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お砂糖豆知識[2009年3月]

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最終更新日:2010年3月6日

お砂糖豆知識

[2009年3月]



緑の風の贈り物「ウージ染め」
〜さとうきびを利用した染織物〜


豊見城市ウージ染め協同組合
理事長  真境名 まじきな  照子

 11月から3月までのさとうきび畑は、寺島尚彦先生が作詞作曲し、多くの皆様から愛されている「さとうきび畑」の歌の情景そのもので、白い穂が風にゆれる様は、自然が産み出すゆったりとした空間を感じることができ、心の底から生きていることに感謝し、明日を夢みる事ができます。

 沖縄の太陽の光をいっぱいに受けて育ったさとうきびは、台風にも強い農作物として、昔から沖縄の基幹産業となっており、沖縄県民にとって身近で大切な作物として愛され、1月から3月になると、茶菓子、弁当を持参し、ラジオを流しながら、家族や知人らでさとうきびの収穫(ウージトーシー)を行っているのどかな光景が見られます。

 肉体的には、大変きつい仕事ではありますが、和気あいあいと行っているのどかな様子は、車で通りがかるだけでも心が和んできます。

 農家の皆様と同じように、12月から3月までは、私たち豊見城市ウージ染め協同組合にとっても大切な時期で、組合員25名総出で染料としてのさとうきびの穂を刈り取り、染色・加工して、商品として仕上げていきます。

 たくさんの穂を収穫し、煮出す事で、何とも言えない優しいピンク色・ワインレッドの色が産み出され、「沖縄から春を!」と発信できるさとうきびの穂を使った沖縄の春色の染色で大忙しです。

 さとうきびの穂を染料として使った染織品は、2005年に沖縄県地場産業振興事業の助成を活用し、沖縄県工芸技術支援センターの指導を得ながら、試染・試作・展示・リサーチを行い、商品化・ブランド化を目指し、意匠登録・商標登録を申請しました。

 2008年11月28日、特許庁から認可を受けることができ、組合員一同大喜びで、ピンク色の商品化に弾みがつきました。

 沖縄の太陽と大地が、頑張っている私達にプレゼントしてくれた大切な宝物であるウージ染めです。さとうきびの葉で染色した黄色・若草色に、期間限定の春色として、さとうきびの穂で染色したピンク色が加わりました。月日が立つのは早いもので、ウージ染めは、開業から20年目を迎えようとしています。

 思いおこせば、1989年の豊見城村商工会の村おこし事業で、特産品のアイデア募集があり、仲里恵美子さんのウージ染めが採用されたのが商品開発の始まりで、試染・試作・試染と商品化を目標に頑張っていたあの頃がなつかしく思い出されます。

 豊見城市商工会の事業として取り上げられ、行政・農協の支援、地域の皆様の応援は、今思い出しても、心が熱くなる位に素晴らしく、言葉でうまく表現できませんが、人に支えられ、人と出会い、人が導いてくれて今がある。―それが実感です。

 当初から開発に関わってきただけに、私のウージ染めに対する思いはひときわ深いものがあります。みんなで開発してきた地域の宝物といっても過言ではないウージ染めを若い方に継いでもらい活用する事で、女性が夢と希望と誇りをもてる働く場所を作って欲しいと考えるのです。

 沖縄は女性が働く場所が少なく、結婚し子育てが一段落して仕事をしようとなるとパートになってしまいます。子供たちが安心して遊び、学べるための環境づくりには、やはり母親の果たす役割が大きいことから、女の人が夢と希望と誇りを持って働ける場所を作っていく事で、子供が明るくなり、まわりが笑顔でいっぱいになると考えるようになりました。

 工芸の世界は、10年で一人前と言われており、技術を身につけ、しっかりと食べていけるようになるには時間がかかります。
しかしながら、技術をしっかりと身につけ、販路をしっかりと確保し、世の中の流れを見つめ、たえず学ぶ事で子供達の身近で、家庭で仕事ができるのではないか、学び続けるという事は、自信がつき良い物を産み出していく力がつくという事で、それは自分への誇りとなるのではないかと考えるのです。

 実際に、頑張っているお母さんの姿が子供達には誇らしいようで、「ウージ染めをやっているお母さん」という言葉が、子供たちから聞こえてくるという話を若い組合員の口から聞くと嬉しくなります。

豊見城市ウージ染め組合員

 ここ最近、急激な不況の波が押し寄せて来ました。

 組合の代表である私にとっては、他人事ではなく、観光で成り立っている沖縄県への来客が減少し、観光客の皆様に購入していただいている私達のウージ染め製品にも影響がでるのではないかと、つい考えてしまうのですが、考えていてもしょうがないので、開発当初の販路ゼロのあの頃を思い出しながら積極的な活動を続けています。

 大きな波の間を、加速をつけて通り抜けようと他企業の方も同じ思いで事業を展開なさっている事と思います。私たちは小さな組織ではありますが、結束し知恵を出し合っての活動、それも夢と希望と誇りが持てるような活動をしたいと思うのです。

 ウージ染めに関わって20年、私も年を重ねました。その中で見つけたことがあります。

 「自然って、やっぱり偉大だよね!」「人っておもしろいよね!」「生きているって凄いね!」乱暴な言葉で連ねてしまいましたが本心からでた言葉です。自然相手の仕事は大変ではありますが、自然が作り出すすべての事に感謝したいと思います。

 今後のウージ染めの課題でありますが、自前の製造拠点となるべき建物の確保です。現在は、商工会が管理している市の建物を組合で借用して製造を行っていますが、3年ごとに契約の更新が必要であるため5年後、10年後の長期計画を立てることは難しい状況にあります。いつの日か、しっかりと自前の建物が確保できるよう頑張って行きたいと思います。

 緑の風の贈り物、ウージ染め。沖縄の太陽をいっぱいに受けたさとうきびの葉と穂を使った染色ウージ染め。

 ジャパンブランド育成支援事業により、しっかりと商品開発を行い、着々と沖縄から、良い物を発信している私たち、豊見城市ウージ染め協同組合の仲間達が頑張っているという事を頭の隅においていただき、沖縄へ来県の折りには、ぜひ豊見城市瀬長島へお立ち寄り頂ければと思います。

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