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さとうきび生産法人における機械利用と経営改善

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

今月の視点
[2006年7月]

【調査・報告〔生産/利用技術〕】
琉球大学農学部生物生産学科
  教授 上野 正実

1.はじめに
2.生産法人の経営の現状
3.単収低迷の原因と対策に関する検討
4.機械利用と経営改善対策
5.むすび−自ら考え実行する組織の育成−


1.はじめに

 さとうきび農業は相変わらず厳しい状況に置かれている。沖縄県における平成16/17年期の生産実績は、生産量680,100トン、収穫面積13,600ha、単収5t/10aと過去最低の記録に止まっている。平成初期の10年間に比べると、減産傾向はやや緩やかになったものの、完全に止まったわけではない。最近の横ばい状態は関係者の懸命の努力と経済情勢によるところが大きい。横ばい傾向から次に動き出すとき、このままでは上昇より下降に転じる可能性が高い。このため、国・県・地域の関係者が一体になって生産対策に取り組む「さとうきび増産プロジェクト」がスタートしたばかりである。
 島しょ地域におけるさとうきびの重要性はさまざまなところで強調され、多種多様な増産対策が実施されている。それでも低下傾向が止まらないのはなぜだろうか。答えは単純ではなく、構造的な問題を含んでいる。このため、いずれの対策も一朝一夕で効果が現れるものにはなりえない。中でも、重要な要因のひとつは担い手の減少と生産力の脆弱化であると言っても過言ではない。生産農家の老齢化が進行する中にあって、その傾向は顕著になりつつある。
 このような状況を打破すべく、沖縄県は担い手対策の重要な柱として、「借地型大規模さとうきび生産法人」の育成を打ち出した。これに沿って平成12年度あたりから各地で生産法人が相次いで設立された。これは、シンポジウムなどでも大きな話題としてたびたび取り上げられた。その後、5年ほど経過したが、期待していたほどの成果は得られず、試行錯誤の経営が続いている。どちらかと言えば苦戦しているところが少なくない。
 このため、生産法人の効果を疑問視する声も聞かれるようになった。新しいシステムが安定して定着するにはそれなりの時間が必要である。したがって、拙速な評価は控えなければならないが、不振があまりにも長引くと内部崩壊する危険性も無視できない。生産法人は、依然として担い手対策ひいては生産対策の大きな柱である。どこに問題があって、どう解決すればいいのか、徹底的に分析する必要がある。
 最近、生産法人の将来に大きな影響をもたらす新しい動きがでてきた。平成19年産からスタートする新しい「経営安定対策」である。これは、さとうきび農業および糖業にとってかつてない大きな変革である。この制度がどのような影響をもたらすのか、予断を許さないが、できるだけ支障なく適応するには、相当の努力が必要とされている。舵取りを誤ると深刻な事態に陥りかねない。組織化や規模の確保が要求されるこの制度の中で、生産法人はその条件を満たしており、その意味では有利な立場に置かれている。
 このように、生産法人をめぐる動きが活発になっているが、いずれにしても個々の法人の経営安定化が必要である。生産法人は大規模経営を前提としているので、機械化営農体系が生産活動の基本である。したがって、経営の安定化と機械化には密接な関係があり、機械を上手に使いこなすことが重要である。本文では、これに関連して生産法人の現状分析を行い、機械利用による経営改善策を検討したい。

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2.生産法人の経営の現状

1.生産法人の必要性
 本論に入る前に生産法人の意義あるいは必要性について簡単に述べておく。さとうきびは、植物体の大きな土地利用型作物であり、「スケールメリット」が効果を発揮する。砂糖の単価が高ければ、小規模経営でも成り立つ可能性はあるが、一般には厳しい。わが国のさとうきび農業は全般に零細で、価格支持政策と農業の特殊事情などによって何とか命脈を保ってきた。これらに関連して、個別農家の自己努力では対応できる範囲が非常に限られているのが特徴である。
 例えば、規模拡大を希望しても、農地の取得はもとより借地についても難しい状況があった。機械化の推進に関しては、大型機械は高価すぎて個別農家では手がでない。農作業の受委託を行うには煩雑な調整が求められ、これを遂行できる組織が必要である。これに対して、マンゴーのような熱帯果樹や花きなどは、個別農家が自己裁量できる範囲が大きく、また、その努力も目に見える形で現れる。このため、経営および栽培技術の卓越した農家が育ちやすく、新しい技術や品種などを積極的に取り入れている。高収益が上げられる反面、リスクも高いので、優れた経営感覚を身につけている農家が多い。さとうきびはこれから最も遠く、窮状を打破する原動力に欠けている。
 このようなさとうきび特有の問題を解決するには、それに適応できる新しいシステムが求められている。特に、規模拡大は不可欠の要素であり、新しい経営安定対策もその方向で動いている。大規模経営農家あるいは大規模経営組織が育てば、地域の牽引車として周囲に及ぼす影響も少なくない。小規模経営体中心の現状では、生産力の低下による減産が続き、共倒れとなる危険が大きいが、規模拡大による生産基盤の強化はその抑止を可能とする。規模拡大の中で最も実現しやすい形態として考案されたのが「借地型大規模農業生産法人」である。借地によって規模拡大を行い、法人組織化によって合理的な経営や新規参入が可能になると考えられた。


