、少収は、遅い春植、無灌水、圃場が幕上にあることなどの条件と結びついている。これらの条件が重複すると、多収圃場はより多収に、少収圃場はより少収になる事が分かる。すなわち、厳しい自然条件下における収量の確保には、干ばつ・台風の影響を回避することと抵抗力の獲得、先に記した、不良気象発生時における作物の強健性の確保、そのためには、出芽・分げつ・初期生育の確保が重要であることが分かる。

写真9 幕上圃場 4月植
「F161」と調査協力をいただいた方々
写真10 幕上圃場 3月植写
写真11 幕下圃場 春植
写真12 幕下圃場 春植株出し

 写真9は、北大東島の被害激甚圃場である。幕上、F161の4月植。植え付けが遅れた状況下で干ばつに遭い、さらに台風による潮風害を受け、ほぼ全面枯死状況である。写真10は幕上3月植の圃場である。写真9と比べると生育は優るが収量的に見るべきものはない。極少収が必至である。写真11は幕下春植圃場である。干ばつの影響で伸長は極不良であり、潮風害による生葉の枯死も大きく極少収になることが容易に見て取れる。写真12は春植後の株出しである。枯死茎が多く少収である。他方、気象被害の激しい北大東島でも比較的生育の優れる圃場が見られる。写真13は幕上の春植株出しであるが、点滴灌漑が施された圃場であり、生葉が比較的多い。6トン程度の10アール当たり収量が見込まれる。写真14は2月植の「F161」である。ビュレットプランタにより比較的深植されている。写真15は幕下、10月植の「NiF8」である。点滴灌漑による灌水も施されており伸長良好で生葉も多い。多収が期待される。写真16は8月植の「Ni15」。分げつはやや少ないが伸長は良く生葉も良好で多い。これも多収が期待される。

写真13 幕上圃場 春植株出し
写真14 幕上圃場 2月植「F161」
写真15 幕下圃場 10月植「NiF8」
写真16 幕下圃場 8月植「Ni15」

 北大東島でも南大東島と同様、良好な生育は、適切な灌水、夏植あるいは早い春植によってもたらされ、甚大な被害は、遅い植え付け、無灌水、圃場が幕上にあることと結びついている。
 第1表には平成16/17さとうきび年期における南大東島の株出し圃場における収量と圃場の概要を示した。幕上で灌水できなかった圃場が極少収であり、点滴灌漑や幕元のために水供給が比較的良かった圃場、収穫後の管理の早い圃場などは極少収を免れていた。第2表には北大東島幕上における株出し圃場の収量および幕上あるいは幕下の夏植圃場の収量を示した。南大東島と同様、同じ作型でも極少収の圃場とそれを免れた圃場があることが分かる。また、夏植の圃場には多収となった圃場が認められる。夏植の多収は南大東島でも認められる。極少収圃場、極少収を免れた圃場、多収圃場の属性には共通点があるため、その条件を解明して栽培技術(品種選択および肥培管理)に取り入れることが重要である。
 遅い春植、大きな干ばつ被害、それに潮風害が加わる場合に壊滅的な被害となり、比較的早い植え付け、干ばつ被害の回避または軽減によって中程度の被害となる。夏植、灌漑の実施により干ばつ被害を回避し得た場合には深刻な潮風害が回避されている。同様な肥培管理の場合、幕上で被害が甚大であり、幕下では変異が比較的大きく、幕元では被害が少なく生育が良い。いずれもさとうきびに対するインプットという観点から見れば同じ事である。以上のことから、
(1) 干ばつ発生時に水分供給が可能であること
  すなわち灌水を実施するか、保水性の高い土壌で栽培するか、あるいは、優れた根系によって大きな土壌圏から吸水すること
(2) 台風時に茎の一点に当たる風の力が弱いこと
  すなわち防風林などによって風の力を減衰させるか、あるいはたくさんの支点で風を受けることによって一点に当たる風の力を弱めること
(3) 潮風害発生後の生育環境を改良すること
  すなわち、濃密な肥培管理で養水分を供給し出葉を促すか、あるいは太い茎の貯蔵養分で出葉を促進し、強い根系で養水分を供給するかということ
である。これらは多収獲得の理論と矛盾しない。

第1表 南大東島の株出圃場で極少収であった圃場と極少収を免れた圃場の特性


第2表 北大東島の株出圃場(幕上)と夏植圃場の10アール当たり収量


(2) 厳しい環境下で発現される品種・系統の特性の差異

 沖縄県農業試験場、九州沖縄農業研究センターでは相互に協力し、南大東島、北大東島で、厳しい自然環境条件に適応性の高いさとうきび品種の育成に向けた圃場試験を実施している。沖縄農試は当面の製糖用品種育成を目的に、製糖用実用品種・系統間の交配で作出した系統を供試し、九州沖縄農研では将来を見据え、野生種などを用いた種属間交雑系統を供試して特性を評価している。試験の目的から、どの試験も春植とし、出芽・株立ち以降の肥培管理は無灌水を原則としている。

