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2005年農林業センサスによるさとうきび経営の経営類型(平成18年度砂糖に関する学術調査)

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最終更新日:2010年3月6日

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今月の視点
[2007年10月]

【調査・報告】

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
九州沖縄農業研究センターバイオマス・資源作物開発チーム主任研究員 樽本 祐助

1.目的

 わが国の農業政策は、農業の構造改革を加速化し、意欲と能力のある担い手を重視した政策へと移行している。さとうきび生産をとりまく状況も大きく変化しており、平成19年産を対象とした新たなさとうきびの経営安定対策の要件に示されるように、構造改革を重視した政策が進められようとしている。
 こうしたなかで、現在のさとうきび生産がどのような経営によって担われているのかを分析することの重要性が高まっている。そこで本稿では、2005年農林業センサスを活用して実施した分析結果について紹介したい。

2.農林業センサスとは

 農林業センサスは、わが国の農林業の生産構造などを把握することによって、農林業の基本構造の現状と動向を明らかにし、農林業施策および農林業に関して行う諸統計調査に必要な基礎資料を整備することを目的に5ヵ年ごとに実施されている。
 特にセンサスでは、一定規模以上の農家に限定はされているが、多くのさとうきび経営が対象となる悉皆調査であるため、そのデータはさとうきび生産の現状を把握するうえで非常に重要な統計でもある。
 しかしながら、このセンサスは、南西諸島におけるさとうきび生産の分析に十分に活用されてきたとはいえない。それは第1に、鹿児島県と沖縄県ではセンサス調査票が異なっているためである。つまり、鹿児島県では、全国に準じた調査票が用いられているため、さとうきびに関する調査項目が少ない。これに対して、沖縄県では全国調査の水稲に関する調査項目の大部分がさとうきびとして調査されている。第2に、公表される集計結果は沖縄県を除いて全国一律であったため、南西諸島に限定された作物であるさとうきびについて、体系的な集計が実施されなかったためである。
 こうしたことから、わが国におけるさとうきび生産の分析を行うためには、経営ごとのデータを再集計することが必要であった。そこで、センサス個票を利用するために必要となる利用申請を行い、そのデータを活用することにした。

3.センサスデータの特徴と調査対象

 2005年センサスは、沖縄県については2004年12月1日現在で調査されているが、それ以外の地域では2005年2月1日現在での調査結果である。また調査となる対象は、経営耕地面積30a以上もしくは、一定の経営規模以上(年間50万円以上の農産物販売金額)となっている。
 鹿児島県におけるセンサス対象経営は、全体で55,859戸あり、沖縄県は18,038戸あった。このうち、さとうきび経営だけを分析対象とした。その具体的な方法は、鹿児島県と沖縄県では異なる。
 まず鹿児島県のセンサス調査では、さとうきびの栽培面積が、過去1年間に販売目的で作付した農作物のなかで調査されている。この場合は、夏植をして間もないさとうきびで、平成15/16年期では、収穫されないさとうきびも含まれている可能性がある。
 沖縄県では、過去1年間に販売目的で作付した農作物について、さとうきびの栽培面積が作型や株出回数ごとに調査されている。さらに平成15/16年期に収穫されるさとうきびだけが栽培面積の対象になっている。
 こうした条件のもとで、さとうきび栽培面積がある経営を抽出しところ、鹿児島県(種子島以南に限定)のさとうきび経営は7,747戸となった。また沖縄県では11,114戸が抽出された。
 抽出されたさとうきび経営の特徴を各県のさとうきび生産実績と比較した(表1)。

表1 センサスと生産実績の比較
注)カッコ内は、センサス値の生産実績に対する割合

 鹿児島県および沖縄県の生産実績は、市町村から得られたデータを積み上げているため、さとうきび生産における最も詳細なデータである。まず生産実績のさとうきび栽培農家戸数は鹿児島県で10,800戸、沖縄県では18,212戸である。したがって、戸数の点では、鹿児島県で72%、沖縄県で61%のデータがセンサスで把握されているといえる。
 また、さとうきび収穫面積(鹿児島県においては栽培面積)については、鹿児島県では、センサス面積が9,398haであり、生産実績の収穫面積が9,885ha、栽培面積は12,292haであった。先に述べたように、鹿児島県の調査では、新規夏植がセンサスの栽培面積にカウントされていることの影響が高いと考えられるので、栽培面積に対する比率の76%がセンサスで調査されていると考えることが妥当である。沖縄県では、センサスによるさとうきび収穫面積は110,612haであり、生産実績との比率では、79%に相当する。
 次に、センサス対象となったさとうきび経営の経営規模別の戸数についてみると、鹿児島県では、図1のようになり、沖縄県では図2のようになった。
 1ha以上のさとうきび栽培面積を持つ経営については、大部分がセンサスで調査されている。また30aから1haにかけての栽培面積規模の経営も把握率は高い。一方、30ha未満の経営は、対象外になっている割合が高い。
 以上のことから、センサス対象となった経営は、戸数の点では鹿児島県で72%、沖縄県で61%にとどまるものの、さとうきび収穫面積という点では、8割近くは把握されている。特に、30a以上のさとうきび経営は大部分が対象になっていると考えられる。したがって、一定程度の規模を持つ今後の主要な担い手を検討する場合には、十分なデータであるといえる。しかし、30a未満の経営規模のさとうきび経営を分析するにあたっては、調査対象となった経営が少ないことへの注意が必要である。