2.苦戦する生産法人
(1) 問題の所在
 このように、大きな期待をもって誕生したのが、さとうきび農業生産法人である。行政の強力な支援を受けて平成12年度に一挙に15法人が誕生した。平成17年度末で42法人が生産活動を行っている。しかしながら、大半の法人は経営が順調にいっているとは言いがたく、むしろ経営難の状態に陥っている。一般の法人でも経営難もしくは倒産などは自然な現象である。このため、とりたてて言及するのはどうかとも思われるが、さとうきび生産法人には問題が多い。期待が大きかっただけに周囲への影響も大きく、さらに、今後の方向性にも響きかねない問題を含んでいる。このため、沖縄県では、研究者や企業診断士の協力を仰いで、問題点の抽出と対策の検討を行っている。
 沖縄県糖業振興協会によれば、経営診断で明らかになった問題点および対策は次のように要約されている(生産法人11社に対する企業診断結果の一部を整理)。
 (1)組織目的および経営目標の明確化:会社が組織として成長・発展するために必要な成立目的すなわち自社が何のために設立され、何をしなければならないのかを明確にする。これによって組織体制のあり方もはっきりする。明確な目標の設定とその達成に必要な計画の策定、実践、見直しを着実に実施する。
 (2)管理作業の徹底:各種作業が適切に実行されているか、原点に帰り基本に忠実に実践する。そのために一筆毎に作業計画を立て着実に実践する。
 (3)自社生産の強化:生産法人の基本は生産であり受託作業に力を入れるのは本末転倒である。管理作業の徹底と併せて自社生産活動を強化して利益率の向上を図る。

(2) 作業受託と経営
 これらのうち、(2)に関しては機械化体系との関連で後述したい。(1)は本論の問題外であるが、(3)についてはハーベスタなどによる受託作業に関連するので若干、触れておきたい。
 前述のように、沖縄県では現在、42社がさとうきびの生産に従事している。各社の設立年度は平成12年度に15社、平成12〜15年度16社、それ以降5社となっている。経営の特徴によってさまざまな類型化が可能であるが、収穫作業の受託に着目すれば次のように分類できる(沖縄県農林水産部資料)。
 (a) 自社生産分だけを収穫(受託なし)   (11社)
 (b) 自社生産の収穫が受託より多い     (2社)
 (c) 受託収穫が自社生産より多い      (20社)
 (d) 受託収穫のみ(自社生産なし)     (6社)
(3社はデータなし)
 このように収穫作業の受託を行っている法人は28社を占め、その中でも、受託量が自社生産を上回るケースが圧倒的に多い。

 この理由として考えられるのは次の通りである。
 (1)借地をベースとした法人であるが、農地の集積量が少なく計画通りの収入が上がらないので受託によって補っている。中には受託のみを実施しているところもある。
 (2)収穫作業の受託は、作業終了後、短時間内に入金される。さらに、受託料も大きく収入を上げやすい。
 (3)各社ともハーベスタを所有しており、集積農地量との関係で余力がある。固定費の支出があるので、それを補う意味でも受託収入が必要である。
 (4)さとうきびの販売収入よりも受託収入をあげる方が簡単である。
 中には、受託のために設立したのではないかと思われる会社もある。沖縄県では、南北大東島など以外は、収穫作業の受託料はトン当たり5,000円前後と相対的に高いので、収穫量を確保できればこれだけでかなりの収益をあげることができる。生産法人本来の役割を重視すれば、自社生産を中心にした経営にすべきであろうが、経営安定化の次善の策として止むを得ない面もある。受託によって収益を確保しつつ、自社生産に重心をシフトしていくことが望まれる。
 沖縄本島南部では、最近、さとうきび収穫受託班が組織(JAおきなわ南部地区営農センター)され、翔南製糖工場内に設置された集中脱葉施設との組み合わせによって大きな効果をあげている。しかしながら、受託を巡って生産法人と競合も発生しているようである。このような競合は農業機械銀行やコントラクタ(請負業者)との間にも発生する可能性がある。競合をできるだけ避けるような調整機関が必要である。さらに、農地の集積を促進して自社生産の比率をできるだけ高めることが求められる。受託が増えると自社生産における管理作業が不十分になる傾向がある。これでは、診断結果にもあるように何のための生産法人かがあいまいになってしまう。

