1. 砂糖のはじまり
さとうきびの発祥は南太平洋
砂糖の歴史は、はるか紀元前に遡ります。南太平洋 (現在のニューギニア周辺) の島々には次のような伝説が残されています。
『…昔々、若い漁師の網に一節のさとうきびがかかりました。漁師がそれを持ち帰ると、みるみるうちに大きく生長し、茎の中から美しい娘が出てきました。漁師と娘は結婚し、沢山の子供が生まれました。その家族が人類の祖先になったのです…』
これはあくまでも伝説ではありますが、南太平洋の島々では、さとうきびは民族のはじまりを物語る伝説と関わりを持っており、さとうきびの発祥の地と言われています。
砂糖の始まりはインドであるとされています。これは、砂糖の英語名 「Sugar」 の語源がサンスクリット語の 「Sarkara」 (砂粒の意味) に由来すると言われること、また紀元前5〜10世紀のインドの仏教典に砂糖やさとうきびに関する記述があることから言われていることです。当時砂糖は薬品の1つとして書かれていたようです。
その後、紀元前334年、マケドニアのアレクサンダー大王がインドに遠征したとき、その軍の家来が 「インドには蜂の力を借りずに蜜の取れる葦 (あし) がある」 と語ったとされています。また、別の記録には 「インドには、噛むと砕ける甘い石がある」 という記述もあったそうです。これが当時の砂糖ではないかと思われます。当時製糖技術があったかどうかは分かりませんが、蜜が固まった黒砂糖のようなものではなかったかと考えられます。
その後、砂糖やさとうきびは、インドから西はペルシャ (現在のイラン) やエジプト、東は中国大陸に伝えられていきます。
日本への伝来
日本への砂糖の伝来は、奈良時代、中国より伝えられたとされています。754年、当時の唐国の僧・鑑真が日本に渡る際、黒砂糖500斤を持ち込んだという説がありますが、一方、当時日本から唐に渡った遣唐使が日本に帰る際に持ち帰ったという話もあり、どちらが正しいのか、真偽の程は確かではありません。ただ、砂糖は薬として、奈良の大仏に献上されています。正倉院に保存されている、大仏に献上された薬の目録である 「種々薬帖 (しゅじゅやくちょう)」 には、さとうきびから作られた砂糖を意味する 「蔗糖 (しょとう)」 という記載があります。
次回は、その後のインドからの世界への砂糖の伝播を中心にまとめてみたいと思います。