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最終更新日:2010年3月6日
[2009年9月] |
簡単にできるカルメ焼き |
慶應義塾幼稚舎教諭(博士(工学)) 高梨 賢英 |
カルメ焼きはカルメラ焼きとも呼ばれ、高温にした砂糖の液体に重曹(炭酸水素ナトリウム)を入れてかき混ぜ、蒸しパン状に膨らませたお菓子です。高温砂糖液に重曹を入れる温度とかき混ぜを止めるタイミングが合うと、容器の中でムクムクと膨らむカルメ焼きができます。さああなたもカルメ焼き作りの楽しさを体験しましょう。
上白糖、水、重曹、卵白、温度計(150〜200度まで測定できるもの)、紙コップ、オーブンシート、アルミホイル、電子レンジ、小さな鍋、マグカップ
150〜200度まで測定できる温度計の球部を保護するために割り箸ではさみます(図1)。
図1 |
卵白5グラムに重曹30グラムを少しずつ入れて全体を練りあわせましょう。卵白に含まれる水分量によって加える重曹の量は異なるので、割合はおおよそのものです。できあがりは耳たぶの硬さ程度を目安にすると良いでしょう。そこに上白糖*1〜2グラムを加えて全体をよくかき混ぜます。かき混ぜているうちに耳たぶの硬さであった重曹卵は柔らかくなり、シュークリーム状(図2)になります(* 白色または食用着色剤を加えて着色したカルメ焼きを作りたい場合は、上白糖の代わりにグラニュー糖を使用します)。
図2 |
マグカップより径のやや小さい紙コップを用意し(図3)、紙コップにオーブンシートをかけ(図4)、その上にアルミホイルをかけて押さえ、両手でコップの形が出るように整えます(図5)。上からマグカップをかぶせて(図6)、全体を逆さにして(図7)、紙コップを抜いてふくらませる容器の完成です(図8)。
図3 |
図4 |
図5 |
図6 |
図7 |
図8 |
マグカップの直径よりも底の直径がやや小さい紙コップを用意します(図9)。紙コップを逆さにしてオーブンシートをかけ、手で紙コップの形が出るように押さえます(図10)。その上からマグカップをかけ(図11)、紙コップをいれたまま全体をひっくり返し、紙コップをマグカップの底に押しつけて、マグカップからオーブンシートが浮き上がらないように形を整えます(図12)。紙コップを抜いて容器の完成です(図13)。
図9 |
図10 |
図11 |
図12 |
図13 |
Aタイプのふくらませる容器の底に大豆大の重曹卵を置き(図14)、小さな鍋に上白糖50〜60グラムを入れ、水を入れて弱火で加熱します(図15)。温度計で温度を測り、125〜130度になったら(図16)、砂糖液を容器の3分の2程度注ぎます(図17)。砂糖液からは盛んに泡が出ます(図18)。少し観察して、泡の発生が大体収まったら、割り箸に大豆大の重曹卵をつけて全体をかきまぜます(図19)。
図14 |
図15 |
図16 |
図17 |
図18 |
図19 |
最初の色は白、続いてクリームから黄色くなり粘りが出てきたら(図20)、かき混ぜるのを止めて箸を抜くと表面が盛り上がって(図21、図22)カルメ焼きが出来上ります。
図20 |
図21 |
図22 |
温度が下がるのを待ってから、紙コップからオーブンシート容器を抜き出し、オーブンシートをはがしてカルメ焼きを取り出します(図23)。
図23 |
Bタイプの容器に上白糖30グラム、水6ミリリットルを加えて(図24)、電子レンジ500ワットで1〜1分20秒加熱します(図25)。砂糖液の温度は120〜130度になります。電子レンジからマグカップを取り出し(図26)、中の砂糖液から出る泡が少なくなったら、大豆大(2グラム内外)の重曹卵を加えて(図27)、割り箸でかき混ぜます(図28〜30)。
図24 |
図25 |
図26 |
図27 |
図28 |
図29 |
図30 |
出来上がったら冷めるまで待ってオーブンシートをマグカップから抜き出し、オーブンシートをはがして中身を取り出します(図31)。
図31 |
注意)Aタイプのカップはアルミホイルが着いているので、絶対に電子レンジに入れてはいけません。
上白糖の代わりに、グラニュー糖を用いれば、白色のカルメ焼きを作ることができます。重曹卵に食用着色剤を加えたものを用いれば、着色カルメ焼きを作ることができます。ただしグラニュー糖を使うと上白糖のように色の変化がないので、かき混ぜるのを止めるタイミングは粘りを見て行うことになりますから、上白糖で上手にできるようになってからこの技にも挑戦してください。図32の左はグラニュー糖で作ったホワイトカルメ焼き、右は上白糖を用いたキャラメル色のカルメ焼きです。
図32 |
できあがったカルメ焼きに飾りを付けてオリジナル作品を作りましょう。
ドライフルーツや海苔を130〜150度程度に加熱した砂糖液に浸けて、出来上がったカルメ焼きの上に置くと砂糖が冷えて接着剤になり、さまざまな表情を持つカルメ焼きができます(図33 猿 図34 犬)。
図33 |
図34 |
高温砂糖液はかき混ぜると、右(図35)のように温度が下がって急激に固体に変わる性質があります。カルメ焼きを作る120〜130度では、重曹卵を加えてかき混ぜると、重曹が熱分解して気体が発生します。かき混ぜると砂糖液の温度は下がり、表面に固体に戻った砂糖のふたができ、発生する気体が閉じ込められます。内部から発生する気体が表面を盛り上げ、内部は蒸しパンのようになります。
図35 |
「化学的性質が似たものは溶け合う」という法則があります。高温砂糖液に重曹だけを入れてかき混ぜると、砂糖に重曹という性質の異なる物質を混ぜるので、よく混ぜるには、機械的にかき混ぜる必要があります。重曹卵の中に砂糖が入っていると、重曹卵の中の砂糖と高温砂糖液の砂糖は同じ物質なので、混ざりやすくなります。重曹卵の中の砂糖は高温砂糖液に重曹を散らばらせやすくする分散剤の役目をしています。
1) | 高梨賢英『カルメ焼はなぜふくらむ』p5さ・え・ら書房、1990 |
2) | 高梨賢英「かんたんカルメ焼き」『砂糖と塩の実験』p40、さ・え・ら書房、1997 |
3) | 高梨賢英「専用容器を使わないカルメ焼き作り」『化学と教育』44:42―43、1996 |
4) | 高梨賢英「自由成型着色カルメ焼き」第44回教職員発明工夫展入賞、1996 |
5) | 高梨賢英「演示効果の高いカルメ焼つくりの工夫と科学教育への応用」『科学技術体験活動マニュアル』p65〜68、1996 |
6) | 白井文子「カルメ焼きはなぜふくらむ」『青少年のための科学の祭典ガイドブック 2006年全国大会 実験解説集』p69、2006 |
7) | 高梨賢英「ふんわりかるめ焼き」『身近な材料、最近素材を使う8つのスーパーテクニック実験映像集 わくわく化学マジックワールド』日本化学会 DVD 2001 |
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