3.単収低迷の原因と対策に関する検討

1.低迷する単収
 生産法人に限らず、経営の安定化の方法は明確である。すなわち、生産収益と受託収益などをできる限り引きあげ、生産コストおよび固定費を極力引き下げることである。生産法人は本来、生産に重きをおく組織であるので、生産収益をあげる必要がある。これは生産量と品質によって決まることは周知の通りである。生産量は、面積と単収によって構成される。面積の影響を排除した単収は、ほ場の生産能力や生産者の栽培技術を評価する上で重要な指標である。また、面積が増えると単収の差は小さくても生産量に大きな差が出る。1トンの価格はほぼ一定であるのでこれは売り上げに直接、影響する。改めて言うまでもないが、単収向上はさとうきび経営の基本中の基本である。したがって、大半の生産法人の単収が極めて低い値に止まっている点が問題である。沖縄県全体の平均単収と生産法人の単収の比較を図1に示す。
 いずれにおいても全体の平均を大きく下回っている。これでは採算のとれる収益をあげるのは難しい。すなわち、単収をあげることなしに経営の好転はありえない。

図1 生産法人と全体の平均単収の比較
(法人平均は全体平均を下回っている)


2.単収低迷と管理作業の関係
 ほとんどの生産法人において単収が低迷しているのは、偶然あるいは個別法人の技術の問題とは考えにくい。共通する問題があるのだろうか。それがわかれば効果的な対策が可能になる。

(1) 経営規模
 そのひとつとして規模拡大によって管理が不十分になることが考えられる。管理作業の量は面積に応じて増加する。これに対して労働可能な時間は決まっている。さとうきびの栽培は複数の作業より構成されている。作業を実施するのに適した期間は限定されており、中にはかなり短い作業もある。さらに、天候による制限も加わるので、実際に作業可能な時間は意外に短い。このため規模拡大すれば、管理作業が不十分になって単収低下につながる傾向があると言われている。これを確かめるために、南大東島において調査したほ場面積と単収の関係を図2に模式的に示す。


 同図に示すように、面積(規模)が小さいと単収は広範囲に分布し、面積の増加に伴って次第に一定値に収束する。地域やほ場数によって多少のバリエーションはあるが、ほぼ同じような分布形状を示す。農家の経営規模と単収の関係も同様である。これより、管理の不徹底の問題は一概に言える傾向ではなさそうである。ただし、図2の上側のラインだけをみるとこの問題を常にはらんでいることも事実である。
 規模拡大によって作業時間が制限される問題を克服するには、作業人員を増やすか、機械の利用が求められる。前者は現実的でないので、後者を考慮することになる。活動中の生産法人は、さとうきび生産に必要なほぼすべての機械を装備している。これらは高性能機であり、単純には作業時間の制限をはるかに凌駕する能力をもっている。したがって、機械をいかにうまく使いこなすかが中心的な課題となる。