図1 鹿児島県におけるさとうきび栽培面積規模別戸数

図2 沖縄県におけるさとうきび栽培面積規模別戸数

4.さとうきび経営の経営類型

  ここでは、さとうきび生産を担う経営像について、経営類型という点から分析する。平成19年度からのさとうきびの経営安定対策では、さとうきびの収穫面積がポイントになっている。現在、さとうきび生産はさとうきび単一経営が多いとはいえ、さとうきびの収穫面積だけで、今後の担い手を評価するのでは、複合経営への評価が過小になる可能性もある。したがって、今後のさとうきび生産のあり方を考える上で、さとうきび経営が他の部門とどのような関係にあるのかを検討した。
 こうしたさとうきび経営の経営類型を検討するうえで、農林水産省のセンサスで定義される農業経営組織を用いた。その定義は以下のようになっている。

  • 単一経営;農産物販売金額1位部門の割合が総販売金額の8割以上のものをいう。
  • 複合経営;農産物販売金額1位部門の割合が総販売金額の6割未満のものをいう。
  • 準単一複合経営;農産物販売金額1位部門の割合が総販売金額の6割以上8割未満のものをいう。

 これらの定義をさとうきび生産にも適用した分析を行う。また準単一複合経営については、農産物販売金額1位部門と2位部門を組み合わせて経営類型とした。
 センサスでは、農作物の販売では以下の区分で販売割合が整理されている(表2)。

表2 農作物の販売区分

 表2の工芸農作物には、たばこ・茶・さとうきび・こんにゃくいもが含まれている。沖縄県では、別の調査項目で農作物販売金額のなかで、さとうきびの占める割合が調査されているため、さとうきびの販売割合だけを検討することが可能である。
 しかし鹿児島県では、工芸農作物に含まれるたばこや茶などの販売金額を差し引く必要がある。鹿児島県において、さとうきびに加えて、それ以外の工芸農作物を生産する経営は、たばこが95件、茶が28件あった。たばこは種子島と沖永良部島にあり、茶は種子島にあった。
 これらについては、10a当たり粗収益にもとづき補正した。具体的な推計式は、以下のとおりである。
 

R;販売金額割合、C;10a当たり粗収益、
S;収穫面積
添え字;s(さとうきび)、t(茶)、c(たばこ)、k(工芸農作品)

 また作物ごとの粗収益については、さとうきびでは、平成15/16年期の種子島および沖永良部島の生産実績を用いた。また、たばこについては、鹿児島県たばこ耕作組合の資料にあった10a当たりの代金(種子島は383,701円、沖永良部島は293,333円)を用いた。さらに種子島における茶については、熊毛地域農業の動向(平成16年度)に記載されていた生産額と作付面積から240,506円とした。
 すべてのさとうきび経営に対して、表2の補正項目ごとの販売割合を作成し、経営類型を求めた。それらをさとうきび栽培面積規模別に集計した(表3)。

表3 さとうきび経営規模別の経営類型

 全体では、さとうきび単一経営が64%と最も多い。さらに4haを超えるとその割合が高まっている。また複合経営は、さとうきび単一経営についで多い傾向がある。これはさとうきび経営のなかで、販売金額が6割以上を占める作物がなく、収益の柱となる販売部門が2つ以上持つさとうきび経営が多く存在することを意味している。こうした複合経営の内容については、表3では明確にならないが、準単一複合経営(2つの類型の組合せで示されている類型)において、さとうきびにいもや肉牛を組み合わせた経営が多いことから、こうした部門を持つ経営が多いと推測できる。
 特に、いもはさとうきびとの輪作体系として利用されていたり、肉牛には飼料としてさとうきび梢頭部が給与されていたりすることが考えられる。こうした複合経営の一部門としてさとうきびが栽培されている経営も多く、さとうきびを生産する担い手の経営類型として無視できないと考えられる。

