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お砂糖豆知識[2006年8月]
最終更新日:2010年3月6日
日本人と砂糖(5) |
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栄養学博士 落合 敏 |
〜日本の家庭における砂糖〜 |
今までは調味料の一種としての砂糖の使い方、その健康効果について述べてきましたが、砂糖だけで作る“カルメ焼き”が今見直されています。
カルメ焼きは、砂糖を煮つめて泡立たせ、軟石状に固まらせたお菓子で、郷土料理ではないのですが、昔、家庭ではよく焼いて食べていたそうです。
室町末期に伝来した南蛮菓子の一種で、ポルトガル語で「砂糖菓子」を語源とします。江戸時代には“カルメイラ”と呼び、“浮石糖”“泡糖”などの字があてられていました。「御前菓子秘伝抄」によると当時の製法は、砂糖に水を加えて煮立て、それをゆすって泡立ったとき、上に絹をかけて冷ますといったもので、膨張剤は使わなかったようです。現在では、地域によっては“カルメル焼き”と呼び、もっぱら縁日などで作りながら売られる駄菓子であると同時に、簡単に甘い香りを楽しみながら作れることから家庭でも見直されてきております。
銅製の小鍋にざらめと少量の水を入れて煮詰め、泡立ってきたら棒の先に重曹を付けてかき混ぜ、丸く膨らませて固まらせます。
この砂糖菓子は、糖濃度が高いので、素材の水分活性が低下し、また、高い浸透圧のため、細菌の繁殖が抑えられるので、腐りにくくなります。常備菓子とし、スポーツやハイキングなどで、エネルギー消費の高いとき、また、3時のおやつなどに糖質性エネルギー源として最適です。
家庭ではありませんが、砂糖菓子として、縁日、祭礼などにつきものの「ワタアメ」があります。現在、町内会や学校でワタアメを作る機械を備えておくところも少なくありません。
こうした伝統菓子や郷土料理が今、見直されているのは、現在わが国の食生活が間食を中心とした脂質エネルギーの摂取率が高い状態にあり、そうした食習慣が脂質代謝の異常を招き、生活習慣病発生の大きなリスクとなっているからです。
日本古来の大豆製品、味噌、納豆などが見直されているのももちろんです。特に発酵食品の代表としての味噌、納豆は諸外国でも熱心に研究され、日常生活への活用も盛んです。嗜好性や健康効果が高まることは前述の通りです。
納豆についても同じことが言えます。以前、ある健康雑誌のQ&A欄を担当しておりました時、北海道の方から「北海道では納豆に砂糖をかけて食べる習慣があるのですが、この習慣は良いのでしょうか?その理由を教えてください」という質問でした。答えは“良い”です。その理由は、納豆が健康食品としての効果が注目されるようになったのは、明治時代のこと。それからさまざまな分野で研究が進められ、1987年には、納豆から発見された血栓溶解酵素が「ナットウキナーゼ」と命名されました。
ナットウキナーゼは、納豆が発酵する過程で生成されるタンパク質分解酵素の一種です。
分かりやすく言うと、納豆のネバネバに含まれる酵素で、血液の流れを妨げる血栓を溶かす作用があるとされています。
このナットウキナーゼの「血液さらさら効果」を高めるには、酵素の働きを助ける硫化アリルを多く含む食品(ねぎやたまねぎ、ニラなど)と一緒に食べるのがベターなのですが、納豆菌の最も好むエサは、砂糖なのです。ですから、納豆に砂糖をかけて食べる習慣は、先人達が体験から得た生活の知恵だったのではないでしょうか。
いずれにしても、砂糖は人間の健康維持・増進に欠かすことのできない食材なのです。上手に利用して楽しい、健康的な食卓にしたいものです。