(2) 農地の分散
 借地は借り手側の希望通りにはいかないのが普通である。生産法人の健全経営に必要な面積の確保が最大の課題であるが、現状ではそれすら満足すべき水準には達していない。それ以上に問題になっているのはほ場の分散である。現状では貸してくれるほ場であればあまり条件を選べないのが実状である。このため、勢いほ場が広範囲に散布してしまう傾向がある。それも数多くの小区画ほ場を広い範囲にかかえている法人も少なくない。これは面積以上に作業所要時間に影響を及ぼす。
 簡単のために作業をひとつに限定すると、一筆ほ場の所要時間は、ほ場作業時間、事務所―ほ場間もしくはほ場―ほ場間の移動時間、および、その他の時間から構成される。
 一作業所要時間=ほ場作業時間+移動時間+その他の時間
 この中で、ほ場作業時間は、実際に作業を行う時間(実作業時間)と旋回や回行に必要な時間などで構成される。実作業時間は、作業速度以外に面積、畦幅、ほ場作業効率などによって定まる。ほ場作業効率は一定ではなく、主として畦長に影響され、畦の長い方がその値は高い。すなわち効率的な作業ができる。移動時間は移動距離と移動速度によって決まる。トラクタなどは自走するので移動時間はかなり長くなる。その他の時間には作業以外のさまざまな内容の時間が含まれる。
 単純な一筆総作業所要時間はすべての作業について積算した時間である。
 一筆総作業所要時間=合計(一作業所要時間)
 この時間を短縮するために、複数の作業を一工程でこなす作業体系がとられる。
 法人が必要とする総作業所要時間は、一筆総作業所要時間をすべてのほ場について合計すればよい。
 総作業所要時間=合計(個別ほ場の作業所要時間)
 この式よりわかるように、ほ場数が多いほど、さらに移動距離が長いほどこの値は大きくなる。生産法人の人員と労働時間、機械装備、天候などによって決まる総作業可能時間より総作業所要時間は短くなければならない。
 総作業所要時間<総作業可能時間
 前述のように、個別作業の適期にはさらに厳しい制限が加わるので、より詳細な分析が必要であるが、少なくともこの関係を満足しているかどうかのチェックは不可欠である。
 ほ場分散の問題をもう少し議論してみたい。上の議論で、作業所要時間に占める移動時間もしくは移動距離の影響は大きいことがわかった。しかしながら、作業所要時間はすべての移動距離(合計値)に単純に比例して長くなるわけではない。移動距離が伸びればそれに関連してさまざまな要素が加わり、作業時間は長くなる。さらに、ほ場数が多く、移動距離が長ければ、作業を阻害する要因が増えるとともに、心理的にもおっくうがる気持ちもでてくる。これらを考慮すると、作業所要時間は移動距離の二乗に比例する量に関連すると仮定した方がよさそうである。すなわち、
 作業所要時間=f{c×(事務所からの移動距離)2}
 c:比例係数
 式中の{ }内の量は、物理学で物体の回転運動に対する慣性の程度を示す「慣性モーメント」、あるいは、統計学で平均値のまわりのデータの分布を示す「分散」に相当する量である。慣性モーメントは回転軸に対する質量の分布の度合いを表す量である(図3参照)。これによってより実状に合った作業所要時間を評価できるものと考える。したがって、作業所要時間を増加させて、管理作業の不徹底の要因となりうるのは、規模よりもほ場分散の影響が大きいと言える。これは、間接的に単収の低下を招く原因となる。さらに、移動時間が増えると当然ながら燃料代の増加を招き、二重に損失を被ることになる。個別農家でもほ場分散の問題は起こりうるが、ほ場整備や換地などである程度解消できる。借地を中心とする生産法人ではほ場分散はつきものであり、その影響はかなり大きいと言える。あまりにも条件の悪いほ場は、事情が許す限り整理すべきであろう。

(3) 管理作業の精度および時期の問題
 さとうきび栽培における各管理作業は、単に形通りに実施するだけでは十分でない。上述のように、各作業にはさとうきびの生育状態や天候などに応じたそれぞれの適期があり、これを外すと効果は上がらない。逆に生育を阻害する要因にもなりかねない。これに加えて、作業の質すなわち精度の確保も重要な課題である。例えば、深耕の徹底、植付け精度あるいは株密度の確保、培土の状態などがあげられる。これらは「さとうきび栽培指針」などに述べられているのでここでは省略する。また、ハーベスタによる収穫作業では、作業速度は収穫ロスやトラッシュ率の増加に関連する要因である。受託作業が増えると、収穫面積を稼ぐために作業速度を早くする傾向があり、作業精度の低下を招いている例も少なくない。なお、機械は均一な作業を得意とするので、上手に使えば必要な作業精度を確保することが可能である。