5.さとうきび単一経営の地域的な特徴

 前節では、さとうきびの単一経営が多いことが示された。ここでは、市町村ごとにさとうきび単一経営が、さとうきび経営全体に対して占める割合を検討することで、地域別のさとうきび生産の実態を検討する(図3)。

図3

 全体としては、沖縄県でさとうきび単一経営が比較的多く、鹿児島県では少ない傾向が見られる。
 さとうきび単一経営が多い地域は、沖縄県では、沖縄中部や久米島、南北大東島、宮古島などにおいて見られる。これらの地域は、小規模零細な地域と、南北大東島に代表されるような大規模専業地域が含まれている。鹿児島県では、奄美大島北部と喜界島が比較的多い。
 さとうきび単一経営が少ない地域は、種子島と沖永良部島がある。種子島では畜産との複合経営や、甘しょとの複合経営などが展開しているためだと考えられる。また沖永良部島は、花をはじめとした園芸やたばこなどとの複合経営が展開していることが背景にあると考えられる。

6.さとうきび経営における主要な複合部門

 農作物の販売金額にもとづき、さとうきび経営を類型化した。その結果、さとうきび単一経営が最も多いが、複合経営も多く、肉用牛やいもなどの部門が主であることを明らかにした。しかしながら、さとうきび経営の実態に迫るためには、複合部門の具体的な構成を明確にする必要がある。
 そこでセンサスの農産物の調査項目を活用し、さとうきび経営においてその生産実績があるかどうかを検証した。
 また、飼料生産については、販売目的というよりも、経営内での利用が多い。したがって、土地の調査項目における畑の利用、つまり「飼料用作物だけを作った畑」および「牧草専用地」の面積を利用した。
 センサスの農作物の生産に関する調査項目も、鹿児島と沖縄では同一ではない。そこで共通する項目については、全さとうきび経営に占める生産割合を示した(表4)。この表4は、生産割合が高いものだけを示している。
 また、鹿児島や沖縄に限定された作物や家畜の場合は、それぞれの地域でのさとうきび経営に占める割合を示している。
 表4からは、肉用牛部門を持つさとうきび経営が17.2%あることを示している。こうした肉用牛と結びついた経営が多いことは、子取用雌牛や子牛生産、さらには飼料畑や牧草地などとの相関も高めている。
 次に、ばれいしょや甘しょといったいも類の生産が10%を超えている。さらに、水稲が4.6%となっている。水稲は地域が限定されているので、地域によっては複合部門の割合が高まると考えられる。
 一方で鹿児島県および沖縄県に限定された作物や家畜では、鹿児島県でのさといもが5.8%が最も高い。それ以外にも、特徴的な作物や家畜が示されているが、複合部門としての生産割合は低い。
 こうしたことから、さとうきび経営の複合部門として主要なものは、肉用牛(飼料作)、ばれいしょ、甘しょ、水稲があげられる。

表4 さとうきび経営の複合部門における主要な作物・家畜生産割合

7.おわりに

 本研究では、さとうきび経営の実態を検討するにあたって、2005年センサスを用いた。センサス対象農家が限定されているため、零細なさとうきび経営の検討には限界があるが、30a以上の経営面積を持つさとうきび経営の分析では有効なデータであるといえる。
 また、経営類型という点では、さとうきび単一経営が最も多いが、複合経営が占める割合も高いこと、特に、50a未満の経営では、複合経営が占める割合が高い(言い換えると、さとうきび単一経営が占める割合が61%と、50a以上の経営と比較して低い)ことが明らかになった。
 平成19年度から、新たなさとうきび経営安定対策が実施されるなかで、経営安定対策の対象要件の考え方は大きく2つに分かれている。1つは、認定農業者等あるいは今後認定農業者等となることが期待される者として一定の作業規模(個別経営では収穫面積が1ha以上)を有する者であり、もう一つは、自らの取組みでは一定の作業規模を確保することが困難であるが、共同利用組織への参加や基幹作業の委託により、農地の流動化に寄与する者である。
 特に、収穫面積が1ha未満のさとうきび経営において必要とされている作業委託と複合経営の関係に絞って考えた場合、さとうきびの複合経営では、家族労働の有効利用、所有する機械の有効利用、地力維持、未利用資源(梢頭部、堆肥など)の有効利用、輪作の必要性など様々な要因で、さとうきびを一部門として導入していると考えられる。こうした複合経営において、さとうきび生産の作業委託を進めることができるかどうかが、さとうきび生産の維持・増産を図るためのポイントの一つになると考えられる。作業委託を円滑に推進するためには、複合経営についても地域のさとうきび生産における位置づけを明確にして、地域的な作業受委託の体制づくりを進めていくことが重要になると考えられる。

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