第3表 南大東島における有望系統の無灌水での栽培試験の成績


 第3表に沖縄県農業試験場が行っている品種選定試験の結果を示した。2回株出しにおいて標準品種が1茎重346g、茎数698本/a、原料茎重242kg/a、可製糖率11.0%と少収であるのに対し、RY93-34、RK92-20は原料茎重がそれぞれ497kg/a、547kg/aと2倍以上の多収であった。また干ばつ害の厳しい幕上の圃場における春植え試験でも、標準品種の原料茎重150kg/aに対し、RK96-6049は337kg/aと2倍以上の成績を示した。第4表には九州沖縄農業研究センターが南大東島で実施している、NiF8の根系改良によって不良環境適応性の高糖多収性品種を育成するための試験の結果を示した。NiF8は仮茎長が114cm、株当たり茎数が1.3本、圃場ブリックスが14.3%であった。供試系統はいずれも戻し交雑世代であるが、その中には仮茎長が長く、株当たり茎数も多いものが多数認められた。圃場ブリックスはNiF8と同程度か低い系統が多かった。南大東島の幕下圃場ではあるが、出芽・株立ち以降は無灌水で栽培した結果であり、同島の厳しい干ばつ条件下でも多収性を発現する製糖用系統が存在することを示している。第5表には厳しい気象条件下での安定多収性発現に必要な品種特性解明のために実施している試験の結果を示した。植え付けは3月上旬、出芽・株立ち以降は無灌水栽培である。NCo310、Ni9は、圃場ブリックスは平均で20.4%、21.4%と高かったが、仮茎長が152cm、168cmと短く、原料茎重は248kg/a、250kg/aと軽かった。供試系統は、圃場ブリックスは13.9〜17.1%と低かったが、仮茎長は195cm〜233cmと長く、原料茎重も312〜428kg/aと明らかに優れていた。エリアンサス属植物のIJ76-349は、仮茎長が248cm、原料茎重は462kg/aと多かった。これらの系統はいずれも株出しからその顕著な多収性を発現するのが特徴であり、株出し栽培における既存品種との差異はより大きいと予想される。
 これらの結果は、既存の製糖用品種の生育が不良な条件下でも、優れた発芽・萌芽・初期生育、優れた根系によって良好な生育を示すさとうきび系統が存在すること、そのような特性に着目して選定した品種の導入によって比較的安定的に砂糖生産ができる可能性が高いことを示している。

第4表 製糖用品種として選抜したBC1系統の特性


第5表 大東島における安定多収に必要な特性の探索に供試した系統の成績

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3.今後の栽培技術の方向
(1) 自然災害を最小化するための肥培管理と全体的なシステムの構築

 南大東島と北大東島は類似の気象条件を持つ、大きな違いは幕上(あるいは幕外)といわれる土層が浅く干ばつによる生育阻害や潮風害を受けやすい地域と、幕下(あるいは幕内)と呼ばれる比較的地力の豊かな地域の面積比である。南大東島は幕上が少なく、北大東島では幕上が多く総体的に南大東島より厳しい条件下にある。幕元とは幕上と幕下の境の地帯を指し、幕上より一段低いことから、防風と水供給の両方に恵まれた地帯である。その面積比は両島とも類似である。株出しを阻害する重要害虫ハリガネムシの存否は対照的であり、南大東島では被害が大きいが北大東島にはいない。ただし、南大東島においても交信攪乱による防除で密度は急減しており、近い将来の無被害化が期待される。

(1) 肥培管理のあり方
 幕上で十分な灌水ができない圃場は夏植を基本とすべきである。干ばつ終了直後の植え付けを基本に、夏植・12月収穫を基本とする作型の構築を急ぐ必要があろう。11月への収穫早期化も志向すべきである。幕下は早めの春植、早めの冬収穫が必要である。1〜3月に植えて1〜3月に株出し管理を終了する肥培管理の確立が重要である。灌水の不可能な圃場を先に、灌水のできる圃場は比較的猶予を持たせることができる。幕元は比較的遅い植え付けや株出し管理が許されるところであるが、早い実施がより良い結果につながることはいうまでもない。

第6表 久米島におけるNi17の収穫調査成績と風折茎率


(2) 品種の選定
 第6表には台風による折損と潮風害に悩む久米島におけるNi17の成績を示した。Ni17は風折抵抗性が高く潮風害を受けた後の生葉の回復が早いのが特徴である。台風・干ばつに見舞われた本年も他の品種と比べて優れた成績を残している。台風による折損と潮風害の激しい南北大東島の品種選定にあたり注目に値する成績である。黒穂病に弱いのが欠点であるため、耐病性品種との均衡のとれた栽培で病菌密度を低く保つことが栽培の要点である。
 幕上の圃場では夏植株出しの可能な品種の選定を最優先すべきである。夏植は比較的日程的な余裕があることから、植え付け後の管理も春植よりは実行が容易である。根系の優れるF172、Ni6、Ni11、Ni16、Ni17、NiTn19、RK94-4035など、耐病性の異なる複数の品種の併用を前提に栽培計画を立てることが必要である。幕下の圃場は、初期生育の優れる株出し多収品種の利用が必要である。灌水施設のあるところにはNiF8、Ni15、Ni17、NiTn19、灌水ができず比較的台風被害の少ないところでは、Ni16やKF92T-519などの利用が検討に値しよう。幕元は比較的環境が恵まれているので、耐病性、高糖性、春植による多回株出性を優先して品種を普及すべきであろう。NiF8、F161、Ni15などの栽培が有効であろう。