3.ほ場情報および生育情報把握の不徹底
 栽培管理においてもっとも重要な役割を果たすのは「情報」である。すなわち、生育状態や病虫害の状態などを正確に把握する必要がある。培土や潅水など「作業」の重要性は、誰でも認識しているが、正確な情報把握がより重要であるという事実は意外に知られていない。情報は作業の内容、質、方法などを決める大元である。管理作業の多くは長年の経験に裏づけられており、ほぼスケジュール通りに行えば大きな間違いは生じない。このため、作業の重要性だけが強調され、情報収集すなわち観察はほとんど無視されている。作業はあくまでも栽培や経営目標に対する手段であり、適切な作業を導くのは情報であることをしっかりと認識すべきであろう。情報の重要性は、栽培面だけでなく経営全般に係る事項であり、収支や労務に関する情報の収集と分析が求められる。

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4.機械利用と経営改善対策

最近、打ち出された新しい「経営安定対策」に対応するために、関係機関や団体は体制づくりに追われている。生産法人はもともと大規模経営を前提としており、「直接支払い制度」で要求される条件を満たしている。このことから制度的には法人に有利な時代が到来する。ただし、これはあくまでも制度の問題であり、実質的な安定化対策を図るには、これまでと同様に経営努力を確実に実行することが重要である。以下に、通常の経営診断ではあまりとりあげられない機械利用に関する項目のいくつかについて簡単に述べてみたい。


1.機械化体系の確立と技術の向上
 大規模化を前提とする生産法人の経営では、機械化体系の確立が重要課題のひとつである。規模拡大に伴って増大する作業量を適切にこなすには、機械利用は不可欠である。栽培に必要な機械装備はほぼ整備しており、後は使い方の問題とみることができる。一方、機械装備が充実すればするほど経済的な負担は大きくなり、いわゆる機械貧乏の状態に陥りやすい。機械利用コストの削減や適正化を図るには、計画的な購入と利用が必要になる。その上で、単収および品質を一定水準以上に維持する機械作業技術の確立が求められる。
 機械利用の目的は、重労働からの開放や労働生産性の向上はもちろんのこと、土地生産性の向上も含まれている。増収と機械化は相容れないとの認識が流布されているが、決してそうではないことを強調しておきたい。土地生産性の向上を実現するには、まだ多くの課題が残されている。機械を上手に使いこなして増収も図れる栽培技術を検討していく必要がある。
 例えば、収穫作業は栽培の仕上げの作業として重要であり、ハーベスタ作業の良否はトラッシュやロスの増加に直接関連するので、生産者の重大な関心事となっている。ハーベスタは重量機械であるので、踏圧による土壌の硬化はさまざまな悪影響を及ぼす。このため、収穫直後にサブソイラなどによる心土破砕をきちんと施す必要がある。さらに、ハーベスタを使いこなすには高い植付け精度が要求され、そのためにはプランタによる植付けが不可欠である。すなわち、プランタ、ハーベスタ、サブソイラなどはあたかも同一の機械のようにセットで考える必要がある。このように、収穫作業だけでなく、前後の作業を含めた機械化作業体系の確立を考慮しなければならない。


2.栽培技術と経営能力向上のための情報の利用
 前述のように、経営および栽培のかなめは情報の利用であり、このための仕組みを構築することが重要である。機械利用の適否に関しても情報を蓄積し、評価を行う必要がある。そのために効果的と思われる具体的な方法をいくつか示す。

(1) 生育情報収集・分析の徹底
 生産法人は中堅および若手の意欲的なメンバーを構成員としているケースが多い。農業機械士の育成事業などもあって、機械の操作やメンテナンスに関しては比較的強いのが特徴である。その反面、栽培に関しては技術および経験ともに十分とは言えない場合も少なくない。これを補うために、優れた栽培技術を有する地域の篤農家や農業改良普及員などに定期的にアドバイスを依頼する方法などが考えられる。また、日頃から研究機関などと連絡を取り合っておくことが望まれる。何よりも社員みずからが可能な限りほ場の見回りを実施する必要がある。どうしても人手が足りない場合には、高齢のベテラン農家に助力を請う方法が効果的である。

(2) ほ場情報の記録
 上述および後述のデータ、さらには、関連する品種などのデータをほ場単位で整理して、データベース化を図る。多くのほ場を効果的に管理するにはこの方法が最も効果的である。パソコンを使って電子化することが望まれるが、紙ベースのものでも十分である。特に、借地の場合には、ほ場の特徴を十分に把握できていない場合も少なくないので、情報をきちんと整理することが肝要である。さらに、研究機関などと共同してGIS(Geographic Information System 地理情報システム)の利用を図れば、その効果は飛躍的に高まる(図4)。GISではほ場地図をベースに情報が属性データとして統合されるので、ここで述べている情報の整理がそのまま実施できる。また、行政機関などで実施している土壌分析は積極的に利用し、できるだけほ場の実態に近い情報収集を行う。これらの情報によって、ほ場ごとに処方を作成する。条件があまりにも不利なほ場は所有者に返還することも検討すべきであろう。GISは農地集積の計画立案にも有効に活用できる。

