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お砂糖豆知識[2009年12月]

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最終更新日:2010年3月6日

お砂糖豆知識

[2009年12月]



砂糖とスポーツ

大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科 運動栄養学研究室 岡村 浩嗣

 スポーツあるいは身体活動は安静にしている場合よりも多量のエネルギーが必要であり、糖質はエネルギー源として主要なものである。一方、糖質は運動トレーニングによる筋肉合成にも重要な役割を持っている。

エネルギー源としての砂糖

 図1は、運動中に砂糖を含んだ飲料を摂取した場合には血糖値が維持されて4時間ほど運動できたのに対して、砂糖を含まない偽薬飲料を摂取した場合には血糖値が低下して3時間ほどで疲労し、運動を継続できなかったことを示す実験結果である。このためスポーツドリンクには砂糖が含まれている。

図1 運動中に糖質を補給すると血糖値の低下が防止され持久力が向上する(コイルら 1986)

 スポーツドリンクの糖質濃度は4〜8%が望ましいことが、これまでの研究の結果より明らかになっている。表1は運動1時間当りに補給すべき水分と糖質の目標量を示している。糖質濃度6%の飲料を1時間当り823ミリリットル飲用すると水分が823ミリリットル、糖質が50グラム摂取出来ることがわかる。この表の白抜き数字で示されている糖質濃度と飲用量が、水分と糖質の両方の必要量を摂るのに適当なのである。糖質濃度2%の飲料で1時間当りに必要な糖質量の下限である30グラムを摂るためには、1時間当り1500ミリリットルも飲まなければならない。これは運動中の飲用量としては多過ぎる。「スポーツドリンクはうすめたほうが良い」と耳にすることがあるが、これは栄養学的には正しくない。スポーツドリンクは、そのまま飲用して必要なものが必要なだけ摂取出来るように作られている。

表1 糖質と水分の両方を満たすための糖質濃度と溶液摂取量の関係。1時間当たり30〜60gの糖質摂取で持久運動能力が向上し、1時間当たりの望ましい水分摂取量は600〜1000mLである。したがって、4〜6%の飲料を1時間当り625〜1000mL(表中白抜き数値)飲用するとよい
コイル 1992

 図2は砂糖を含むスポーツドリンクと水を、運動中に自由に飲用させた時の飲用量を調べた結果、水よりもスポーツドリンクを多く飲用したことを示している。また、図3はサッカーの試合中の運動を再現した実験で、15メートルの全力走を繰り返した時、糖質飲料を飲んでいたほうが全力走のタイム落ちが小さかったことを示している。そして、図4は砂糖を含んだ飲料を飲んだ場合のほうが、エネルギーのない人工甘味料を含んだ飲料を飲んだ場合よりも、運動中の自覚的作業強度を弱く感じたこと、すなわち運動をきつく感じなかったことを示している。

 このように、運動中に砂糖を含んだ飲料を摂取することはエネルギーの枯渇を防いで運動能力を維持するなどの望ましい効果がある。

図2 運動中の水、6%砂糖飲料および合計の累積飲用量(パッセら 2000)

体づくりと砂糖

 砂糖には運動による体たんぱく質の合成を高める作用もある。表2は体の材料となるたんぱく質は砂糖と共に摂取したほうが、たんぱく質だけあるいは脂肪と共に摂取するよりも、体づくりに利用されやすいことを示している。たんぱく質は窒素を含むので、表2で窒素貯留量と窒素利用効率が高いことは、摂取したたんぱく質のうち、体づくりに利用されたものが多かったことを意味する。

図3 運動中に糖質あるいは偽薬を摂取ながら15mスプリント走を繰り返したときの平均タイムは糖質を摂取したほうが速い(アリら 2007)
図4 糖質飲料は運動時の自覚的作業強度を軽減する(アッターら 2007)
表2 たんぱく質と砂糖を同時に摂取すると、
摂取したたんぱく質のうちで体づくりに利用されたのと考えられる割合を示す窒素貯留率が高まる
コーディションら 1999

 図5は砂糖が体づくりを促進する理由を示している。砂糖を摂取することでインスリンが分泌される。インスリンは血糖値を低下させる作用がよく知られているが、体たんぱく質に対しては合成を促進するとともに分解を抑制する。このため、体づくりの材料のたんぱく質を摂って血中のアミノ酸濃度が上昇している時に、砂糖を摂ることでインスリンが分泌されると、体づくりに望ましい体内環境を整えることになり、体たんぱく質合成が促進される。

図5 砂糖が摂取したたんぱく質の体たんぱく質への合成を高める理由

 筋肉合成には運動によって筋肉に刺激を加えることが効果的である。そして、たんぱく質と砂糖を同時に摂取することによる上述のメカニズムは、運動後早めにこれらの栄養素を摂取した場合に強く働くことが知られている。スポーツ栄養で摂取タイミングが重要とされているのはこのためである。

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