(2) 新たな技術開発の方向

(1) 干ばつ・台風に比較的強い作型の開発
 夏植は干ばつ・台風に比較的抵抗力があることが経験的に知られ、本年の調査でもその傾向が確認された。しかし、夏植は収穫後の萌芽が不良で株出し収量が低くなりがちなのが欠点である。南・北大東島は株出し栽培を中心としているためこのままでは夏植の普及は困難である。夏植え型栽培の普及には以下2点の改良が必要である。まず、夏植・冬収穫における萌芽の改良と、冬収穫後の株出し栽培における干ばつ・台風に対する抵抗性の強化である。その意味からはNi17、RK94-4035の夏植株出し体系での生産力評価が必要である。もう一つ、夏植え型栽培の利用には「夏植え型1年栽培」(夏・秋植/秋収穫)の検討も重要である。この栽培型の場合には栽培開始が常に夏または秋であり、新植においても株出しにおいても夏植の利点が発揮される可能性が高い。さらに、萌芽期が高温期であるため、萌芽の向上を通した株出し収量の改善が期待される。ただし、この作型については従来の冬収穫用品種では糖度が低く対応できないため、夏・秋に高糖度に達する品種の開発が必要である。このような特性を具える系統はすでに開発され、品種登録も遠くはない。南・北大東島への導入を視野に入れた試験栽培の実施が急がれよう。
(2) 干ばつ・台風への抵抗性の高い品種の育成
 ハーベスタの稼働率向上による原料生産コストの低減、労働の分散による重労働感の緩和などには収穫期間や植え付け期間の拡張が必要である。そのためには、先述した夏植株出し体系、夏植え型1年栽培のほかに、現在の栽培型の強化が必要であり、春植・株出し体系においても干ばつ・台風に抵抗力の高い施設整備、肥培管理、品種特性の改良が必要である。施設整備の要点は、溜池・導水管の整備と防風林の整備であり、肥培管理技術開発の要点は節水型栽培技術と灌水技術、早期・適期管理を可能にするための省力的機械化の達成である。根系が優れ、初期生育が早く風折が発生しにくいさとうきびの開発も重要事項である。幸い、沖縄県下では、従来型点滴灌漑を改良した土中点滴灌漑技術、作溝・植え付け・施肥一環作業型のプランター、プラソイラや堆肥の条まき散布機などが開発され、南北大東島では溜池と点滴灌水の施設拡充、防風林の植栽が進められている。第3、4表に示したように、品種の選定も進んでいる。干ばつ・台風に抵抗性の高いさとうきび、節水型栽培技術、灌水・防風の基盤整備が揃って進められており、安定栽培への道筋はつけられたといえよう。


(3) 南・北大東島における栽培改善の基本


 収量増加の要素は茎数の増加、あるいは1茎重の増加である。南北大東島は全量をハーベスタ収穫で行っており、畦幅は県下でも最も広い。土壌は踏圧によって硬化しがちな上に、肥沃度も保水力も低い。干ばつが常発するため、茎の伸びは悪く1茎重は軽い。両島の培土は多回株出しを意識するせいか比較的低く、そのためもあって、株当たり茎数は他の地域と比べて多く、畦方向には切れ目無く立毛が覆っている。畦方向への茎の増加はこれ以上望めないため、単位収量の向上には畦間方向への茎数増加が必要である。そのためには畦間の短縮が不可欠であるが、大型ハーベスタ収穫のため現状では不可能である。大型ハーベスタを用いる理由は、広い圃場と短い収穫期間である。すなわち、収穫期間を拡張できなければハーベスタの小型化は難しいこと、単位収量向上の鍵は収穫期間拡張の成否が握っているということができる。収穫期間拡張に伴うハーベスタの小型化には、主目的である畦間方向での茎数増加に加え、土壌踏圧軽減による物理性悪化の抑制を通した1茎重の増加も期待される。当面の対策としての幕上における夏植え型株出し栽培、今後の方向としての夏植え型1年栽培導入の検討はこのことの促進も意味している。さとうきびを取り巻く状況は厳しさを増している、基盤整備の充実と共に、さとうきびの特性を最大に生かした栽培と利用法による生産の安定と向上、その道を進むことも近道の一つである。

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