図4 GISによるほ場情報の整理


(3) 作業および機械運用の記録
 経営および栽培改善には、作業および機械の運用状態、すなわち、いつ、どこで、誰が、何の作業を、どの程度実施し、その結果はどうであったかを綿密に記録することが重要である。現在のところ、記録の程度や内容は法人によってまちまちである。通常、社員の活動を中心に記録および整理がなされるが、主要な機械ごとにも整理することが望まれる。メンテナンスなどにおいて貴重な情報となる。可能ならば、データベース化するところまでもっていきたいものである。関連する便利なソフトもあるので、簿記と並んで是非とも使いこなして欲しい。ここでは機械の運行情報を容易に取得できるシステムの例を示す(図5)。

図5 機械運行記録システム

 これは低価格GPS(Global Positioning System 全地球的測位システム)とPDA(Personal Digital Assistants 携帯情報端末)を用いた運行記録システムで、トラクタやハーベスタに搭載するだけで、作業実施ほ場、作業速度、作業時間、ほ場作業効率などが自動的に取得できる。また、作業面積の計測などにも利用でき、ハーベスタ作業料金の決定などに使える。さらには、機械の運用に無駄はないか。作業方法は合理的か。などの評価にも活用できる。
 製糖工場が発行する搬入実績データには、搬入日、品種、作型、原料搬入量、トラッシュ量、糖度などが記載されている。これは、(2)のほ場情報の記録においても有効かつ重要な情報である。それに加えて、この情報はハーベスタ操作の評価にも利用できる。すなわち、トラッシュ量によって作業精度が、収穫量と作業時間によって作業能率や作業効率がわかる。このような作業性能によってオペレータのハーベスタ操作技術を評価できる。また、収穫量と作業面積から単収を求めることによって、栽培技術の評価にも利用できる。生産法人やオペレータの組織化が進めば、相互評価も可能になり、一層の技術向上を促進するものと思われる。これらをまとめて図6に示す。

図6 得られた情報による作業技術・栽培技術の評価


(4) 経営の評価
 以上のようなさまざまな情報を総合して、経営の評価を実施する必要がある。この分野にはプロがいるので、その協力を得て実施すればより効果的な評価が得られる。なお、評価はそれ自体でも意味はあるが、それに基づいた経営改善・企業発展への実践がより重要である。


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5.むすび−自ら考え実行する組織の育成−

 生産法人が継続的に発展・成長するためには、自ら考え行動することが重要で、そのような組織の育成には周囲の支援が必要である。また、生産性向上のためには技術開発と研究の推進が必要である。従来型の増収や高品質化の追及はもちろんのこと、さとうきびに新しい付加価値を与え、「儲かるきび作り」を追求することも求められている。最近、さとうきびを用いたバイオエタノールに大きな関心が集まっており、一層の研究開発によって付加価値をつけることも夢ではない。グローバル化が進行する中で、世界に適用する技術開発を目指すことが望まれる。さらに、中型・小型ハーベスタなどは世界の多くの地域で求められている技術であり、小規模機械化システムの展開も可能である。また、生産法人の応援においてポイントとなるのは情報の提供である。これに関しては、品質取引制度を利用した生産支援情報システムの活用が望まれる。
 さとうきびは生産法人だけでは支えられないことは言うまでもない。生産法人を中心に、個別農家やコントラクタ、製糖工場、農業団体、行政が緊密に連携した新しいユイマール(注)の構築が求められている。さとうきび農業は製糖工場を中心とする共同体の色彩が強く、本質的にユイマールに向いている。従来のユイマールは労力の融通に重点が置かれていたが、より広い意味での共同システムはネット時代のユイマールとして位置づけることができる。地域社会の維持・発展のために、ユイマールの確立が求められており、そのかなめが生産法人である。

(注)「ユイマール」とは、沖縄の方言で「相互扶助」「助け合い」を意味する。
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Tel:03-3583-8713



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