[2007年10月]
【調査・報告】
中村学園大学 流通科学部 教授 |
西岡 弘晃 |
准教授 |
片山 富弘 |
助手 |
田所 耕哉 |
本調査は、砂糖の消費拡大の可能性を模索するため、アンケート調査の分析結果などをもとに、消費者の砂糖の購買行動に関する実証研究を行ったものである。
その結果、砂糖購入時に消費者が重視するいくつかの要素が存在することが判明した。
今後の課題として、家庭用の砂糖のさらなる消費拡大に資するためには、消費者の購買行動を考慮したマーケティング戦略上の観点から、パッケージデザインの変更や店頭における砂糖の取り上げ方などについて工夫を重ねるなどの販売活動を行うことなどについて検討の余地があると考えられる。
1.本研究の目的
2006年の精糖工業会の資料によると、我が国の砂糖の消費量は2004年度に2,228千トンであり、近年、若干の減少傾向がみられる。家庭用においては、340千トン(2002年度)、332千トン(2003年度)、302千トン(2004年度)と減少傾向にあり、また、その全体に占める構成比率においても、14.9%(2002年度)、14.6%(2003年度)、13.6%(2004年度)と減少傾向がみられる状況にある。
そこで、消費者の砂糖の購買行動に関する調査を実施することにより、砂糖消費の実態を分析し、その結果をもとに考察を行い、砂糖の消費拡大対策を考える。
2.アンケート調査
アンケート調査の概要は、次のとおりである。
1) |
主婦および学生を対象にアンケート調査を実施。 |
2) |
現在の砂糖選択の実態調査および購入時に重視する要素に関する調査を目的とした。 |
3) |
対象商品は、砂糖各種のうち、家庭で最もよく使用されている上白糖とした。 |
4) |
購入時に重視する要素については、「満足」の5から「不満」の1までの5段階とし、「わからない」を6とした。調査項目は、「甘味の良さ」、「ダイエットに効く」、「栄養成分の表示」、「銘柄」、「パッケージのデザイン」、「商品の重量」とし、また、価格に関する項目は「砂糖の価格」、プロモーションに該当する項目は「友人・知人のクチコミ」、「チラシ」、「TV広告」、「雑誌広告」、「店員の説明」、「保証の充実」、プレイスに関する項目は「近くにお店がある」、「インターネットで取り寄せ」とした。 |
5) |
銘柄の選択においては、7種類メーカーの商品について、消費者の態度区分を「必ず購入する」、「購入してもよい」「わからない」、「たぶん購入しない」、「絶対購入しない」の5段階とした。 |
3.アンケート結果
|
図1 上白糖の銘柄を選んだ主な理由は?(n=840) |
1) |
アンケート調査結果は、回収890のうち、有効回答840で、有効回答率94.4%。また、男:女比は約2:8であった。 |
2) |
上白糖の銘柄を選ぶ主な理由として、「いつも買っているから」47.6%、「お店においてあるから」13.4%、「価格が安いから」12.8%で、全体の73.8%という結果となった(図1)。 |
3) |
砂糖購入時の重視する因子分析の結果
「パッケージのデザイン」(0.637)、「栄養成分の表示」(0.545)の数値が高い因子1、「砂糖の価格」(0.733)、「商品の重量」(0.569)の数値が高い因子2、「雑誌広告」(0.857)、「テレビ広告」(0.807)、「チラシ」(0.717)、「店員の説明」(0.702)、「友人・知人の口コミ」(0.688)の数値が高い因子3、と大きく3つの因子が得られた。 |
4.考察
上白糖の銘柄を選んだ主な理由として、「いつも買っているから」47.6%、「お店においてあるから」13.4%、「価格が安いから」12.8%の順位で、銘柄の選択は習慣的な購買行動の結果であり、上白糖という質的に均一でメーカーの違いによって差がない品目であるだけに、特定の銘柄を求めて選好を行っているのではないということが言える。
しかし、砂糖購入時の重視する因子分析の結果から、消費者が重視するいくつかの要素が存在することが明らかになった。
1つ目は、「パッケージのデザイン」が、砂糖消費の満足度を向上させる重要な要因であることから、マーケティング戦略の展開の一つとして、パッケージを変えるといったシミュレーションを小売店頭で実施することで消費者の反応をうかがうことである。
2つ目は、分析結果のもう一つ重要な要素である「栄養成分の表示」という観点から、これを重視した販売戦略である。消費者の食品の表示に関する関心は付加価値の高い商品について特に高いと言える。例えば機能性を高めるような商品を開発した場合、そのアピールの仕方いかんによって消費者の選好は大きく変わるものと考えられる。
3つ目は、パッケージのデザインや表示だけではなく、重量についてもバリエーションを施して、店頭におけるシミュレーションを行い、消費者にとって使い勝手の良いサイズを捉えながら、そのニーズに合ったものを供給していくことも消費拡大につながるということが考えられる。
5.まとめと今後の課題
本研究は、主に家庭用砂糖の消費の拡大に向けて、消費者の砂糖の購買行動に関する調査を実施することにより、砂糖消費の実態と拡大対策を考えることを目的とし、アンケート調査の分析結果から、マーケティング戦略を考えてきた。
砂糖の消費は一般的に習慣的な購買行動の結果であるが、上白糖に関する購入時に重視する要素の重回帰分析の結果から、それに対応したマーケティング戦略が重要であるということが言える。
今回の調査対象は上白糖としたが、今後の課題として、グラニュ糖や三温糖といった他の糖種でも同様のことが当てはまるのかどうかということを検証する余地があると考えられる。